事業報告(2021年5月1日から2022年4月30日まで)

当事業報告において、使用する名称の正式名称及びその説明は下記のとおりです。

企業集団の現況

当連結会計年度の事業の状況

事業の経過及び成果

当社グループは、「Being The NET Frontier!(Internetをひろげ、社会に貢献する)」という企業理念を掲げ、インターネットに関わるコアテクノロジーの開発、大規模システムの運用といった技術力の蓄積を強みとして、主に法人向け、個人向けにインターネット関連サービスを提供することとしています。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を以下のとおり変更しております。

当連結会計年度における報告セグメントは以下のとおりです。

当社グループを取り巻く経営環境におきましては、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢悪化の影響に加え、為替や資本市場の変動及び半導体不足などによる原材料価格の上昇に伴う懸念を注視する状況が続いております。

そのような中、当社グループが事業を行う情報通信市場では、テレワークの常態化やクラウド利用の拡大、自宅でのネット動画・ゲームをはじめとしたリッチコンテンツ、SNSの利用増加等により、固定回線網を介したインターネットサービスの利用の高まりに加え、モバイル回線網を介したインターネットサービスの利用者も増加し、通信トラフィックの上昇を主要因とした通信の品質や速度の低下が課題となっています。一方で、集合住宅向けインターネットサービス市場においては、コロナ禍の反動もあって新築物件への敷設戸数が回復基調にあり、既存物件においても資産価値の向上や入居者ニーズへの対応を目的としたインターネット設備の導入需要が高まっており、堅調に推移すると見込まれております。

インターネットマーケティング市場においては、新型コロナウイルス感染症の拡大を起因としたサービス需要停滞からの回復基調にはあるものの、事業参入者の増加に伴う競争の激化に加え、大手プラットフォーマーがサードパーティCookieの廃止を表明したことによる消費者の行動追跡ターゲティング広告運用への懸念が強まっていることから、市場自体が過渡期にあるものと捉えています。そのため、今後も持続的な成長を遂げていくには新たな事業を展開する必要があり、ひいては将来の成長を見据えた先行投資が不可欠であると認識しています。同市場において事業を行う株式会社フルスピードにおいても将来を見据えた先行投資の実行を企図しておりましたが、同社が上場企業として利益を創出しつつ、中長期的な成長への投資を実行していくことは困難であるとの見解に至りました。これにより、2022年4月11日の「株式会社フルスピード株式(証券コード 2159)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」及び2022年5月31日の「株式会社フルスピード株式(証券コード 2159)に対する公開買付けの結果に関するお知らせ」で公表したとおり、同社の完全子会社化を前提とした株式の公開買付けを行いました。そして、同社の完全子会社化の手続きが終了次第、グループ全体のより一層の事業のDX化・データ連携の強化を促進するとともに、同社のビジネスモデルの再設計、人材リソースの最適化、バックオフィス機能の効率的集約化等を図っていきます。

事業区分別の概況

報告セグメント別の業績は、次のとおりであります。

なお、当連結会計年度の期首から報告セグメントの区分を変更しており、以下の前連結会計年度比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に伴うテレワークや自宅学習の普及などに伴い、オンライン形式の会議や授業、動画視聴・ゲームをはじめとしたリッチコンテンツ及びSNSの利用等、インターネットを介した多くのサービスの利用増加が継続し、固定回線網関連を中心にネットワーク原価は高止まり基調にあります。また、大手モバイル通信キャリアによる格安プランの提供やサブブランドでの展開が独自型MVNOサービス事業者の成長に影響を与える傾向が続いていますが、モバイル市場全体としての成長は続いており、今後も拡大していく見込みです。このような状況のもと、当社グループにおいては、MVNEとしてのMVNO向け支援事業の規模拡大に加え、ISP向け支援事業も原価抑制に努めたことで堅調な実績となり、またインターネット関連事業を支えるクラウド関連サービスをはじめとした一般事業法人向けサービスも堅実に推移しました。

その結果、当セグメントにおける売上高については、「収益認識会計基準」等を適用し、MVNO事業者に対する帯域卸売上の一部を純額計上したこと及び安価なかけ放題サービスの提供を可能にする新音声通話サービスの導入等により9,032,776千円(前連結会計年度比22.5%減)となったものの、サービスの実利用は順調に増加しました。これにより、セグメント利益についてはモバイルの利用帯域増加及び固定網の原価改善等により増加し、1,133,878千円(前連結会計年度比141.3%増)となりました。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

上記「5Gインフラ支援事業」で説明したとおり、固定回線網サービス市場においては、ネットワーク原価は上昇しているものの、当社グループの主要サービスの一つである5G Homestyle(集合住宅向けインターネットサービス)においては、高速ブロードバンド環境導入による資産価値や入居率の向上を目的にその導入が着実なものとなっており、テレワークやオンライン授業、動画コンテンツ視聴等の利用がスタンダードなものとして認識されたことから、その規模は今後も拡大していくものと考えられます。また、AIやIoT等のテクノロジーを活用した新たなサービスへの関心度が高く、各種IoT機器を活用することで地域の課題を解決し暮らしに安全・安心等の新たな価値を創出するスマートシティや多様化する生活スタイルに合わせたスマートホームの実現等、新たなサービスの需要も拡大する見込みです。

5G Lifestyle(個人向けのモバイル通信サービスやインターネット関連サービス)では、当社グループが提供する独自のテクノロジーを活用したスマートフォンサービス「トーンモバイル」を通じて、社会問題の解決に取り組み、家族向け見守りサービス「TONEファミリー」や充実したサポート体制など、エンドユーザーのニーズに丁寧に応え、初めてスマホを利用するお子様やティーン、シニア世代、そのご家族にも安心なサービスを提供しています。当連結会計年度においては、これまでのオンライン販売やカメラのキタムラでの店舗販売に加え、株式会社NTTドコモの“ドコモのエコノミーMVNO”に参画したことで、同社が展開する全国のドコモショップ約2,300店舗において「トーンモバイル for docomo」の提供を開始し、2021年12月22日にはiPhone向けSIM「TONE for iPhone」を、2022年2月24日にはAndroid端末「TONE e21 rev.2」を、それぞれ販売をスタートしたことに止まらず、2022年6月1日発売の次期Android新端末「TONE e22」の開発にも注力しま した。また、テレビCMやwebCM、ポスター、パンフレットなど、メディアミックスによる広告戦略も実行し、「トーンモバイル」の認知度向上と販売拡大に努めました。

その結果、売上高は21,752,221千円(前連結会計年度比5.3%減)、セグメント利益は戦略投資の実行等により1,333,523千円(前連結会計年度比37.8%減)となりました。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

「① 事業の経過及び成果」でも説明していますが、この報告セグメントを担う株式会社フルスピードの中長期的な成長を目的として、同社の完全子会社化を前提とした株式の公開買付けを行いました。

同社が展開するインターネットマーケティング、アドテクノロジーサービスにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響による広告需要の停滞から緩やかな復調にはあるものの、コロナ禍以前の状況には戻っていない状況にあります。そのような環境の中、既存事業においては、アドテクノロジー関連サービスの拡大に注力するとともに、インターネットマーケティング関連サービスであるDSP広告や動画広告市場向けの商材を中心としたインターネット広告サービスの提供に努めました。

また、株式会社フルスピードの公開買付けの目的である中期的な成長のための新規事業への取り組みも始めており、クリエイターが大手プラットフォーマーを介さず自ら情報発信し、その価値を最大化するクリエイター向けプラットフォームによるクリエイターエコノミー(クリエイターが自らのスキルによって収益化をおこなう経済圏)の拡大支援やクリエイターのためのNFT発行支援サービスの提供を開始しました。

その結果、売上高は15,398,777千円(前連結会計年度比1.4%減)、セグメント利益は新規事業への戦略投資の実行等により716,182千円(前連結会計年度比2.7%減)となりました。

当連結会計年度の売上高は、5G生活様式支援事業や企業・クリエイター5G DX支援事業が堅調に推移した一方で、前連結会計年度にグループ再編方針に則って遂行した株式会社フリービットEPARKヘルスケア(現株式会社くすりの窓口)、株式会社アルク及び株式会社フォーメンバーズの株式売却によるオフバランス化に加え、当連結会計年度の期首から「収益認識会計基準」等を適用したことで、前連結会計年度と比べて減少し、前連結会計年度比17.2%減の43,075,732千円となりました。

当連結会計年度の営業利益は、今後の当社グループが5G時代におけるPlatformer Makerとしてのポジションを確立すべく、モバイル革命領域のほか、生活革命領域、生産革命領域への戦略投資を実行したことで前連結会計年度よりも減少しましたが、5Gインフラ支援事業、5G生活様式支援事業の5G Homestyle(集合住宅向けインターネットサービス)は順調に推移しました。その結果、前連結会計年度比7.0%減の3,165,215千円となりました。

当連結会計年度の経常利益は、戦略投資の実行及び前連結会計年度に一時的な利益である投資有価証券売却益等が含まれていたことにより、前連結会計年度比21.4%減の2,878,922千円となりました。

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、戦略投資の実行及び前連結会計年度のオフバランス化による一時的な特別利益の発生により、前連結会計年度比47.8%減の827,851千円となりました。

なお、「① 事業の経過及び成果」で説明しておりますが、生産革命領域で企業・クリエイター5G DX支援事業を展開する上場連結子会社の株式会社フルスピードの株式公開買付けを行いました。今後、法令等で定められた手続きを経て、同社の完全子会社化を行う予定をしております。

対処すべき課題

新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの停滞をはじめとする経済活動や国民生活への影響や、国際的な対立や紛争の影響によるエネルギーの供給不足や原材料の高騰、半導体不足や急激な為替の変動など、世界的にいまだ先行きが不透明な状況が懸念されている一方で、インターネットはあらゆる産業及び局面において、改めて重要なインフラであることが再認識されております。近時では移動通信キャリアの料金の大幅な値下げや第5世代移動通信システム(5G)のサービスの普及など大きな構造の変化も進んでおり、MVNE・MVNOサービスについても個人・法人向けの一般的なデータ通信サービスに限らず多様な利用方法が増えてきました。これらの事業環境は通信事業者の収益獲得のための活動をさらに活発にさせると同時に通信事業者の競争の激化を促進しております。

こうした状況下において、当連結会計年度は3カ年の中期経営計画「SiLK VISION 2024」の初年度として、指数関数的に成長する技術による事業の拡大を目指し、持続可能な社会の実現に貢献しつつ、成長領域に経営資源を集中的に投下することを推進しております。

以上の取り組みにおいては、それぞれ次のような課題があると認識し、対応方針を策定しております。

① インターネット接続サービス市場環境の変化について

スマートフォンやタブレット端末などの高機能モバイル通信機器の普及によるモバイル通信環境における著しい利便性の向上により、インターネットへの接続がこれまでの固定回線によるものからモバイルデータ通信へと加速度的にシフトしております。ブロードバンドの固定回線は一定の普及により増加率は鈍化している一方で、モバイル通信事業者によるサービスの多様化や、事業者間の競争は激化しております。また、5Gサービスが全国的に提供されはじめており、各事業者の次世代通信網への対応も進みつつあります。

当社グループでは、このような環境の変化を機敏に捉え、ユーザーのニーズを見据えた新たなサービスを開発し、いち早く提供を行うなど、必要と考えられる施策を推進しておりますが、今後もインターネット接続サービスの市場環境の変化に影響を受ける可能性があるため、これらの環境に即応するとともに、これまでの実績や経験に裏付けされた、利便性の高い安定した新しいサービスの開発が重要であると認識しております。

② 回線・帯域調達コストについて

インターネット上では帯域を多く利用するリッチコンテンツが急激に増加しており、利用者一人あたりの使用データ量は急激に増えております。また、在宅勤務・テレビ会議等の利用が多くなったことで、家庭での通信に対する需要が増えたことにより、インターネット業界全体で、通信回線設備の需給バランスの不安定化や、帯域の不足の可能性が指摘されております。当社では回線・帯域調達の効率化やデータの最適化を含めた高効率のネットワーク運用を行うなどの努力を行い、また、長年培ってきたIPv6に関する技術力を最大限に活かし、これらの環境に対応すべく努めており、このような取り組みは継続的に行っていく必要があると認識しております。

③ モバイル端末を中心としたモバイル通信網サービスの対応について

MVNE・MVNO事業は、無線通信インフラ(移動体回線網)を有する事業者から借り受けてサービスを提供することになるため、MNOの通信料金値下げはサービス原価の低減になると同時に、他社のMVNE・MVNO事業との差別化が一層困難になると言われております。また、本格的な5Gサービスの開始に伴い、MVNE・MVNO事業者はインフラの提供のみならず、そのインフラ上で提供できる顧客体験が求められるようになってきています。

当社グループでは、長年のインターネット接続サービスの提供で培ってきたネットワーク技術やノウハウを活用し、また、グループ内の様々な付加価値サービスと組み合わせ、新しい仕組みやサービスを提供することにより差別化を図るとともに、より安価で高品質、そして安心・安全に利用できる無線通信サービスを提供できるよう、継続的な技術開発に努めることが必要であると認識しております。グループ内のコンシューマー向けMVNOサービスであるトーンモバイルにおいては、これらの具体的な実施例として、AIやセンサー等を活用した様々なサービスを提供しておりますが、そこで得た顧客の意見をサービスに反映することで、サービス向上及び差別化の優れた循環を目指していきます。

④ クラウドコンピューティング事業の展開について

仮想化技術を利用したクラウドコンピューティングの市場は近年急速に広がっており、当社グループにおいても大規模仮想データセンターから個人利用目的のパーソナルサーバーまで、様々なサービスを提供しております。

このようなお客様のデータを預かるサービスでは、安定的な運用を行うことにより、顧客との良好な関係維持に努めることが重要です。

一方で、仮想化技術は高度な監視体制、効率的なシステムの冗長化と分散化、新しい技術の継続的な導入が必要な分野であり、人的体制も含めて、継続的な運用や開発体制の強化と改善が必要であると認識しております。

⑤ IoT/AI市場への対応について

インターネットの普及により、通信分野では、これまでの人対人を中心としたものに加え、機器と機器がデータをやりとりするIoTが急激に拡大しております。また、近年AI技術が急速に発達しており、通信とAIの技術が連携することにより、日々新たなビジネス手法が生まれております。これらの技術は新型コロナウイルス感染症が終息した後にも中心的役割を担う可能性もあると期待されております。

当社グループでは、これらの新たな市場において重要な役割を担うべく、グループ内で保有する技術やデータを有機的に管理するように推進し、国内外を問わず多くのパートナー企業との連携を充実させるように努めております。今後、積極的に当社グループの技術・サービスを多くの顧客に提供すべく、新技術に関する営業力の強化、継続的な技術開発による最先端のサービスの提供及び当社グループの技術を保護するための知財関連の強化等が肝要であると認識しております。

⑥ 関係会社管理の徹底及び社内管理体制と従業員教育の強化

当社グループでは、当社のみならず各子会社を通じて、インターネットに関わる多岐にわたる事業を展開しており、各社にて新規人員の採用や教育を行っております。人員の交流も積極的に行っておりますが、事業の拡大に伴い、さらにグループ全体の管理の徹底及び従業員教育の向上が必要であると認識しております。

そのため、子会社の計数管理の徹底、統一的な監査の実施を通じて適切な管理を行い、グループ内の内部通報制度の周知等を通じてコンプライアンス意識の向上に努めるとともに、企業理念や経営方針、統一的な教育プログラムをグループ各社で共有し浸透させることで、当社グループ社員の連帯意識の強化を図り、グループ会社間の枠に囚われない発展を促します。

また、内部統制の観点でも、金融商品取引法等に基づく財務報告の信頼性を確保するために必要な内部統制の整備や構築等を行ってまいりましたが、さらにグループを通じて、内部統制強化のための連携・改善等を継続的に行っていく必要があると認識しております。

そのため、各グループ会社の監査役、内部監査室の連携を促進し、また継続的な従業員教育を通して、コーポレートガバナンスの充実及び法令遵守の徹底にグループ全社をあげて取り組んでおります。

なお、子会社である株式会社フルスピードの完全子会社化を目指し、その効果を最大化するため、同社との人員交流を更に強化してすすめてまいります。

⑦ 新型コロナウイルス感染拡大防止対策について

新型コロナウイルス感染症に対して、当社グループでは、顧客、取引先及び従業員の健康と安全を第一に考え、また更なる感染拡大を防ぐために、比較的早い段階から国及び地方自治体の指針に従った感染防止策を徹底してまいりました。従業員の移動を伴う業務の自粛や、社内会議やイベント・セミナー等の集会のオンライン化、テレワーク(在宅勤務)の推進等の対応を行うことで事業への影響の低減を図ることはもちろんのこと、AIやセンサーを駆使した当社独自のアプリ/システムによる従業員の総合的な健康管理に資する就業コントロールを行っております。また、インターネットのインフラを担う企業であるという自負のもと、取引先に対してもオンラインを活用した対策を提言することで、社会経済活動の支えとなるようなサービスの提供を目指しております。一方で、いまだ変異型ウイルスにより終息が見いだせない現状による世界的な流通や社会活動の停滞は、当社グループの事業にも少なからず影響を与えうると認識しております。そのため、今後もネットワークを活用した新たな事業形態の創出や、安定的なサービス提供を行う健全な企業体力の維持、従業員及び関係者の健康と安全を守るための新しい働き方の推進等について継続的に取り組む必要があると考えております。

連結計算書類