事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過及びその成果
当連結会計年度の当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルスの世界経済への影響は収束に向かいつつありましたが、国際情勢の悪化を背景にした資源・エネルギー価格の高騰による物価上昇は継続しました。又、欧米の連続的な大幅利上げに加えて、米国の銀行破綻、そして欧州の銀行経営不安に伴い、世界の金融市場は混乱し世界的な景気後退懸念が一層高まり、世界経済の不透明感は強まりました。
世界半導体市場は、PC、スマートフォン及びサーバー市場の低迷を受け、下期に入り半導体デバイスの生産及び在庫の調整は加速しました。一方で、シリコンウェハーは下期において小口径ウェハーの生産調整が強まったものの概して高い稼働が続きました。
こうした状況下、当連結会計年度の業績は、売上高58,394百万円(前期比12.9%増)、営業利益13,243百万円(前期比9.8%増)、経常利益13,595百万円(前期比8.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益10,594百万円(前期比15.7%増)となりました。
セグメント別売上高
日本

日本につきましては、売上高は35,995百万円(前期比12.9%増)、セグメント利益(営業利益)は11,769百万円(前期比10.1%増)となりましたが、半導体市場の調整を受け、第3四半期以降の販売の伸び率(対前年同期)は鈍化しております。
北米

北米につきましては、売上高は7,513百万円(前期比19.8%増)、セグメント利益(営業利益)は製品構成の良化と為替の影響もあり747百万円(前期比104.9%増)となりましたが、半導体市場の調整を受け、第4四半期の販売は前年同期比で減少に転じました。
アジア

アジアにつきましては、売上高は12,951百万円(前期比9.3%増)、セグメント利益(営業利益)は3,089百万円(前期比14.0%増)となりましたが、半導体市場及びHDD(ハードディスクドライブ)市場の調整を受け、第3四半期以降の販売は前年同期比で減少に転じております。
欧州

欧州につきましては、売上高は1,934百万円(前期比11.9%増)となったものの、セグメント利益(営業利益)は物流費の高騰により185百万円(前期比2.7%減)となりました。
用途別売上高
ウェハーラッピング

シリコンウェハー向け製品につきましては、ラッピング材の売上高は7,094百万円(前期比13.5%増)となりましたが、小口径ウェハーの生産調整を受け、第3四半期以降の販売の伸び率(対前年同期)は鈍化しております。
ウェハーポリシング

ポリシング材の売上高は13,730百万円(前期比13.0%増)となりましたが、小口径ウェハーの生産調整を受け、第3四半期以降の販売の伸び率(対前年同期)は鈍化しております。
CMP向け

CMP向け製品につきましては、売上高は28,680百万円(前期比16.7%増)となりましたが、半導体市場の調整を受け、ロジック、メモリ向けともにアジアでの販売の減少が響き、第3四半期以降の販売の伸び率(対前年同期)は大きく鈍化しております。
ハードディスク向け

ハードディスク向け製品につきましては、特に第3四半期におけるHDD(ハードディスクドライブ)市場の急激な生産及び在庫の調整を受け、売上高は1,506百万円(前期比12.7%減)となりました。
一般工業用研磨材

一般工業用研磨材につきましては、売上高は4,603百万円(前期比4.4%増)となりました。
財産及び損益の状況
企業集団の財産及び損益の状況
対処すべき課題
当社が主たる事業領域としている半導体市場は、コロナ禍を契機に様々な場面で急速にデジタル化が進展し、旺盛な半導体需要が継続しておりましたが、2022年秋頃より、PC、スマートフォン及びサーバー市場の低迷に伴い生産及び在庫の調整が見られ、当社製品の主要用途先である先端半導体も影響を受けております。需要の回復までなお時間を要することから、2023年の半導体市場はマイナス成長が見込まれるも、中長期的には更なる拡大が見込まれています。当社のお客様であるシリコンウェハーメーカー及び半導体デバイスメーカーの多くは、将来予想される旺盛な半導体需要に応えるべく積極的に大規模な設備投資計画を公表・実施しております。また、半導体の技術革新の進展に伴い、次世代製品開発や品質保証に関するお客様からの要求水準も高まっております。
一方で、自然災害は年々激甚化の傾向にあり、物流網に与える影響も深刻化しております。また情報セキュリティインシデント(サイバー攻撃等を含む情報セキュリティにおける事件や事故)については、当社においても2022年2月に発生したシステム障害に対し再発防止に向け必要な対策を講じてまいりましたが、インシデントがますます複雑化していることから、引き続き対応を強化すべき重要な課題であると認識しております。
このような経営環境の中、半導体市場において将来的に更なる需要増加が見込まれることを鑑み、当社は供給責任を果たすべく、国内外で段階的に設備投資を進めるべく体制を整備していくこと、次世代製品開発や品質保証に関するお客様の高まる要求水準を満たすべく研究開発や品質保証のレベルアップを図ること、また、緊急事態に備える事業継続力を強化することが、当社の企業価値向上のための課題であると認識しております。特に、品質保証については、当社が過去から大切にしている「ものづくりへの誇り」のベースとなるインテグリティ(誠実、真摯であること)を強く意識し、社会的規範や倫理を基に「自ら考え」、直面する課題や問題、業務を見つめ直し、「ものづくりへの誇り」を確固たるものにすべく、インテグリティマインドの強化を推進してまいります。
昨今の地政学的な不透明さや新感染症拡大などにより、原材料の調達難及び価格高騰、物流の混乱等により、サプライチェーンマネジメントの重要性は増しております。
当社としてもより強靭な供給体制を整えるべく、有事においても対応可能なサプライチェーンマネジメントの強化に全社一丸となって取り組んでまいります。
一方で、中長期的な企業価値向上の観点からは、半導体市場に過度に依存しない売上の安定化と更なる拡大を目指し、事業領域を拡大する必要があると認識しております。このため、中長期視点での研究開発と新規事業の探索・育成による事業領域の拡大に努めるとともに、非半導体領域及び非研磨分野での用途拡大を進めていくことも当社の企業価値向上のための課題であると認識しております。
具体的な内容については、「7.会社の支配に関する基本方針 2.基本方針の実現に資する取組みの概要 ② 企業価値向上のための取組み(中長期経営計画)」に記載のとおりであります。