事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
当事業年度の事業の状況
事業の経過及び成果
当社を取り巻く市場環境は、当社グループが事業展開する電子決済市場、インターネット広告市場ともに今後も継続的な成長が見込まれております。2020年の消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の市場規模が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により同分野で最も市場規模の大きい旅行サービスが前年比約6割減と大きく影響を受けたことで、前年比0.4%減の19兆2,779億円となりました(注1)。一方で、2018年4月に内閣府主導の下、国内のキャッシュレス決済比率を2017年の21.3%(注2)から2025年に40%とする目標が設定され(注3)、キャッシュレス化が推進されている背景から、今後も市場の成長が見込まれます。また、2021年のインターネット広告市場においては、インターネット広告の取引手法の主流であり85.2%を占める運用型広告が引き続き市場の伸びを牽引し(注4)、前年比21.4%増となる2兆7,052億円と社会のデジタル化加速が追い風となり前年に引き続きプラス成長となり(注5)、電子決済市場と同様に市場拡大が見込まれております。
当連結会計年度の収益は72,955百万円(前期比80.2%増)、税引前利益は45,393百万円(前期比217.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は30,330百万円(前期比209.9%増)、当期包括利益は29,733百万円(前期比163.5%増)となりました。インキュベーションテクノロジー事業において、営業投資有価証券の公正価値が大幅に伸長し、フィナンシャルテクノロジー事業においては主力の決済事業が堅調に推移しました。また、事業セグメントに属していない全社共通の金融資産(投資有価証券)の公正価値測定による評価益も計上し、これらの結果、増収増益となりました。
出所
- (注1)経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書(2021年7月)」
- (注2)一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2021(2021年3月)」
- (注3)経済産業省「キャッシュレス・ビジョン(2018年4月)」
- (注4)㈱CARTA COMMUNICATIONS、㈱D2C、㈱電通、㈱電通デジタル「2021年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」
- (注5)㈱電通「2021年日本の広告費」
フィナンシャルテクノロジー事業

フィナンシャルテクノロジー事業では、Eコマース(EC)をはじめとするBtoCの商取引に必要不可欠なクレジットカード決済やコンビニ決済等の電子決済ソリューションの提供を行っております。
当連結会計年度は、決済事業を展開する㈱DGフィナンシャルテクノロジーが、多様な決済ソリューションを提供し高成長を継続致しました。新型コロナウイルス感染症拡大による特需の一部反動あるも、EC市場拡大による取扱い増加や旅行関連決済の回復に加え、モバイルオーダー事前オンライン決済等の新規決済手段による取扱いや国内中心に対面決済の取扱いが好調に増加し、決済取扱高は前期比約18%増の約3兆5,978億円、決済取扱件数は同約10%増の約7.2億件まで伸長致しました。
これらの結果、収益は10,762百万円(前期比11.3%増)、税引前利益は4,548百万円(前期比10.5%増)となりました。
マーケティングテクノロジー事業

マーケティングテクノロジー事業では、インターネットとリアルを融合した総合的なデジタルマーケティングや様々なデータを活用したデータマーケティングビジネス等を行っております。
当連結会計年度は、インターネット広告を手掛ける当社マーケティングテクノロジーカンパニーにおいて、主力のデジタルアド事業が堅調に推移致しました。特に、通信キャリア決済・クレジットカード等の金融向けのフィンテック関連プロモーションにおいては、広告取扱高が前期比約11%増の約177億円と堅調に増加致しました。一方、受託開発案件の減少やデジタルアド事業において注力業種の見直しを実施したこと等により、収益は13,031百万円(前期比0.1%減)、税引前利益は883百万円(前期比20.2%増)となりました。
インキュベーションテクノロジー事業

インキュベーションテクノロジー事業では、国内外のスタートアップ企業等への投資及び当社グループ内の事業との連携による投資先の育成等を行っております。
当連結会計年度は、投資先のIPO、ファイナンスによる公正価値の大幅増加及び海外上場銘柄を中心に売却したこと、また外国為替相場が円安傾向で推移したこと等により、収益は32,787百万円(前期比185.6%増)、税引前利益は31,215百万円(前期比204.1%増)となりました。
また、営業投資有価証券の残高は77,950百万円(前連結会計年度末比30,780百万円増)となりました。
ロングタームインキュベーション事業

ロングタームインキュベーション事業では、当社グループがこれまで培ってきた投資育成や事業開発のノウハウを活かし、中長期的かつ継続的な事業利益の創出に取り組んでおります。
当連結会計年度は、持分法適用会社である㈱カカクコムの業績が新型コロナウイルス感染症拡大の影響から回復しました。一方、前連結会計年度において連結子会社の事業譲渡を実施したことや当連結会計年度において連結子会社におけるのれんの減損損失を計上したこと等により、収益は4,567百万円(前期比23.0%減)、税引前利益は1,380百万円(前期比48.0%減)となりました。
対処すべき課題
当社は、「持続可能な社会に向けた“新しいコンテクスト”をデザインし、テクノロジーで社会実装する」ことをパーパス(存在意義)として掲げ、決済プラットフォームとマーケティングソリューションの提供を土台として、投資を伴うインキュベーションを行い、数々の日本初となるインターネットビジネスを創造してまいりました。
当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染拡大に端を発した生活様式の変化、Eコマース及びDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速、テクノロジーの進化、世の中のサステナビリティへの意識の高まり等により、大きく変化しつつあります。
このような環境下、現在、当社グループでは、決済とデータを融合したグループ戦略「DGフィンテックシフト」の実現に向け、フィナンシャルテクノロジー事業を中心に、各セグメント・投資先・戦略パートナーと連携しながら、日本のDX化を支えていく事業の創出に取り組んでおります。既存の決済事業をベースとし最新のフィンテック事業を社会実装する<連続的成長を目指すウイング>、非連続のテクノロジーを活用した暗号資産を日本発グローバルビジネスとして<非連続の成長を目指すウイング>、この2つのウイングでの「両利きの経営」を目指しております。
当社パーパス(存在意義)の実現に向けては、あらゆる企業活動にサステナビリティの視点を取り入れ、長期的かつ継続的に取り組むことが必要であると認識しております。そこで、当社グループでは、2021年6月に「Earthshot」宣言を発表し、地球視点でESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを推進することとしました。宇宙から見える地球に国境はなく、人類すべてはエコシステムの一部であるとの認識のもと、「Earthshot」というコンセプトを当社グループのESG活動の中心に据えております。多様なステークホルダーと協働し、ESGを巡る課題への適切な対応を図ることが、新たな企業価値創出の契機になると考えております。
当社の歴史は、日本のインターネットの歴史であると自負しております。今後も持続可能な社会に貢献するサービスの創出を通じインターネットの歴史に新たな1ページを加えていけるよう、たゆまぬ努力を続け、パーパス(存在意義)の実現を通じて、更なる企業価値の向上を図ってまいります。
主要な事業内容(2022年3月31日現在)
当社グループは、「フィナンシャルテクノロジー事業」、「マーケティングテクノロジー事業」、「インキュベーションテクノロジー事業」及び「ロングタームインキュベーション事業」を行っております。セグメントの内容は以下のとおりになります。

主要な事業所(2022年3月31日現在)
当社本社 | 東京都渋谷区 |
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Digital Garage US, Inc. |
アメリカ合衆国 |