事業報告(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
企業集団の現況に関する事項
企業集団の事業の経過及び成果
⑴ 業績の概況
当連結会計年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)におけるわが国の経済は、一部に足踏みも見られますが緩やかに回復しています。しかし、世界的な金融引き締め等を背景とした世界経済の下振れが、わが国の経済を下押しするリスクとなっています。
このような事業環境の中、当社グループは2021年度より推進している10ヵ年の長期戦略「共通価値創造戦略TOTO WILL2030」で定めた目指す姿の実現に向けて、最初の3年間(2021~2023年度)の経営課題である、中期経営課題(WILL2030 STAGE1)に基づき、「グローバル住設事業」と「新領域事業」の2つの事業軸で活動を推進しました。
「グローバル住設事業」では、「きれいと快適」「環境」を両立するTOTOらしい商品を「サステナブルプロダクツ」と位置付け、これらの商品をグローバルで普及させることにより、地球環境に配慮した、豊かで快適な社会の実現に貢献しています。
また「新領域事業」では、DXによる社会の変革をTOTOオンリーワンのセラミック商品の開発・価値提案などで半導体市場の進化に貢献しています。
その結果、当連結会計年度の業績は、売上高が7,022億8千4百万円(前期比0.2%増)、営業利益が427億6千6百万円(前期比12.9%減)、経常利益が515億1千5百万円(前期比5.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が371億9千6百万円(前期比4.5%減)となりました。
事業別の業績は、次のとおりです。なお、事業別の売上高については、外部顧客への売上高を記載しています。
■当期の連結業績

⑵ 事業別の状況
グローバル住設事業
「日本住設事業」「海外住設事業」の2つの事業で構成しています。
当連結会計年度の業績は、売上高は6,655億2千9百万円(前期比2.2%増)、営業利益は342億3千2百万円(前期比5.8%増)となりました。
<日本住設事業>



当連結会計年度の業績は、売上高は新商品や価格改定効果により住宅リモデルの売上高が伸長し4,730億9千2百万円(前期比2.2%増)、営業利益は外部調達コスト増等の影響を受けたものの、価格改定、コストリダクション効果により223億9百万円(前期比14.7%増)となりました。
住宅用途ではリモデルは増収、新築は減収、パブリック用途ではリモデル・新築いずれも前年並みとなりました。
2018年度から取り組んでいる「あんしんリモデル戦略」を中心に、TOTOらしいきれいで快適な高付加価値な商品とサービスでお客様により良い生活価値を提案し需要喚起を図っています。
また、これまで創り出してきた清潔なトイレ文化を日本から世界へ発信していくことに加え、より衛生的で環境性能に優れた高付加価値商品の開発・提案を強化しています。

システムキッチン「THE CRASSO」
レッドドット・デザイン賞 ベストオブザベストを受賞
- 受賞対象:
- カウンター、スクエアすべり台シンク、水ほうき
水栓LF、タッチレス「きれい除菌水」生成器

高級ホテルへの納入事例
「ザ・リッツ・カールトン福岡」
撮影:川辺明伸
<海外住設事業>
(中国大陸事業)



当連結会計年度の業績は、売上高は不動産市況低迷の影響を受け840億7千4百万円(前期比1.2%減)、また、営業利益は在庫調整に伴う減産影響等により43億6千6百万円(前期比46.3%減)となりました。
長引く不動産市況低迷の影響を受けながらも事業活動を積極的に推進し、これまで築き上げてきたブランド価値の更なる向上を目指して、「ネオレスト」「ウォシュレット」を中心に販売活動を引き続き強化しています。
また、成長市場から成熟市場へと変わりつつある同市場においては、新築からリモデルへの転換による新たなビジネスモデルの基盤構築と需要開拓に取り組んでいます。


上海で開催されたアジア最大規模の国際見本市
「Kitchen & Bath China 2023」
<海外住設事業>
(アジア・オセアニア事業)



当連結会計年度の業績は、台湾地域における外部調達コスト増や、ベトナムの市況悪化影響及び在庫調整に伴う減産影響等により、売上高は449億5千8百万円(前期比0.5%増)、営業利益は61億3千1百万円(前期比14.1%減)となりました。
高級ブランドとしての認知度を活かした事業活動を推進し、台湾地域やベトナムでは「ウォシュレット」や節水大便器を中心とした顧客接点強化等、それぞれの国・地域における販売力強化及びアフターサービス体制の整備などに取り組んでいます。
また、「ネオレスト」や「ウォシュレット」の積極的なプロモーションを展開し、各地域における5スターホテルなどの著名物件の受注強化を推進しています。
あわせて、世界の供給基地としてベトナム、タイを中心とした生産体制を充実させ、各国・地域に根差した企業としての活動を推進しています。


TOTOベトナム水栓金具工場
(2024年3月稼働開始)
<海外住設事業>
(米州事業)



当連結会計年度の業績は、厳しい市場環境の中でも「ウォシュレット」の積極的な拡販を進めることで、売上高は588億9千万円(前期比10.2%増)、営業利益は27億7千4百万円(前連結会計年度は営業損失10億8千7百万円)となりました。
米国における金利高止まり基調により不動産市況が低迷している環境下においてもこれまでの取り組みが奏功し、「ネオレスト」「ウォシュレット」の売上は堅調に推移しています。
特に、中高級市場において清潔機能を中心に価値伝達を強化し、「ネオレスト」「ウォシュレット」並びに節水大便器などの快適性、デザイン性がお客様に評価されています。
また、ショールーム展示の拡充やホームページの充実、eコマース、アフターサービス体制の整備など、お客様接点の強化や効率的な供給体制づくりを推進しています。


代理店ショールームでの展示の様子
<海外住設事業>
(欧州事業)



当連結会計年度の業績は、ドイツでの暖房工事関連の国策影響が続いており、売上高は45億1千2百万円(前期比14.9%減)、営業損失は13億4千9百万円(前連結会計年度は営業損失12億9千7百万円)となりました。
欧州では、グローバルにおけるTOTOブランドの発信と、欧州のお客様の嗜好に合ったデザイン性の高い商品の販売やショールーム展示を通じて価値訴求の取り組みを強化しています。
重点的に活動を推進しているドイツでは、販売代理店との協業及び施工店の開拓・拡大に注力しています。
イギリス、フランスでは、5スターホテルなどの高級現場での「ネオレスト」や「ウォシュレット」を中心としたきれいで快適な高付加価値商品の認知度が向上し、採用が進んでいます。


全室「ウォシュレット」が採用されている高級ホテル
「メゾンアルバ ホテル ル ポンヌフ」(フランス)
新領域事業
<セラミック事業>



当連結会計年度の業績は、高効率な生産体制により一定の利益水準は維持したものの、半導体市況低迷の影響により、売上高は364億7千6百万円(前期比26.3%減)、営業利益は109億6千5百万円(前期比43.4%減)となりました。
当連結会計年度の半導体市況は多くの用途・製品で低調なまま推移しました。中でも、新設工場への半導体製造装置需要が減少したこと、また、既設工場での稼働縮小に伴い、交換需要も在庫調整局面の影響を受け、当社グループの半導体製造装置に採用されているセラミック製品の売上も前年に比べ減少しました。
しかしながら、徐々に回復局面になってきており、これまで培ってきたファインセラミックス技術の進化と開発力の向上、そして、高効率な生産を実現するスマートファクトリーの更なる進化などによって、競争・変動の激しい半導体市場に今後も着実に対応していきます。
【ご参考】TOTOグループの技術が活用されているフィールド

その他
<社外からの評価について>
・サステナビリティ関連
グローバルな環境情報開示システムを運営する国際的な非営利団体であるCDPより、気候変動への取り組みにおいて、最高評価の「Aリスト企業」に初めて選定されました。更に、「サプライヤーエンゲージメント評価」においても最高評価の「サプライヤーエンゲージメント・リーダー」に2年連続で選定されました。
また、国際的な環境イニシアチブ「SBTイニシアチブ」より、2030年度に向けた温室効果ガスの削減目標が気候変動による世界の平均気温上昇を産業革命前と比べ1.5℃未満に抑えるという「1.5℃目標」であると認められ、認定を取得しました。
・デザインへの評価
国際的に権威のある「iFデザイン賞」をハンドドライヤー「クリーンドライ(吸引・高速両面タイプ)」が受賞しました。これにより当社グループでは11年連続の「iFデザイン賞」受賞となりました。
当社グループでは、引き続きデザインとテクノロジーの融合を追求し、TOTOらしい商品をグローバルに普及させることで、「持続可能な社会」、「きれいで快適・健康な暮らし」の実現に貢献していきます。
【ご参考】連結財務ハイライト




企業集団の対処すべき課題
⑴ 会社の経営の基本方針
当社グループは、社是「愛業至誠:良品と均質 奉仕と信用 協力と発展」とTOTOグループ企業理念「私たちTOTOグループは、社会の発展に貢献し、世界の人々から信頼される企業を目指します。」に基づき、広く社会や地球環境にとって有益な存在であり続けることを目指して企業活動を推進しています。
⑵ 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、2050年の持続可能な社会・カーボンニュートラルの実現に貢献し、すべての人に快適で健康な暮らしを提供することを目指しています。
そのために、2030年のありたい姿として「きれいで快適・健康な暮らしの実現」「社会・地球環境への貢献」を実現すべく、10ヵ年の長期戦略「共通価値創造戦略TOTO WILL2030」を2021年4月末に発表しました。
「共通価値創造戦略TOTO WILL2030」

その中では、企業として取り組むべき重要課題であるマテリアリティを「きれいと快適・健康」「環境」「人とのつながり」として設定、サステナビリティ経営を推進し、地球環境に負荷をかけずに豊かで快適な社会を実現すると共に、経済的成長の実現を目指しています。
その推進フレームは、「コーポレート・ガバナンス」と時代の変化に先んじるための「デジタルイノベーション」をベースとし、「グローバル住設事業」「新領域事業」の2つの事業軸と、全社最適視点で横串を通す3つの全社横断の革新活動です。
中期経営課題(WILL2030 STAGE2)

<グローバル住設事業について>
■日本住設事業
少子高齢化に伴い新築住宅着工戸数が減少し、ストック型社会への移行が進む中、日本住設事業においては、リモデル(住宅・パブリック)に注力しています。住宅リモデルでは「あんしんリモデル戦略」を進化させ、豊富な住宅ストックに対する需要喚起を行い、デジタルやAIを活用しながらお客様一人ひとりに合わせた提案を強化していきます。パブリックでは建築ストックのリモデル需要を喚起し、TOTOが創り出した最新の快適かつ衛生的なトイレ空間の採用拡大を図っていきます。
また、時代やお客様のニーズの変化に対応したサステナブル高付加価値商品の開発・提案を強化し、高収益な事業体質への転換と生産性を高めていきます。
■海外住設事業
(中国大陸事業)
成長市場から成熟市場へと移り変わる中で、これまでの新築からリモデルへの転換を図り、リモデル需要獲得のための基盤構築を進め、お客様から選ばれ続けるブランドを目指し事業活動を推進していきます。市場環境や消費者の購買行動の変化などを捉えながら、ショールームなどのお客様接点の強化、元請工事業者との関係強化・協業、リモデル好適商品の拡充、リモデル向けのプロモーション強化などを通じてリモデルへの取り組みを強化していきます。
(アジア・オセアニア事業)
所得水準上昇による購買力の向上や下水道の普及に伴い、TOTO商品をご採用頂ける機会が拡大しています。多様な文化・生活様式を擁するアジア諸国・地域において、販売基盤を更に強化し、最も信頼され、愛されるブランドを目指し事業活動を推進していきます。
特に、ベトナム、インド、タイ、中東などの成長市場において、代理店網の拡充、著名物件の獲得を強化し、質の高い節水大便器や「ウォシュレット」などの提案を推進していきます。
(米州事業)
米国では温水洗浄便座が普及期に差し掛かり市場が拡大しており、「ウォシュレット」の売上が高い伸長で推移し、市況が厳しい中、事業全体を牽引しています。「ウォシュレット」の確固たる地位確立に向けて、建材店のショールームやeコマース、リテール多店舗店などの顧客接点の構築と更なる進化により、需要喚起を加速させ、「ネオレスト」「ウォシュレット」を軸としたきれいで快適、環境性能に優れた高付加価値商品で市場をリードし、市況を上回る成長の実現を目指していきます。
(欧州事業)
「ネオレスト」「ウォシュレット」を中心に、デザインと機能を融合させたTOTOらしい商品の販売・サービスのネットワークを更に拡充し、きれいで快適な水回りの認知拡大を図っています。流通協働による販売網の更なる発展や著名物件への納入等、継続的な新商品投入により欧州トップブランドとしての地位実現を目指し、事業活動を推進していきます。
<新領域事業について>
■セラミック事業
DXによる社会の変革をTOTOのセラミック技術で支えることを目指す姿とし、今後更に高度化する半導体に対して技術開発を強化し、伸長する半導体市場への商品供給のため生産性を高めていきます。商品・販売面では、次世代半導体製造装置・半導体露光装置へオンリーワン商品の価値提案、新たな用途への採用を目指し新技術に挑戦していきます。生産面ではDX化やAIの導入、サプライヤーから顧客までバリューチェーン全体におけるデータ連携などによりスマートファクトリーを更に進化させ、オンデマンド生産を実現する高効率な生産体制を構築して、競争・変化の激しい半導体市場に対応していきます。
<全社横断革新活動について>
■マーケティング革新
日本発のコアテクノロジーをグローバルでも共通基盤技術として活かしながら、エリアごとの市場や特性に応じた商品企画・開発を推進し、世界に通用する美しく快適な商品を展開しています。デザインとテクノロジーの融合を世界に向けて統一したプロモーションで発信しています。
■デマンドチェーン革新
「デマンドチェーン革新」では、「サプライチェーン革新」と「もの創り革新」それぞれの活動を推進し、これまで日本で培ってきた、商品企画から、研究開発、購買、生産、物流、販売、アフターサービスまで一体となった活動をグローバルで展開し、お客様のご要望に素早く効率的に応える体制を構築しています。
「サプライチェーン革新」では、リスク想定を深化させ、サプライチェーンの更なる強靭化に取り組むと共に、BCP※対応強化と「納期乖離」「棚卸資産」「サプライチェーンコスト」の極小化に向けて、生産・販売一体となって事業体質強化に取り組んでいます。
- (※)BCP:
- Business Continuity Plan(事業継続計画)
「もの創り革新」では、開発プロセスにおける設計のプラットフォーム化を推進することで、開発効率の向上とあわせて、生産プロセスの自動化の促進を図っています。また、もの創りの上流から下流まで、デジタルデータ活用の幅を広げ、効率化とデータ分析による改善を進めています。
また、カーボンニュートラルの実現に向け、環境に配慮したもの創り体制の構築を推進しています。
■マネジメントリソース革新
多様な人財が集まり、安心してイキイキとチャレンジし、社員が誇りに思い働き続けたいと思える会社を目指して活動を推進しています。
「DXの実践」では、DX取り組みの更なる強化により、価値創出・業務効率の最大化の実現を目指しています。
「ダイバーシティの更なる進化」では、国籍・年齢・ジェンダー・ライフイベントを問わず「多様な人財」が、「多様な働き方」でイキイキとチャレンジできる職場を目指しています。
「強固な事業基盤整備」では、当社グループの成長を支えるために、安心して働ける職場づくりの実現を目指しています。
<サステナビリティの推進について>
当社グループでは、2050年の持続可能な社会、カーボンニュートラルの実現に貢献し、すべての人に健康で快適な暮らしを提供することを目指しています。これらの取り組みにより、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」についても貢献していきます。
「共通価値創造戦略TOTO WILL2030」では、マテリアリティを企業理念の実現にあたり取り組むべき重要課題と位置付け、サステナビリティの推進に取り組んでいます。
■「きれいと快適・健康」
目指す姿として、「きれい・快適を世界で実現する」「すべての人の使いやすさを追求する」を設定し、「きれいで快適なトイレのグローバル展開」に取り組んでいます。
「除菌」「防汚」「清掃」の技術(「きれい除菌水」「セフィオンテクト」「フチなし形状/トルネード洗浄」)や「タッチレス」などの非接触技術の提案、「ウォシュレット」に代表される「快適なトイレ」の提供を通じて、「すべての人の使いやすさ」を実現し、清潔で健康的な生活環境を世界中に提供しています。
これらにより、SDGsのテーマ「3:すべての人に健康と福祉を」などに貢献しています。
■「環境」
目指す姿として、「限りある水資源を守り、未来へつなぐ」「地球との共生へ、温暖化対策に取り組む」を設定し、「節水商品の普及」や「CO₂排出量削減」に取り組んでいます。
「節水商品の普及」では、限りある水資源を守ることで、SDGsのテーマ「6:安全な水とトイレを世界中に」などに貢献しています。
2050年のカーボンニュートラルで持続可能な社会の実現に向けて、パリ協定と整合した科学的根拠に基づく2030年までの温室効果ガスの削減目標を策定し、削減活動を推進しています。
事業所からのCO2排出量(スコープ1、スコープ2)削減については、省エネ改善や大型設備の更新と共に、再生可能エネルギーの導入を拡大し、使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指しています。
商品使用時のCO2排出量(スコープ3カテゴリ11)削減については、商品の環境性能をより進化させていくと共に、節水商品をグローバルに普及させることにより、地球環境に配慮した豊かで快適な社会の実現に貢献していきます。
これらの取り組みにより、SDGsのテーマ「13:気候変動に具体的な対策を」などに貢献しています。
■「人とのつながり」
目指す姿として、「お客様と長く深い信頼を築く」「次世代のために、文化支援や社会貢献を行う」「働く喜びを、ともにつくりわかち合う」を設定し、「お客様満足の向上」「地域に根差した社会貢献活動の推進」「働きやすい会社の実現」に取り組んでいます。
「早く、確実、親切な」アフターサービスの提供やショールームでの提案活動によるお客様満足の向上、植樹活動や地域清掃等の幅広い社会貢献活動への社員の参加促進などにより、人とのつながりを大切にしています。
また、「多様な人財の個性を尊重するダイバーシティ活動の推進」や「働き方改革」により、当社グループ社員が「働きがいのある人間らしい仕事」をして、イキイキと働けるよう活動を推進しています。これらにより、SDGsのテーマ「8:働きがいも経済成長も」などに貢献しています。
【ご参考】グローバルに広がる社会貢献活動

TOTOグループは、各国・地域及び地球規模での社会課題の解決を目指し、各地の生活環境・文化・歴史を尊重した社会貢献活動に取り組んでいます。
経営資源を有効に活用し、事業活動と共に社会貢献活動にも取り組むことで、その国・地域で必要とされる存在を目指します。
TOTO水環境基金
TOTOグループは地域を支える団体と協働で社会課題の解決を目指すために、2005年度に「TOTO水環境基金」を設立し、地域の水と暮らしの関係を見直す継続的な活動を支援しています。

湿原の生物調査(北海道)

給水設備の設置(エチオピア)

WILL2030 社会的価値・環境価値指標

◆:WILL2030の長期目標
- ※1 2005年当時の商品を普及し続けた場合と比べた削減効果
- ※2 WILL2030 STAGE2と同様の算定条件とした場合(概算値)
- ※3 第三者保証取得予定(2024年6月末開示)
- ※4 対象範囲:日本・米州・欧州・中国大陸・台湾地域・インド・タイ・ベトナム
- ※5 目標設定中(2024年6月末開示)
コーポレート・ガバナンスの状況と会社役員に関する事項
1.コーポレート・ガバナンスの状況
⑴ 基本的な考え方
当社グループは、「社会の発展に貢献し、世界の人々から信頼される企業」を目指し、公正な競争を通じて利潤を追求するという経済的主体であると同時に、広く社会にとって有用な存在であり続けるための経営を推進しています。その実現にあたっては、公平で公正な経営を執行・監督するための仕組みを構築すると共に、その拠り所となる理念を明確にすることが重要であると考えています。
- ① 当社グループは、将来にわたって引き継ぐべき「心」にあたる「グループ共有理念」と、その時代において進むべき方向性、つまり「体の動かし方」にあたる「事業活動ビジョン」から構成される「TOTOグループ経営に関する理念体系」を制定し、すべての事業活動の拠り所にしています。
- ② 取締役会・監査等委員会・会計監査人を設置し、法令及び定款に適合した業務執行の決定及び職務執行を行います。取締役会においては、公平性・客観性・透明性を重視し、当社から独立した社外取締役5名を招聘しており、当社の経営全般についてのさまざまな助言・提言をいただいています。また、取締役の職務執行を監査する監査等委員会は、社外取締役3名を含む4名で構成されています。経営会議をはじめとする主要会議への出席、取締役(監査等委員である取締役を除く。)との定期的な意見交換などにより、監査等委員会の監査が実効的に行われることを確保するための体制を整備しています。
- ③ 監査等委員会監査、会計監査人監査に加え、より高い内部監査システムを確立するため、業務執行部門から独立した内部監査室を設置し、社長執行役員の指示のもと、内部監査の充実を図っています。また、監査等委員会、会計監査人及び内部監査室各々による監査(三様監査)を実施すると共に、監査等委員である取締役による各監査結果の確認や情報連絡会など相互の緊密な連携により、監査の実効性強化・質的向上に努めています。
⑵ コーポレート・ガバナンス体制
① 当社のコーポレート・ガバナンス体制は以下のとおりです。

【取締役及び取締役会】
取締役全員で構成する取締役会は、原則月1回開催し、全社・全グループ最適視点の意思決定を行うことはもちろんのこと、ステークホルダー最適視点の意思決定、及び取締役相互の職務執行監督を行っています。
また、自らの業務執行を実践していくために、監査等委員である取締役、取締役会議長及び社外取締役以外の取締役は執行役員を兼任しています。(取締役兼執行役員)
社外取締役には当社グループが目指す経営を実践している先進企業の経営経験者や会計・法務等の専門知識を有する方を招聘しています。社外取締役は経験豊富な経営者としての高い知見や専門知識に基づき、経営全般についてさまざまな助言と提言を行っています。
【監査等委員及び監査等委員会】
監査等委員である取締役全員で構成する監査等委員会は、原則月1回開催し、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の職務の執行に関して、適法性及び妥当性の観点から監査を行っており、経営会議をはじめとする主要会議に出席し、必要に応じて意見の表明を行うと共に、監査方針に則りインターネット等を経由した手段も活用しながら監査を行っています。また、取締役(監査等委員である取締役を除く。)との定期的な意見交換など、監査等委員会の監査が実効的に行われることを確保するための体制を整備しています。
社外の監査等委員である取締役には、企業経営に係る高度な見識・経験や会計・法務等の専門性を保持している方を招聘し、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の業務執行について客観的かつ公正な立場から監査を行っています。
【指名諮問委員会】
指名諮問委員会は、原則年1回以上開催し、取締役人事に関する審議・確認等を通じて、当社の経営の客観性及び透明性の確保に資することを目的とし、株主総会に提出する社外取締役を含む取締役候補者の選任及び解任に関する議案や代表取締役の選定及び解職に関する議案を取締役会に答申するために設置しています。
委員は半数以上を社外委員とすることとし、取締役会にて委員及び委員長を選任しています。委員会は、独立役員5名を社外委員、及び代表取締役会長と代表取締役社長執行役員を社内委員として構成し、委員長は代表取締役社長執行役員としています。
決議につき特別の利害関係を有する委員は、その決議に加わることができません。
【報酬諮問委員会】
報酬諮問委員会は、原則年1回以上開催し、取締役の基本報酬、賞与、株式報酬の決定プロセスと配分バランスが、定款、株主総会決議事項及び取締役報酬基本方針に沿ったものであることの確認並びにその活動を通じて取締役報酬の妥当性・客観性確保に資することを目的として設置しています。
委員は過半数を社外委員とすることとし、取締役会にて委員及び委員長を選任しています。委員会は、独立役員5名を含む社外委員6名と、社内委員として代表権をもたない取締役1名で構成し、委員長は社外委員から選任しています。
【内部監査】
内部監査は、業務執行部門から独立した内部監査室を設置し、社長執行役員の指示のもと、当社及びグループ会社の業務が法令や定款、企業理念、社内規定に従って適正かつ効率的に遂行されているかなどについて評価・検証を行っています。
【執行役員】
取締役会の意思決定事項を効果的かつ効率的に実務執行するために、執行役員制度を導入しています。
【経営会議】
取締役兼執行役員で構成する経営会議は原則月2回開催され、その審議を経て業務執行に関する重要事項を決定しています。
② 2023年度における取締役会・監査等委員会の構成
<取締役会構成メンバーの基本的考え方>
当社の取締役会メンバーは、業務執行の監督と重要な意思決定を行うために、多様な視点、多様な経験、多様かつ高度なスキルを持ったメンバーで構成されることが重要であると考えています。当社の社外取締役には、当社グループが目指す経営を実践している先進企業の経営経験者や会計・法務等の専門知識を有する方を招聘し、社内取締役には、当社の企業理念を理解し事業に精通した者を指名することで、取締役会の知識・経験・能力のバランス及び多様性を確保しています。
2024年3月末現在、取締役15名は、当社グループにおいてキャリアを有する社内取締役10名、高い独立性を有する社外取締役5名で構成されています。これらのメンバーがそれぞれの特性を活かして議論を行い、法令上及び経営上の意思決定と業務執行の監督を行っています。
また、監査等委員会は、当社グループにおいてキャリアを有する常勤の監査等委員である取締役1名、高い独立性を有する社外の監査等委員である取締役3名で構成され、適法性及び妥当性の観点から監査を行っています。
【取締役会の構成】

(注)報酬諮問委員会には社外委員として社外有識者も選任されています。
③ 取締役会の実効性評価の概要
当社の取締役会の役割は、ステークホルダー最適視点の意思決定及び取締役相互の職務執行監督を行い、更に公平で公正な経営を執行・監督する仕組みを構築すると共に、その拠り所となるTOTOグループの共有理念や中長期経営計画・年度方針等の経営の基本方針を決定することです。この役割のもとに、毎年取締役会においてコーポレート・ガバナンスの状況を確認し、取締役会並びに企業統治体制の有効性・適正性について分析・評価を行っています。
分析・評価にあたっては、取締役全員の忌憚のない意見を引き出すこと及び客観的な分析を担保するために、集計と結果の分析を外部機関に委託したアンケート調査を定期的に継続して実施しています。
2024年3月度の取締役会では、社外取締役を含む出席者全員により、当社における取締役会の役割に照らし、取締役会の活動及び、2022年度の実効性評価で取締役全員を対象に実施したアンケート結果から認識した課題の取り組み状況について評価しました。あわせて、内部統制システムの運用状況、企業戦略等の大きな方向性の議論を含む取締役会議題、コーポレートガバナンス・コードにおける取締役会関連項目の視点で実効性を評価しました。
これら取締役会全体の実効性に関する分析・評価の結果は次のとおりです。
- ⑴ 内部統制システム整備の基本方針に則り、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保する体制など、すべての項目が確実に運用されています。
- ⑵ 取締役会決議案件については規則どおり上程されており、また、経営会議決議事項など重要案件の執行状況が取締役会に報告されるように運用されています。
- ⑶ 取締役会構成のジェンダー面の多様性や社外取締役比率1/3以上など、コーポレートガバナンス・コードの全項目に適正に対応しています。
- ⑷ アンケート結果から認識した課題への取り組みとして、今後の女性・外国人財の取締役登用に向けた計画的な育成について、幹部育成研修など次世代の母集団の拡充・育成の底上げなどを進めています。
以上より、当社の取締役会の運営は適切に機能しており、実効性は確保されていることを確認しました。
④ 現状の体制を選択している理由
当社グループは、経営の客観性・透明性を高め、経営責任を明確にすることによって、ステークホルダーの皆様の満足を実現し、企業価値を永続的に向上させることが企業経営の要と考えています。
その実現にあたっては、経営判断事項について、「誰が、何を、どこで意思決定するのか」「どのようにチェックするのか」を公平・公正な仕組みとして体系化することが重要と考えています。
当社は、意思決定と監督、及び効果的かつ効率的な業務執行の仕組みを構築し、企業価値の持続的な向上を図っています。
- ■責任体制の明確化(執行役員制度の導入など)
- ■経営の透明性・健全性の強化(指名諮問委員会、報酬諮問委員会の設置)
- ■監督・監査機能の強化(独立性の高い社外取締役の選任)
- ■意思決定機能の強化(経営会議の設置など)
監査等委員会設置会社の枠組みを基に指名委員会等設置会社の優れた機能を統合した体制としています。
2.取締役(2024年3月31日現在)

- 各兼職先と当社との間には通常の取引がありますが、当該取引金額は僅少であり、特別な取引関係はありません。
- 社外取締役 津田純嗣氏、同 山内重德氏、社外取締役 監査等委員 皿澤修一氏、同 丸森康史氏、同 家永由佳里氏の5名は、各証券取引所が一般株主保護のために確保することを義務付けている独立役員であります。
- 情報収集の充実を図り、内部監査部門等との十分な連携を通じて監査の実効性を高め、監査・監督機能を強化するために、井上茂樹氏を常勤の監査等委員として選定しています。
- 社外取締役 監査等委員 丸森康史氏は、長年にわたる金融機関(株式会社三菱UFJ銀行他)での業務執行経験があり、財務及び会計に関する相当程度の知見を有しています。
-
当社は、保険会社との間で会社法第430条の3第1項に規定する役員等賠償責任保険契約を締結しています。当該保険契約では、被保険者※が会社の役員等の地位に基づき行った行為(不作為を含む。)に起因して保険期間中に損害賠償請求がなされたことにより被る損害を填補することとしており(ただし、故意又は重過失による場合は除く。)、保険料は全額当社が負担しています。
※被保険者には取締役・執行役員・退任役員(退任から10年間)を含みます。
- 2024年4月1日付で次のとおり担当等が変更になっています。

3.取締役の報酬等
⑴ 取締役の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針に係る事項
<取締役報酬基本方針>
- ① 株主様と利害を共有し中長期的な期待に応え、TOTOグループ企業理念の実現と企業価値の持続的な向上を図っていくため、各取締役の経営意欲創出につながる制度内容であること
- ② 当社グループの将来を委ねる優秀な人財・多様な人財を引き付けることができる魅力的な制度内容であること
- ③ 報酬諮問委員会・取締役会を通じ、取締役報酬の決定プロセス及び分配バランスの妥当性が確認されていること
<報酬決定プロセス>
◆取締役(監査等委員である取締役を除く。)の報酬決定プロセス
当社は、2022年6月24日開催の取締役会において、取締役の報酬等の内容に係る決定方針を決議しています。当該取締役会の決議に際しては、あらかじめ決議する内容について、報酬諮問委員会へ諮問することとし、決定プロセスと分配バランスの妥当性・客観性並びに定款、株主総会決議事項及び取締役報酬基本方針に沿ったものである旨の答申を受けています。
当社は、当事業年度に係る取締役(監査等委員である取締役を除く。)の個人別報酬等について、報酬諮問委員会において多角的な検討を行ったうえで、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の報酬等の内容及び決定プロセスが取締役報酬基本方針に沿うものであることを確認しています。取締役会は、報酬諮問委員会の答申を尊重し、報酬等の内容が当該基本方針に沿うものであると判断しています。
取締役会では取締役(監査等委員である取締役を除く。)の報酬決定にあたり、代表取締役 社長執行役員である清田徳明氏へ以下の権限について、委任しています。
- ・基本報酬における役位別の報酬月額の設定
- ・賞与における役位別の原資配分基準ポイントの設定
- ・賞与における個別の減額査定の実施要否並びに実施する場合はその内容の設定
- ・株式報酬における役位別の配分基準の設定
委任した理由は、当社全体の業績等を勘案しつつ、担当部門の執行を指揮監督する各取締役の実績について横断的に適正な評価を行うには、執行の最高責任者である社長執行役員が適していると判断したためです。委任した権限の行使について、代表取締役 社長執行役員である清田徳明氏が設定した内容は報酬諮問委員会へ諮問しなければならないこととし、報酬諮問委員会はその設定内容に対して決定プロセスと分配バランスの妥当性・客観性並びに定款、株主総会決議事項及び取締役報酬基本方針に沿ったものであることを確認の上、答申することとしています。
◆監査等委員である取締役の報酬決定プロセス
監査等委員である取締役の報酬は、基本報酬のみとしています。また、監査等委員である各取締役の基本報酬額は、監査等委員である取締役の協議により職務と責任に応じて決定しています。
<報酬等の構成と上限>
◆報酬構成と支給対象

(注)譲渡制限付株式報酬は、退任までの長期保有を前提としており、株価を介して間接的に業績と連動する仕組みとしています。
◆取締役の報酬等についての株主総会の決議

(注)2022年6月24日第156期定時株主総会決議(決議時取締役数:15名、うち監査等委員である取締役数:4名)
<報酬の支給条件等について>
◆基本報酬
取締役の基本報酬は固定報酬であり、役位や職責等に応じて報酬月額を設定の上、各取締役へ支給することとしています。
◆賞与
取締役(監査等委員である取締役及び社外取締役を除く。以下「対象取締役」とする。)の賞与は、業績向上に対する意欲や士気を向上させ、かつ株主の皆様と価値を共有することを目的としています。賞与原資は、「単年度業績連動賞与」と「複数年度業績連動賞与」に分けて連結営業利益額を基に算出します。
主な指標として連結営業利益を選択した理由は、事業に直結した利益であり、業績向上に対するインセンティブが適切に機能すると判断したためです。
対象取締役へは、賞与原資を役位別の原資配分基準ポイントに沿って按分し、個別の減額査定を確定させた後に年1回支給します。
なお、前事業年度の連結業績における親会社株主に帰属する当期純利益が赤字の場合には、賞与は支給しません。支給内容は以下のとおりです。
- ・単年度業績連動賞与:前事業年度の連結営業利益の0.6%以内を支給
- ・複数年度業績連動賞与:以下表のとおり

当事業年度における賞与に係る指標の実績は、2024年3月期の連結営業利益42,766百万円で、対象取締役に支給される319百万円は、連結営業利益の0.75%となります。
◆譲渡制限付株式報酬
譲渡制限付株式報酬は、対象取締役が当社の企業価値の持続的な向上を図ると共に株主の皆様との一層の価値共有を目的とし、対象取締役に単年度のみならず中長期的な視点での経営を動機付ける設計としています。
対象取締役は、当社の取締役会決議に基づき、支給される金銭報酬債権の全部を現物出資財産として払込み、当社普通株式について発行又は処分を受けるものとします。
当社普通株式の発行又は処分にあたっては、当社と対象取締役との間で、譲渡制限付株式割当契約を締結しています。
・割当契約の概要

<報酬の割合の決定方針>
対象取締役の報酬のうち、賞与はその業績指標を連結営業利益に基づき原資配分する性質上、その値によって報酬における割合の構成比が大きく変動します。このため、報酬の割合の算定にあたっては、当事業年度の決算短信にて最初に開示した連結業績予想(通期)に記載の連結営業利益を基準として算定します。
以上より、2023年度における対象取締役の報酬の割合の決定方針は、以下のとおりとなります。

- ・連結営業利益:53,000百万円(2023年4月28日決算短信開示値)
- ・複数年度業績連動賞与は支給の見込み
- ・複数年度賞与算出に係る社会的価値・環境価値指標の支給係数が 1.0
⑵ 取締役の報酬等の総額区分

- 1.業績指標に関する実績:連結営業利益42,766百万円(複数年度業績連動賞与は支給)
- 2.譲渡制限付株式報酬の交付実績は、49ページ「Ⅱ 株式に関する事項」の「5.当事業年度中に職務執行の対価として当社役員に対し交付した株式の状況」に記載のとおりです。
⑶ 報酬等の総額が1億円以上である取締役の報酬等の種類別の額
当期における報酬等の総額が1億円以上の取締役は以下のとおりです。

4.社外取締役の状況
⑴ 主な活動状況

⑵ 責任限定契約に関する事項
当社は、2006年6月29日開催の第140期定時株主総会において定款を変更し、社外取締役との責任限定契約に関する規定を設けています。
当該定款に基づき、当社が社外取締役の全員と締結している責任限定契約の内容の概要は次のとおりであります。
(責任限定契約の内容の概要)
在任中、その任務を怠ったことにより会社に損害を与えた場合において、社外役員が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、会社法第425条第1項に定める最低責任限度額を限度として、会社に対し損害賠償責任を負うものとし、当該限度額を超える部分については、会社は社外役員を免責する。