事業報告(自 2020年3月1日 至 2021年2月28日)

会社の現況に関する事項

⒈ 主要な事業内容(2021年2月28日現在)

当社の主要な製品は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」シリーズ、プロジェクト管理パッケージ「SI Object Browser PM」、ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」、そしてWeb-ERPパッケージ「GRANDIT」という4つの市場・製品群から構成されています。

「SI Object Browser」と「SI Object Browser PM」はパッケージの販売と保守及びクラウドサービスの提供を主体とした事業形態です。「SI Web Shopping」、「GRANDIT」はこれらに加えてお客様のニーズに合わせてカスタマイズを行いソリューションとしても提供しています。前者が高い利益率、後者が売上拡大の牽引事業という役割をバランスさせ、市場環境の変化に対応し、幅広い技術を習得しやすい製品構成になっています。

⒉ 事業の経過及びその成果
(全般)

当事業年度の業績は、売上高4,258,759千円(前期比6.5%減)、売上総利益1,409,775千円(前期比19.7%減)、営業利益416,630千円(前期比37.0%減)、経常利益423,784千円(前期比36.2%減)、当期純利益293,059千円(前期比36.1%減)となりました。新型コロナウイルス感染拡大にともなう企業活動減退のObject Browser事業への影響とERP事業における受注損失の発生により、前期比で減収減益となっています。

中期経営計画「Break 2018」の3年目となる当期では、立案当初に掲げた①「既存事業のシェア拡大」、②「海外拠点の確立」、③「AI事業の確立」、④「社員のスキル向上」、⑤「国内TOPの合理化企業」という5つの目標に向けた最後の仕上げの年度となりました。最初の2年は着実に中期経営計画を推進して2年連続で過去最高の売上高・経常利益を更新できたのですが、集大成となるべき当期に大幅な減速となってしまいました。

当社は2017年に総務省「テレワーク先駆者百選」に選ばれるなど、早い段階からリモートワークに取り組んでいたので、Withコロナの環境下においても生産性などには影響は出ていません。市場環境としてもObject Browser事業に対する一過性の影響はあるものの、ERP事業、E-Commerce事業は引き続き堅調で、全体としての新型コロナウイルス感染拡大による影響はそれほど大きくありません。今回最大の減収減益となった要因はERP事業において不採算案件が発生したことで、再発防止対策を強化することを最大の経営課題として取り組んでいます。

セグメント別の業績

各セグメント別の業績は、次のとおりです。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

(単位:

Object Browser事業は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」、データベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」、統合型プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM(OBPM Neo)」及びアプリケーション設計ツール「SI Object Browser Designer」の4製品から構成されています。「SI Object Browser」と「SI Object Browser ER」は、ソフトウェア開発の生産性を向上させるツールとして業界で多く利用されており、安定した収益源となっています。最近は、クラウドの普及に伴ってクラウド市場での利用拡大を図っています。

当社3事業のうち、このObject Browser事業が最も新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けており、2020年4月の緊急事態宣言の発令後、企業の購買活動が減退した影響により売上高が大幅に減少しました。市場における購買意欲は徐々に回復しておりましたが、第3波の到来とともに再び売上減少幅が拡大しました。最近になって再び回復基調となっており、新型コロナウイルス感染症が落ち着くことで前の水準に戻ると予想しています。

当期はコロナ対策の1つとして、政府のIT導入補助金対象製品として認定を受けました。また、ネット広告やWebセミナーなど、「新型コロナ時代」に即したマーケティング活動を推進した効果も出てきています。

2021年2月には「SI Object Browser for Oracle」のサブスクリプションモデルの提供を開始しました。サブスクリプションモデルの販売により、本事業におけるストック比率の向上を加速させる計画です。

統合型プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM(OBPM)」は、発売以来着実に市場浸透が進み、市場からも高い評価を得て導入企業実績は210社を超えました。本製品の強みは、プロジェクト管理の事実上の世界標準であるPMBOKの管理エリアを統合していることです。また、2010年よりクラウドサービスの提供を開始し、契約数も順調に拡大しています。2021年3月からは新ブランド「OBPM Neo」と名称変更の上、リニューアル販売を開始しました。「OBPM Neo」は、完全Web対応したクラウドサービスで、クライアント環境に依存せずに、いつでもどこでもプロジェクトメンバーが利用することが可能です。これにより、海外拠点と連携したDXプロジェクトや、テレワークの拡大といった企業活動推進に貢献します。「OBPM Neo」の販売開始に伴い、2021年度からはサブスクリプションモデルへ完全移行する計画です。なお、2020年7月1日から中小企業向けのERP連携として「勘定奉行クラウド(注1)」と連携する「奉行API連携オプション」の販売を開始しました。この連携を新たな武器として中小企業に拡販し、サブスクリプション販売を強化してストック型ビジネスを拡大していきます。

アプリケーション設計ツール「SI Object Browser Designer」は、ソフトウェア開発におけるCADという新しい発想の製品です。今後、ソフトウェア業界がCADを用いて設計作業を行うようになることを見込んで、既に特許を取得しています。IT業界の人手不足が深刻になる中、生産性を高めるツールとして注目されています。2019年6月から販売を開始した完全Web版は、クラウドサービスのサブスクリプションモデルとなっており、設計作業の生産性を大幅に向上させるツールとして販売を拡大しています。

以上の結果、Object Browser事業の主力製品である「SI Object Browser」の市場が、新型コロナウイルス感染拡大による企業活動減退の影響を受けたことと、「SI Object Browser PM」のクラウドサービス型事業への転換に伴う一時的な売上高の減少の影響があり、当事業年度の売上高は657,050千円(前期比14.4%減)、営業利益は223,207千円(前期比31.7%減)となりました。「OBPM Neo」は非常に好調な出だしで、既存ユーザーの多くも「OBPM Neo」のクラウドサービスに切り換える見込みであり、来期以降はストック収益比率が向上し、不況時でも安定的に収益を上げられるビジネスモデルへの事業シフトを加速してまいります。

注1:「勘定奉行クラウド」は、株式会社オービックビジネスコンサルタントのERP製品で、中堅・中規模向けERPでシェアNo.1の導入実績を誇る同社のクラウド会計システムです。

売上高
前期比 %増
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売上高構成比率 %

(単位:

E-Commerce事業は、日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」を主力製品として構成されています。EC市場は堅調に発展し続けており、この先もさらに伸びるものと思われます。市場の拡大につれて競争が激化して採算悪化に陥る同業他社が多い中、20年以上もECサイト構築事業を行ってきたノウハウを生かして、大規模なECサイトを着実に稼働して売上を増やす技術力が評価されています。また、一昨年より実施している開発手法の見直しや業務改善の取り組みが奏効し、営業利益率を年々向上させることに成功して、利益率の高いビジネスに変革しています。

当期は、第三者機関によるセキュリティ診断を受けた「SI Web Shopping Ver.12.8」を2020年6月1日にリリースし、本製品の強みである「堅牢なセキュリティ」を更に強化しています。また、「SI Web Shopping Ver.12.9」では、キャッシュレス決済サービス「PayPay(注2)」に標準連携し、さらに機能拡充を続けて「SI Web Shopping Ver.12.10」をリリースしています。

以上の結果、E-Commerce事業の売上高は831,187千円(前期比0.2%増)、営業利益は212,049千円(前期比3.0%増)となりました。ネット通販需要が高いことから来期以降も順調な事業成長を見込んでいます。

注2:「PayPay」は、PayPay株式会社のスマートフォン向けQRコード決済サービスで、登録ユーザーが3,500万人を超えるなど、高いシェアと競争力を持つサービスです。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

(単位:

ERP・AI事業は、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」を主力製品としたERP事業と、AI製品シリーズであるディープラーニング異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)」を主力製品としたAI事業からなります。「GRANDIT」はコンソーシアム方式をとっており、同一製品を複数のコンソーシアム企業が販売しています。当社は「GRANDIT」の企画・開発から携わった開発力と製造業向けの知識、ノウハウを強みに、生産管理アドオンモジュールを自社で開発し、当社のお客様だけでなく他のコンソーシアム企業にも販売してきました。2019年8月には、製造業での、生産、販売、据付・設置、アフターサービスの業態に一気通貫で対応できる以下のアドオンモジュールをバージョンアップおよび新規リリースしました。

  • 生産管理アドオンモジュール
  • 工事管理アドオンモジュール
  • 原価管理アドオンモジュール
  • 継続取引管理アドオンモジュール

これらの製品の効果で製造業、工事・エンジニアリング業、プロジェクト単位で業務を行う業種向けに販売数が増えています。当社の強みは、自社利用で蓄積したノウハウを基に効果的な提案ができる点です。自社内の基幹システムに「GRANDIT」を採用し、「SI Object Browser PM(OBPM Neo)」と連携し、「継続取引管理アドオンモジュール」を利用することで、自らIT企業における理想的な合理化モデルを実現しています。2021年3月から、製造業や工事・建設業向けに業務や帳票の電子化、見える化、自動化を推進する「生産・工事アドオンモジュール3.1」の販売を開始し、上記業種のDX推進を支援していきます。

また、当社では社員が開発した優れたプログラムを商品化する「買い取り制度」があります。この制度を使って、「GRANDIT」のソースコードを一切変更せずに、お客様の特別な仕様を簡単に追加開発できる「コーディングレス開発ツール」を商品化しています。これを社内で使うことにより、追加開発における従来のプログラミング負荷を20~30%削減でき、ERPビジネスでの価格競争力強化に貢献しています。また、当社はGRANDITコンソーシアム内において、1年間に最もGRANDITを販売した企業に与えられる「GRANDIT AWARD 2019 Prime Partner of the Year」を受賞し、通算6度目の受賞となりました。

最近はクラウド上に基幹業務システムを構築するケースが主流となっています。当社自身も「GRANDIT」や「OBPM Neo」をクラウドサービス上に移行し、その構築・運用ノウハウをベースに、インターネットイニシアティブ「GIOインフラストラクチャーP2」、アマゾンウェブサービス(AWS)クラウドやマイクロソフト「Azure」などお客様のシステム要件に合った複数のクラウドサービスを提案しています。単なるシステム構築だけでなく運用も含めてワンストップでサポートするパートナー企業として事業を拡大しています。また、2019年3月からは「GRANDIT」サブスクリプションモデルも提供しています。ノウハウや機能はそのままに、より低コストかつ短納期での導入が可能となるため、中小企業も含めてターゲット範囲を拡大しています。

ERP事業自体は順調に事業拡大をしているのですが、当期は第2四半期累計期間に発生した不採算案件の影響を大きく受けました。このプロジェクトは品質確保のため体制強化した上で、顧客とスケジュール調整を行って稼働時期を延伸し、以降は順調に推移しています。当期は、これに伴って見込まれる開発費用増加分すべてを受注損失引当金として231,609千円計上しています。

AI事業としては、2018年10月からディープラーニング技術を利用した異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)」の販売を開始しています。前期からこの事業をERP事業と統合して、ERPビジネスで蓄積された業務ノウハウを武器に製造業へのAIビジネスを展開しています。これまでに多くの企業から、工場で行っている目視検査を代替できないかという引き合いを受け、案件をこなしながらノウハウを蓄積して製品強化、ソリューション力向上に取り組んでいます。開発にあたっては、カメラメーカーや製造ラインメーカーなど顧客企業のみならず様々な企業と連携して実施しています。

以上の結果、ERP・AI事業の売上高は2,733,716千円(前期比6.2%減)、営業利益は31,758千円(前期比82.6%減)となりました。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

(単位:

その他の事業には、プログラミングスキル判定サービスの「TOPSIC」、その他の研究開発費投資が含まれています。

プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」
当社は、2018年よりプログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」を新規事業としてスタートしています。

「TOPSIC」はオンライン・リアルタイムで受験者のプログラミングスキルを判定できるクラウドサービスです。企業の中途採用者のスクリーニングや社員のプログラミング教育などのニーズをとらえて、契約社数は順調に増加しています。

2021年2月より、TOPSICの新たなシリーズ製品として、データベース管理の言語であるSQLを対象とする「TOPSIC-SQL」をリリースしました。これにより、TOPSICは、プログラミングの基礎となるアルゴリズム能力は「TOPSIC-PG」、業務系でよく使われるSQLは「TOPSIC-SQL」というように2つのサービスとなりました。

また、イベント事業として2018年から注力しているプログラミングコンテスト「PG Battle」は、年々知名度が高まっています。2018年の第1回目は260チーム、780名に参加いただき、2019年の第2回では444チーム、1,332名、3回目となる当期は459チーム、1,377名となりました。業界内外からも高い注目を集めるイベントとしての地位を確立しております。なお、第2回目からスポンサー制度を採用し、当期は29社から協賛をいただきました。本イベントを通じてIT業界全体の活性化に貢献してまいります。

(ご参考)
次年度の見通し

当事業年度は、新型コロナウイルスによる景気減退に備え、経費の削減に取り組む等、守りのスタンスに方針を転換した一年となりました。

翌事業年度は、新型コロナウイルスの影響も限定的と予想しており、Object Browser事業においても売上高の回復を見込んでいます。また、E-Commerce事業、ERP事業については、好調な事業環境が続く見通しです。新中期経営計画「SDGs Mind 2021」では、好調な事業環境を追い風に、事業の成長に加え、SDGsの精神を尊重した、社会に価値を提供する企業への実現を目指します。

以上のことから2022年2月期の業績見通しは、売上高4,850,000千円(前期比13.9%増)、営業利益630,000千円(前期比51.2%増)、経常利益636,000千円(前期比50.1%増)、当期純利益445,000千円(前期比51.8%増)と過去最高の売上高を達成し、営業利益及び経常利益も大幅に回復する予定としています。

対処すべき課題

当社の中長期的な経営戦略達成のための対処すべき課題は以下のとおりであります。

(1)失敗プロジェクトの削減

プロジェクトの失敗は事業に大きな損失を与えます。当社は過去に何回か失敗プロジェクトにより業績を低迷させており、その都度リスク管理を強化してきましたが、26期も大きな不採算プロジェクトを発生させてしまいました。この反省から、これまで以上にPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)機能を強化し、失敗プロジェクトを発生させないようにしてまいります。

(2)開発体制の強化

IT業界は、ここ数年好景気が続いていました。DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れもあり、システム化投資を進める企業からの引き合いが増えています。こうした市場環境の良さにより、IT業界ではエンジニア不足が深刻化しています。当社でも好調な引合いに対応できず、案件を辞退するケースが増えています。この課題に対処するため、当社は社員の増員やパートナー企業の開拓などで開発体制を強化していくと同時に、海外の優秀なエンジニアを活用するためベトナム開発拠点を設置し、開発体制の拡充をはかります。

(3)AI事業の収益化

当社のAI事業、画像認識AIによる異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)」事業は、現在、顧客とともに技術検証を行っている段階にあります。類似のAIサービスを提供する会社も複数出てきていますが、いまだ成功している会社はほとんどありません。当社のAI事業は、技術検証段階から本格的な製造ラインへの導入に進もうとしています。AI導入を成功させて、いち早くAI事業を収益化し、次の大きな事業の柱としていきます。

計算書類