事業報告(2023年1月1日から2023年12月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
当事業年度の事業の概要
事業の経過及び成果
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症による行動規制や入国制限が撤廃され、経済活動の正常化が見られた一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化によるエネルギー資源・原材料価格の高騰や金融引き締めによる景気の下振れ懸念など先行き不透明な状況が続きました。国内経済においても、新型コロナウイルス感染症による行動規制が撤廃され、個人消費やインバウンド市場の持ち直しが見られるなど景気は回復基調となりつつあったものの、地政学リスクの発生等によるエネルギー資源・原材料価格の高騰や円安基調の為替相場継続に伴う物価上昇など厳しい状況が継続しました。
このような状況の中、当連結会計年度は、バルブ事業において、国内市場では前期及び当期に実施した価格改定効果や半導体製造設備向けの増収があったほか、海外市場においても米州向けを中心に増収となったこと等により、売上高の総額は前期比4.4%増の1,669億41百万円となりました。
損益面では、営業利益は、バルブ事業において半導体製造設備向けが増収になったことや海外市場における増収による増益等により、前期比23.9%増の136億87百万円となりました。経常利益は、前期比20.0%増の144億52百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却による投資有価証券売却益の計上等により、前期比23.9%増の105億91百万円となりました。
事業セグメント別の概況は以下の通りです。
事業セグメント別の概況
事業セグメント別連結売上高構成

売上高構成比 81.5%

バルブ事業の外部売上高は、国内市場において前期及び当期に実施した価格改定効果や半導体製造設備向けの増収があったほか、海外市場においては米州向けが増収となったこと等から、前期比8.6%増の1,360億16百万円となりました。
営業利益は、増収による増益等により前期比17.7%増の176億26百万円となりました。
売上高構成比 17.0%

伸銅品事業の外部売上高は、売価に影響を与える原材料相場は前年同期と同水準であったものの、業界全体の需要低迷もあり販売量が減少したことにより、前期比12.6%減の284億25百万円となりました。
営業利益は、販売量が減少したものの、減耗率の低減等により、前期比130.6%増の5億12百万円となりました。
売上高構成比 1.5%

その他の外部売上高は、ホテル事業において、新型コロナウイルス感染症による行動規制が撤廃され、宿泊客が増加したことや諏訪湖祭湖上花火大会が予定通り開催されたことにより、前期比13.0%増の24億99百万円となりました。
営業利益は、売上高の増加等により、前期比53.8%増の1億5百万円となりました。
直前3事業年度の損益の状況
第107期(2020年12月期)につきましては、決算期変更により2020年4月1日から2020年12月31日までの9カ月間となっております。
企業集団が対処すべき課題
当社グループは、2022年に策定された長期経営ビジョン『Beyond New Heights 2030 「流れ」を変える』及び中期経営計画の達成に向け、全社一丸となって取り組んでおります。この中で、「脱炭素化」と「デジタル化」を重要な社会課題であるとともに当社の成長領域と捉え、戦略的な投資の実行により現状のコア市場からのリソースのシフトを進め、収益構造の変化を図っております。
これらを実現するために、経営の基軸を「中長期的な投下資本収益性の向上」に置き、対外的には「ROE(自己資本利益率)」を、社内では「ROIC(投下資本利益率)」を主要KPI(重要業績評価指標)とする目標管理を行うとともに、当社グループの持続的な成長を図るべく、ESGについても積極的に取り組んでまいります。
※長期経営ビジョン及び中期経営計画は下記URLをご参照ください。
長期経営ビジョン:https://www.kitz.co.jp/investor_ir/management-policy/m_vision/
中期経営計画:https://www.kitz.co.jp/investor_ir/management-policy/m_plan/
① 経営方針
当社グループは2022年に2024年度を最終年度とする「第1期中期経営計画2024」を策定しており、中期経営計画の最終年度に当たる2024年度も引き続き「“ROIC×ESG”経営」を経営方針に掲げ、企業価値の向上と社会価値の向上の両立を目指してまいります。

※トリプルゼロとは「CO2ゼロ、環境負荷ゼロ、リスクゼロ」の取り組みを指します。
詳細につきましては、招集ご通知 48ページをご参照ください。
② 事業戦略
イ.バルブ事業
a.市場別
バルブ事業では、ターゲット市場を8つに区分し、当社グループが得意としている建築設備、石油化学、水処理及び機械装置市場をコア市場と位置付け、その基盤をさらに強化して確固たる土台を築く一方、成長分野・新規分野である半導体装置、半導体材料(フィルター)、機能性化学及び水素・脱炭素市場をグロース市場と位置づけて積極的にリソースを投下し、収益構造を変化させてまいります。

<コア市場>

<グロース市場>

b.地域別

ロ.伸銅品事業
材料費低減のための設備投資及び高付加価値製品の成長市場への販売拡大を進め、収益性の向上を図ります。
③ 財務戦略・資本政策
“ROIC×ESG”経営の推進、成長戦略の加速及びIR戦略の強化を進めることなどにより、さらなる利益の創出、成長期待の醸成及び資本コストの低減を実現し、企業価値の向上を目指すとともに、将来の成長・ROE向上に向けた戦略投資の実行及び必要な資金調達を実施いたします。
(ご参考)サステナビリティ経営への取り組み
当社グループは、企業理念である「キッツ宣言」及び長期経営ビジョン『Beyond New Heights 2030「流れ」を変える』の実現に向けてグループ一丸となってサステナビリティ経営を進めています。
2023年12月には、ESGへの取り組みが認められ、FTSE Russell社による「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に初めて選定されました。

環境(E)
■環境長期ビジョン
2021年12月、当社グループは環境長期ビジョン「3ZERO(トリプルゼロ)」を策定、公表しました。
① CO2ゼロ
2024年度までに国内グループ会社で使用する電力を再生可能エネルギー化することにより、中期環境目標として2030年までに2013年比で90%以上の削減、長期環境目標として2050年までにカーボンニュートラルとなることを目指しています。
② 環境負荷ゼロ
従来の大量消費型のモノづくりから持続可能な循環型社会に貢献するモノづくりに転換すべく、水資源、廃棄物、プラスチック、有害物質等を対象に取り組んでいます。また、生産工程から排出される鋳物砂を再生して生産工程に戻すことにより、資源の有効活用に貢献しています。
③ リスクゼロ
労災防止、公害防止及び火災防止活動を通じて、安全・安心なモノづくり、安定した操業の維持に取り組んでいます。
■「信州Green電源拡大プロジェクト第2弾」への参画
2022年4月より、国内主要拠点において、使用電力の100%をCO2フリーの「信州Greenでんき」に切り替えました。2023年11月には、長野県内の再生可能エネルギー電源の普及と拡大を目的とした「信州Green電源拡大プロジェクト第2弾」の参画企業として選定されました。「信州Greenでんき」の購入を通じ、脱炭素社会の実現と地域社会の発展に向けた取り組みを進めています。
社会(S)
■「PRIDE指標2023」で初めてブロンズを受賞
2023年11月、職場におけるセクシャル・マイノリティ(LGBTQ+)に関する取り組みの評価指標「PRIDE指標2023」において、初めてブロンズを受賞しました。
長期経営ビジョン『Beyond New Heights 2030 「流れ」を変える』の達成に向けて、2015年度より推進してきたD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の活動に、「エクイティ(公平性)」の観点を加え、「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」を掲げ、多様な人財が活躍する組織づくりを進めております。

■健康経営優良法人2023に認定
2023年3月、優良な健康経営を実践する企業として、経済産業省より「健康経営優良法人2023」に認定されました。昨年に引き続き、2回目の認定となります。
当社グループは、社員の心身の健康づくりを戦略的に推進し、活力ある組織をつくるため、「キッツグループ健康経営宣言」及び5つの方針に従い、様々な施策に取り組んでいます。
※健康経営宣言及び健康経営取り組み方針~5つの柱~は下記URLをご参照ください。
https://www.kitz.co.jp/sustainability/social/safety-health/

ガバナンス(G)
当社グループは、企業理念体系に立脚し、公正かつ迅速果断な経営の意思決定を可能とする経営体制を構築するとともに、内部統制、リスクマネジメント及びコンプライアンス等の強化を進めるなど、コーポレート・ガバナンスの充実を図っています。なお、詳細な取り組みについては、当社ウェブサイト及び株主総会資料 掲載ウェブサイト(招集ご通知 1ページ)の情報をご参照ください。