事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過及びその成果
当期は、新型コロナウイルス感染症の拡大による景気悪化の影響を受け、前期に比べ減収減益となりました。
部品事業の売上高は、自動車関連市場の低迷の影響を第1四半期(2020年4月1日から2020年6月30日まで)に大きく受けたものの、M&Aの貢献及び半導体や5G関連市場における需要増により、前期に比べ微増となりました。一方、機器・システム事業は総じて減収となったことから、当期の売上高は前期に比べ721億56百万円(4.5%)減少の、1兆5,268億97百万円となりました。
利益については、減収に加え、減価償却費の増加やスマートエナジー事業*1における一時損失の計上もあり、前期に比べ減益となりました。営業利益は295億49百万円(29.5%)減少の706億44百万円、税引前利益は312億67百万円(21.0%)減少の1,175億59百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は175億7百万円(16.3%)減少の902億14百万円となりました。
当期の平均為替レートは、対米ドルは前期に比べ3円(2.8%)円高の106円、対ユーロは3円(2.5%)円安の124円となりました。この結果、当期の邦貨換算後の売上高は、前期に比べ約90億円押し下げられました。
1. 本添付書類に記載の金額、株式数並びに比率(%)は、表示単位未満を四捨五入しています。
2. 本添付書類の写真、グラフ等はご参考として掲載しています。
3. 第65期より、従来の米国会計基準に替えて国際会計基準(IFRS)を適用しています。これに伴い、第64期の業績についてもIFRSに組み替えて表示しています。また、IFRSに準拠した科目で表示しています。
4. 20ページ *1:2020年4月1日付で、ソーラーエネルギー事業の名称をスマートエナジー事業へ変更しました。
5. 23、24ページ *2:2020年4月1日(第67期期首)に「コミュニケーション」に含まれる当社国内子会社 京セラコミュニケーションシステム㈱が、「生活・環境」に含まれていた同 ㈱京セラソーラーコーポレーションを吸収合併しました。これに伴い、第66期以前の業績は、吸収合併後の事業セグメントに組み替えて表示しています。
6. 22–24ページに記載の売上高構成比の数値合計は、「その他」及び「調整及び消去」(売上高構成比計△0.9%)の項目があるため100%になりません。
連結業績ハイライト




事業セグメント別の状況
産業・自動車用部品



M&Aの貢献に加え、半導体製造装置用ファインセラミック部品等の売上が増加したことにより、増収となりました。事業利益は、減価償却費の増加等の影響はあったものの、増収及び原価低減により、増加しました。
半導体関連部品



5G対応スマートフォン向けにセラミックパッケージの需要が増加したこと等により、増収となりました。一方、事業利益は、減価償却費の増加等により、減少しました。
電子デバイス



産業市場向けを中心にAVX CORPORATION(AVX)やプリンティングデバイスの売上が減少したことにより、減収となりました。事業利益は、減収及び減価償却費の増加を主因に減少しました。
コミュニケーション*2



携帯電話端末の販売台数が減少したことに加え、エンジニアリング事業の売上減もあり、減収となりました。一方、事業利益は、原価低減に努めた結果、増加しました。
ドキュメントソリューション



第1四半期を底に需要の回復は見られたものの、前期の水準には及ばず、機器及び消耗品の売上が減少し、減収減益となりました。
生活・環境*2



主にスマートエナジー事業における太陽光発電システム等の販売減により、減収となりました。事業損失は、減収の影響に加え、スマートエナジー事業において有形固定資産及びのれん等の減損損失を計上したことにより、増加しました。
対処すべき課題
1. 中長期的な経営戦略
当社は、グループ内に有する様々な経営資源の活用により総合力を最大限に発揮し、外部との連携を強化することで、高成長・高収益企業の実現を目指しています。特に、「情報通信」、「自動車関連」、「環境・エネルギー」、「医療・ヘルスケア」市場を中心に既存事業の拡大及び新規事業の創出を図るとともに、収益性向上に向けて生産性倍増に取り組んでいます。
さらに、成長加速に向けて組織の活性化を図るため、当社は2021年4月より、16ある事業部門・主要子会社を「コアコンポーネント」、「電子部品」、「ソリューション」の3つの事業セグメントのもとに、管理部門を「コーポレート」に集約しました。また、それぞれに経営トップの権限を大幅に委譲した担当役員を新たに任命し、より迅速かつダイナミックな経営判断の実践に努めます。
2. 優先的に対処すべき課題
① 既存事業の拡大及び新規事業の創出
「情報通信」、「自動車関連」市場においては、引き続き5Gや半導体、ADAS関連向け製品の旺盛な需要が見込まれます。当社は、この事業機会を着実に捉え、既存事業の拡大を図るべく、積極的な設備投資を継続しています。特にセラミックパッケージやコンデンサ、水晶部品等の増産に向けて、国内外の生産拠点における量産設備や自動化ラインの導入、新棟建設等を進めます。
また、中長期的な成長に向けて、社内外との連携を強化し、社会課題の解決に貢献する新規事業の創出に取り組んでいます。独自のAI技術等を活用したAI協働ロボット・システム事業への参入や、低炭素社会の実現に貢献する基幹材料である窒化ガリウムデバイス(GaN)の応用システム開発へ着手するとともに、太陽光発電システムを軸としたエネルギー事業や、人工関節事業で得たノウハウを活かした再生医療事業への展開等を進めています。今後、これらの新規事業の試験導入や実証実験等を進め、早期の収益貢献を図ります。
AI協働ロボット・システム事業の概要

窒化ガリウム(GaN)応用システム事業の概要

② 生産性倍増
当社は、AIやロボット、IoTを駆使した生産技術の開発を進め、生産性倍増に取り組んでいます。具体的には、クレイ型蓄電池の生産現場において全ての工程をIoTによりデータで連携させ、生産ラインをAI制御により自律化させたスマートファクトリーの構築を進めています。今後、これらの自動化技術やシステムを各事業へ横展開し、グループ全体の生産性向上を図ります。
また、コロナ禍において加速したリモートワークを一層活用し、営業や管理部門における更なる業務効率化を進めます。
スマートファクトリーの概要

3. ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の推進
当社は、持続的な企業運営に向けて、環境や社会課題への対応、並びにコーポレート・ガバナンスの強化に努めています。
環境課題については、自社拠点への太陽光発電システムの設置等、再生可能エネルギーの活用による温室効果ガス排出量の削減等に取り組むとともに、長期環境目標の設定やTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示の充実化を進めています。
社会面では、経営理念である「全従業員の物心両面の幸福」の実現に向けて、多様な人材が活躍できる職場環境や制度づくりに努めています。柔軟な勤務体系の整備に加え、新規アイデアやチャレンジを後押しする各種制度の導入等に取り組んでいます。
コーポレート・ガバナンスについては、取締役会の経営の監督と執行の役割の一層の明確化及び実効性の向上に努めています。第67期定時株主総会において、社外取締役比率を3分の1に向上させるとともに、新任の社外取締役として企業経営者の選任を提案し、より高水準のコーポレート・ガバナンスの構築を図ります。
ESG経営の推進
