事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

事業の経過およびその成果

全般の状況

当連結会計年度における世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻により顕在化した地政学的リスクの長期化の懸念や原材料・エネルギー価格の高騰、長期化するインフレ抑制のための金利引き上げの影響で期末に金融不安が生じるなど、景気の減速懸念が強まりました。

わが国経済は、行動制限の緩和により経済活動の正常化が進みましたが、急激な為替変動や原材料・エネルギー価格上昇による物価高の影響が消費や企業活動に見られ、不透明な状況が続きました。

当社グループの関連市場であるエレクトロニクス業界におきましては、省力化や環境対策を目的とした設備投資や自動車の電装化・電動化の進展による関連部品の需要が継続しましたが、世界的な民生機器の需要減少およびサプライチェーン混乱にともなう在庫積み増しの動きが落ち着いたこともあり、当年度後半にかけて在庫調整の影響が見られました。

このような状況の中、アルミ電解コンデンサ用セパレータは、産業機器および車載向けでは年間を通じて高い水準の需要が継続しましたが、巣ごもり需要一巡等の影響により民生機器向け需要が減少し、当連結会計年度の売上高は13,449百万円(前連結会計年度比761百万円、5.4%減)となりました。

機能材は、省エネや環境需要の増加を受けた海外向けの電気二重層キャパシタ用セパレータが増加し、当連結会計年度の売上高は4,137百万円(前連結会計年度比273百万円、7.1%増)となりました。

この結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は17,586百万円(前連結会計年度比487百万円、2.7%減)となりました。

利益面におきましては、製品の値上げ実施に加え、引き続きコスト低減に努めましたが、原材料・エネルギー価格上昇による影響を補いきれず、営業利益は3,327百万円(前連結会計年度比739百万円、18.2%減)、経常利益は3,532百万円(前連結会計年度比699百万円、16.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,468百万円(前連結会計年度比450百万円、15.4%減)となりました。

当連結会計年度における事業セグメントの状況

対処すべき課題

当社グループの関連市場であるエレクトロニクス業界におきましては、在庫調整の動きが見られるものの、中国のゼロコロナ政策解除による経済活動正常化、省力化や環境対策を目的とした設備投資の需要継続や自動車の電装化・電動化の進展、半導体の供給制約の緩和等により、引き続き関連部品の需要増加が見込まれております。

このような状況において、主力のアルミ電解コンデンサ用セパレータは、先進運転支援システム(ADAS)普及や高度化による電装化率の上昇や電動化の進展による車載向け需要の拡大、自動化・省力化等を背景とした産業機器向けの堅調な需要を見込んでおりますが、民生機器向けを中心に前半はやや低調な推移を想定し、後半にかけての需要回復を見込んでおります。車載、産業機器市場等に向けては、高品質・高信頼性製品を安定供給できる当社の強みを活かして拡販と新製品開発に取り組んでまいります。

機能材では、一部顧客に在庫調整の動きが見られるものの、カーボンニュートラルの観点から拡大する環境関連市場に向け、リチウムイオン電池用および電気二重層キャパシタ用セパレータ等の当社製品の強みを訴求し、需要拡大に取り組んでまいります。

アルミ電解コンデンサ用セパレータおよび機能材ともに、原材料・エネルギー価格上昇による負担増を軽減するために製品の値上げを実施しており、生産効率向上によるコスト低減にも継続して取り組んでまいります。

安定供給体制のさらなる強化のため高知県内生産拠点との同時被災リスクの低い米子工場で進めている高付加価値セパレータの生産能力増強、製品出荷までの各工程(抄紙~裁断~出荷)を完結できる体制構築については、2024年9月稼働開始に向けてしっかりと取り組んでまいります。なお、本事業については、経済産業省の「蓄電池の国内生産基盤確保のための先端生産技術導入・開発促進事業」に採択されました。当社製品の優位性および研究開発に対する取り組みが評価されたものと考えており、本事業の完了後には設備投資および研究開発投資の総額の約1/3の補助金を受給する見込みであります。当社グループは今後もより付加価値の高いセパレータの研究開発、拡販を進めてまいります。

2023年4月には会社分割により、NKKソリューションズ株式会社を設立しました。今後の外部環境の変化に柔軟な適応ができる組織体制を構築することで、迅速な意思決定および機動的な事業運営を推し進めてまいります。

また、「環境と健康に挑戦2030」というスローガンのもと「高機能セパレータの安定供給を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する」という長期ビジョンを策定しております。事業インパクトとステークホルダーにとっての重要な課題(マテリアリティ)を特定し、ESGを軸に持続可能な社会の実現および企業価値向上に向けた取り組みを強化してまいります。

連結計算書類