事業報告(2019年4月1日から2020年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
当事業年度の事業の状況
事業の経過及び成果
当社を取り巻く市場環境は、当社グループが事業展開する電子決済市場、インターネット広告市場ともに今後も継続的な成長が見込まれております。電子決済市場においては、消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の市場規模が前年比9.0%増の17兆9,845億円と拡大を続けており(注1)、2018年4月に内閣府主導の下、国内のキャッシュレス決済比率を2017年の21.3%(注2)から2025年に40%とする目標が設定され(注3)、キャッシュレス化が推進されている背景から、今後も市場の成長が見込まれます。また、インターネット広告市場においては、広告費の約7割を占める運用型広告が引き続き市場の伸びを牽引し、前年比19.7%増となる2兆1,048億円と6年連続で2桁成長を遂げ、テレビメディア広告費を上回り初めて2兆円を超えており(注4)、電子決済市場と同様に市場拡大が見込まれております。一方足元では、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行による訪日外国人の減少や政府・地方自治体の外出自粛要請等により、経済環境は一層不透明な状況にあります。
当連結会計年度の経営成績につきましては、収益は36,936百万円(前期比1,249百万円増、同3.5%増)、税引前利益は10,008百万円(前期比3,416百万円減、同25.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は7,420百万円(前期比2,351百万円減、同24.1%減)となりました。リカーリング事業であるフィナンシャルテクノロジー事業及びマーケティングテクノロジー事業は、安定した増収に加え収益性が改善していることから、両事業ともに増収増益となりました。ロングタームインキュベーション事業においては、持分法適用会社である㈱カカクコムの業績が貢献し、持分法による投資利益3,702百万円(前期比9.3%増)を計上致しました。一方、インキュベーションテクノロジー事業においては、営業投資有価証券の売却に際して再評価される公正価値の評価差額が前期実績を下回ったほか、外国為替相場が円高傾向で推移し、為替相場変動の影響額が前期比約12億円となったことで、減収減益となりました。
出所
- (注1)経済産業省「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書」
- (注2)一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2019」
- (注3)経済産業省「キャッシュレス・ビジョン(2018年4月)」
- (注4)株式会社電通「2019年日本の広告費」
フィナンシャルテクノロジー事業

フィナンシャルテクノロジー事業では、Eコマース(EC)をはじめとするBtoCの商取引に必要不可欠なクレジットカード決済やコンビニ決済等の電子決済ソリューションの提供を行っております。
決済事業を展開するベリトランス㈱及び㈱イーコンテクストが、多様な決済ソリューションを提供しEC市場で高成長を継続致しました。足元では、新型コロナウイルス感染症の影響で、訪日外国人のインバウンド消費に対応した対面決済の取扱は減少したものの、既存加盟店の取扱は堅調に推移致しました。加えて、政府のキャッシュレス還元施策による取扱の増加等もあり、決済取扱高は前期比24%増の約2.6兆円、決済取扱件数は同24%増の約4.9億件まで伸長致しました。
これらの結果、当連結会計年度における収益は8,609百万円(前期比1,162百万円増、同15.6%増)、税引前利益は4,049百万円(前期比700百万円増、同20.9%増)となりました。
マーケティングテクノロジー事業

マーケティングテクノロジー事業では、ウェブとリアルを融合した総合プロモーション及びインターネット広告等のウェブマーケティングやビッグデータを活用したデータマネジメントビジネスを行っております。
インターネット広告を手掛ける当社マーケティングテクノロジーカンパニーにおいて、フィナンシャルテクノロジー事業と連動した決済アプリ開発事業が好調に推移致しました。加えて、政府のキャッシュレス還元施策を背景に、クレジットカード関連広告の取扱高も伸長致しました。マーケティングテクノロジー事業では、主力のデジタルアド事業において収益性向上を企図した戦略が奏功しました。また、持分法適用会社である㈱サイバー・バズ(2019年9月東証マザーズ上場)の独自のインフルエンサーマーケティング事業の成長が当セグメント利益に貢献しました。
これらの結果、当連結会計年度における収益は15,375百万円(前期比2,454百万円増、同19.0%増)、税引前利益は1,853百万円(前期比637百万円増、同52.4%増)となりました。
インキュベーションテクノロジー事業

インキュベーションテクノロジー事業では、国内外のスタートアップ企業等への投資・育成及び当社グループ内の事業との連携による投資先の育成等を行っております。
当連結会計年度は、営業投資有価証券の売却に際して再評価される公正価値の評価差額が前期比で下回ったほか、外国為替相場が円高傾向で推移し、為替相場変動の影響額が前期比約12億円となったことで、減収減益となりました。一方、アジア地域の投資先を中心に為替相場の変動を除いた公正価値が前連結会計年度末に比べて約45億円増加し、加えて国内外における新規投資も進捗したことから、営業投資有価証券の残高は36,546百万円(前期比9,851百万円増)となりました。
これらの結果、収益は4,868百万円(前期比3,154百万円減、同39.3%減)、税引前利益は3,563百万円(前期比3,326百万円減、同48.3%減)となりました。
ロングタームインキュベーション事業

ロングタームインキュベーション事業では、当社グループがこれまで培ってきた投資育成や事業開発のノウハウを活かし、中長期的かつ継続的な事業利益の創出に取り組んでおります。そのなかで、東京短資㈱との合弁で設立した連結子会社㈱Crypto Garageを中心にブロックチェーン技術に関わるアプリケーション開発を推進しており、ブロックチェーン金融サービスの社会実装実現を目指しております。
当連結会計年度は、投資育成中の事業に対する先行費用は発生したものの、持分法適用会社である㈱カカクコムの業績が引き続き堅調に推移したこと等が、業績に貢献致しました。
これらの結果、収益は7,929百万円(前期比796百万円増、同11.2%増)、税引前利益は4,701百万円(前期比323百万円増、同7.4%増)となりました。
対処すべき課題
当社は、インターネット黎明期であった1995年の創業より一貫して「異なるフィールドにある事象をインターネットを使って結びつけ、世の中の役に立つコンテクスト(文脈)を作ることにより、社会の発展に貢献する」ことを企業理念として掲げております。
インターネットの登場により、技術のイノベーションにかかるコストが劇的に低下し、かつては大企業でしか生み出されなかったイノベーションや新サービスが、世界中のスタートアップレベルで実現できる時代になりました。インターネットから生まれたオープンイノベーションの波がソフトウェアだけでなくハードウェア産業、さらにはバイオテクノロジー産業も飲み込み、様々な分野で技術が急速に進化しています。身の回りのほとんどのモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)が当たり前となり、これまでにも増して急速な技術革新が、事業環境に大きな変化をもたらすと予想されます。
このような経営環境の下、当社グループは、「Designing our New Normal Context」をコンセプトに掲げた新中期経営計画(2021年3月期から2025年3月期までの5ヵ年)を策定し、2020年5月13日に公表致しました。新型コロナウイルス感染症の世界的流行を契機とし、生活・経済・教育・医療を中心として、新しい秩序(New Normal)が生まれつつあります。当社グループでは、段階的に進化していた最新技術を用いたサービスや事業がLeapfrogging(一段階飛び越えた進化)的に進化する時代の幕開けと捉え、様々なデジタルシフトが地滑り的に始まる中、新秩序での、次世代のDX(デジタルトランスフォーメーション)コンテクストを創造してまいります。スタートアップから大企業まで先進的な取り組みを行う世界的な様々な企業と連携し、動的平衡(Dynamic equilibrium)と不偏不党(Neutrality)を保ちながら、継続して国際社会に役立つコンテクストを創造していきます。
当社グループは、中期経営計画の推進及び経営目標の達成を通じて更なる成長を実現し、企業価値の向上を図ってまいります。
主要な事業内容(2020年3月31日現在)
当社グループは、「フィナンシャルテクノロジー事業」、「マーケティングテクノロジー事業」、「インキュベーションテクノロジー事業」及び「ロングタームインキュベーション事業」を行っております。セグメントの内容は以下のとおりになります。

主要な事業所(2020年3月31日現在)
当社本社 | 東京都渋谷区 |
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Digital Garage US, Inc. |
アメリカ合衆国 |