事業報告2021年4月1日から2022年3月31日まで
企業集団の事業の経過及び成果等
企業集団の主要な事業内容
日本郵政グループ(以下「当社グループ」といいます。)は、日本郵便株式会社(以下「日本郵便」といいます。)、株式会社ゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ銀行」といいます。)及び株式会社かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命保険」といいます。)が主な事業主体となって、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等の業務を営んでおります。
金融経済環境
当年度の国内経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況により一部弱さが残るものの、各種政策の効果や海外経済の改善もあり、持ち直しの動きが見られました。しかし、2022年2月以降ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、景気の下振れリスクが急速に高まりました。
世界経済においても、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が緩和される中、先進国経済の回復が海外経済の改善を牽引し、国・地域ごとにばらつきがあるものの、全体的には回復が見られました。しかし、2022年2月以降ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、エネルギーのロシア依存度が高い欧州経済への悪影響が強く懸念されるほか、資源価格高騰やサプライチェーンの混乱により、世界的に景気の不透明感が強まりました。
金融資本市場では、国内の10年国債利回りは、長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策のもと、ゼロ%付近で概ね安定的に推移しておりましたが、2022年1月以降欧米の長期金利につれて上昇しました。日経平均株価は、米国金利低下に伴う円高進行や新型コロナウイルス感染症の拡大への懸念から下落傾向にありましたが、2021年8月下旬からの感染拡大ピークアウトの兆しや米国株高を受けて上昇に転じ、9月には一時30,000円台まで回復しました。その後は、新型コロナウイルス感染症の新たな変異株への懸念等により下落傾向が続き、2022年3月にはロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、一時24,000円台まで落ち込みました。
物流業界においては、eコマース市場の拡大が継続している中、各社が商品・サービスの向上を通じたシェア獲得に取り組むなど、厳しい競争下にあります。郵便事業においては、デジタル化の進展等により、郵便物の減少が継続しております。また、最低賃金の改定等を背景に、人件費単価の上昇等も続いております。
銀行業界においては、当年度は、全国銀行における預金は23年連続で増加し、貸出金も11年連続で増加しました。金融システムは、新型コロナウイルス感染症の拡大が引き続き国内外の経済・金融面に大きな影響を及ぼしているものの、全体として安定性を維持しています。
生命保険業界においては、超高齢社会の進展、ライフスタイルの変化等を背景としたお客さまニーズの多様化や選別志向の高まりが見られます。
企業集団の事業の経過及び成果
当社グループは、2021年5月に、中期経営計画「JP ビジョン2025」(2021年度~2025年度)を発表しました。当社グループは、少子高齢化やデジタル化の進展等、グループを取り巻く社会環境の変化を踏まえ、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を目指し、DX※の推進により、リアルの郵便局ネットワークとデジタル(「デジタル郵便局」)の融合に取り組んでおります。また、ユニバーサルサービスを含むコアビジネス(郵便・物流事業、銀行業、生命保険業)の充実強化に加え、不動産事業の拡大や、新規ビジネス等の推進により、ビジネスポートフォリオを転換させることで、グループの新たな成長の実現に取り組んでおります。2021年7月には、グループの横断的・一体的なDX施策の推進やグループのDX人材の育成に注力をしていくため、「株式会社JPデジタル」を設立しました。
2021年6月には、当社、日本郵便及びかんぽ生命保険は、アフラック・インコーポレーテッド及びアフラック生命保険株式会社と、「お客さまと地域を支える『共創プラットフォーム』」の実現に向けた「資本関係に基づく戦略提携」のさらなる発展について合意しました。
また、当社グループは、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題について、2020年1月に策定した業務改善計画をもとに、引き続き各種施策に取り組みました。外部専門家の方々で構成された、各種取組みを公正・中立な立場から検証するJP改革実行委員会(2020年4月から2022年3月まで設置)のモニタリングを受けながら、お客さまからの信頼回復に向けて改善策を実行しており、2021年12月には、同委員会より、業務改善計画について概ね計画通り順調に進捗している旨の評価を得ました。
当社におきましては、持株会社として、当社グループの企業価値向上を目指し、グループ各社の収益拡大や経営効率化等を着実に推進するとともに、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保、郵便局ネットワークの維持・活用による安定的なサービスの提供等という目的が達成できるよう、グループ運営に取り組みました。
また、グループ各社のコンプライアンス・プログラムの策定・推進の状況、各社の内部監査態勢・監査状況の把握に努めたほか、集約により効率性が高まる間接業務をグループ各社から受託するとともに、病院事業の経営改善に取り組みました。宿泊事業については、2022年4月に当社が保有する宿泊施設「かんぽの宿」のうち32施設に係る事業を譲渡しました。
さらに、グループ各社が提供するサービスの公益性・公共性の確保や、持続可能な社会の実現・未来の創造に貢献するため、国連で採択された国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」を踏まえたESG(環境、社会、ガバナンス)に関する取組みや災害復興支援に、グループ一丸となって取り組んでまいりました。2021年4月には、当社及び日本郵便は、東京電力ホールディングス株式会社と、カーボンニュートラル化の推進に向けた戦略的提携について合意しました。
また、新型コロナウイルス感染症対策については、感染の防止と業務・サービスの継続等のため、必要な取組みを継続しました。
※ DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。
以上の結果、当年度、当社グループにおきましては、連結経常収益は11兆2,647億円(前期比3.88%減)、連結経常利益は9,914億円(前期比8.45%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,016億円(前期比19.95%増)となりました。
【ご参考】 当期実績

事業区分別の概況
日本郵便において、郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律(令和2年法律第70号)の施行に伴うサービスの見直しとして、普通扱いとする郵便物及びゆうメールの土曜日の配達休止やお届け日数の繰り下げ等を行い、その実施に当たっては、サービス提供に混乱が生じることがないよう、利用者に十分な周知を行いました。
また、スマートフォンを活用した年賀状サービスの提供や手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便の利用の維持を図るとともに、成長するEC市場やフリマ市場を確実に取り込むため、二次元コードを読み取ることで、送り状を貼付せず、郵便ポストに投函できる「ゆうパケットポスト発送用シール」の販売を開始するとともに、楽天グループ株式会社と共同で、「楽天市場」の複数店舗の商品のまとめ配送を指定できる「おまとめアプリ」の提供を開始するなど、他社とも連携しつつ、お客さまの利便性の向上を図ってまいりました。さらに、2021年7月には、共同の物流拠点の構築や共同の配送システム及び受取サービスの構築等を目的として、日本郵便と楽天グループ株式会社の両社が出資する「JP楽天ロジスティクス株式会社」を設立しました。
加えて、2021年9月には、物流サービスの共創に向けた、両社の事業成長を目的とした協業に関して、佐川急便株式会社と基本合意書を締結しました。具体的には、「飛脚ゆうパケット便」、「飛脚グローバルポスト便」、「クール宅配便」等の取組みについて公表したところであり、今後も、持続可能な社会の実現に向け、様々な物流課題や社会課題について、オープンな環境で、幅広い企業との協業も視野に入れ、新たなソリューション開発に積極的に取り組んでまいります。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、郵便物等の放棄・隠匿を含む部内犯罪の根絶、顧客情報の保護等に取り組みました。
以上の結果、当年度、当社連結の郵便・物流事業の経常収益は2兆436億円(前期比1.36%減)、経常利益は1,038億円(前期比17.92%減)、日本郵便連結の郵便・物流事業の営業収益は2兆412億円(前期比1.31%減)、営業利益は1,022億円(前期比17.35%減)となりました。
また、当年度の総取扱物数は、郵便物が148億5,786万通(前期比2.53%減)、ゆうパックが9億8,857万個(前期比9.37%減)、ゆうメールが33億4,630万通(前期比1.42%増)となりました。
日本郵便において、郵便局等での積極的な募集活動を停止していたかんぽ生命保険商品、投資信託、提携金融商品(変額年金保険・引受条件緩和型医療保険・傷害保険)について、信頼回復に向けた業務運営を行うことから始めることとし、2020年10月以降、その取組みを進めてまいりました。
この取組みにおいては、お客さまからご要望があった場合のみ金融商品のご提案を行ってまいりましたが、当年度は、2021年4月より、信頼回復に向けた業務運営を継続する中で、お客さまの想定されるニーズの確認を行いながら、お客さまニーズに応じた金融商品の情報提供やご提案を実施することで、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行しました。
不適正募集の根絶については、新規契約申込時の重層的なチェックの実施のほか、募集品質データの管理基盤を構築し、募集人に対する指導やリスク管理を強化するなど、募集品質の向上や募集管理態勢の高度化に向けた取組みに継続して取り組んでまいりました。また、多様化するお客さまニーズにきめ細やかに対応するという観点から、お客さまへの専門性を持ったご対応をさらに充実させるために、お客さま担当制の導入等、2022年4月からの新しいかんぽ営業体制の構築に向けて取り組んでまいりました。
そのほか、郵便局のショッピングセンター内等への新規出店や既存店舗の配置の見直し等を通じ、郵便局ネットワークの最適化にも取り組んでまいりました。また、郵便局ネットワークの価値を高めるため、地方公共団体事務の包括受託や郵便局窓口における地域金融機関の手続事務の受付・取次、郵便局窓口と駅窓口の一体的運営等、地方公共団体や他企業と連携しながら、地域やお客さまニーズに応じた個性・多様性ある郵便局の展開を進めました。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、前述の保険募集等の問題に取り組んだほか、資金横領を含む部内犯罪の根絶、顧客情報の保護、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策等に取り組みました。
以上の結果、当年度、当社連結の郵便局窓口事業の経常収益は1兆1,585億円(前期比9.87%減※)、経常利益は247億円(前期比37.90%減※)、日本郵便連結の郵便局窓口事業の営業収益は1兆1,517億円(前期比7.37%減)、営業利益は245億円(前期比34.87%減)となりました。
※ 当年度より、日本郵政インフォメーションテクノロジー株式会社及び株式会社システムトラスト研究所の営む事業の区分を「郵便局窓口事業」に変更しており、前期比については、区分方法の変更に伴う組替後の数値により記載しております。
日本郵便において、同社の子会社であるToll Holdings Limited(以下「トール社」といいます。)の経営改善の取組みを継続しており、2021年8月には、赤字が継続していたエクスプレス事業※1の売却が完了しました。
また、豪州事業の合理化等の効率化施策を推進するとともに、アジア域内で特に成長が見込まれる国や業種にフォーカスした事業展開を進めるなど、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換を進めております。
加えて、JPトールロジスティクス株式会社を活用し、コントラクトロジスティクス※2を中心とした BtoB 事業※3の拡大に取り組みました。
※1 エクスプレス事業とは、豪州及びニュージーランド国内におけるネットワークを活用して道路、鉄道、海上及び航空貨物輸送サービスを提供する事業のことです。
※2 コントラクトロジスティクスとは、売買に関与しない第三者が特定の荷主顧客と契約を結び、輸送や在庫・配送業務の効率運営を図るサービスのことです。
※3 BtoB 事業とは、Business-to-Businessの略語で、企業間の商取引、企業が企業向けに行う事業のことです。
以上の結果、当年度、当社連結の国際物流事業の経常収益は6,878億円(前期比8.29%減)、経常利益は212億円(前期経常損失70億円)、日本郵便連結の国際物流事業の営業収益は6,875億円(前期比8.31%減)、営業利益(EBIT)は287億円(前期比721.17%増)となりました。
以上の結果、当年度、日本郵便におきましては、連結営業収益は3兆6,569億円(前期比4.70%減)、連結営業利益は1,482億円(前期比4.38%減)となりました。
ゆうちょ銀行では、中期経営計画で定めた5つの重点戦略(「リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革」、「デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上」、「多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化」、「ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化」、「一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化」)に取り組み、各戦略の基盤固めを着実に遂行しました。
また、これらの取組みを通じてビジネスモデルを変革するとともに、事業のサステナビリティを強化し、企業価値向上と社会課題解決の両立を図る経営(ESG経営)を推進いたしました。
「リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革」については、デジタルサービス戦略の展開として、スマートフォンを使っていつでも現在高や入出金明細を確認できる「ゆうちょ通帳アプリ」について、より便利にサービスをご利用いただけるよう、投資信託の取引や口座の住所変更、送金等の機能を追加しました。
また、資産形成サポートビジネスの推進として、対面チャネルにおいて、お客さま一人ひとりにあった資産形成のご相談に応じるべく、社員のさらなる育成に努めたほか、スマートフォンやパソコンを使って、ご自宅等にいながらゆうちょ銀行直営店社員に相談いただける「オンライン相談」を開始しました。加えて、大和証券グループとの間で協業の検討を進めていた「投資一任サービス※1」について、サービス開始に向け郵政民営化法に基づく認可申請を行い、2022年3月に認可を取得したほか、2022年1月からデジタルチャネルでのすべての投資信託の購入時手数料を無料としました。
さらに、新規ビジネスの推進として、2021年5月より、お客さまの急な出費や一時的な資金ニーズに対応する口座貸越サービスや、個人向け住宅融資業務(フラット35)の取扱いを開始したほか、2021年12月より、楽天カード株式会社と連携し、「楽天カードゆうちょ銀行デザイン」の取扱いを開始しました。
「デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上」については、通帳繰越機能付ATMの配備推進や、一部の直営店での窓口タブレット先行導入、通帳アプリの機能拡充等、お客さまの取引チャネルの選択肢を拡充しながら、窓口業務の効率化に取り組みました。
「多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化」については、お客さまからお預かりした大切な資金を地域に循環するため、地域活性化ファンドへの参加を新たに7件(累計39件)行いました。また、JPインベストメント株式会社を通じて、地域活性化やSDGsへの貢献を目的とした新たなファンドの設立に向けて準備を進めました。
「ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化」については、国内の低金利環境が継続する等、厳しい運用環境の中、リスク対比リターンやストレス耐性の強化を意識しつつ、投資適格領域を中心にリスク性資産残高を拡大しました。リスク性資産のうち、戦略投資領域※2については、優良な案件への選別的な投資に努めました。
「一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化」については、組織の風土改革に取り組んだほか、内部管理態勢の強化として、日本郵便及び当社と連携し、郵便局長等による部内犯罪等の発生原因の分析、再発防止策の策定・実行等、コンプライアンスの徹底・強化に取り組んでいます。
また、上記5つの重点戦略に加え、ESG経営の推進として、「環境の負荷低減」と「働き方改革・ガバナンス高度化の推進」に取り組みました。具体的には、使用電力の再生可能エネルギー化等に取り組むとともに、ESGテーマ型投資残高の積上げや、投資先との建設的な対話等、社会全体の環境負荷低減にも努めました。また、女性管理職比率の向上、男性育児休業取得率100%達成等によるダイバーシティ・マネジメントの推進、キャリアチャレンジ制度(社内公募)の募集コース拡大等による社員の自発的なキャリア形成促進、デジタルサービスや市場運用業務等の強化・成長分野での人材育成を推進しました。
※1 投資一任サービスとは、投資一任契約に基づき、投資運用業者がお客さまから投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づきお客さまのための投資を行うのに必要な売買・管理等までを行うサービスのことです。
※2 戦略投資領域とは、プライベートエクイティファンド(成長が見込まれる未上場企業等へ投資するファンド)、不動産ファンド等からなる戦略的な投資領域のことです。
以上の結果、当年度、当社連結の銀行業の経常収益は1兆9,776億円(前期比1.58%増)、経常利益は4,908億円(前期比24.52%増)となりました。
かんぽ生命保険では、2019年度に判明したかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題について、お客さまからの信頼回復に向けた取組みを継続してまいりました。再発防止策として、金融庁に提出した業務改善計画において掲げた「健全な組織風土の醸成・適正な営業推進態勢の確立」、「適正な募集管理態勢の強化」、「取締役会等によるガバナンスの強化」を着実に実行しました。
また、2021年4月より、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタイルへ移行しました。具体的には、「お客さまにご納得・ご満足いただいた上で保険サービスをご利用いただく」活動を徹底していく中で、商品を前提にしたご提案ありきの旧来のスタイルから、適切な募集プロセスのもと、勧誘方針※1やかんぽ営業スタンダード※2などのプリンシプルに基づく新たなスタイルへ抜本的に転換しております。さらに、お客さまとの信頼関係を構築し、保険会社としての使命を果たしていくためには、かんぽ営業に携わる社員一人ひとりが、安心感や納得感を持って営業活動・お客さまへのご提案を推進していく必要があることから、2021年9月に「かんぽ生命の約束」を策定し、遵守・実行しました。
上記の信頼回復に向けた取組みのほか、「新しいかんぽ営業体制の構築」、「保険サービスの充実」、「資産運用の深化・高度化」等の事業基盤の強化、また「お客さま体験価値(CX)※3の向上」を中心に取り組みました。
「新しいかんぽ営業体制の構築」については、2021年10月より順次、コンサルタント(主にお客さまのお宅を訪問して活動する社員)の貯金業務等を郵便局窓口に移管し、コンサルタントは生命保険のご提案及びアフターフォローに専念するとともに、2022年1月より活動拠点の集約を段階的に実施してまいりました。
「保険サービスの充実」については、人生100年時代における、あらゆる世代のお客さまの保障ニーズにお応えするため、2021年4月より、青壮年層のお客さまに向けた保険期間を延長した普通定期保険及び特別養老保険の取扱いを開始したほか、同年10月より、法人のお客さまに向けた保険期間を延長した普通養老保険の取扱いを開始しました。
「資産運用の深化・高度化」については、継続的な低金利環境における安定的な運用収益の確保を目指し、ALMを基本としつつ、リスクバッファーの範囲で収益追求資産への投資を継続しております。資産運用の多様化を図るため、海外クレジットの運用拡大の一環として、米国社債の自家運用に引き続き取り組むとともに、株式の自家運用やオルタナティブ投資等についても継続して推進しております。これら資産運用の取組みについては、ERM※4の枠組みのもとで財務の健全性の確保や、リスク対比リターンの向上を図っております。また、ESG投資において、「Well-being向上」、「地域と社会の発展」、「環境保護への貢献」を重点取組みテーマとし、かんぽ生命らしい“あたたかさ”の感じられる投資を行っております。
また、「お客さま体験価値(CX)の向上」のため、保険サービスの抜本的な見直し及びお客さまの利便性・募集品質の向上により、「かんぽ生命に入っていてよかった」と感動いただけるように取り組みました。具体的な取組みとしては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等に伴う非対面チャネルニーズの高まりを受け、保険手続に関する利便性を向上させるため、契約者さま向けWebサービス(マイページ)において機能を拡充し、2021年5月から契約者貸付請求、同年10月から入院・手術保険金請求について、所定の条件を満たした場合にインターネット上での手続きが可能になったほか、同月から保険料払込証明書のダウンロードが可能になりました。
※1 勧誘方針とは、生命保険の使命等を踏まえた高い倫理観に基づき保障を提供するという、プリンシプルベースのお客さま本位の理念に基づく方針です。
※2 かんぽ営業スタンダードとは、勧誘方針に基づく真のお客さま本位の営業活動の実践に向けた行動原則です。
※3 お客さま体験価値(CX)とは、Customer Experienceの略語で、商品やサービスの価格や性能といった機能的な価値だけではなく、保険加入前から加入後のアフターフォロー、保険金支払までのプロセスすべてを通じてもたらされる満足感などの感情的・心理的な価値も含めた、お客さまが体験されるすべての価値のことです。
※4 ERMとは、Enterprise Risk Managementの略語で、会社が直面するリスクに関して、潜在的に重要なリスクを含めて総体的に捉え、会社全体の自己資本などと比較・対照することによって、事業全体として行うリスク管理のことです。
以上の結果、当年度、当社連結の生命保険業の経常収益は6兆4,542億円(前期比4.89%減)、経常利益は3,561億円(前期比3.00%増)となりました。
対処すべき課題
当社グループは、中期経営計画「JP ビジョン2025」において、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を、当社グループが目指す姿として掲げています。当社グループの最大の強みである郵便局ネットワークにより、グループ内で一体的なサービスを提供していくとともに、これまでになかったグループ外の多様な企業等との連携を行うことで、地域において生活するお客さまが、安全・安心で、快適で、豊かな生活・人生を実現することを支えてまいります。
当社グループが抱える経営課題については、持株会社として、グループ各社と連携を深めながら、必要な支援を行い、その解消に努めます。
まずは、業務の適正を確保するため、コーポレートガバナンスのさらなる強化に向け、引き続き、グループ全体の内部統制の強化を推進し、コンプライアンス水準の向上を重点課題として、グループ各社に必要となる支援・指導を行います。特に、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題を受けた、業務改善計画の実行に、引き続き着実に取り組んでまいります。
また、当年度、郵便物等の放棄・隠匿、郵便局長等による資金横領等の不祥事案が発覚・発生するとともに、業務用カレンダーの配布に当たり、郵便局長が会社の活動と業務外の活動をしゅん別せず、また、お客さまの情報を目的外に使用した等の不適切な取扱いがあった事案が発覚しました。これを踏まえ、お客さまからの信頼確保に向け、これらの事案の再発防止策を徹底してまいります。併せて、部内犯罪や社員の不正、不適正営業の防止、個人情報保護、マネー・ローンダリング対策等の取組みを継続・強化してまいります。
そして、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保については、交付金・拠出金制度も活用しつつ、その責務を果たし、地域社会に貢献するとともに、郵便局ネットワークの一層の活用・維持による安定的なサービスの提供等を図るため、グループ各社の経営の基本方針を策定し、その実施に努めてまいります。
ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式については、2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとするという郵政民営化法の趣旨に沿って、所要の準備を行ってまいります。
また、「持続可能な開発目標(SDGs)」を踏まえ、ESGに関する取組みをグループ全体として推進し、企業価値の向上につなげてまいります。具体的には、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた動きを踏まえ、CO2の排出量削減に向けたグループ全体のEV車両の導入拡大、カーボン排出係数の低い電力への段階的な切り替え等により、事業サービスを通じた環境負荷軽減等にも積極的に取り組みます。
そのほか、人的依存度の高いサービスを提供する当社グループにとって、人材は最も重要な経営資源との認識に立ち、お客さまへの総合的なコンサルティングサービス向上に向けた研修等の人材育成、女性管理職の登用拡大に向けた計画的な女性社員の育成、仕事と生活の両立ができる職場風土づくりなど、社員の多様な能力・個性を活かすダイバーシティ・マネジメントの推進に取り組んでまいります。
加えて、自然災害の発生、感染症の大流行等の危機へ備え、危機管理態勢を整備するとともに、危機発生時には迅速かつ的確な対応を行い、業務継続の確保に努めます。特に、新型コロナウイルス感染症の流行下において、当社グループは、公益性が強いグループとしての社会的使命を果たすため、感染防止・感染拡大防止対策を行い、社員の安全確保と事業運営の継続に取り組んでまいります。
各事業セグメント別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。
郵便・物流事業
日本郵便において、郵便物の減少や荷物需要の増加に対応するため、以下の取組みを行います。
① 商品やオペレーション体系の一体的見直しとサービスの高付加価値化
引き続き、年賀状を始めとしたスマートフォン等を使ったSNS連携サービスや手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便利用の維持に取り組むとともに、成長するEC市場やフリマ市場を確実に取り込むため、差出・受取利便性の高いサービスを提供するとともに、営業倉庫を活用した物流ソリューションの拡大、企業間物流の強化等により、収益の拡大を図ってまいります。
② 先端技術の積極的な活用による利便性・生産性向上
郵便物の減少傾向が継続する中、成長市場である荷物分野へのリソースシフトを進めるとともに、業務量に応じたコストコントロールの取組みの深化やDXの推進等を通じて、生産性の向上に努めてまいります。
併せて、テレマティクス技術を用いて取得するデータを、社員の安全確保や配達の相互応援、郵便物の配達順路や配達エリアの見直しにも活用していくほか、AIによる配送ルートの自動作成等によるゆうパック等の集配業務の効率化や、AGV(無人搬送車)の導入等による局内作業の省人化・スリム化も進めてまいります。
また、他企業との連携により、効率の良い配送システムの構築や利便性の高い受け取りサービスの提供等を実現する新たな物流プラットフォームの構築に取り組むとともに、将来的な実用化に向けて、ロボティクス(ピッキング用ロボット等)や配送の高度化(ドローンや配送ロボット等)についても試行・実験を重ねてまいります。
郵便局窓口事業
日本郵便において、以下の取組みを行います。
① 総合的なコンサルティングサービスの実現に向けた体制への変革
2022年4月より、新しいかんぽ営業体制を開始し、かんぽ生命保険に兼務出向した、高い機動性と専門性をもったコンサルタントと、多様なお客さまニーズに応える窓口社員が、それぞれの能力を最大限に発揮することで、専門性と幅広さを兼ね備えた「総合的なコンサルティングサービス」をグループ一体で実現してまいります。窓口社員については、窓口における積極的なお声かけや幅広い金融商品の提案を行っていくほか、郵便局窓口、電話及び郵送を中心としたアフターフォローに従事してまいります。
② リアルな存在としての郵便局を活かした、郵便局ネットワークの価値向上
郵便局ネットワークの価値を向上させ、持続的な成長を実現するためには、デジタル化を進めつつ、リアルな存在としての郵便局を活かし、郵便局ネットワークの価値を向上させる必要があると考えております。郵便局窓口の業務運営においても、デジタル化を進めることにより、業務を効率化するとともに、それによって創出した資源を活かし、地方公共団体事務の受託に取り組んでいくほか、地域金融機関等との連携強化等、他企業と連携しながら、地域やお客さまニーズに応じた個性・多様性ある郵便局を展開することにより、郵便局ネットワークの価値を向上させてまいります。
③ 不動産事業の拡大に向けた取組み
JPタワー等の賃貸事業を行うとともに、住宅地に所在する土地の有効活用事業として、住宅、保育所及び高齢者施設の賃貸事業を行います。また、新たな収益機会の拡大や保有不動産の有効活用の観点から、広島駅南口計画、虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業及び梅田3丁目計画等を推進し、不動産事業が収益の柱の一つとなるよう取り組んでまいります。
国際物流事業
日本郵便において、豪州事業の合理化等の効率化施策を推進することにより、コスト削減に取り組むとともに、JPトールロジスティクス株式会社の活用によるコントラクトロジスティクスを中心とした BtoB 事業の拡大への取組みや、アジア域内で特に成長が見込まれる数か国と業種にフォーカスした事業展開を進めるなど、成長地域であるアジア市場中心のビジネスモデルへの移行を図ってまいります。あわせて、当社は、トール社に対する経営管理を強化・徹底してまいります。
銀行業
ゆうちょ銀行は中期経営計画のもとで、急激に変化する社会環境に対応したサステナブルな経営の実現を目指すべく、ESG経営を推進しています。2021年度は、5つの重点戦略を着実に推進し、その基盤を固めました。2022年度は、各重点戦略の取組みを加速し、目指す姿の実現に向けた道筋をつけてまいります。
① リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革
安心・安全を最優先に、デジタル人材を強化しつつ、すべてのお客さまが利用しやすいデジタルサービスを拡充してまいります。
具体的には、通帳アプリ等のデジタルサービスについて、機能や使いやすさの継続的な改善に取り組むとともに、「家計簿・家計相談アプリ」の構築に取り組んでまいります。また、全国の郵便局ネットワークを活用し、各種デジタルサービスの積極的なご案内・身近なサポートを進めてまいります。さらに、通帳アプリ、家計簿・家計相談アプリを起点として、多様な事業者との連携を通じて最適なサービスを提供する、オープンな「共創プラットフォーム」の構築に注力してまいります。
また、資産形成サポートビジネスにおいては、お客さま本位の業務運営推進の下、対面チャネルとデジタルチャネルの相互補完により、お客さまニーズに応じ、最適な商品・チャネルを提案いたします。
対面チャネルにおいては、2022年4月から窓口の投資信託商品ラインアップをお客さまに理解いただきやすい商品に厳選するとともに、投資初心者には主に積立投資を提案してまいります。また、2022年5月からは「投資一任サービス(ゆうちょファンドラップ)」を開始しました。加えて、オンラインでの相談環境の一層の充実を図るとともに、デジタルチャネルにおいて、投資信託Webページやアプリのさらなる充実に取り組み、よりお客さまに利用いただきやすいチャネルに見直してまいります。
さらに、キャッシュカード一体型のブランドデビットカード「ゆうちょデビット」の取扱いを2022年5月から開始しております。また、「信託・相続サービス」等、新たなサービスの開始に向けて準備してまいります。
② デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上
窓口タブレットをゆうちょ銀行全直営店に導入するほか、新規口座開設をスマートフォン上で行う「口座開設アプリ」のサービスを開始する等、お客さまの取引チャネルの選択肢を拡充しながら、窓口業務の効率化を進めてまいります。また、貯金事務センターにおいては、BPMS※の機能・拠点の拡大に向けた準備や相続関連業務のシステム化を進める等、今後ともデジタル技術を組み合わせた総合的な事務の自動化を推進してまいります。
これらの取組みを通じ、引き続き窓口等の業務量削減を図る一方、強化分野への人員シフトを継続しつつ、育成の強化を図ることで、より一層、生産性の向上を図ってまいります。
また、引き続き、戦略的なIT投資等、重点分野への投資を強化しつつ、既定経費の削減により、経営の効率性改善を目指してまいります。
③ 多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化
お客さまからお預かりした大切な資金を、地域へと循環するために、特にエクイティ性資金の供給を拡充し、地域活性化への貢献に努めてまいります。
具体的には、「地域活性化ファンド」や「投資・事業経営会社」への出資を推進するとともに、「JPインベストメント地域・インパクト1号ファンド」に出資する等、地域経済発展に貢献してまいります。
また、地域金融機関と連携し、「地域の金融プラットフォーム」として、ATM連携や税公金取りまとめ事務共同化等について取り組むなど、全国の地方創生を多面的に支援してまいります。
④ ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化
ウクライナ情勢、インフレ懸念を背景とした米国等の金融政策の転換等によるマーケット変動に十分留意しつつ、リスク対比リターンやストレス耐性の強化等を意識したポートフォリオ運営を実施します。
具体的には、リスク性資産については、投資適格領域のクレジット資産(国内外の社債等)を中心に残高を積み上げていくほか、リスク性資産のうち、戦略投資領域については、中長期的な視点で、優良ファンドへの選別的な投資を継続してまいります。
加えて、ストレステスト高度化、モニタリング充実、外貨流動性リスク低減等、リスク管理高度化の取組みを推進してまいります。
⑤ 一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化
引き続き、組織風土改革に取り組むとともに、内部管理体制の強化においては、日本郵便及び当社と連携し、部内犯罪防止やお客さま情報の漏洩・紛失の防止等、コンプライアンス態勢のさらなる強化に努めてまいります。
また、上記5つの重点戦略に加え、ESG経営の推進として、「環境の負荷低減」と「働き方改革・ガバナンス高度化の推進」に引き続き取り組んでまいります。具体的には、引き続き使用電力の再生可能エネルギーへの切り替えを推進するとともに、ESGテーマ型投資の2025年度の残高目標を従来の2兆円から4兆円に引き上げ、資金運用業務を通じた社会全体の環境負荷低減に努めてまいります。また、強化分野の人材確保・育成、多様な人材を活かす環境整備や健康経営の積極的な推進等の人材投資の強化に加え、社員のキャリア形成支援・人材の見える化実現による人的資本の最大化を目指してまいります。
※ BPMSとは、RPAを自動で起動し、人による確認作業等を要求するなど、業務フローをシステム的に制御し、自動的に工程管理を行うシステムのことです。
生命保険業
かんぽ生命保険は、生命保険会社としての社会的使命に応えるために、以下の取組みを実施してまいります。
① 再生に向けた取組み
2022年4月より、専門性と幅広さを兼ね備えた新しいかんぽ営業体制を構築し、日本郵政グループ一体での総合的なコンサルティングサービスを実施してまいります。
リテール領域では、かんぽ生命保険内にかんぽサービス部を新設し、日本郵便から同部に出向したコンサルタントは、かんぽ生命保険商品及びがん保険商品のご提案・アフターフォローに専念するとともに、かんぽ生命保険が直接責任をもってマネジメントする体制とします。加えて、お客さま担当制を導入することで、お客さまのライフステージの変化等によるニーズの変化に適切に対応するための定期的なコンタクトを充実させ、お客さまに寄り添った質の高いアフターフォローを実施してまいります。
これらの施策を実施するにあたり、2022年3月に、「かんぽ営業(リテール領域)の目指す世界観」を定めております。ここでは「お客さまの信頼・満足を起点としてお客さま数を拡大していく」、「フロントラインに寄り添った仕組み・制度の運用を通じ、適正なマネジメントを定着させ、社員の成長を支える」及び「社会・経営環境を敏感に捉え、進化し続ける」ことを掲げており、この世界観を全社員で共有し、実行していくことで「マーケットも人材も成長させる文化」への転換を図ってまいります。その実現に向けては、土台であるマネジメントの成長を促すために、全社一体となってフロントラインのマネジメントに寄り添い、フロントラインの課題の解決に取り組んでまいります。
法人営業領域でも同様に、法人営業ビジョン「社員一人ひとりがお客さまや地域社会とともに進化することに挑戦し続けます」に基づき、引き続き、経営者に寄り添い、より幅広く、より質の高いサービスをご意向に合わせてご提供することにより、お客さまとの真の信頼関係を構築、拡大してまいります。
事業基盤の強化については、「保険サービスの充実」、「資産運用の深化・高度化」、「事業運営の効率化・高度化」に取り組んでまいります。
人生100年時代における、あらゆる世代のお客さまの保障ニーズにお応えする保険サービスの開発を進め、保険サービスの充実に取り組んでまいります。
具体的には、お客さまの医療保障へのニーズに対応するため、2022年4月より、新しい医療特約「もっとその日からプラス」の取扱い等を開始し、手厚い医療保障等をご提供してまいります。今後も、青壮年層のお客さまニーズに応える低廉な保険料でバランスのとれた保障の提供や、人生100年時代を踏まえた高齢・中高年層の保障等のニーズに応える商品の拡充のほか、お客さまの健康づくりをサポートする商品の研究に取り組んでまいります。
資産運用においては、ERMのフレームワークの下、ALM運用を基本として、安定的な資産運用収益の確保を目指すとともに、2025年予定の経済価値ベースの新資本規制導入の動きに適切に対処しつつ、オルタナティブ投資等の投資領域ごととポートフォリオ構築の両面から資産運用を深化・高度化してまいります。
収益追求資産への投資については、中期経営計画期間(2021~2025年度)において、総資産に占める同資産の比率を18~20%程度まで引き上げることを見込んでおります。特にオルタナティブ投資については、プライベートエクイティ、不動産ファンド、インフラエクイティ、ヘッジファンドの4分野で戦略分散・地域分散を図りながら、リスク許容量と投資機会に応じて段階的に投資残高を積み上げてまいります。
ESG投資については、温室効果ガス削減目標達成に向けた投資先に対するエンゲージメントの強化、中期経営計画期間中のKPIに設定した投融資先再生可能エネルギー施設の総発電出力目標達成に向けた投融資の積極化、社会課題解決に向けたインパクト投資の推進を進めてまいります。
また、デジタル化の推進により、お客さまサービス向上と業務の効率化及び経費の削減に取り組んでいくほか、さらなる事業費管理の高度化に向け、新たなコスト管理の仕組みを導入し、経費削減を進めてまいります。これにより生じた経営資源は、お客さまサポート領域、DXの推進等の強化領域にシフトするなど、事業運営の効率化・高度化に取り組んでまいります。
② 持続的成長に向けた取組み
お客さま体験価値(CX)の向上の観点から、保険サービスを抜本的に見直し、お客さまの利便性や募集品質を向上させることで、「かんぽ生命に入っていてよかった」と感動いただけるよう取り組みます。また、その体験価値をご評価いただいたお客さまから、そのご家族や知人、さらには地域・社会全体へかんぽ生命をお勧めいただくことで、お客さまを広げてまいります。
具体的には、「お客さま一人ひとりに寄り添う適切なご提案」、「その場で完結する簡便な手続きの提供」、「チーム一体でのきめ細やかなサポート」、「お客さまとのつながりを重視したアフターフォローの充実」に取り組んでまいります。
「お客さま一人ひとりに寄り添う適切なご提案」を行うため、お客さまのニーズや必要な保障内容などについてデジタルを活用したツールにより可視化するとともに、遠方にお住いのご家族等にも同席いただけるシステムを導入し、お客さま一人ひとりに寄り添う適切なご提案を実現してまいります。また、「その場で完結する簡便な手続きの提供」では、デジタル技術の活用により、お客さまのニーズに応じて、オンライン、対面等様々なお申込み・ご請求形態を選択できるようしてまいります。具体的には、お客さま自身のスマートフォン等の端末から被保険者同意及び告知を可能とするため、アジャイル開発※手法を用い、一部地域から段階的に試行実施してまいります。このほか、インターネット上での入院・手術保険金請求の拡大等に取り組むとともに、マイページからの入院・手術保険金請求に対して、専門スタッフ(カスタマーセンター)がリアルタイムにサポートするチャット機能を実装する等、その場での諸手続き等の完了を可能にしてまいります。「チーム一体でのきめ細やかなサポート」では、お客さまのご契約情報やお問合せ情報等をお客さま単位で集約したお客さまデータベースを構築し、コンサルタント、郵便局窓口、専門スタッフなど、お客さまにご対応する全ての社員がチーム一体で、きめ細やかなあたたかみのあるサポートを提供できる環境を整備してまいります。そして、「お客さまとのつながりを重視したアフターフォローの充実」のため、訪問による対面対応に加えて、オンライン会議など様々な方法による手厚いアフターフォローや、メール・SNS等によるお客さまごとに最適なタイミングでのアフターフォローを行い、お客さまのニーズに幅広くお応えし、お客さまの周囲の方々も含めた信頼の獲得を目指してまいります。
※ アジャイル開発とは、短期間に設計やテストを繰り返しながら開発を進めることで、サービス開始までの開発期間を短縮するとともに、開発途中の仕様・要件変更にも柔軟に対応することを目指すシステムを開発する手法のひとつです。
当社グループは、これらの取組みにおいて、着実な成果をお示しすることにより、株主の皆さまのご期待にお応えしてまいりたいと考えております。
株主の皆さまには、何卒今後ともなお一層のご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めがあるときの権限の行使に関する方針
当社は、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置づけ、経営成績に応じた株主への利益還元を継続して安定的に行うことを基本方針としております。
剰余金の配当につきましては、内部留保の充実に留意しつつ、資本効率を意識し、着実な株主への利益還元を実現するため、2026年3月期末までの間は1株当たり年間配当50円を目安に、安定的な1株当たり配当を目指してまいります。
当社の剰余金の配当の決定機関は、経営の機動的な運営を確保するため、定款において取締役会と定めております。また、毎年3月31日、9月30日を基準日として、剰余金の配当をすることができる旨を定めております。
当事業年度の配当につきましては、業績等を総合的に判断した結果、普通株式の年間配当は、1株当たり50円といたします。
内部留保資金につきましては、企業価値の向上を目指すべく、成長機会獲得のための投資や資本効率を意識した資本政策などに活用してまいります。
なお、日本郵政株式会社法第11条に基づき、当社の剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く。)については、総務大臣の認可を受けなければその効力を生じません。