事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が解除されたことにより、社会経済活動正常化への動きが一段と進み、企業業績・個人消費ともに緩やかな回復基調が継続されました。一方で、原材料価格の高止まり、円安とエネルギーコスト上昇等による物価高は依然として続いており、今後も不安定な国際情勢や世界的な金融引き締めによる影響が懸念され、景気の先行きは不透明な状況が継続しております。

このような状況の中、当社グループは、競争力強化と顧客満足の向上および事業領域の拡大を進め、また、原材料等の価格上昇分について、製品の販売価格改定を実施してまいりました。

この結果、当連結会計年度の業績は、売上高が439億2千2百万円で前年度比5億1千6百万円の増収(1.2%増)、営業利益は7億6千8百万円で、製品の販売価格改定等の交易条件の改善により、前年度比7億9千万円の増益(前年度は2千1百万円の営業損失)、経常利益は9億8千6百万円で、前年度における米国連結子会社の出資分配益の計上がなくなったこと等により前年度比37億9千7百万円の減益(79.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億8千1百万円で、前年度における減損損失の計上がなくなったこと等により前年度比7億6千4百万円の減益(46.4%減)となりました。

なお、2023年12月に連結子会社である荒川塗料工業株式会社(決算日2月末日)で発生した火災により、99百万円を災害による損失として特別損失に計上しております。

今後のわが国の経済については、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費の持ち直しが進むことで、緩やかな回復基調が継続すると見込んでおります。一方で、原油価格や為替の動向等による当社グループの業績への影響が不透明な状況は継続すると見込まれるため、引き続き市況を注視しながら競争力強化と顧客満足の向上および事業ポートフォリオの見直しを進めてまいります。

セグメント別概況

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商業印刷を主要市場としているオフセットインキおよび印刷用材料は、産業構造の変化に伴う市場縮小が継続する中、行動制限解除に伴い各種イベント等が増加したことで、需要が回復いたしました。そのような状況下、原材料価格およびエネルギーコストの上昇に対して製品販売価格改定が一定程度進捗したことに加え、重要顧客への販売活動を強化したことにより、前年度に比べ売上高は増加いたしました。また、売上高の増加に加え、前期末に実施した固定資産の減損処理に伴う減価償却費の減少等により、利益は大幅に改善いたしました。

グラビアインキは、原材料価格およびエネルギーコストの上昇に対する製品販売価格改定が進捗したことに加え、持続可能な社会の実現に貢献できる製品(以下、サステナブル製品)である機能性インキが伸長したものの、物価高に伴う消費意欲低下の影響等により、売上高・利益ともに減少いたしました。

インクジェットインクは、建材用途等の自社製品が低調に推移したものの、欧米向け受託製品の需要が徐々に回復してきた結果、前年度に比べ売上高・利益ともに増加いたしました。

この結果、インキ事業の当連結会計年度の業績は、前年度に比べ増収となり、利益は損失を計上した前年度から黒字転換いたしました。

今後のインキ事業につきまして、オフセットインキは産業構造の変化に伴う市場縮小が今後も継続することが考えられますので、サステナブル製品開発および重点顧客への販売活動を強化し、今後更なる事業構造改革に努めてまいります。グラビアインキは軟包装分野の需要が堅調に推移し、インクジェットインクは中長期的には産業用途の需要拡大が見込まれますので、サステナブル製品開発および販売活動を強化してまいります。また、引き続き、事業全体を通じて収益力向上に向けて製品ポートフォリオの再構築を進めてまいります。

オフセットインキ
グラビアインキ
インクジェットインク

TOPICS

環境負荷低減製品>ライスインキ/高バイオマスオフ輪インキ

社会貢献製品>抗菌・抗カビ・抗ウイルス製品

オフセットインキ、グラビアインキ、インクジェットインクを中心に、地球環境に配慮した高機能・高品質な印刷インキを提供しています。

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自動車用マスターバッチおよび樹脂コンパウンドは、第4四半期に国内自動車生産台数が一時的に減少した影響を受けましたが、通年では、国内自動車生産台数が増加したことにより、前年度に比べ売上高は増加いたしました。

包装材・容器用マスターバッチは、物価高に伴う消費意欲低下および環境対応の影響等により、前年度に比べ売上高は減少いたしました。

この結果、化成品事業の当連結会計年度の業績は、原材料価格およびエネルギーコストの上昇に対して製品販売価格改定が一定程度進捗したことにより、前年度に比べ増収となりました。一方、タイ国連結子会社が好調であったものの、包装材・容器用マスターバッチの減収影響が大きく、減益となりました。

今後の化成品事業につきまして、自動車用マスターバッチおよび樹脂コンパウンドは、一時的に減少した国内自動車生産の回復に伴い、需要が堅調に推移することが見込まれます。包装材・容器用マスターバッチは、環境対応の加速化による市場縮小の継続が考えられますが、新たな用途・分野への進出を目指してまいります。事業全体を通じて、サステナブル製品開発および販売活動を強化し、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みを進めてまいります。これらの方針に基づき、持続可能な製品開発と販売を推進してまいります。

プラスチック用着色剤
プラスチック用機能性添加剤
樹脂コンパウンド
洗浄剤
パウダーレジン
その他機能性製品

TOPICS

環境負荷低減製品>生分解性樹脂/バイオマスパウダーレジン

さまざまな生活シーンで活用されているプラスチック部品・製品に、マスターバッチをはじめとする色彩や機能を付与する各種高機能製品を提供しています。

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ネトロン®(注)は、工業材料である水処理用資材の輸出需要が一服した結果、売上高は前年度に比べ減少いたしました。また、原材料価格およびエネルギーコストの上昇に対して製品販売価格改定が一定程度進捗したものの、十分ではなく、利益は減少いたしました。

一軸延伸フィルムは、ダンボールカットテープ用途および一般食品包装用途が低調であったものの、直進カット性フィルムの販売が好調に推移したことに加え、原材料価格およびエネルギーコストの上昇に対して製品価格改定が進捗したことにより、前年度に比べ売上高は増加いたしました。一方、販売構成差により前年度に比べ利益は減少いたしました。

土木資材は、豪雨災害の復興需要の影響等により、防災・減災用途に使用されるジオセル工法の採用が引き続き増加していることで、前年度に比べ売上高および利益ともに大幅に増加いたしました。

農業資材は、好調であった燃油使用量削減に寄与する保温資材等の高機能製品需要が一服したことに加え、国内農業における産業構造の変化に伴う市場縮小により汎用製品の需要が低迷した影響が大きく、前年度に比べ売上高は減少いたしました。一方、高付加価値製品の比率が向上したことにより、利益は前年度並みになりました。

この結果、加工品事業の当連結会計年度の業績は、前年度に比べ減収減益となりました。

今後の加工品事業につきまして、ネトロン®の水処理用資材は、徐々に需要が回復し、中長期的には市場拡大の継続が見込まれ、土木資材は、豪雨等の災害に対応するため、政府が「国土強靭化計画」を推進していることから、防災・減災用途製品の需要の高まりが見込まれます。一方、包装資材や農業資材は、環境対応の加速化および産業構造の変化に伴う市場縮小の継続が考えられますが、環境に配慮した製品需要の高まりが期待できます。需要の増加が見込まれる分野は生産能力を強化し、事業全体を通じて、サステナブル製品開発および販売活動を強化してまいります。

(注)ネトロン®は三井化学株式会社の登録商標です。

包装資材
工業・農業資材
土木・環境資材

TOPICS

環境負荷低減製品社会貢献製品>多層断熱被覆資材(布団資材)ジオセル/各工法・周辺部材

多層断熱被覆資材(布団資材)エナジーキーパー®の普及拡大を図る取り組みが「みどりの食料システム法」に基づき農林水産省の認定を受けました。

特徴ある加工技術を駆使したプラスチックネットや一軸延伸フィルムを中心に、さまざまな産業用途の包装資材、工業・農業資材、土木・環境資材を提供しています。

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不動産賃貸事業は、賃貸戸建て住宅「パレットパークタウン」および本社ビル賃貸オフィスの稼働が堅調に推移いたしました。

この結果、不動産賃貸事業の当連結会計年度の業績は、増収増益となりました。

賃貸戸建て住宅「パレットパークタウン」
賃貸オフィス「TIC王子ビル」

当社グループは、賃貸オフィスビル、ファミリー向けの賃貸戸建て住宅を保有しており、皆様に快適なオフィス環境、プライベート空間を提供しています。

対処すべき課題

①長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」策定

当社グループは、1923年12月に印刷用インキの製造・販売からスタートし、各種プラスチック着色剤や機能性製品、特殊な成形加工技術を駆使した樹脂加工品へと事業範囲を拡大しながら、暮らしの中でなくてはならない製品を提供し続けております。企業理念である「暮らしを彩る、暮らしに役立つものづくりで、社会に貢献する。」と、目指すべき企業像として「色彩を軸に、市場が求める価値をお客様と共に創造、実現し続ける企業。」を掲げ、日々活動しております。

このような中、2023年12月に創立100周年を迎え、2030年に目指す姿として長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」を策定いたしました。

イ.パーパス(存在意義)設定

これからの持続可能な社会(サステナビリティ)のために何ができるのかの観点から、改めて「東京インキグループのパーパス(存在意義)」を問い直し、以下のとおり、理念体系の整理を行いました。

当社グループのパーパス(存在意義)には、印刷物やプラスチック容器等を通して人と人との間をつなぎ、「伝える」ことで暮らしに貢献する、多種多様な色材の提供により身の回りを「彩る」ことで生活を豊かにする、バイオマス製品や様々な機能性製品および防災・減災用途に使用される土木資材等の提供により地球や生活を「守る」ことで社会に貢献する、という想いを込めております。

パーパス(存在意義)とバリュー(行動指針)の浸透を推し進めることで、新たな価値を創造できる人材を創出し、マインドの醸成を図り、高効率で安定した企業基盤構築を目指してまいります。また、製品・サービスを通じて持続可能な価値を提供し、環境・社会と共存共栄できる企業経営を推進してまいります。

ロ.価値創造プロセス

当社グループは、長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」策定の際、環境・社会問題をはじめとする持続可能な社会(サステナビリティ)を巡る課題への対応が経営の重要課題であると認識いたしました。持続的成長実現の源泉となる「6つの資本」を投入し、持続可能な社会(サステナビリティ)の観点からみたメガトレンドと当社グループのパーパス(存在意義)を踏まえた上で、2030年に目指す姿である「持続可能な価値を提供し続ける企業グループへ」からバックキャストし設定しました4つのマテリアリティ(重要課題)を、3つのアプローチにて推進することで、暮らしに役立つモノづくりで社会に貢献できる価値を創造してまいります。

※2023年12月11日公表 長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」資料より抜粋

詳細につきましては、当社ホームページもしくは下記URLよりご覧ください。

長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」掲載URL

https://www.tokyoink.co.jp/about/long_term_vision/

②中期経営計画「TOKYOink 2024」

当社グループは2022年度から2024年度までの3ヵ年の中期経営計画「TOKYOink 2024」を策定し、計画に沿った取り組みを進めております。中期経営計画「TOKYOink 2024」の概要は以下のとおりとなります。

また、中期経営計画「TOKYOink 2024」における、各事業セグメント別の優先的に対処すべき課題は、以下のとおりとなります。

    (インキ事業)

  • ・主力インキ事業領域のポートフォリオ変革を進め、環境対応製品、デジタル化への転換を推進
  • ・高バイオマスインキ、環境対応インキ、産業用インクジェットインクの開発推進で収益獲得

    (化成品事業)

  • ・主力合成樹脂市場での成長機会を追求し、サーキュラーエコノミー参画を推進
  • ・機能性マスターバッチ、自動車用着色材を主力に環境対応製品の拡大による成長を目指す

    (加工品事業)

  • ・市場の伸長が期待できる水処理用資材や防災減災資材を主力に特長ある新規製品の開発を推進
  • ・ネトロン®・土木資材を軸に各製品セグメントの特徴を活かし、ニッチトップ戦略により高収益化を目指す
③サステナビリティに関する取り組み

イ.サステナビリティに関する考え方

当社グループは、『「伝える」「彩る」「守る」ことで、豊かな未来を実現する』をパーパス(存在意義)として掲げ、幅広い市場や分野、用途への製品供給を通じて地球環境を守り、人々の暮らしを豊かに支え続けることを存在意義と位置付けております。

また、持続可能な社会(サステナビリティ)の観点から、経営環境の変化によるリスク・機会の適切な把握を経営の重要な要素として捉え、環境変化の中で従来事業の枠を越えた変革を進めることに取り組んでおります。

ロ.気候変動への対応

気候変動への対応は、長期ビジョンのマテリアリティ(重要課題)「2.環境・社会と共存共栄する企業経営の推進」のひとつとして位置付けており、2050年のカーボンニュートラル実現を目標に、再生可能エネルギーの有効活用、生産エネルギーの低減、省エネ設備の積極的導入を通じ、脱炭素社会・循環型社会への貢献を進めております。2023年度には、下記の具体的取り組みを実施いたしました。

a.温室効果ガス排出量の削減目標の設定

b.TCFDコンソーシアムへの加盟

c.株式会社アールプラスジャパンへの出資およびコンソーシアム加入

d.「DBJ環境格付」の取得

e.「東京都北区SDGs推進企業認証制度」取得

f.気候変動に関するリスク・機会の分析

ハ.人的資本への対応

長期ビジョンのマテリアリティ(重要課題)「4.新たな価値を創造できる人材の創出とマインドの醸成」のひとつとして位置付けており、行動指針を体現できる人材の育成と企業文化の醸成を図るべく、新たに導入した人事制度の安定運用を重要課題として取り組んでおります。

人事戦略については、中期経営計画における経営方針、基本戦略、事業戦略と連動した4つの柱を軸とし、「多様な人材の育成・確保」、「リーダーシップ」、「変化に応じた再配置」、「キャリア構築」を掲げております。

人材の多様性や健康経営等に関する取り組みを進めることで、従業員の労働意欲の向上と個人の成長を図り、経営方針を達成すべく取り組んでまいります。

a.社内環境整備方針

従業員一人ひとりが、日々の業務を通じて成長を感じ、チャレンジ精神を持って最大限のパフォーマンスを発揮できるように、安心して働き続けることができる社内環境を整備しております。

将来のキャリアが選択できる柔軟な人事制度、困難な課題にチャレンジした人を処遇する評価制度、場所や時間に縛られない柔軟な働き方、心身の健康を守る健康経営、多様な人材が活躍できるようなダイバーシティ推進、生活と仕事の両立を支援する育児・介護支援施策に力を入れてまいります。

b.人材育成方針

成長戦略を描ける人材を獲得・育成するために、個々人の活躍・成長を促進することを人事制度の基本方針に掲げ、自己成長や自己実現の機会を提供しております。

新入社員から管理職までの階層別研修、人材ポートフォリオに基づいた人材配置、社員の異動希望を考慮した社内公募制度、実務を通じて成長を感じられる目標の設定を進め、市場の変化に柔軟に対応していくために、今後も従業員の成長・活躍を後押しすべく、人材育成施策に力を入れてまいります。

④今後について

当社グループは中期経営計画「TOKYOink 2024」の最終年度を迎えております。2024年度の営業利益目標は20億円に設定しておりましたが、計画策定当初に比べ、当社グループを取り巻く環境は想定以上に変化していることから、目標達成は難しい状況となっております。このような状況の中、長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」の実現に向けて、持続的成長と中長期的な企業価値向上を図るべく、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について現状分析・評価を行い、改善に向けた今後の方針・目標や具体的な取り組みについて、以下のとおり策定いたしました。

[具体的な取り組み]

イ.成長戦略 :事業ポートフォリオ変革

ロ.資本政策 :財務戦略

ハ.資本政策 :キャッシュアロケーション

ニ.非財務施策:コーポレート・ガバナンス体制の強化

ホ.非財務施策:サステナビリティ経営の推進

へ.非財務施策:IR活動の強化と通じた企業価値向上

詳細につきましては、当社ホームページもしくは下記URLよりご覧ください。

「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」掲載URL

https://www.tokyoink.co.jp/ir/ir_library/management_plan/

連結計算書類