事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)
企業集団の現況
当事業年度の事業の状況
事業の経過及び成果
- 経済状況
当連結会計年度のわが国経済は、ウィズコロナの下での政府の各種経済政策による効果もあって、景気が持ち直していくことが期待されました。一方で、世界的な金融引き締めが続いていることによる海外景気の下振れが、わが国の景気へのリスクとなり、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動などによる影響を引き続き注視する必要がありました。
- 業界動向
当社グループが属するエンターテインメント業界の市場環境ですが、コンサート市場は一般社団法人日本コンサートプロモーターズ協会正会員74社の2022年(2022年1月-12月)の総入場者数は4,832万人(前年同期比111.5%増)、総売上は3,984億3千万円(前年同期比160.3%増)と、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い活発なイベント活動が回復の要因となりましたが、もともと公演の多い中核都市へ公演が集中し、それ以外の地域での公演が増えづらい傾向が見られるなど、全国的な市場の回復には至っておりません。
音楽業界では、2022年(1月-12月)の音楽ソフト総生産額が2,023億円(前年同期比4.4%増)、有料音楽配信売上は1,050億円(前年同期比17.3%増)、合計金額は3,073億円(前年同期比8.5%増)となっております(一般社団法人日本レコード協会)。
邦画・洋画の映像関連市場では公開本数が1,143本(前年同期比19.1%増)と増加しておりますが、映画館スクリーン数は3,634スクリーンと前年より微減となりました。2022年(1月-12月)の興行収入は、2,131億1千万円(前年同期比31.6%増)と大幅な回復を見せております(一般社団法人日本映画製作者連盟)。一方、ビデオソフト市場では、2022年(1月-12月)の総売上は1,148億1千万円(前年同期比16.1%減)であり、ブルーレイの個人向けレンタル売上は伸びるも、DVD・ブルーレイの販売部門は減少しております(一般社団法人日本映像ソフト協会)。
- 当連結会計年度の経営成績

- 当社グループの事業概況
当社グループの経営成績は営業収入524億9千7百万円(前年同期比35.5%増)、営業利益31億5千3百万円(前年同期比9.5%増)、経常利益33億7千9百万円(前年同期比20.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益16億9千2百万円(前年同期比8.2%増)となりました。
当連結会計年度においては新型コロナウイルス感染症に係るイベントの開催制限の緩和に伴い、大型公演の開催が例年よりも集中したことにより、前年同期に比べ、イベント収入が大きく増加いたしました。また、前連結会計年度での収益認識会計基準等の適用初年度に伴う一時的な営業収入減少からの回復等もあり、営業収入は増収となりました。営業利益については、アーティスト報酬の増加や従業員の給与水準の見直し等により、営業原価、販売費及び一般管理費が増加したものの、増収要因により増益となりました。経常利益については、当連結会計年度より株式会社MASH A&Rを持分法適用の範囲に含めたことによる「持分法による投資利益」の計上等により増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益については、「関係会社株式売却損」の計上及び「法人税等」並びに「非支配株主に帰属する当期純利益」の増加はあったものの、「固定資産売却益」の計上等により増益を確保いたしました。
<営業収入>
- ・イベント収入が増加
- ・商品売上収入が増加
- ・レーベル収入が増加
- ・印税収入が増加
- ・番組制作収入が増加
- ・映像製作収入が増加
- ・出演収入が増加
上記要因に加えて、前連結会計年度での収益認識会計基準等の適用初年度に伴う一時的な営業収入減少からの回復により増収となりました。
<営業利益>
営業原価、販売費及び一般管理費が増加したものの、増収要因により増益となりました。
<経常利益>
「持分法による投資利益」の計上等により増益となりました。
<親会社株主に帰属する当期純利益>
「関係会社株式売却損」の計上及び「法人税等」並びに「非支配株主に帰属する当期純利益」の増加はあったものの、「固定資産売却益」の計上等により増益を確保いたしました。
セグメントの業績
セグメントの業績は、次のとおりであります。


イベント関連事業
営業収入325億1千万円(前年同期比56.0%増)、セグメント利益4億7千3百万円(前年同期比5.3%増)となり、増収増益となりました。

- 主な事業
イベント収入
コンサート
桑田佳祐、福山雅治、SEKAI NO OWARI、Perfume、ポルノグラフィティ、エレファントカシマシ、宮本浩次、BEGIN、Skoop On Somebody、FLOW、折坂悠太、神はサイコロを振らない、DEAN FUJIOKA、藤原さくら、DYGLのコンサートツアー
星野源、BABYMETAL、原由子、WEAVER、@onefiveのコンサートなど
舞台・公演
ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」
芸術花火エンタテインメント「茅ヶ崎サザン芸術花火2022」
ミュージカル「MEAN GIRLS」
ミュージカル「マリー・キュリー」
地球ゴージャス「クラウディア」
熱海五郎一座「任侠サーカス ~キズナたちの挽歌~」
s**t kingz「HELLO ROOMIES!!!」
若手俳優による「SUPER HANDSOME LIVE 2022」
など
商品売上収入
コンサートグッズなど
ファンクラブ収入
サザンオールスターズ、福山雅治、星野源、Perfume、ポルノグラフィティなど
- 営業収入
・イベント収入の増加
(前年同期は桑田佳祐、福山雅治、ポルノグラフィティのコンサートツアー、TEAM NACSによる公演など)
・商品売上収入の増加
(前年同期は収益認識会計基準等の適用に伴う影響による減収がありましたが、当期はイベント増加による関連グッズの増加により増収となりました。)
上記要因などにより増収となりました。
- セグメント利益
イベント収入に係る営業原価の増加はあったものの、増収要因により増益となりました。
- 営業収入/セグメント利益推移

音楽・映像事業
営業収入144億5千2百万円(前年同期比15.1%増)、セグメント利益19億3千8百万円(前年同期比68.8%増)となり、増収増益となりました。

- 主な事業
印税収入(新譜・旧譜)
桑田佳祐、サザンオールスターズ、福山雅治、星野源、Perfumeなど
レーベル収入
福山雅治、まふまふのライブBlu-ray&DVD、BABYMETALのアルバムなど
番組制作収入
単発番組の制作受託など
映像製作収入
映画「沈黙のパレード」の劇場配給分配収入、イベント興行の中継及び上映収入など
映像作品販売収入
吉高由里子主演ドラマ「最愛」、映画「護られなかった者たちへ」などのBlu-ray&DVD販売収入など
- 営業収入
・レーベル収入が増加
(前年同期は福山雅治、BABYMETAL、@onefiveのBlu-ray&DVDなど)
・印税収入(新譜・旧譜)が増加
・番組制作収入が増加
・映像製作収入が増加
(前年同期は映画「新解釈・三國志」、映画「今日から俺は!!劇場版」の劇場配給分配収入など)上記要因などにより増収となりました。
- セグメント利益
映像製作収入等に係る営業原価の増加はあったものの、増収要因により増益となりました。
- 営業収入/セグメント利益推移

出演・CM事業
営業収入55億3千5百万円(前年同期比3.6%増)、セグメント利益7億4千1百万円(前年同期比42.1%減)となり、増収減益となりました。

- 主な事業
出演・CM収入
福山雅治、大泉洋、安田顕、星野源、DEAN FUJIOKA、ホラン千秋、仲里依紗、板谷由夏、吉高由里子、吉沢亮、三吉彩花、堀田真由、小関裕太、清原果耶、桜田通など
- 営業収入
出演収入の増加により増収となりました。
- セグメント利益
出演収入及びCM収入に係る営業原価の増加により減益となりました。
- 営業収入/セグメント利益推移

対処すべき課題
現在、国内においては新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止と経済活動の両立が求められ、世界経済においては、不安定な国際情勢によるエネルギー供給不安や物価高騰など、先行き不透明な状況が今後も続くと思われます。
このような経営環境に対し、当社グループは継続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指し、次の課題に取り組むことにより、事業規模の拡大や収益基盤の向上を図ってまいります。
① アーティストの発掘・拡充・能力開発
当社グループの基幹事業であるアーティストマネージメントは、引き続き積極的・継続的なアーティストの発掘・育成を行い、様々な活動領域をもつアーティストを拡充するとともに、新たな才能を開花させてまいります。
② エンターテインメントコンテンツの開発
インターネット、通信・放送等メディアや端末の急速な進化、新型コロナウイルスの感染症に伴う生活様式の変化により、エンターテインメントの新たな楽しみ方の提案が求められております。当社グループにおいては、メタバースやNFTといった新技術を含む幅広い事業領域において革新的なエンターテインメントを創造・展開することが今後の重要な課題となります。
③ 市場・流通チャネルへの対応
流通インフラやデジタル技術の進化によって、アーティストが創作する楽曲や当社の権利保有楽曲、映画やライブ中継などの映像作品等を消費者に直接お届けすることができるようになっております。
アスマート、LIVESHIPに代表されるように、当社グループがアーティストグッズ・音楽作品・映像作品・関連書籍などをお客様に直接お届けできる機会も年々増加している中、多くの企業も直販やECサイトなどの新たな販売チャネルを構築し、市場競争が激化しております。当社グループとしては、市場・流通チャネルにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現することで、サービスの付加価値を高めることが今後の大きな課題となります。
④ 新規事業の開発
当社は2021年8月に登記上の本社を西湖(山梨県南都留郡富士河口湖町)に移転し、「心身の健康」をキーワードとした新しい”モノづくり”をスタートさせました。サステナビリティにも関連する多角的な取り組みを行いながら、当社グループの成長と社会・地域課題の解決を両立する事業の創出を目指し、新規事業の開発に取り組んでまいります。
⑤ 人材確保及び育成
当社では、音楽・映像・舞台等の様々なエンターテインメント領域で事業を行っており、その多様性が一つの特徴となっております。人材の開発と育成は重要経営課題のひとつであり、企業価値向上に欠かせないものと考えております。
引き続き、積極的な採用活動を継続するとともに、若年層の即戦力化、マネージメント能力の向上、多彩な人材が多様な働き方を選択できる人事制度や環境の整備、社員の自己啓発支援等を通じて、組織体制の盤石化を図ってまいります。
近年、当社グループを取り巻く事業環境はますます変化の激しいものとなっております。社会的使命と責任をより一層自覚し、迅速かつ明確な意思決定や法令遵守の徹底を行い、株主の皆様をはじめとする当社グループのステークホルダーの権利・立場を尊重しながら、企業価値の向上に努めてまいります。
エンターテインメントの使命は人々の生活を豊かにし、楽しくすることです。これからも国内外で良質なエンターテインメントを創作し、より多くの方々へ感動をお届けしてまいります。