事業報告2023年4月1日から2024年3月31日まで

企業集団の事業の経過及び成果等

企業集団の主要な事業内容

日本郵政グループ(以下「当社グループ」といいます。)は、日本郵便株式会社(以下「日本郵便」といいます。)、株式会社ゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ銀行」といいます。)及び株式会社かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命保険」といいます。)が主な事業主体となって、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等の業務を営んでおります。

金融経済環境

当年度の国内経済は、欧州や中国における景気の減速などの影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善などを背景として緩やかな回復の動きが続きました。

世界経済においては、金融引締め等により欧州など一部の地域で景気の減速がみられたものの、全体としては持ち直しの動きが続きました。

金融資本市場では、国内の10年国債利回りは、日本銀行による長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化を受けて2023年10月から2023年11月にかけて一時0.9%台まで上昇しましたが、早期の金融政策修正観測の後退などから低下し、2023年12月以降は概ね0.5%台から0.7%台で推移しました。日経平均株価は、米国株式市場の影響などを受けつつ、円安を背景に概ね堅調に推移し、2024年2月に最高値を更新した後、2024年3月には一時40,000円台まで上昇しました。

物流業界においては、物価や人件費等の上昇により費用負担が増しているほか、消費行動におけるEC市場等からリアル販売チャネルへの回帰やインフレ等による家計消費の弱まり等の影響で宅配便に関する需要が伸び悩みました。また、働き方改革関連法等によるドライバーの拘束時間の減少などから生じる、いわゆる「2024年問題」への対策として、政府により公表された「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づき業界・分野別に作成された自主行動計画や「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」に掲げられた取組みの実行が求められております。郵便事業においては、デジタル化の進展等に伴う郵便物数の減少傾向の継続に加え、物流業界同様に、物価や人件費等の上昇等の影響により、引き続き厳しい状況です。

銀行業界においては、当年度の全国銀行における預金は25年連続で増加し、貸出金も13年連続で増加しました。金融システムは、世界的な金融引締めの継続やそれに伴う景気減速懸念などのストレスにさらされているものの、全体として安定性を維持しています。

生命保険業界においては、超高齢社会の進展や人口減少等の大きな構造変化とともに、先端技術の進歩・普及や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機としたライフスタイル多様化の急速な進展等がみられ、多様なお客さまニーズへの対応が求められております。

企業集団の事業の経過及び成果

当社グループは、2021年5月に発表した中期経営計画「JP ビジョン2025」(2021年度~2025年度)で掲げたお客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」の実現を目指し、ユニバーサルサービスを含むコアビジネスの充実強化に加え、DXの推進、不動産事業の拡大や、新規ビジネス等の推進に取り組んでおります。

2023年6月には、ヤマトホールディングス株式会社及びその子会社(以下「ヤマトグループ」といいます。)との協業について基本合意を行い、ヤマト運輸株式会社と日本郵便の経営資源を有効活用することで、顧客の利便性向上に資する輸送サービスの構築と事業成長を図るとともに、物流業界のいわゆる「2024年問題」や環境問題など、物流業界が抱える社会課題の解決を目指すため、協業の第一弾として、2023年10月から「クロネコゆうパケット」の取扱いを開始し、第二弾として、2024年2月から「クロネコゆうメール」の取扱いを開始しました。

グループ一体でのDXの推進については、2023年10月には、初期リリースとして郵便局のサービスのうち利用頻度の高い「送る」「受け取る」の機能を中心としたグループプラットフォームアプリ「郵便局アプリ」のサービス提供を開始しました。

また、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題を受け、グループガバナンス及びコンプライアンスの強化並びに営業推進態勢の見直し等の再発防止策を講じ、適切な業務運営への取組みに努めてまいりました。

2024年3月末より、アフラック・インコーポレーテッドに対して持分法を適用することとし、2024年度から同社の利益の一部を当社グループの連結業績に反映いたします。

なお、昨今の事業環境の急激な変化等を踏まえ、「成長ステージへの転換」に向け、「JP ビジョン2025」における今後の戦略の見直しを行うとともに、2025年度の主要目標等も見直し、その結果を2024年5月に「JP ビジョン2025(プラス)」として策定しております。

当社におきましては、持株会社として、当社グループの企業価値向上を目指し、グループ各社の収益拡大や経営効率化等を着実に推進するとともに、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保、郵便局ネットワークの維持・活用による安定的なサービスの提供等という目的が達成できるよう、グループ運営に取り組みました。

また、グループ各社のコンプライアンス・プログラムの策定・推進の状況、各社の内部監査態勢・監査状況の把握に努めたほか、集約により効率性が高まる間接業務をグループ各社から受託するとともに、病院事業の経営改善に取り組みました。

さらに、グループ各社が提供するサービスの公益性・公共性の確保や、持続可能な社会の実現・未来の創造に貢献するため、サステナビリティ経営の推進に関する取組みや災害復興支援に、グループ全体で取り組んでおります。

2024年1月に発生した令和6年能登半島地震では、郵便局舎に被害があったほか、被災地域における郵便局窓口の営業休止、郵便物の配達停止やゆうパックの引受停止等の影響がありました。日本郵便において作成した復旧マスタープランに基づいて順次業務を再開しており、引き続き業務の正常化を目指してまいります。

以上の結果、当年度、当社グループにおきましては、連結経常収益は11兆9,821億円(前期比7.57%増)、連結経常利益は6,683億円(前期比1.61%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,686億円(前期比37.66%減)となりました。

  • ※ JPロジスティクスグループ株式会社及びJPロジスティクス株式会社においては、従来、「国際物流事業」セグメントに属していたため、国際財務報告基準を適用していましたが、当年度より、日本基準に会計方針を変更しており、前期比については会計方針の変更に伴う組替後の数値により記載しております。
【ご参考】 当期実績

事業区分別の概況

詳細はこちらを閉じる

日本郵便において、差出・受取利便性の向上等、お客さまのニーズに応える商品・サービスの提供や楽天グループ株式会社及び佐川急便株式会社をはじめとする他企業との連携強化等、荷物分野の収益拡大に取り組んでまいりました。なお、当年度にヤマトグループとの協業を開始し、同グループがお預かりした小型薄物荷物及びメール便を、日本郵便の配送網でお届けする取組みを開始しております。さらに、デジタル技術を活用した業務効率化、業務量に応じたコストコントロールの取組みの深化等を通じ、生産性の向上に努めてまいりました。

また、物流業界において物価や人件費等の上昇により費用負担が増していることを踏まえ、将来にわたって、安定的かつ高品質の物流サービスを展開するため、2023年10月にゆうパック基本運賃などの改定を実施しました。

上記の取組みを推進してきたところではありますが、消費行動のリアル回帰やインフレ等による家計消費の弱まり等の影響で荷物に関する需要が伸び悩みました。

郵便事業においても、デジタル化の進展等に伴う郵便物数の減少傾向の継続に加え、物流業界同様、物価や人件費等の上昇等の影響により、厳しい状況が継続しました。

以上の結果、当年度、当社連結の郵便・物流事業の経常収益は1兆9,805億円(前期比3.87%減)、経常損失は649億円(前期経常利益354億円)、日本郵便連結の郵便・物流事業の営業収益は1兆9,755億円(前期比3.93%減)、営業損失は686億円(前期営業利益330億円)となりました。

また、当年度の総取扱物数は、郵便物が135億7,769万通(前期比6.00%減)、ゆうパックが10億966万個(前期比2.99%増)、ゆうメールが28億7,348万個(前期比7.69%減)となりました。

  • ※ 当年度より、JPロジスティクスグループ株式会社及びJPロジスティクス株式会社の営む事業の報告セグメントの区分を従来の「国際物流事業」から、「郵便・物流事業」に変更しており、前期比については、区分方法の変更に伴う組替後の数値により記載しております。

詳細はこちらを閉じる

日本郵便において、2019年度に判明したかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題を受け、これらの構造的要因等を踏まえた業務改善計画を策定し、計画の実行を経営の最重要課題と位置づけ、再発防止策を講じてきました。2023年12月、監督官庁から、業務改善命令に基づく報告については、以後、提出を要しないこととし、改善状況の進捗については通常の監督・モニタリングにおいて継続的に確認していくこととする旨の通知を受けました。これを受け、今後は当社グループの経営陣がリーダーシップを発揮して、継続的な効果確認と適時適切な見直しを図っていくこととし、当社グループの各関係部署で把握した実態の共有及び必要な見直しの議論を継続的に行う体制を構築しました。なお、再発防止に向けた施策の浸透・定着のための取組みを継続しつつ、2024年1月から満70歳以上のお客さまへの勧奨を再開しました。また、同月より一時払終身保険の販売を開始し、「お客さま本位の営業活動」を徹底しつつ、お客さまのニーズにあわせたご提案活動を行うことにより、ご利用の拡大に取り組んでまいりました。

このほか、地方公共団体事務受託の推進や地域金融機関との連携等により、地域やお客さまのニーズに応じた多種多様な商品・サービスの展開を進めてきたほか、窓口業務運営のデジタル化を推進し、生産性の向上に努めてまいりました。

また、不動産事業については、引き続き、JPタワー(商業施設名:KITTE)をはじめとする賃貸事業を行ってきたほか、当年度、新たにJPタワー大阪や麻布台ヒルズ森JPタワーが竣工し、住宅の分譲や商業施設の開業等、事業の強化・拡充に取り組んでまいりました。

以上の結果、当年度、当社連結の郵便局窓口事業の経常収益は1兆1,139億円(前期比3.54%増)、経常利益は734億円(前期比45.62%増)、日本郵便連結の郵便局窓口事業の営業収益は1兆1,129億円(前期比3.62%増)、営業利益は729億円(前期比47.96%増)となりました。

詳細はこちらを閉じる

日本郵便において、同社の子会社であるToll Holdings Pty Limited(以下「トール社」といいます。)の経営改善の取組みを継続しており、豪州事業の収益性向上等の施策を推進するとともに、アジア域内で特に成長が見込まれる国や業種を重視した事業展開を進めるなど、アジアを中心としたビジネスモデルへの転換を進めており、当年度においても引き続き、コスト削減施策の徹底等に取り組んでまいりました。

以上の結果、当年度、当社連結の国際物流事業の経常収益は4,500億円(前期比16.64%減)、経常利益は17億円(前期経常損失7億円)、日本郵便連結の国際物流事業の営業収益は4,488億円(前期比16.76%減)、営業利益(EBIT)は95億円(前期比8.53%減)となりました。

  • ※ 当年度より、JPロジスティクスグループ株式会社及びJPロジスティクス株式会社の営む事業の報告セグメントの区分を従来の「国際物流事業」から、「郵便・物流事業」に変更しており、前期比については、区分方法の変更に伴う組替後の数値により記載しております。

また、当年度、日本郵便におきましては、連結営業収益は3兆3,237億円(前期比3.70%減)、連結営業利益は63億円(前期比92.39%減)となりました。

詳細はこちらを閉じる

ゆうちょ銀行では、中期経営計画(2021年度~2025年度)で策定した5つの重点戦略(「リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革」、「デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上」、「多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化」、「ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化」、「一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化」)に基づき、持続的な企業価値向上に向けた取組みを進めてまいりました。

具体的には、「リテールビジネス」、「マーケットビジネス」及び「Σ(シグマ)ビジネス(投資を通じて社会と地域の未来を創る法人ビジネス)」というゆうちょ銀行独自の強みを活かした3つの成長エンジンを通じて、各種取組みを進めるとともに、コンプライアンス態勢の強化等、これら3つの成長エンジンを支える経営基盤を強化してまいりました。

第1の成長エンジン「リテールビジネス」では、リアルとデジタルの相互補完を通じたお客さま本位のビジネス展開に努めました。

デジタルサービスでは、「すべてのお客さまが利用しやすいデジタルサービスを拡充する」という基本方針のもと、「ゆうちょ通帳アプリ」(以下「通帳アプリ」といいます。)に各種払込みやATMでの入出金機能を追加するなど、さらなる利便性向上を図りました。通帳アプリは2020年2月のリリース以降、順調に利用が拡大しており、登録口座数は2024年2月に1,000万口座を突破し、中期経営計画で掲げた目標を2年前倒しで達成しました。加えて、多様化するお客さまのニーズに応えるため、通帳アプリを通じて広告コンテンツの配信を開始しました。

また、スマートフォン上で口座開設や暗証番号の再登録が行える「ゆうちょ手続きアプリ」をリリースしたほか、ゆうちょ銀行の直営店で口座開設等の各種取引をお客さまご自身で行えるセルフ型営業店端末「Madotab」の機能を追加するなど、デジタル技術の活用を通じ、お客さまの利便性を向上しつつ、窓口業務の効率化を進めました。

資産形成サポートビジネスでは、新しいNISA制度の開始を踏まえ、商品ラインアップの拡充や各種キャンペーンを展開しつつ、ゆうちょ銀行の直営店や全国の郵便局でNISAのご案内を行うなど、お客さまの資産形成ニーズにお応えする取組みを進めました。

第2の成長エンジン「マーケットビジネス」では、リスク対比リターンの向上に向けた、国際分散投資等を推進しました。

海外金利の上昇や円安の進行など、市場環境が大きく変動するなか、適切にリスクをコントロールしながら、投資適格領域の外国社債等への投資を中心にリスク性資産残高を拡大しました。リスク性資産のうち、プライベートエクイティファンド等の戦略投資領域については、優良案件への選別的な投資に努め、残高を積み上げました。

また、日本銀行の金融政策修正を受けた国内金利上昇局面を捉え、日本銀行への預け金から日本国 債への投資シフトを開始し、円金利資産に係るポートフォリオの再構築を進めました。

一方で、ポートフォリオ運営を支えるモニタリング態勢の充実等、リスク管理の取組みも強化し、十分な財務健全性を確保しております。

「Σビジネス」は、全国の中堅・中小企業への資本性資金の供給に加え、ゆうちょ銀行の店舗ネット ワーク等の強みを活かし、投資先企業の商品・サービスの紹介・媒介(マーケティング支援)や、新たなビジネスの原石となる投資先候補企業の発掘(ソーシング)を行う、新しい法人ビジネスです。このΣビジネスを、リテールビジネス、マーケットビジネスに続く「第3の成長エンジン」として本格稼働させるべく、2022年10月から2年間をパイロット期間と定め、様々な取組みを推進しています。

当年度において、中堅・中小企業への資本性資金の供給については、観光産業を軸とした街おこしに強みを持つ、株式会社PROSPER及び株式会社Plan・Do・Seeが設立した「PROSPER 日本企業成長支援ファンド」への出資、ゆうちょ銀行子会社のJPインベストメント株式会社を通じて組成された、地域の事業承継投資を行う「JPインベストメント・シグマ地域事業承継1号ファンド」への出資を行いました。マーケティング支援については、株式会社TTデジタル・プラットフォームとの協業により地方自治体向けに「プレミアム付きデジタル商品券」の導入提案、株式会社Rehab For JAPANとの協業により同社が手掛けるオンラインリハビリサービス等に係る地域の介護事業所や自治体等への導入提案を開始しました。ソーシングについては、地域の情報を活用した、新たなビジネス機会創出に向け、事業者情報のデータ収集、蓄積、活用のための専用システム開発を決定しました。

  • ※ 戦略投資領域とは、プライベートエクイティファンド(成長が見込まれる未上場企業等へ投資するファンド)、不動産ファンド等からなる戦略的な投資領域のことです。

以上の結果、当年度、当社連結の銀行業の経常収益は2兆6,516億円(前期比28.46%増)、経常利益は4,960億円(前期比8.89%増)となりました。

詳細はこちらを閉じる

かんぽ生命保険では、2019年度に判明したかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題を受け、これらの構造的要因等を踏まえた業務改善計画を策定し、計画の実行を経営の最重要課題と位置づけ、再発防止策を講じてきました。2023年12月、監督官庁から、業務改善命令に基づく報告については、以後、提出を要しないこととし、改善状況の進捗については通常の監督・モニタリングにおいて継続的に確認していくこととする旨の通知を受けました。これを受け、今後は当社グループの経営陣がリーダーシップを発揮して、継続的な効果確認と適時適切な見直しを図っていくこととし、当社グループの各関係部署で把握した実態の共有及び必要な見直しの議論を継続的に行う体制を構築しました。

また、お客さまの多様な保障ニーズに対応した保険サービスを提供するため、専門性と幅広さを兼ね備えた新しいかんぽ営業体制を構築し、当社グループ一体での総合的なコンサルティングサービスを提供しております。リテール領域では、2022年度に導入したお客さま担当制の下、コンサルタントや郵便局がお客さま一人ひとりの担当者または担当局として責任をもち、お客さまに寄り添った質の高い細やかなアフターフォローに取り組んでおります。法人営業領域では、法人営業部門ビジョン「社員一人ひとりがお客さまや地域社会とともに進化することに挑戦し続けます」に基づき、引き続き、メインマーケットである中小企業の経営者に寄り添い、より質の高いサービスをご意向に合わせてご提供することにより、お客さまとの真の信頼関係の構築・拡大に取り組んでおります。

上記の新しいかんぽ営業体制に基づく取組みに加えて、「事業基盤の強化」と「お客さま体験価値 (CX)※1の向上」に向けて取り組んでおります。

「事業基盤の強化」については、「保険サービスの充実」、「資産運用の深化・高度化」等に取り組んでおります。「保険サービスの充実」に向けた具体的な取組みとしては、人生100年時代における、あらゆる世代のお客さまの保障ニーズにお応えするため、2023年4月に、万が一の保障とあわせて教育資金を確実に準備できる学資保険「はじめのかんぽ」について、戻り率※2の改善を主な目的として商品改定を実施したことに加えて、2024年1月に、中高年齢層のお客さまの一生涯の死亡保障ニーズの他、自身が亡くなった際の葬儀費用や遺族の生活資金等を速やかに確保しておきたいというニーズにお応えできるよう、一時払終身保険の販売を開始しました。「資産運用の深化・高度化」については、保険金等の確実なお支払いのためALMを基本としつつ、低金利環境下における安定的な利差益の確保を目指し、リスク許容度の範囲で、収益追求資産への投資を継続しております。また、海外金利の上昇と為替に係るヘッジコストの上昇を踏まえて、外国債券の残高を減らしつつ、オルタナティブ投資については、段階的な残高の積み上げを継続しております。これらの資産運用の取組みは、統合的リスク管理(ERM※3)の枠組みのもとで行っており、財務の健全性の確保やリスク対比リターンの向上を図っております。このほか、サステナブル投資※4については、「Well-being向上」、「地域と社会の発展」、「環境保護への貢献」を重点取組みテーマとし、かんぽ生命らしい“あたたかさ”の感じられる投資に取り組んでおります。

「お客さま体験価値(CX)の向上」については、お客さまに「かんぽ生命に入っていてよかった」と感動いただくために、お客さまの利便性向上のための「請求手続きのデジタル化」と「リアルとデジタルを織り交ぜたお客さまへのアフターフォロー」に取り組んでおります。まず、「請求手続きのデジタル化」の具体的な取組みとして、2023年5月より、契約者さま等に向けたWebサービス(マイページ)において、貸付請求を利用できる保険契約の対象範囲を拡大したことに加えて、同年9月にも、ご契約者さまのご家族もご契約内容を閲覧できる機能等を追加しております。次に「リアルとデジタルを織り交ぜたお客さまへのアフターフォロー」の具体的な取組みとして、2023年5月より、マイページからの請求時に専門スタッフ(カスタマーセンタースタッフ)がチャットでお客さまのご不明点に回答する「リアルタイムサポート」のサポート対象に貸付請求を追加したことに加えて、2024年2月より、各種請求や手続きを実施したお客さま情報等をかんぽ生命保険の本社からそのお客さまを担当するコンサルタントへ適時に連携・通知する取組みを、かんぽ生命保険の全ての支店を対象に実施しております。

  • ※1 お客さま体験価値(CX)とは、Customer Experienceの略語で、商品やサービスの価格や性能といった機能的な価値だけではなく、保険加入前から加入後のアフターフォロー、保険金支払までのプロセスすべてを通じてもたらされる満足感などの感情的・心理的な価値も含めた、お客さまが体験されるすべての価値のことです。
  • ※2 戻り率とは、払い込みいただく保険料総額に対する、受け取れる学資金の割合のことです。
  • ※3 ERMとは、Enterprise Risk Managementの略語で、会社が直面するリスクに関して、潜在的に重要なリスクを含めて総体的に捉え、会社全体の自己資本などと比較・対照することによって、事業全体として行うリスク管理のことです。
  • ※4 サステナブル投資とは、サステナビリティ(持続可能性)の諸要素を考慮した投資行動のことです。

以上の結果、当年度、当社連結の生命保険業の経常収益は6兆7,442億円(前期比5.71%増)、経常利益は1,609億円(前期比36.49%増)となりました。

対処すべき課題

当社グループは、2021年5月に発表した中期経営計画「JP ビジョン2025」について、事業環境の急激な変化等を踏まえ、グループ全体で直面する課題を克服し、「成長ステージへの転換」を実現するための道標(みちしるべ)とすべく、今後の戦略の見直しを行うとともに、2025年度の主要目標等も見直し、その結果を「JP ビジョン2025(プラス)」として、2024年5月に策定しました。

「JP ビジョン2025(プラス)」では、引き続き、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を目指し、コアビジネスの充実・強化に向けて、成長分野へのリソースシフトを強力に推進してまいります。また、人口減少、ライフスタイルや働き方の変化、デジタル化の急速な進展等経済社会の大きな変化に対応するため、お客さま体験価値や社員の利便性向上につながるDXの取組みを強力に推進するとともに、当社グループの人材・組織を多様性あるものに変革する取組みに着手してまいります。財務面では、ROE(株主資本ベース)について、2025年度4%以上を目標としております。その後、早期に株主資本コストを上回るROEを達成し、中長期的にさらなる向上を目指します。

また、業務の適正を確保するため、コーポレートガバナンスのさらなる強化に向け、引き続き、グループ全体の内部統制の強化を推進し、コンプライアンス水準の向上を重点課題として、グループ各社に必要となる支援・指導を行います。特に、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題を受け、同様の問題を二度と繰り返さないために講じてきた業務改善計画の施策の浸透・定着に引き続き取り組みつつ、取組みの実施状況や課題等を把握し、グループ全体としてさらなる改善を推進してまいります。

あわせて、部内犯罪及び社員の不正の防止、個人情報保護並びにマネー・ローンダリング、テロ資 金供与及び拡散金融対策等の取組みを継続・強化してまいります。

そして、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保については、交付金・拠出金制度も活用しつつ、その責務を果たし、地域社会に貢献するとともに、郵便局ネットワークの一層の活用・維持による安定的なサービスの提供等を図るため、グループ各社の経営の基本方針を策定し、その実施に努めてまいります。

ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式については、2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとするという郵政民営化法の趣旨に沿って、所要の準備を行ってまいります。

サステナビリティ経営の推進に関する取組みとして、環境問題への取組みについては、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた動きを踏まえ、CO2の排出量削減に向けたグループ全体のEV車両の導入拡大、カーボン排出係数の低い電力への段階的な切替え等により、事業サービスを通じた環境負荷軽減等に積極的に取り組みます。社員の多様な能力・個性を活かすダイバーシティ・マネジメントの推進については、2024年度において引き上げとなった法定雇用率の達成に向けた障害者雇用推進の取組みや、管理者への女性登用に向けた取組み等を実施してまいります。

加えて、サイバーテロリスクに備えたサイバーセキュリティの強化、自然災害の発生及び感染症の大流行等の危機へ備えた危機管理態勢の整備に取り組みます。

各事業セグメント別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。

なお、2024年度から、日本郵便の郵便局窓口事業セグメントにおける不動産事業と、日本郵政不動産株式会社等における不動産事業をグループ横断的に統括して一体的に事業を推進し業績管理を行うため、報告セグメントの区分を見直し、「不動産事業」セグメントを独立させました。

郵便・物流事業

日本郵便において、以下の取組みを行います。

① 郵便料金の見直しに向けた準備

人口の減少やデジタル化の進展等により今後も郵便物数の減少が予想される中、ユニバーサルサービスである郵便サービスの安定的な提供及びお客さまへのサービス向上を実現するためには、郵便料金の見直しは避けられないと考えており、郵便法施行規則の一部を改正する省令案の審議状況を踏まえ、郵便料金の見直しに向けた準備を進めてまいります。

② 荷物等の取扱個数の拡大、オペレーションの効率化に向けた取組み

物流分野については、成長するEC市場やフリマ市場を確実に取り込むため、差出・受取利便性の向上や他企業との連携強化により、荷物等の取扱個数の拡大を図ってまいります。同時に、持続的な成長に向けて、設備投資や人的資本投資を進め、機械処理の強化、次世代輸配送ネットワークの再編等、オペレーションの効率化に向けた取組みを強化してまいります。

③ 「2024年問題」への対応

働き方改革関連法等によるドライバーの拘束時間の減少などから生じる、いわゆる「2024年問題」を踏まえ、2024年度において、中継輸送の導入等、輸送オペレーションを見直します。なお、日本郵便は、政府により公表された「物流革新に向けた政策パッケージ」や「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を踏まえて、自主行動計画を策定、公表しております。同計画で掲げた諸事項について、荷主・運送事業者双方の立場から確実に対応してまいります。

④ 協力会社の皆さまとのパートナーシップ構築に向けた取組み

政府が公表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を踏まえ、引き続き、協力会社の皆さまとのパートナーシップ構築に向けて取り組んでまいります。

  • ※ 中継輸送とは、トラックの長距離運行を複数のトラックドライバーで分担する輸送形態のことです。

郵便局窓口事業

日本郵便において、以下の取組みを行います。

① 適正な営業推進態勢の確立

経営陣がリーダーシップを取り、適正な営業推進態勢の確立並びにコンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成、適正な営業推進のための改善策を着実に実行し定着を図るためのガバナンスの抜本的な強化及びPDCAサイクルの徹底に向けた取組みを継続するとともに、フロントラインに向けた伝達に齟齬がないよう配意しつつ、必要な見直しを随時、適切に行ってまいります。

② 郵便局の価値・魅力向上や店舗の最適配置等による生産性向上に向けた取組み

郵便局窓口への来局者数は減少傾向にあり、2024年度においても厳しい経営状況が継続すると見込んでおります。直面する事業環境を克服し、お客さまに選んでいただける事業へ成長するため、「営業専門人材の育成」等によるお客さまに寄り添った営業活動を展開するとともに、地方公共団体事務の受託や他企業との連携等により、地域やお客さまニーズに応じた郵便局らしい商品・サービスの充実を行い、郵便局の価値・魅力向上の取組み等を推進してまいります。加えて、お客さまの利便性を踏まえた店舗の最適配置や、窓口営業時間の弾力化等による生産性の向上にも取り組んでまいります。これらの取組みにより、郵便局窓口事業セグメントの損益の改善を図ってまいります。

国際物流事業

トール社が強みを持つ消費財や小売業等について、アジア域内においてそのポジションを維持するとともに、よりバランスの取れたポートフォリオ構築のため、ヘルスケア分野の対応能力拡充を図ってまいります。また、オペレーションの合理化等によるコスト削減にも、引き続き取り組んでまいります。

銀行業

ゆうちょ銀行は、国内外での金利の上昇、生成AIの浸透を始めとする社会のデジタル化の想定以上の進展、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に対する関心の高まり等の経営環境の大きな変化を踏まえて、「リテールビジネス」、「マーケットビジネス」及び「Σビジネス」の3つの成長エンジンをビジネス戦略の中心に据え、それを支える経営基盤の強化とあわせて取り組んでまいります。

① リテールビジネスの変革

リアルとデジタルの相互補完戦略を加速し、伝統的な銀行業務を超えた新しいリテールビジネスへの変革を進め、一人ひとりのお客さまとの取引を一層深めてまいります。デジタルサービス戦略では、通帳アプリの使いやすさ・機能の改善や、郵便局ネットワークも活用した積極的なアプローチにより、通帳アプリユーザーの一層の拡大を追求します。そして、パートナー企業との連携により、銀行の枠を超えた多様なサービスを、通帳アプリを通じてお客さまに適切にご案内することで、お客さまの多様なニーズをサポートするとともに、新たな収益機会を開拓してまいります。

資産形成サポートビジネスでは、コンサルタントによる専門的できめ細やかなコンサルティングを実施しつつ、デジタルチャネルを拡充するとともに、全国の郵便局と金融コンタクトセンター等をリモートで接続し、約20,000拠点で投資信託(NISA)の受付を可能とする、リアルとデジタルを融合した当社グループの強みを活かした販売態勢を強化してまいります。

加えて、デジタル技術を活用した業務改革を進め、お客さまの利便性を向上しつつ、業務量の削減による生産性向上に努めてまいります。

② マーケットビジネスの深化

リスク管理を深化しつつ、ゆうちょ銀行の安定的な資金調達基盤の強みを維持し、円金利資産とリスク性資産を組み合わせた最適な運用ポートフォリオを追求してまいります。特に、2022年度までの7年間で約2分の1に縮小した日本国債の保有残高は、日本銀行の政策変更を受けた国内金利の上昇トレンドも踏まえ、日本銀行への預け金等から日本国債への投資シフトを推進し、拡大を目指してまいります。

また、戦略投資領域を含むリスク性資産についても、引き続き資本を活用し、リスク対比リターンを意識しつつ、残高を拡大してまいります。

③ Σビジネスの本格始動

投資を通じて社会と地域の未来を創る法人ビジネスと位置付けるΣビジネスを推進し、将来的にサステナブルな収益基盤の構築を目指します。ゆうちょ銀行の新設子会社の「ゆうちょキャピタルパートナーズ株式会社」を中心に、パートナー企業とも連携しながら、プライベートエクイティファンド投資で培った知見も活かし、全国の中堅・中小企業への資本性資金の供給を本格化させてまいります。また、全国津々浦々のネットワークを活かし、地域金融機関等と連携した新たな投資先企業の発掘を行うとともに、投資先企業の商材・サービスが持つ潜在的なニーズを掘り起こすマーケティング支援業務を推進するなど、投資先の成長・課題解決に向けた伴走型の支援を行ってまいります。

これらの取組みを踏まえ、投資実績やマーケット環境の定期的な評価を行いつつ、GP業務関連残高(投資確約額ベース)の拡大を目指してまいります。

  • ※ GPとは、General Partner(ジェネラルパートナー)の略語。投資ファンドにおいて投資案件の選定、投資判断等を担うファンドの運営主体のことです。

④ 経営基盤の強化

3つのビジネス戦略を強力に推進するため、それらを支える人財、内部管理態勢、システム基盤等を一層強化してまいります。

特に、競争力・価値創造の「源泉」かつ「財産」である人財については、最重要資本の1つと捉え、「成長を促す」×「能力を引き出す」×「多様性を活かす」という3つの柱を軸とした、経営戦略と連動する人事戦略を推進してまいります。なお、人的資本経営の推進にあたっては、強化分野の人員数、女性管理者数比率や育児休業取得率などの各種KPIを設定したうえで取り組み、多様な人財が活躍する「いきいき・わくわく」に満ちた会社を社員とともに築き、企業価値の向上を実現してまいります。

また、ゆうちょ銀行の直営店及び郵便局の部内犯罪の再発防止に向け、防犯ルールの見直しや、郵便局におけるKRIのモニタリングを当社グループ全体で推進するなど、コンプライアンス態勢を一層強化するとともに、お客さま・社員の声をサービスや業務の改善に活かすスキームを通じ、お客さま本位の業務運営を推進してまいります。

加えて、生成AI等の新技術を積極的に活用したDXの一層の推進等、新たな成長に向けた戦略的なIT投資を強化してまいります。

  • ※ KRIとは、Key Risk Indicator(キーリスクインディケーター)の略語。部内犯罪発生リスクを定量的に捉える指標のことです。

生命保険業

かんぽ生命保険において、以下の取組みを実施してまいります。

① 成長戦略

かんぽ生命保険は、全国規模のお客さま基盤を強みに、ライフステージや世代を超えてお客さまとつながり続けることで、お客さまの維持・拡大を目指すとともに、安定的に利益を確保できる「強い会社」へ成長してまいります。

お客さまの維持・拡大のために、営業社員の質と量を強化するとともに、多様なお客さまニーズに応えられる商品ラインアップの拡充とCX向上につながる質と量を伴ったアフターフォローの充実を進めてまいります。これらの取組みを通じてお客さま体験価値を高め、お客さまの「信頼できる気軽な相談相手」として長期的な関係性を構築するとともに、そのご家族や知人、さらには地域・社会全体へかんぽ生命保険をお勧めいただき、お客さま数を増やしてまいります。

まず、営業社員の質と量を強化するために、管理職社員等の営業マネジメント力の強化やコンサルタントの人材育成の強化を進めるとともに、新卒採用におけるインターンシップ等の広報活動の改善や、経験者採用における人材紹介会社を活用した通年採用により、営業社員の人材確保を図ってまいります。

多様なお客さまニーズに応えられる商品ラインアップの拡充については、金利上昇等の外部環境を捉え、貯蓄性商品の魅力向上を目指すとともに、要介護状態や就業不能に備える保険等の保障性商品も充実させていくことで、貯蓄性と保障性を織り交ぜた商品ラインアップの拡充を進めてまいります。

CX向上につながる質と量を伴ったアフターフォローの充実としては、お客さまの利便性向上のための請求手続きのデジタル化と、リアルとデジタルを織り交ぜたチーム一体のアフターフォローを充実させることに加えて、介護や相続といった人生のあらゆる場面でお客さまの生活に寄り添うサービスを提供することで、お客さまが直面しているお困りごとの解消に取り組んでまいります。

また、安定的な利益確保のため、「資産運用の深化・進化」、「収益源の多様化/新たな成長機会の創出」、「事業運営の効率化」にも取り組んでまいります。

「資産運用の深化・進化」においては、統合的リスク管理(ERM)の枠組みのもと、市場環境変化を捉えた投資、他社との協働等による新規の資産運用事業の拡大・発展、インパクト投資を中核としたサステナブル投資のさらなる推進、運用専門人材の育成に取り組んでまいります。

「収益源の多様化/新たな成長機会の創出」においては、これまで収益源の多様化と新たな成長機会の創出を目的として実施してきた、三井物産株式会社との業務・資本提携、KKR & Co. Inc.及びGlobal Atlantic Financial Groupとの戦略的提携等を基に、引き続き、様々な成長領域の取り込みを図っていくため、他社との協業関係の構築・拡大を目指してまいります。

「事業運営の効率化」においては、デジタル化を推進することにより、さらなるお客さまサービス向上と業務の効率化及び経費の削減に引き続き取り組んでまいります。

  • ※ インパクト投資とは、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動を指します。

② サステナビリティ経営

かんぽ生命保険は、社会課題の解決への貢献のため、2024年3月に、マテリアリティ(重要課題)の見直しを行い、5つのマテリアリティ(重要課題)として「郵便局ネットワーク等を通じた保険サービスの提供」、「人々の笑顔と健康を守るWell-being向上のためのソリューションの展開」、「多様性と人権が尊重される安心・安全で暮らしやすい地域と社会の発展への貢献」、「豊かな自然を育む地球環境の保全への貢献」、「サステナビリティ経営を支える経営基盤の構築」を設定しました。これらに取り組むことで、自らの社会的使命を果たし、サステナビリティを巡る社会課題の解決に貢献してまいります。

また、かんぽ生命保険は、「人的資本経営」の3つの基本理念である、「社員が主体的に行動する企業風土の定着」、「戦略的な人材確保」、「多様な人材の活躍と柔軟な働き方の推進」に基づき、人的資本への積極的な投資を通じて、「人の力」の成長を促し、全役員・社員が会社とともに成長し、自信と誇りをもって堂々と仕事ができる会社を目指してまいります。

加えて、かんぽ生命保険は、コーポレートガバナンスの強化のため、組織としての透明性・公平性を確実に高め、さらには、社員一人ひとりのリスク感度を高めることにより、健全な事業運営を行ってまいります。

不動産事業

2024年度から、報告セグメントの区分を見直し、「不動産事業」セグメントを独立させました。グループ各社にまたがる不動産事業について一体的に推進し業績管理を行うため、当社が統括する一体的なマネジメント体制を構築して取り組んでまいります。

引き続き、JPタワー等のオフィス、商業施設をはじめ、住宅、保育所及び高齢者施設の賃貸事業等を行います。

また、稼働中の物件については、収益及び資産価値の維持向上に向けて、共同事業者等との連携や外部委託を適切に活用しながら、良質かつ効率的な運営に取り組みます。また、グループ保有不動産の有効活用や新たな収益機会の拡大の観点から、建築費や収益物件価格が高騰している状況下、適切なタイミングで開発や取得の計画を策定・実行することにより、不動産事業が収益の柱の一つとなるよう取り組んでまいります。

当社グループは、これらの取組みにおいて、着実な成果をお示しすることにより、株主の皆さまのご期待にお応えしてまいりたいと考えております。

株主の皆さまには、何卒今後ともなお一層のご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めがあるときの権限の行使に関する方針

当社は、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置づけ、経営成績に応じた株主への利益還元を継続して安定的に行うことを基本方針としております。

剰余金の配当につきましては、内部留保の充実に留意しつつ、資本効率を意識し、着実な株主への利益還元を実現するため、2026年3月期末までの間は1株当たり年間配当50円を目安に、安定的な1株当たり配当を目指してまいります。

当社の剰余金の配当の決定機関は、経営の機動的な運営を確保するため、定款において取締役会と定めております。また、毎年3月31日、9月30日を基準日として、剰余金の配当をすることができる旨を定めております。

当事業年度の配当につきましては、業績等を総合的に判断した結果、普通株式の年間配当は、1株当たり50円(うち中間配当25円)といたします。

内部留保資金につきましては、企業価値の向上を目指すべく、成長機会獲得のための投資や資本効率を意識した資本政策などに活用してまいります。

なお、日本郵政株式会社法第11条に基づき、当社の剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く。)については、総務大臣の認可を受けなければその効力を生じません。

連結計算書類