事業報告(2020年5月1日から2021年4月30日まで)

当事業報告において、使用する名称の正式名称及びその説明は下記のとおりです。

企業集団の現況

当連結会計年度の事業の状況

事業の経過及び成果

当社グループは、2022年4月期を初年度とする新中期経営計画『SiLK VISION 2024』(7月下旬公表予定)の達成にあたっては、AI、量子コンピュータといった破壊的テクノロジーや、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患リスクを発端とする社会の新常態(“New Normal”)への対応が不可欠であると捉えています。

そして、2021年4月期は、新中期経営計画『SiLK VISION 2024』の達成を見据え、「Trusted Internet」構想の元、これまでの中期経営計画に沿った買収・提携で当社のグループとした会社の有する多様なデータを徹底的に統合/連携/活用することとし、その連携後は垂直統合もしくは非グループ化により、「インフラ」、「プラットフォーム」をコア領域としたグループ再編を順次行っていく“トランスフォーメーション・ターム”と位置付けて運営してきました。

当連結会計年度における報告セグメントは以下のとおりです。

当社は、当社グループを取り巻く事業環境を以下のように捉えています。

(インフラテック市場)

光アクセス回線を主とする固定網による通信サービス市場は、高速ブロードバンド環境の普及が一巡したことに加え、5Gをはじめとしたモバイル通信サービスの高速化が進んでいることで、成長は緩やかなものとなりました。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴うテレワークや自宅学習の普及により、宅内Wi-Fi環境を通じたオンラインでの会議や授業の利用増加に加え、同感染症拡大により不要不急の外出を控える“巣ごもり”が増加傾向にあるため、在宅でのネット動画視聴、ゲーム等のリッチコンテンツやSNSの娯楽系サービスの利用増加等により固定回線網サービスの原価率は高い状況が続いています。

当社においても、ネット動画視聴やゲーム等のリッチコンテンツの利用増、クラウドサービスの利用拡大等による通信トラフィックの増加及びSNSやサブスクリプション型ネットサービスのようなアクセス頻度の高い製品の普及によりネットワーク原価は上昇しているため、AMPUは低下傾向にあります。

MVNO・MVNE市場においては、大手モバイル通信キャリアによる格安プランの提供やサブブランドでの展開が独自型MVNOサービス事業者の成長に影響を与える傾向が続いています。しかし、モバイル市場全体としての成長基調は継続しており、今後も拡大していく見込みです。

クラウド市場においては、様々なコンテンツ配信や電子商取引等に加え、IoT関連サービスのプラットフォームとしてもクラウドが不可欠な基盤となっており、それらの規模も引き続き伸張することが想定されます。

また、同感染症の影響によるテレワークの増加に伴い、光アクセス回線やモバイル通信サービスを利用したDaaSやVPNといったクラウドサービス等の需要が急速に高まっており、今後もその需要は拡大していくものと想定されます。

(不動産テック市場)

光アクセス回線を主とする固定網による通信サービス市場自体は普及が一巡しているものの、当社グループがサービスを提供している集合住宅向けインターネット接続サービス市場分野においては、高速ブロードバンド環境導入による資産価値や入居率の向上を目的にその導入がより一層進んでいることに加え、同感染症の拡大を機にテレワークやオンライン授業、動画コンテンツ視聴等の利用が増えたことで、より安定したインターネット環境の重要性が改めて認識されたことから、その規模は引き続き拡大することが予想されます。また、不動産業界全体においては、AIやIoT、VR等のテクノロジーを活用した不動産Techへの関心度が高く、各種IoT機器を活用することで、地域の課題を解決し暮らしに安全・安心等の新たな価値を創出するスマートシティや、多様化する生活スタイルに合わせたスマートホームの実現等、新たなサービスの需要は更に拡大する見込みです。

(インターネット広告市場)

広告市場において、インターネット広告市場は一貫して成長を続け、2020年はインターネット広告費がテレビメディア広告費を超え、2.2兆円を超える市場に成長しました。その中でも従来型の予約型広告からリスティング広告やアドテクノロジー活用広告といった運用型広告への移行がより一層進むとともに、動画広告やソーシャルメディア広告が牽引する形で市場が拡大し、特にモバイル向け広告の成長が顕著となりました。しかしながら、同感染症の影響を受けやすい市場でもありますので、今後の動向を注視する必要あるものと捉えています。

(ヘルステック市場)

当市場において、お薬手帳アプリ利用者や調剤薬局向けソリューションサービスの提供を行っていたフリービットEPARKヘルスケアの全株式を第2四半期連結会計期間において売却したため、事業環境の分析対象から当セグメントを除外しております。

(エドテック市場)

当市場において、語学教育サービスを提供していた株式会社アルクの全株式を第3四半期連結会計期間において売却したため、事業環境の分析対象から当セグメントを除外しております。

事業区分別の概況

報告セグメント別の業績は、次のとおりであります。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う自宅学習やテレワークの普及により、宅内Wi-Fi環境を通じたオンライン授業や会議、ネット動画視聴のニーズが高まり、MVNO支援パッケージサービスをはじめとしたモバイル通信インフラサービスやインターネットセキュリティサービスの需要が増加したことにより売上高が増加しました。しかし一方で、動画視聴やリッチコンテンツ等の利用増加等により固定回線網サービスの原価率は上昇傾向が続き、セグメント利益に影響しました。

モバイル通信関連サービスについては、当社がMVNEとして提供するMVNO支援パッケージサービス「freebit MVNO Pack」の導入MVNO企業数が増加するとともに、エンドユーザー向けMVNOサービスの拡販にも注力し、スマートフォンサービス「トーンモバイル」において、AI機能/基礎性能が大幅に向上した新スマートフォン端末「TONE e21」の販売を開始しました。

クラウド関連サービスについては、DaaSやVPNといったテレワーク需要に対応するサービスの拡販に注力しました。また、CaaS領域においては、当社の「DX for 5G era」サービスとアルプスアルパイン株式会社の産業特化型サブスクリプション型ナビゲーションアプリの連携を開始する等、「pre 5G」技術を活用した「DX for 5G era」サービスを推進しました。

その結果、売上高は16,421,380千円(前連結会計年度比4.6%増)、セグメント利益は436,601千円(前連結会計年度比49.1%減)となりました。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

集合住宅向けインターネット接続サービスについては、提供戸数の拡大に向けて、大手顧客からの継続的な受注と新規獲得に注力いたしました。新築物件については、将来の機器交換時の工事を不要とする新商品「PWINS」を、また、今後更なる需要が見込まれる既存物件については、その導入シェア拡大に向けて「SPES」の販売をそれぞれ強化することで、累計提供戸数の大幅増を達成しました。

その結果、売上高は15,869,089千円(前連結会計年度比16.3%増)、セグメント利益は2,160,499千円(前連結会計年度比59.2%増)となりました。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的とした“巣ごもり”が増加し、インターネット広告視聴者の広告掲出店舗への顧客送客が減少したことに伴い収益が一時停滞したものの、当社グループ独自のアドテクノロジー関連サービスであるDSP広告等の商材を中心としたインターネット広告サービスの提供に注力したことに加え、同感染症拡大の影響を受けにくい新たな業界の開拓に注力しました。

その結果、売上高は15,630,404千円(前連結会計年度比8.5%減)、セグメント利益は743,293千円(前連結会計年度比14.9%減)となりました。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

第2四半期連結会計期間において、当事業を担っていたフリービットEPARKヘルスケアについて、当社が保有する全ての株式を2020年10月30日をもって売却したため、同社及び同社子会社を連結の範囲から除外しました。

その結果、売上高は2,550,596千円(前連結会計年度比27.4%減)、セグメント利益は305,755千円(前連結会計年度は144,102千円のセグメント損失)となりました。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

第3四半期連結会計期間において、当事業を担っていた株式会社アルクについて、当社が保有する全ての株式を2020年11月30日をもって売却したため、同社及び同社子会社を連結の範囲から除外しました。

その結果、売上高は1,992,314千円(前連結会計年度比66.3%減)、セグメント損失は240,835千円(前連結会計年度は368,987千円のセグメント損失)となりました。

対処すべき課題

新型コロナウイルス感染症により経済活動や国民生活に大きな影響が及んでおり、いまだ先行きが不透明な状況が懸念されている一方で、インターネットはあらゆる産業において改めて重要なインフラとしての役割が期待されております。近時では移動通信キャリアの料金の大幅な値下げや第5世代移動通信システム(5G)のサービス開始など大きな構造の変化も進んでおり、MVNE・MVNOサービスについても個人・法人向けの一般的なデータ通信サービスに限らず多様な利用方法が増えてきました。これらの事業環境は通信事業者の収益獲得のための活動をさらに活発にさせると同時に通信事業者の競争の激化を促進しております。

こうした状況下において、当連結会計年度は次の中期経営計画にむけた「トランスフォーメーション・ターム」と位置づけ、グループ事業の再編と中長期的な視点にたった戦略投資を行ってまいりました。また、これらの再編・投資を行うにあたり、当社グループシナジーを最大化するため、事業の垂直統合、グループ内の技術やデータ、人的リソースの連携、ネットワーク資産の効率化などを進めております。

以上の取り組みにおいては、それぞれ次のような課題があると認識し、対応方針を策定しております。

① インターネット接続サービス市場環境の変化について

スマートフォンやタブレット端末などの高機能モバイル通信機器の普及によるモバイル通信環境における著しい利便性の向上により、インターネットへの接続がこれまでの固定回線によるものからモバイルデータ通信へと加速度的にシフトしております。ブロードバンドの固定回線は一定の普及により増加率は鈍化している一方で、NTTグループ(日本電信電話株式会社及びその連結子会社)を中心としてIPv6(IPoE)への移行が進みつつあります。一方で、各社のサービスの多様化や、MNO事業者の料金の一斉値下げに象徴されるように、モバイル通信の提供事業者間の競争は激化しております。また、5Gサービスが開始され、各事業者の次世代通信網への対応も進みつつあります。

当社グループでは、このような環境の変化を機敏に捉え、ユーザーのニーズを見据えた新たなサービスを開発し、いち早く提供を行うなど、必要と考えられる施策を推進しておりますが、今後もインターネット接続サービス市場環境の変化に影響を受ける可能性があるため、これらの環境に即応するとともに、これまでの実績や経験に裏付けされた、利便性の高い安定した新しいサービスの開発が重要であると認識しております。

② 回線・帯域調達コストについて

インターネット上では帯域を多く利用するリッチコンテンツが急激に増加しており、利用者一人あたりの使用データ量は急激に増えております。また、政府の推進する「働き方改革」や今般の新型コロナウイルス感染症の影響により在宅勤務・テレビ会議等の利用が多くなったことで、家庭での通信に対する需要が増えたことにより、インターネット業界全体で、通信回線設備の需給バランスの不安定化や、帯域の不足の可能性が指摘されております。当社では回線・帯域調達の効率化やデータの最適化を含めた高効率のネットワーク運用を行うなどの努力を行い、また、長年培ってきたIPv6に関する技術力を最大限に活かし、これらの環境に対応すべく努めております。新たな設備機器への投資を含め、調達コスト増加は採算悪化の要因となるため、このような取り組みは継続的に行っていく必要があると認識しております。

③ モバイル端末を中心としたモバイル通信網サービスの対応について

MVNE・MVNO事業は、無線通信インフラ(移動体回線網)を有する事業者から借り受けてサービスを提供することになるため、MNOの通信料金値下げはサービス原価の低減になると同時に、他社のMVNE・MVNO事業との差別化が一層困難になると言われております。また、本格的な5Gサービスの開始に伴い、MVNE・MVNO事業者はインフラの提供のみならず、そのインフラ上で提供できる顧客体験が求められるようになってきています。

当社グループでは、長年のインターネット接続サービスの提供で培ってきたネットワーク技術やノウハウを活用し、また、グループ内の様々な付加価値サービスと組み合わせ、新しい仕組みやサービスを提供することにより差別化を図るとともに、より安価で高品質、そして安心・安全に利用できる無線通信サービスを提供できるよう、継続的な技術開発に努めることが必要であると認識しております。グループ内のコンシューマー向けMVNOサービスであるトーンモバイルにおいては、これらの具体的な実施例として、AI等を活用した様々なサービスを提供しておりますが、そこで得た顧客の意見をサービスに反映することで、サービス向上及び差別化の優れた循環を目指していきます。

④ クラウドコンピューティング事業の展開について

仮想化技術を利用したクラウドコンピューティングの市場は近年急速に広がっており、当社グループにおいても巨大な仮想データセンターから個人利用目的のパーソナルサーバーまで、様々なサービスを提供しております。

このようなお客様のデータを預かるサービスでは、安定的な運用を行うことにより、顧客との良好な関係維持に努めることが重要です。

一方で、仮想化技術は高度な監視体制、効率的なシステムの冗長化と分散化、新しい技術の継続的な導入が必要な分野であり、人的体制も含めて、継続的な運用や開発体制の強化と改善が必要であると認識しております。

⑤ IoT/AI市場への対応について

インターネットの普及により、通信分野では、これまでの人対人を中心としたものに加え、機器と機器がデータをやりとりするIoTが急激に拡大しております。また、近年AI技術が急速に発達しており、通信とAIの技術が連携することにより、日々新たなビジネス手法が生まれております。これらの技術は新型コロナウイルス感染症が終息した後にも中心的役割を担う可能性もあると期待されております。

当社グループでは、これらの新たな市場において重要な役割を担うべく、グループ内で保有する技術やデータを有機的に管理するように推進し、国内外を問わず多くのパートナー企業との連携を充実させるように努めております。今後、積極的に当社グループの技術・サービスを多くの顧客に提供すべく、新技術に関する営業力の強化、継続的な技術開発による最先端のサービスの提供及び当社グループの技術を保護するための知財関連の強化等が肝要であると認識しております。

⑥ 関係会社管理の徹底及び社内管理体制と従業員教育の強化

当社グループでは、当社のみならず各子会社を通じて、インターネットインフラを中心として多岐にわたる事業を展開しており、各社にて新規人員の採用や教育を行っております。人員の交流も積極的に行っておりますが、事業の拡大に伴い、さらにグループ全体の管理の徹底及び従業員教育の向上が必要であると認識しております。

そのため、子会社の計数管理の徹底、統一的な監査の実施を通じて適切な管理を行い、グループ内の内部通報制度の周知等を通じてコンプライアンス意識の向上に努めるとともに、企業理念や経営方針、統一的な教育プログラムをグループ各社で共有し浸透させることで、当社グループ社員の連帯意識の強化を図り、グループ会社間の枠に囚われない発展を促します。

また、内部統制の観点でも、金融商品取引法等に基づく財務報告の信頼性を確保するために必要な内部統制の整備や構築等を行ってまいりましたが、さらにグループを通じて、内部統制強化のための連携・改善等を継続的に行っていく必要があると認識しております。

そのため、各グループ会社の監査役、内部監査室の連携を促進し、また継続的な従業員教育を通して、コーポレートガバナンスの充実及び法令遵守の徹底にグループ全社をあげて取り組んでおります。

⑦ 新型コロナウイルス感染拡大防止対策について

新型コロナウイルス感染症に対して、当社グループでは、顧客、取引先及び従業員の健康と安全を第一に考え、また更なる感染拡大を防ぐために、比較的早い段階から国及び地方自治体の指針に従った感染防止策を徹底してまいりました。従業員の移動を伴う業務の自粛や、社内会議やイベント・セミナー等の集会のオンライン化、テレワーク(在宅勤務)の推進等の対応を行うことで事業への影響の低減を図ることはもちろんのこと、AIやセンサーを駆使した当社独自のアプリ/システムによる従業員の総合的な健康管理に資する就業コントロールを行っております。また、インターネットのインフラを担う企業であるという自負のもと、取引先に対してもオンラインを活用した対策を提言することで、社会経済活動の支えとなるようなサービスの提供を目指しております。一方で、世界的な流通の停滞や人の移動の制限、景気悪化に伴う社会活動の停滞は、当社グループの事業にも少なからず影響を与えると認識しております。そのため、今後もネットワークを活用した新たな事業形態の創出や、安定的なサービス提供を行う健全な企業体力の維持、従業員及び関係者の健康と安全を守るための新しい働き方の推進等について継続的に取り組む必要があると考えております。

連結計算書類