事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過およびその成果
当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症による社会経済活動に影響する規制等が実施されなかったこともあり、引き続き、緩やかな回復基調が継続されました。一方、ウクライナ情勢長期化等の影響により原油価格が高止まりしていることに円安が重なり、原油由来の原材料やさまざまな輸入品の価格が上昇したことで、企業や家計は大きな影響を受けており、当社グループも原油由来の原材料を多く使用しているため、同様に影響を受けております。
このような状況の中、当社グループは、競争力強化と顧客満足の向上および事業領域の拡大を進めたことに加え、製品の販売価格改定が一定程度進捗したことにより、売上高は前年度に比べ増加いたしました。一方、営業利益は、製品の販売価格改定やさまざまなコスト削減活動を実施したことにより、下期以降は改善が見られてきておりますが、連結会計年度では原材料価格とエネルギーコストの上昇分を吸収しきれず、減少いたしました。
なお、インキ事業の業績が急激に悪化しており、来年度以降も大幅な収益力の向上が見込めない状況であることから、固定資産の減損損失を特別損失に計上いたしました。
この結果、下記の表に記載のとおり、当連結会計年度の業績は、売上高が434億6百万円で前年度比20億4百万円の増収(4.8%増)、営業損失は2千1百万円で前年度比6億9千7百万円の減益(前年度は6億7千5百万円の営業利益)、経常利益は米国連結子会社の出資分配益の計上等により47億8千3百万円で前年度比38億8千5百万円の増益(432.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は減損損失の計上等により16億4千5百万円で前年度比9億1千9百万円の増益(126.7%増)となりました。
今後も新型コロナウイルス感染症の規制緩和が進むことで、日本経済の緩やかな回復は続くと見込まれておりますが、原油価格や為替の動向による影響が不透明な状況であるため、引き続き市況を注視しながら対応してまいります。




セグメント別概況


オフセットインキおよび印刷用材料は、構造的な市場縮小が継続する中、重点顧客への販売強化に努めた結果、前年度に比べ数量、売上高ともに増加いたしました。しかし、利益は、さまざまなコスト削減活動や製品販売価格改定による採算是正により、一定程度の効果を上げることができたものの、原油高と円安による原材料価格上昇影響が一層悪化したため、前年度に比べ大幅に減少いたしました。
また、インキ事業に属するオフセットインキ事業は、営業利益が継続してマイナスであり、投資額を上回るキャッシュの回収が見込めない状況であることから、固定資産の減損損失を特別損失に計上いたしました。
グラビアインキは、人流の回復に伴う全体的な需要回復が継続したことやコート剤等の機能性製品の拡販が進んだことに加え、一定程度の製品価格改定が進んだことにより、前年度に比べ売上高は増加し、損失幅が縮小いたしました。
インクジェットインクは、建材用途、メディカル用途等の自社製品が堅調に推移いたしましたが、主に欧米向けの受託製品の需要が低迷した結果、前年度に比べ売上高および利益ともに減少いたしました。
この結果、インキ事業の当連結会計年度の業績は、前年度に比べ増収減益となりました。
今後のインキ事業を取り巻く中長期的な市場環境につきましては、オフセットインキの構造的な市場縮小の継続、グラビアインキの軟包装分野での堅調な需要、インクジェットインクの産業用途の市場拡大を見込んでおり、収益力向上に向けて製品ポートフォリオの再構築を進めてまいります。
一方、短期的にはオフセットインキ事業において、原油高と円安による原材料価格上昇により悪化した採算性を是正するために、製品販売価格改定を一層進めていくことが喫緊の課題であると認識しております。
【サステナビリティ関連取り組み事例】
◆高バイオマスオフ輪インキ GAIAⓇ VLC
従来品と同等の性能を維持しつつ、新開発の樹脂・ワックスを採用することで、インキ成分中のバイオマス度を60%以上に引き上げたオフ輪インキとなります。また、植物由来溶剤によりお客様における印刷乾燥工程時に排出する石油由来CO2を限りなくゼロにすることに貢献いたします。

◆環境調和型グラビアインキ ライスインキ

国産バイオマス原材料である米ぬか原油の非食用部分を利用した環境調和型グラビアインキとなります。
従来のインキと同等の印刷適性を有しているため、通常通り印刷が可能であり、使用時のCO2排出量抑制および石化資源使用削減に貢献いたします。



自動車用マスターバッチおよび樹脂コンパウンドは、徐々に国内自動車生産の回復が見られたものの、連結会計年度では国内自動車生産の減産影響が大きく、前年度に比べ売上高は大きく減少いたしました。
包装材・容器用マスターバッチは、社会経済活動の正常化に伴い、一定の需要回復が見られたことに加え、一部の産業資材用途製品や環境に配慮した製品が堅調に推移したことにより、前年度に比べ売上高は増加いたしました。
この結果、化成品事業の当連結会計年度の業績は、前年度に比べ増収となりました。一方、利益はタイ国連結子会社が好調でありましたが、国内の原材料価格上昇に対応した製品価格改定が一定程度進捗したものの、連結会計年度では十分ではなく、減益となりました。
今後の化成品事業を取り巻く各製品の市場環境につきましては、国内自動車生産は足下では回復傾向にありますが、依然として半導体供給の先行きが不透明であるため、自動車用マスターバッチおよび樹脂コンパウンドの販売に影響が生じる可能性があります。
包装用・容器用マスターバッチは、緩やかな需要増が続くと見込んでおりますが、中長期的には脱プラスチック化に代表される環境対応の加速化による市場縮小の継続が考えられます。そのため、昨今の環境問題への関心の高まりを機会と捉え、エネルギーコストを抑える液状マスターバッチやバイオプラスチックベースの着色剤等の環境に配慮した製品の開発・拡販、リサイクル材活用等、サーキュラーエコノミーに貢献できる取り組みを推し進めてまいります。
【サステナビリティ関連取り組み事例】
◆リキッドカラー HiFormerⓇ
従来品であるペレット状のマスターバッチは高熱下で加工するため、製造時の使用エネルギーが大きくなりますが、液状マスターバッチは高熱下での加工を必要としないため、製造時の使用エネルギーを大幅に低減できます。
着色成分が従来品よりも高濃度で処方されているため、成形加工時の添加量を少なくすることができ、結果的に輸送コスト低減に繋がるとともに、液体であることから樹脂ペレットに拡散しやすく、色むら、ショットブレなどの使用時の不具合低減にも貢献いたします。
専用の供給制御装置を使用することで、液体同士が接触しないため、切替時の清掃が不要になり、ロスの低減にも繋がります。



ネトロンⓇ(注)は、引き続き、工業材料である水処理用資材の輸出需要が堅調に推移し、農水産物用途が底堅い需要に支えられた包装資材も順調であったことに加え、原材料価格の上昇に対応した製品価格改定に一定程度の進捗が見られたことにより、前年度に比べ売上高および利益ともに増加いたしました。
一軸延伸フィルムは、引き続き、社会経済活動の正常化に伴う包装資材の需要が回復し、工業用途製品の輸出が堅調に推移したことに加え、新規案件が順調に進捗した結果、前年度に比べ売上高は増加いたしました。また、利益は生産性向上のための取り組みと原材料価格の上昇に対応した製品価格改定に一定程度の進捗が見られたことにより、採算性が向上したため、前年度に比べ増加いたしました。
土木資材は、徐々にジオセル等の主力製品の需要が回復したことにより、売上高は前年度より増加いたしましたが、事業拡大に向けた積極的な投資活動などの影響に伴う経費増加等により、利益は前年度に比べ減少いたしました。
農業資材は、汎用製品の需要減少に伴い低調に推移したものの、高機能製品が好調に推移したことにより、売上高は前年度並みになりました。一方、利益は原材料価格の上昇に対応した製品価格改定に一定程度の進捗が見られたことに加え、高機能製品の比率が向上したことにより、前年度に比べ増加いたしました。
この結果、加工品事業の当連結会計年度の業績は、前年度に比べ増収増益となりました。
今後の加工品事業を取り巻く各製品の市場環境につきましては、ネトロンⓇの水処理用資材需要は引き続き伸長し、一軸延伸フィルムは社会経済活動の正常化に伴う需要回復の継続を見込んでおります。土木資材は主力製品であるジオセルを中心に需要の回復が継続し、農業資材は高機能製品が堅調を維持すると見込んでおります。
中長期的にはネトロンⓇの水処理用資材需要の伸長が継続し、土木資材は国が定める「国土強靭化計画」に沿った防災・減災用途の需要増加を見込んでおります。ネトロン®や一軸延伸フィルム等の包装資材は脱プラスチック化に代表される環境対応の加速化による市場縮小が継続するものの、環境に配慮した製品の需要増加を見込んでおります。農業資材は国内耕作面積の減少による需要減少が継続するものの、生産コスト削減に貢献できる高機能製品の需要増加を見込んでおります。
水処理用資材や土木資材などの市場が伸長している分野におきましては、生産能力の増強や新製品開発・拡販等を推し進めるとともに、包装資材や農業資材におきましては、昨今の環境問題への関心の高まりを機会と捉え、バイオプラスチックベースの環境対応製品の開発・拡販を進めてまいります。
- (注) ネトロンⓇは三井化学株式会社の登録商標です。
【サステナビリティ関連取り組み事例】
♦ジオセル(グランドセル/テラセル)のり面保護工法
ジオセルはプラスチックシートを立体形成した、ハニカム状土壌安定枠となります。
ジオセルをのり面に設置し、中詰材を充填することで、のり面の浸食対策と緑化の両立が可能になります。
コンクリートを使用する工法に比べ、軽量であるため搬送の負荷が軽減でき、CO2排出の低減に貢献、施工性にも優れております。
集中豪雨などの影響により不安定になっているのり面の復旧に貢献いたします。



不動産賃貸事業は、賃貸戸建て住宅「パレットパークタウン」および本社ビル賃貸オフィスの稼働が堅調に推移いたしました。
この結果、不動産賃貸事業の当連結会計年度の業績は、前年度に比べ若干下回りました。


対処すべき課題
当社グループは、「暮らしを彩る、暮らしに役立つものづくりで、社会に貢献する。」を企業理念とし、「色彩を軸に、市場が求める価値をお客様と共に創造、実現し続ける企業。」を目指すべき企業像としております。
これらを原点とし、求められるESG課題への対応を強化することで、当社グループの成長を加速させるための3ヵ年の中期経営計画「TOKYOink 2024」を22年度よりスタートさせました。右表に記載の基本戦略が「TOKYOink 2024」期間中に当社グループが対処すべき課題であると認識しております。
この度、当社グループでは「ありたい姿」「あるべき姿」を実現するために改めて理念体系の見直しを行い、日々の業務の中で大切にすべき価値観として、行動指針を策定いたしました。以下のとおりとなります。
また、従業員にとって働きがいがあり成長できる環境を整備するため、経営戦略に連動した人事戦略を策定し、多様な働き方や適材適所での働きがい、それに応じた的確な処遇を実施するための人事制度改定を行いました。これらを浸透させることで、当社グループの発展に繋げてまいります。
2022年度のわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症による社会経済活動に影響する規制等が実施されなかったこともあり、引き続き、緩やかな回復基調が継続されました。一方、ウクライナ情勢長期化等の影響により原油価格が高止まりしていることに円安が重なり、原油由来の原材料やさまざまな輸入品およびエネルギーコストが上昇したことで、企業や家計は大きな影響を受けており、当社グループも原油由来の原材料を多く使用しているため、同様に影響を受けております。そのため、原材料高騰に対応した製品価格改定をより一層進めていくことが喫緊の課題であると認識しております。
また、近年のデジタル技術の急速な進化により行動様式に変化が見られることで、商業・出版印刷のデジタル化へのシフトが加速していることや、サステナビリティへの意識の高まりによる脱プラスチックの流れが加速していることにより、当社グループ製品の需要動向全体に影響がおよんでおります。そのため、各事業セグメントにおいて事業環境変化に対応した製品開発・拡販を進めてまいります。
当社は2023年12月に創立100周年を迎えます。節目の年を迎えるにあたり、今後の更なる成長を遂げるための「長期ビジョン」を策定し、公表する予定でおります。
株主の皆様におかれましては、今後とも一層のご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。
