事業報告(自 2021年3月1日 至 2022年2月28日)

会社の現況に関する事項

⒈ 主要な事業内容(2022年2月28日現在)

当社の主要な製品は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」シリーズ、プロジェクト管理パッケージ「SI Object Browser PM(OBPM Neo)」、ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」、そしてWeb-ERPパッケージ「GRANDIT」という4つの市場・製品群から構成されています。

「SI Object Browser」と「SI Object Browser PM(OBPM Neo)」はパッケージの販売と保守及びクラウドサービスの提供を主体とした事業形態です。「SI Web Shopping」、「GRANDIT」はこれらに加えてお客様のニーズに合わせてカスタマイズを行いソリューションとしても提供しています。前者が高い利益率、後者が売上拡大の牽引事業という役割をバランスさせ、市場環境の変化に対応し、幅広い技術を習得しやすい製品構成になっています。

⒉ 事業の経過及びその成果
(全般)

当事業年度の業績は、売上高4,817,559千円(前期比13.1%増)、売上総利益1,684,802千円(前期比19.5%増)、営業利益587,212千円(前期比40.9%増)、経常利益588,964千円(前期比39.0%増)、当期純利益391,006千円(前期比33.4%増)となりました。前事業年度は新型コロナウイルス感染拡大による企業経済活動の縮小の影響やERP事業における不採算案件などにより、減収減益の決算となりましたが、当事業年度は、E-Commerce事業、ERP・AI事業が売上高、利益ともに前期比で増収増益となりました。

当期は、中期経営計画「SDGs Mind 2021」の初年度であり、当社における「SDGs Mind」の浸透、取組みの推進を行いながら重点目標である①「既存事業の拡大とブランド力向上」、②「海外展開」、③「新事業の収益化」、④「社員のスキル向上」、⑤「アジアTOPの合理化企業」という5つの目標達成に向けて取り組んでいます。国内経済は、新型コロナウイルス感染症の蔓延によるマイナス影響から徐々に回復しており、企業においては生産性の向上、業務の自動化、働き方の多様化やAI活用の進展など、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の流れは益々加速しつつあります。これらを背景にIT業界は堅調な事業環境が続いております。当社は、この環境下で既存事業を拡大しつつ、新製品の開発投資やベトナムの開発拠点設置準備を行い、中期経営計画で掲げた重点目標の達成に向け取り組んでおります。

セグメント別の業績

各セグメント別の業績は、次のとおりです。

売上高
前期比 %増
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売上高構成比率 %

(単位:

Object Browser事業は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」、データベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」、統合型プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM(OBPM Neo)」及びアプリケーション設計ツール「SI Object Browser Designer」の4製品から構成されています。

「SI Object Browser」と「SI Object Browser ER」は、ソフトウエア開発の生産性を向上させるツールとして業界で多く利用されており、安定した収益源となっています。2022年1月にはOracle Databaseの新バージョンに対応した「SI Object Browser for Oracle 21.2」と「SI Object Browser ER 22」をリリースし、更なる利便性向上を追求し進化を続けています。

統合型プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM(OBPM Neo)」は、プロジェクト管理を合理化するツールとしてIT業界を中心に着実にユーザーを増やし、導入実績は220社超となりました。2021年3月から販売開始したクラウドサービス「OBPM Neo」は、IT業界だけでなく製造業やエンジニアリング業にも利用が広がっています。クラウドサービスはサブスクリプションモデルなので、従来の売り切り型販売に比べ売上高成長率が短期的に鈍化します。当事業年度はこの影響を受けていますが、新規契約数は順調に伸びており、中長期的には大きな売上高成長を実現できる見込みです。

アプリケーション設計ツール「SI Object Browser Designer」は、ソフトウエア開発におけるCADという新しい発想の製品で、既に特許も取得しています。2019年からクラウドサービスとして販売を開始し、設計作業の生産性を大幅に向上させるツールとして着実にユーザーを拡大しています。2021年8月に追加の製品開発投資と本製品の販売計画の見直しを決定しました。これにより既存のソフトウエア資産について35,803千円の減損損失を計上しております。

以上の結果、Object Brower事業の売上高は677,541千円(前期比3.1%増)、営業利益は151,548千円(前期比32.1%減)となりました。

売上高
前期比 %増
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売上高構成比率 %

(単位:

E-Commerce事業は、日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」を主力製品として構成されています。当社は20年以上もECサイト構築事業を行ってきたノウハウを生かして、大規模ECサイトの構築を強みとしており、高い成功率を武器に収益性の高いビジネスを展開しています。コロナの巣ごもり需要によりEC市場は非常に活況で、当社のE-Commerce事業も計画を上回るペースで成長しています。

2021年8月から、EC事業者向け「SDGs支援プログラム」を開始しました。SDGs達成に取り組むEC事業者に対し、「SI Web Shopping」のライセンス料を最大87.5%割引で提供するプログラムとなっています。今後もSDGsの目標を支援する機能を順次実装していく計画としており、E-Commerce事業を通じて社会課題の解消を支援していきます。2021年9月に「SI Web Shopping V12.11」をリリースし、ECサイトでは必須となるセキュリティを大幅に強化、EC事業者の運用効率・開発効率を改善する機能を追加しました。2022年3月1日には、「適格請求書等保存方式(インボイス制度 注1)」に対応した最新バージョン「SI Web Shopping V12.12」をリリースし、ECビジネスのコアシステムとしてEC事業者の売上向上へ貢献する製品となっています。

以上の結果、E-Commerce事業の売上高は1,209,229千円(前期比45.5%増)、営業利益は412,192千円(前期比94.4%増)となり、大幅な増収増益となりました。

注1:インボイス制度・・2023年10月から開始する適格請求書等保存方式のことで、所定の記載要件を満たした請求書を発行、保存することにより、消費税の仕入税額控除を受けることができるものです。なお、売り手側は「適格請求書発行事業者」になることで、本制度を適用することが可能となります。

売上高
前期比 %増
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売上高構成比率 %

(単位:

ERP・AI事業は、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」を主力製品とするERP事業とAI製品であるディープラーニング異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)」を主力製品とするAI事業から構成されています。

「GRANDIT」はコンソーシアム方式なので、同一製品を複数のコンソーシアム企業が販売しています。当社はGRANDITコンソーシアム内において、1年間に最もGRANDITを販売した企業に与えられる「GRANDIT AWARD Prime Partner of the Year」を過去6回受賞しており、名実ともにGRANDIT事業をリードしています。当社は「GRANDIT」の企画・開発から携わった開発力と業務知識を強みに、以下のアドオンモジュールを自社で開発し、当社のお客様だけでなく他のコンソーシアム企業にも販売しています。

  • 生産管理アドオンモジュール
  • 工事管理アドオンモジュール
  • 原価管理アドオンモジュール

これらの製品の効果で製造業、工事・エンジニアリング業などの業種向けに販売数が増えています。当社の強みは、自社の基幹業務に「GRANDIT」を利用し、自らがIT企業における理想的な合理化モデルを実現している点です。自社内で運用することで、利用している企業ならではの効果的な提案ができています。最近はクラウド上に基幹業務システムを構築するケースがほとんどです。当社でも「GRANDIT」や「OBPM Neo」をアマゾンウェブサービス(AWS)クラウドに移行し、その構築・運用ノウハウをベースに、ワンストップサポート企業としてお客様のクラウド運用をサポートしています。また、2019年から「GRANDIT」サブスクリプションモデルも提供しており、2021年11月1日には、業種特化型クラウドERPサービス「GRANDIT SaaS」IT企業モデルの提供を開始しました。今後は製造業、工事・エンジニアリング業など対象業種モデルを順次リリースし、中小企業も含めてターゲット範囲を拡大していきます。ERP事業は、前期に大型案件での受注損失引当金計上があったことから営業利益が減少しましたが、当事業年度において納品完了したことから、大幅な利益増加となりました。

AI事業は、新事業として2018年からディープラーニング異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)」の販売を開始しています。目視検査を自動化したいという各社のニーズに応じて導入に向けたPoC(概念実証)を複数こなしながら、数件の本格導入案件も進めています。提案、導入にあたっては、カメラ、照明、工場設備のベンダーと協業した総合力が要求される事業となってきています。当事業年度で実際の製造ラインで稼働予定であった案件の検収時期が延伸したことから、当事業年度での売上計上には至りませんでしたが、来年度以降の事業展開においては確実な手ごたえを得ることができております。

以上の結果、ERP・AI事業の売上高は2,886,200千円(前期比5.6%増)、営業利益は124,221千円(前期比291.1%増)となりました。

売上高
前期比 %増
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売上高構成比率 %

(単位:

その他の事業には、プログラミングスキル判定サービスの「TOPSIC」、新製品開発に向けた研究開発費投資が含まれています。

プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」は、2018年から新規事業としてスタートしています。「TOPSIC」はオンライン・リアルタイムで受験者のプログラミングスキルを判定できるクラウドサービスです。中途採用における受験者のスクリーニングや社員のプログラミング教育などのニーズをとらえて、契約社数は順調に増加しています。2021年からは、TOPSICの新たなシリーズ製品としてデータベース言語であるSQLのスキルを判定する「TOPSIC-SQL」をリリースし、アルゴリズム能力を問う「TOPSIC-PG」とSQLスキルを問う「TOPSIC-SQL」の2つのサービスとなっています。また、イベント事業として2018年から注力しているプログラミングコンテスト「PG Battle」は、年々知名度が高まり、2018年の第1回目は260チーム780名の参加でしたが、第4回目となる2021年では423チーム1,269名が参加するイベントとなりました。なお、第2回目からスポンサー制度を採用し、第4回目となる2021年は過去最多の37社から協賛をいただきました。本イベントを通じてIT業界全体の活性化に貢献していきます。

研究開発投資としては、当事業年度で2つの新製品の研究開発を実施し、2021年10月18日にエンドユーザーの声を集めて蓄積・管理できるカスタマーサクセス支援サービス「VOICE TICKETS」をリリース、2021年11月18日にアイデアの創出と育成を促すアイデア創出プラットフォーム「IDEA GARDEN」をリリースしました。2製品とも当社初の社員による企画開発製品となり、スタートアップビジネスとして既存ビジネスとのシナジープロモーションを推進していきます。

以上の結果、その他事業の売上高は44,587千円(前期比21.1%増)、営業損失は100,749千円(前期は50,384千円の営業損失)となりました。

(ご参考)
次年度の見通し

新型コロナウイルス感染症が当社事業に与える影響はほぼ解消されており、前事業年度に大きな影響を受けたObject Browser事業においても売上高は徐々に回復しています。また、E-Commerce事業、ERP事業については、引き続き好調な事業環境が続く見通しですが、E-Commerce事業においては、当事業年度において進行していた大型案件が顧客事情により中断となったことから、翌期の計画見直しを行っております。ERP事業においては、足元の顧客の投資意欲は堅調ながら、世界情勢の不安定化、原材料費の高騰などの影響が顧客の事業環境にマイナス影響を及ぼしてくる可能性があり、見通しは不透明になりつつあります。

以上のことから、2021年4月14日に発表した新中期経営計画の業績目標について、修正することとなりました。詳細は、2022年4月14日発表の「中期経営計画の業績目標修正のお知らせ」をご確認ください。これにより、2023年2月期の業績見通しは、売上高5,000,000千円(前期比3.8%増)、営業利益600,000千円(前期比2.2%増)、経常利益603,000千円(前期比2.4%増)、当期純利益426,000千円(前期比8.9%増)となる見込みです。

対処すべき課題

当社の中長期的な経営戦略達成のための対処すべき課題は以下のとおりであります。

(1)失敗プロジェクトの削減

プロジェクトの失敗は事業に大きな損失を与えます。当社は過去に何回か失敗プロジェクトにより業績を低迷させており、その都度リスク管理を強化してきました。第27期には開発担当役員をトップとした全社的なPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)委員会を設置し、プロジェクトリスクの早期発見、対策実施により失敗プロジェクトを発生させないようにしています。

(2)開発体制の強化

IT業界は、ここ数年好景気が続いていました。DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れもあり、システム化投資を進める企業からの引き合いが増えています。こうした市場環境の良さにより、IT業界ではエンジニア不足が深刻化しています。当社でも好調な引合いに対応できず、案件を辞退するケースが続いています。この課題に対処するため、当社は社員の増員やパートナー企業の開拓などで開発体制を強化していくと同時に、海外の優秀なエンジニアを活用するためベトナム開発拠点を設置し、開発体制の拡充をはかります。

(3)AI事業の収益化

当社のAI事業、画像認識AIによる異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)」事業は、顧客とともに技術検証を行いながら、本格的な製造ラインへの導入を進めている段階にあります。類似のAIサービスを提供する会社も複数出てきていますが、いまだ成功している会社はほとんどありません。当社はいち早くAI事業を収益化し、次の大きな事業の柱としていきます。

計算書類