事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)
当社グループ(企業集団)の現況に関する事項
事業の経過および成果
2022年度の世界経済は、ウクライナ情勢、上海ロックダウン、原材料価格の高止まり、部材不足、インフレや金利の上昇などの下押し影響を受け、減速しました。日本においては、急速な為替変動なども景気の下押し要因となりました。
当社は2022年4月1日より、持株会社と事業会社からなる新しいグループ体制に移行しましたが、このような経営環境のもと、2022年度は各事業会社の自主責任経営を徹底し、競争力強化の取り組みを進めるとともに、中長期戦略の初年度として立案した戦略を実行してきました。
競争力強化については、PX(Panasonic Transformation)の取り組みとして、データドリブン経営のための基盤構築が進展しています。現場革新の取り組みでは、各事業会社の代表拠点を中心にサプライチェーン全体のオペレーション力強化が進んでいます。
また、グループ長期環境ビジョンであるPanasonic GREEN IMPACTの実現に向けた3つの成長領域において、パナソニック コネクト㈱が展開するサプライチェーンマネジメント事業では、その事業特性・市場環境を考慮し、資本市場の力を借りてグローバルでの成長を加速させるために株式上場を行うことが最適と判断し、それに向けた準備を開始することを2022年5月に決定しました。また、パナソニック エナジー㈱が展開する車載電池事業では、2022年7月に、車載電池工場の建設計画に関し米国カンザス州より投資誘致補助金制度「Attracting Powerful Economic Expansion」の申請が承認され、同年10月に当社取締役会にて同工場の建設を決定しました。さらに、パナソニック㈱が展開し欧州で需要が拡大しているヒートポンプ式温水給湯暖房機(Air to Water、以下、「A2W」)事業では、生産体制強化に向けたチェコ工場への投資を2022年9月に発表し、また、スウェーデンの大手空質空調機器メーカーであるSystemair ABの業務用空調事業を2023年2月に買収しました。
当年度の連結売上高は、8兆3,789億円(前年度比13%増)となりました。半導体不足による生産・販売への影響などはありましたが、A2Wや、自動車生産の回復を受けた車載機器、車載電池などの販売増に加え、Blue Yonder Holding, Inc. (以下、「Blue Yonder」)の新規連結や為替換算の影響もあり、増収となりました。
営業利益は、2,886億円(前年度比19%減)となりました。原材料価格高騰や固定費増加などの影響を、増販益や価格改定などの取り組みでカバーできず、前年の一時益の反動などもあり、減益となりました。また、税引前利益は、3,164億円(前年度比12%減)、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、2,655億円(前年度比4%増)となりました。
セグメント別の状況
当社グループは、経営管理上、事業の成果を「くらし事業」「オートモーティブ」「コネクト」「インダストリー」「エナジー」の5つの報告セグメントに区分して評価、開示しております。
報告セグメント別の事業部および主要な事業内容を次頁に掲載しており、その次の頁から当年度のセグメント別の概況を示しております。
- 記載金額は、億円未満を、前年度比は小数点以下第1位を、利益率は小数点以下第2位を、それぞれ四捨五入して表示しております。
- 売上高および営業利益の前年度比は、前年度のセグメント情報を当年度末の形態に合わせ、組み替えて算出しております。
- 各セグメントの売上高には、セグメント間の取引が含まれております。
- 「その他」は、エンターテインメント&コミュニケーション、ハウジング、原材料の販売等が含まれております。なお、「その他」の事業は、ハウジングなどが堅調に推移し、前年度比で増収、増益となりました。
- 「消去・調整」には、セグメント業績の管理上、特定のセグメントに帰属しない損益や、連結会計上の調整およびセグメント間の内部取引消去が含まれております。なお、従来「消去・調整」で実施していた販売価格に関する管理会計上の調整は、当年度より各セグメントに反映しております。
報告セグメント別の事業部および
主要な事業内容
当セグメントの売上高は、前年度比で10%増加し、3兆4,833億円となりました。
当年度は、国内は家電事業が減収となりましたが、欧州のヒートポンプ式温水給湯暖房機(Air to Water、以下、「A2W」)や北米のショーケース、海外電材事業などが好調に推移し、為替換算の影響もあり、全体では増収となりました。
主な分社の状況は、くらしアプライアンス社では、グローバルでの需要減速、国内での競争激化、上海ロックダウンの影響を受けましたが、価格改定や為替換算の影響もあり全体では増収となりました。
空質空調社では、国内のルームエアコンの需要減はありましたが、欧州のA2Wが好調に推移し、増収となりました。
コールドチェーンソリューションズ社では、北米のショーケースが堅調に推移し、増収となりました。
エレクトリックワークス社では、海外を中心とした電設資材の販売が好調に推移し、価格改定の効果もあり、増収となりました。
当セグメントの営業利益は、1,031億円となりました。重点事業の欧州空調、国内・海外電材、北米ショーケースでの増販益はありましたが、国内家電が価格改定等の効果はあるものの減販影響をカバーしきれず、また、空質空調社でのリコール費用などの影響もあり、前年度から51億円の減益となりました。
当セグメントの売上高は、前年度比で22%増加し、1兆2,975億円となりました。
当年度は、新型コロナウイルス感染症の影響や、世界的な車載半導体および部材のひっ迫が継続していることなどにより、自動車生産が当年度年初の見通しに比べて減少し、当セグメント売上高への影響がありました。しかしながら、前年度からは自動車生産が回復、また為替換算の影響や、新たな領域の製品やサービス事業などに取り組んだこともあり、車載コックピットシステム事業、車載エレクトロニクス事業ともに増収となりました。
当セグメントの営業利益は、162億円となりました。車載半導体などの部材ひっ迫による価格の高騰、増産などに伴う固定費増加の影響、また円安によるマイナス影響などがありました。しかしながら、増販益に加えて、部材価格の高騰や為替影響に対する価格改定、コストダウン、またオペレーション力強化などの取り組み効果があり、上期は固定費増加や部材価格の高騰影響などにより赤字だったものの、下期は販売回復とともに黒字化、上期から大きく利益を伸ばしました。セグメント全体では、前年度から148億円の増益となりました。
当セグメントの売上高は、前年度比で22%増加し、1兆1,257億円となりました。
当年度は、パソコン・スマートフォン関連の投資減速により、実装機が影響を受けましたが、アビオニクス事業や海外向け堅牢モバイル端末事業が伸長したことに加え、Blue Yonderの連結化もあり、増収となりました。
主な事業部の状況は、モバイルソリューションズ事業部では、海外向け堅牢モバイル端末や国内向けノートパソコンが好調に推移したことで、増収となりました。
プロセスオートメーション事業部では、溶接機は需要が堅調に推移し増収も、中国での新型コロナウイルス感染症拡大などによる顧客のパソコン・スマートフォン関連投資減速の影響を受けた実装機が低調に推移し、全体では減収となりました。
メディアエンターテインメント事業部では、欧州や中国の市況は低迷したものの、米国のプロジェクター需要が堅調に推移したことで、増収となりました。
パナソニック アビオニクス㈱では、世界的な旅客需要の回復、航空会社の財務改善による投資の再開などにより、機内エンターテインメント・通信システムおよび機体メンテナンス・リペアサービスがともに好調に推移し、増収となりました。
Blue Yonderでは、欧米での景気不透明感に伴う投資先送りの影響があるものの、着実なSaaS(注)受注推進でリカーリング販売が堅調に成長し、増収となりました。
当セグメントの営業利益は、209億円となりました。アビオニクス事業などの増販益はありましたが、前年度に一時益を計上したこともあり、前年度から319億円の減益となりました。
- (注) SaaS:
- Software as a Serviceの略。ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネットを経由してユーザーが必要な機能を利用できるサービス
当セグメントの売上高は、前年度比で2%増加し、1兆1,499億円となりました。
当年度は、ICT(情報通信)端末市場、環境車を除く自動車市場、および中国FA市場の低迷に加え、半導体事業譲渡に伴う商流変更の影響がありましたが、為替換算の影響もあり全体では増収となりました。
主な事業の状況は、制御機器事業では、電源や産業用リレーなどが好調に推移した他、価格改定もあり、増収となりました。
FAソリューション事業では、産業用モーター等の拡販を継続的に行ったものの、半導体や一般産業分野での投資意欲減退による中国FA市場減速の影響を受け、減収となりました。
電子デバイス事業では、ICT端末市場において、ノートパソコンの生産台数が大幅に下振れしたことによる減販があったものの、継続的な環境車用コンデンサーの需要拡大による増販や価格改定および為替換算の影響により増収となりました。
電子材料事業では、価格改定および為替換算の影響もあった一方で、半導体市況低迷の影響を受け、減収となりました。
当セグメントの営業利益は、668億円となりました。原材料価格の高騰による影響を価格改定や合理化でカバーし、円安効果もあった一方で、急速な市況悪化に伴う減販損により、前年度から164億円の減益となりました。
当セグメントの売上高は、前年度比で26%増加し、9,718億円となりました。
当年度は、世界的に旺盛な電気自動車の需要拡大が継続し、北米を中心に車載電池の販売が好調に推移したことに加え、為替換算の影響もあり、増収となりました。
主な事業の状況は、車載事業では、各国の政策を通じた脱炭素化への要求の高まりなどから、旺盛な電気自動車需要が継続しました。加えて、北米電池工場の生産性向上も寄与したことで、車載用リチウムイオン電池の販売が好調に推移し、増収となりました。
産業・民生事業では、中国の新型コロナウイルス感染症対策や世界的なインフレ進行による市況悪化の影響で、特に下期以降、ICT・動力など民生機器向けリチウムイオン電池の需要が急減し、BtoB向けリチウム一次電池も世界的な需要減の影響を受けましたが、為替換算の影響により増収を確保しました。
当セグメントの営業利益は、332億円となりました。円安効果はありましたが、産業・民生事業の減販損に加え、原材料価格高騰の影響や将来の成長に向けた開発費などの固定費増加もあり、前年度から336億円の減益となりました。
対処すべき課題
2023年度の世界経済は、ゼロコロナ政策撤廃を背景とした中国経済の回復が期待されるものの、地政学リスクの高まりやインフレ、金融引き締めの影響などが懸念され、先行きの見通しにくい状況が続きます。日本においては、コロナ禍からの消費の回復やインバウンド効果による景気の下支えが期待されますが、世界経済の動向が懸念材料です。
このような経営環境のもと、当社は2021年から取り組んできた2年間の競争力強化の期間を経て、グループとして向き合う社会課題を起点に、今年度は成長に向けたフェーズチェンジを果たしていきます。当社の使命である「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向けては、喫緊の課題である地球環境問題を筆頭に、様々な社会課題を解決しなければなりません。そこで、当社は以下2つの領域にて競合を超えるお役立ちを果たしてまいります。
①地球環境問題の解決
全ての事業の活動におけるCO2排出をゼロにすることには責務として取り組むことを前提に、この領域では、電化・省エネ・エネルギー転換にかかる知見と技術力を活用し、社会へのCO2削減貢献量を拡大することでお役立ちを果たします。
②お客様一人ひとりの生涯にわたる健康・安全・快適
グループの持つ、多様な販売ルートでの顧客接点と様々な商品やサービスでの顧客接点を統合し、お客様一人ひとりの「くらし」を最も理解し、お客様に真に寄り添ったお役立ちを果たします。
そして、各事業の長期にわたる競争力の獲得と、グループとしての成長に向けて、2023年度からは事業構成の組み替えの判断軸を明確化し、戦略的に見直しを進めます。株主の皆様やお客様、お取引先様、従業員を含む全ての利害関係者の幸せとグループの価値向上に向けて、1つ目の判断軸にグループ共通の戦略との適合性を、2つ目の判断軸に将来の変化を見越した事業の立地・競争力と事業の成長性・収益性を置き、2つのお役立ち領域のいずれかにおいて、グループ内で競合を上回るお役立ちを果たし続けられるか、グループ外でより大きなお役立ちを果たすべきかを見極めてまいります。