株主のみなさまにお伝えしたいこと

平素よりご支援を賜りまして、心より御礼申し上げます。また、この度中国湖北省武漢市を中心に拡大する新型肺炎でお亡くなりになられた方々、ご遺族のみなさまに謹んで哀悼の意を表すとともに、罹患されている方々や困難な状況におられる方々が一日も早く回復されますよう心よりお祈り申し上げます。
売上高、営業利益、当期純利益が過去最高を更新
2019年は、外部環境が目まぐるしく変化し、マクロ経済の不透明感も高まる、厳しい経営環境となりました。その環境下でも、当社は確実な成長を遂げ、売上高、営業利益、当期純利益が、いずれも過去最高を更新しました。また、中長期戦略VISION 2020のスタート時より掲げておりました、営業利益率10%超を達成することができました。
グローバル成長をけん引しているのは、これまで注力してきたプレステージブランドです。なかでも「SHISEIDO」は、当社で初めて売上高2,000億円を超えるブランドに成長いたしました。


一方日本事業は、2019年下期の実績が想定以上の落ち込みとなりました。とくに、近年の訪日旅行客数の増加に対応する中で、日本の生活者の価値観や購買行動の変化への対応が遅れたことが最大の課題だと捉えています。私が資生堂ジャパンの社長を兼務することで、本社と日本事業の経営体制を一体化し、お客さまへの価値提供を再強化してまいります。
同時に、長期視点の経営として、ESG(環境、社会、ガバナンス)の取り組みを強化しています。企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」を実現し、100年先も輝き続ける企業を目指します。

今後の見通し
現在、当社は新型肺炎の影響を慎重に見極めており、2020年の業績見通しへの当影響の織り込みは見送りました。状況の変化を踏まえ、今後遅くとも上期決算時には、その影響を反映した見通しを開示する予定です。(詳しくは49ページ(全文PDF)をご覧ください)
また、新型肺炎の対応は、お客さまや社員の健康と安全を第一に考えて進めています。加えて困難な時期にこそ、当社ができるサポートを行っていきます。2月6日には、「爱心接力 Relay of love プロジェクト」を立ち上げました。アジア地域の売上の1%をこのプロジェクトの資金に充当し、医療や感染予防対策のサポートを目的とした寄付、当社商品の提供、人々を元気づけるためのボランティア活動など、困難な状況にあるみなさまのお役に立ちたいと考えています。
不透明な経営環境は続きますが、これに立ち向かい、長期視点で成長を実現してまいります。引き続き、みなさまのご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。


企業理念 THE SHISEIDO PHILOSOPHYとは?
https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy
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当期の業績
業績について
売上高、営業利益、当期純利益が過去最高を更新
2019年の売上高は1兆1,315億円、前期比3.4%増、特殊要因を除いて前期比6.8%増の実質成長となりました。これまで強化してきたプレステージ領域が成長をけん引し、不透明感を増す厳しい経営環境の中、確実な成長を実現しました。事業別には、日本が天候不順やインバウンド需要の減少などにより想定よりも落ち込んだ一方で、中国・欧州・トラベルリテールが前期比で2桁の実質成長を遂げました。営業利益は、マーケティングや研究開発、人材への投資を強化した一方で、売上高増に伴う差益増等によって、前期比5.1%増の1,138億円。当期純利益は、営業利益の増加や、税金費用の減少により、前期比19.8%増の736億円となりました。
2019年の実績



報告セグメント別トピックス
日本 |
円高等によるインバウンド需要の減少や天候不順の影響を受ける中、引き続きスキンケア、ベースメイク、サンケアの“肌3分野”に注力しました。「SHISEIDO」は新製品がけん引し、売上が大きく伸長しました。 |
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中国 |
プレステージブランドを中心としたメイド・イン・ジャパンブランドが高成長を持続したことに加え、Eコマースも引き続き好調でした。 |
アジア パシフィック |
韓国は市場環境の変化を受け厳しい状況となりましたが、東南アジア地域は好調に推移しました。 |
米州 |
厳しい市場環境の中、「SHISEIDO」や「Dolce&Gabbana」が成長を継続しました。「bareMinerals」では、構造改革に引き続き取り組みました。 |
欧州 |
「Dolce&Gabbana」や「narciso rodriguez」などのフレグランスブランドの新製品が寄与し、伸長しました。 |
トラベル リテール |
積極的なマーケティング投資の効果により、アジアを中心に前年を大きく上回る伸長を継続しました。 |

「SHISEIDO」

「クレ・ド・ポー ボーテ」
成長に向けた取り組み
プレステージブランドのさらなる成長
プレステージファースト戦略により、成長性と収益性の拡大が期待できるブランドをグローバルで強化しています。中でも「SHISEIDO」は、世界85の国と地域で展開し、売上高2,000億円規模のブランドに成長しています。今後も各地域のお客さまのニーズを捉えながら「選択と集中」を進め、プレステージ領域の「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「NARS」を中心に主力ブランドのさらなる成長を実現します。
売上高推移

グローバルブランドポートフォリオの強化
資生堂グループは、常に変化する世界中のお客さまの「美」へのニーズに対応するため、多様なブランドを展開しています。
さらなる成長を目指すため、若年層を中心に、人体にも環境にも“Clean”な製品を求める世界的な傾向を捉え、米国で加速度的に成長しているプレステージ・スキンケアブランド「Drunk Elephant」を2019年11月に買収しました。同ブランドは、デジタルを活用した優れたマーケティングを通じて、2019年には、上市からわずか7年で100億円を超える売上高を達成しています。また、フレグランスビジネスの拡充に向けて、米国のライフスタイルブランド「Tory Burch」とグローバル独占ライセンス契約を2019年8月に締結しました。将来のグローバル展開に向けて大きな成長余地があり、収益性の高いプレステージ領域のブランドを獲得することで、グループ全体のブランドポートフォリオを強化するとともに、米州事業の収益拡大を実現します。

一方、日本を中心に長年にわたり高い支持を得て成長を続けているスキンケアブランド「エリクシール」とサンケアブランド「アネッサ」は、アジア、欧米地域での成長加速を目指し、日本発のグローバルブランドとしてさらに強化していきます。

「Drunk Elephant」

「Tory Burch」

「エリクシール」
グローバル成長を支える生産体制

那須工場
世界各地の需要に対応するため、日本をはじめ、アジア、欧米地域などグローバルで11カ所の生産拠点があります。日本国内では昨年、栃木県に那須工場を設立し、さらに大阪府茨木市と福岡県久留米市でも工場の建設を進めています。世界各地の需要状況を見極めながら、中長期的に安定したグローバル生産体制を確立します。
サステナビリティ
資生堂のサステナビリティ戦略
資生堂は2019年に、企業使命を「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」と定めました。企業として成長するだけでなく、本業であるビューティービジネスそのもので社会課題の解決や、人々が幸せになるサステナブルな社会を実現します。
また、同年1月には、社会価値創造の全社的加速を目的に、社会価値創造本部を新設しました。ビューティーカンパニーならではの社会価値創造の枠組みとして、資生堂グループのマテリアリティ(重要課題)を定め、「ビューティー」を基軸に環境(Environment)、社会(Social)、文化(Culture)の3つのジャンルで社会価値を再定義しています。

資生堂のサステナビリティの詳細はこちら
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/about/
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環境 Protect Beauty
「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同

当社は、金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下TCFD)」の提言への賛同を2019年4月に表明しました。今後は、TCFDの提言に基づき、戦略・リスク管理・ガバナンスなどの観点から、気候変動が事業に与えるリスク・機会の両面について積極的に情報開示を進めていきます。気候変動に関する対応を優先事項の一つとして捉え、CO2排出削減を含むさまざまな環境対応策に積極的に取り組み、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。
社会 Empower Beauty
女性役員比率の向上を目指す「30% Club Japan」 初代会長に就任

※ 2019年12月当時
日本企業の役員に占める女性比率の向上を目指す「30% Club Japan」が2019年5月に活動を開始しました。初代会長に当社社長 兼 CEOの魚谷雅彦が就任し、「日本のジェンダーギャップ指数が121位※である現状を受け止め、日本企業が中心となり、社会全体の変革を促す」というメッセージを発信しました。同年末には「TOPIX社長会」を立ち上げ、女性の活躍を阻む本質的課題について議論を開始しました。
当社の女性管理職比率は2017年に30%を達成し、取締役・監査役の女性比率は2019年に45%に達しています。女性活躍のリーディングカンパニーとして歩んできた当社は、今後、企業の枠を超えたジェンダーギャップ解消に貢献していきます。
文化 Inspire Beauty

資生堂×髙島屋 初の展覧会を開催
「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」展
2019年9月、日本橋髙島屋S.C. 本館にて、髙島屋、資生堂両社のコラボレーションによる初の展覧会「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」展を開催しました。2020年3月以降、大阪、名古屋、京都、横浜の髙島屋4店舗で同展覧会を開催予定です。歴代の商品やポスターなどの展示に加え、特設ショップでのオリジナルグッズの販売など、展覧会と連動した「美」の世界をお楽しみいただけます。
コーポレートガバナンス ダイバーシティ経営
資生堂のコーポレートガバナンス
- 「企業使命の達成を通じ、持続的な成長を実現するための基盤」と位置づけ
- 取締役会による監督と監査役(会)の監査によるダブルチェック体制を選択(監査役会設置会社)
取締役・監査役に求めるスキルセット(取締役会メンバーのスキルマトリクス)


役員指名諮問委員会委員長より
資生堂のコーポレートガバナンス体制について
社外取締役 役員指名諮問委員会委員長 石倉 洋子
資生堂の取締役会は、グループ全体への監督機能を十分に発揮するため、“モニタリングボード型”を選択しています。グローバルな組織体制を監督するため、必要と考えるスキルを検討し、それらをカバーする構成メンバーとしています。
社外役員を含めて取締役会の議論は活発であり、業務執行サイドから上がってくるさまざまな議題に対して、メンバーは持続的な企業価値の向上のため、それぞれの観点から意見を交わし、結論を導き出しています。
<魚谷社長の再任について>
役員指名諮問委員会は昨年9月に当社の社長である魚谷雅彦氏について、これまでの改革でのリーダーシップや経営姿勢を鑑み、同氏の社長再任を取締役会に答申し、取締役会はこれを決議しました。任期は2020年から2024年の5年間で、魚谷社長には、今後、企業価値のさらなる向上を目指した経営を主導すると同時にサクセッションプランを通じて後継者の育成・選定に注力していただきます。
(詳細は、当社企業情報サイト https://corp.shiseido.com/jp/ir/governance/をご参照)
コーポレートガバナンス 短期と長期でバランスのとれた役員報酬制度
当社の役員報酬の構成

- 固定報酬としての基本報酬と、業績連動報酬としての年次賞与と長期インセンティブで構成
- 役割等級制を導入し、等級が大きくなるほど業績連動比率が高くなる設計
- 単年度での業績達成と、中長期的な業績達成を等しく重要と考え、年次賞与と長期インセンティブにそれぞれの目的に合致した業績指標を設定し、単年度のみならず中長期の成長を実現する経営を動機づける設計
- 特に長期インセンティブでは、企業価値向上・維持を狙いとして経済価値と社会価値の両面から業績評価できる指標として設定
中長期の成長を促す経営を動機づける当社の長期インセンティブプラン
当社は長期的な企業価値の創造と維持に対する効果的なインセンティブの設定と株主のみなさまとの利益意識の共有を目的として、業績連動型の株式報酬の一種であるパフォーマンス・シェア・ユニット(16ページ(全文PDF)ご参照)
を導入しました。
これにより、以下の各項目の実現を促します。

詳しくは84ページ(全文PDF)を
ご覧ください。
長期インセンティブプランの業績評価指標について
当社は長期目標として連結売上高2兆円、連結営業利益3,000億円を掲げ、その実現に向けては継続的かつ一定の売上と利益の成長が必要とされます。そのために年平均成長率(CAGR)を経済価値向上の業績指標として設定しています。もう一方で環境・社会・企業統治(ESG)の観点からも継続的に改善・進化していくために社内外の関連指標を設定し、3年の評価期間で業績を評価する仕組みとしています。
また、株主にとっての重要な指標である連結ROEを支給率の閾値の判定として評価指標に加えており、閾値を下回ると業績連動部分の支給が無くなる設計にしています。これにより成長のための投資や厳しい経営判断を実行しながらも一定以上の利益を確保する仕組みとする一方で、役員には株主さまとの利益意識の共有をさらに高める効果を期待しています。


パフォーマンス・シェア・ユニットとは

- パフォーマンス・シェア・ユニットとは業績連動型株式報酬のひとつで、基準となる株式ユニット※を対象者に付与し、評価期間中の業績評価指標の達成度に応じてユニット数を増減させ、確定したユニット数に応じた株式または相当額の現金を対象者に支給する報酬です。株価を意識し、業績結果を報酬に反映させることに適した制度です。
- 当社のパフォーマンス・シェア・ユニットは、3年の業績評価期間における、連結売上高と連結営業利益の年平均成長率(CAGR)および非財務指標として環境・社会・企業統治(ESG)の達成度合いに応じて基準株式ユニット数を増減させて株式を支給する業績連動部分と、株主さまとの利益意識の共有の観点および優秀な人材の獲得・維持を目的に業績に連動しない固定支給部分の2つから構成されています。