事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過及びその成果
当期は、世界情勢の不透明感の高まりやインフレの進展に加え、各国での利上げや大幅な円安の進行等、不安定な経済環境が継続し、景気減速感が高まりました。当社の主要市場においては、スマートフォン市場での需要が減速したことに加え、これまで堅調に推移してきた半導体関連市場においても汎用品を中心に調整感が強まりました。
このような経営環境の中、当社の売上高は、スマートフォン向け部品の需要減の影響を受けたものの、高水準の需要が継続した先端半導体向け部品の増産に加え、ドキュメントソリューション事業及び機械工具事業等での販売の増加、並びに円安による効果もあり、前期に比べ、1,864億円(10.1%)増加の2兆253億円となり、かねてより目標としてきた売上高2兆円を達成しました。
一方、利益は、増収及び円安による効果はあったものの、原材料及びエネルギーの価格や物流コスト等の高騰及びコミュニケーション事業の大幅な売上減を主因に減少しました。加えて、一時的な費用として、訴訟関連費用、年金債務に係る追加費用、並びに構造改革費用等の合計約190億円を計上したこともあり、営業利益は前期に比べ、204億円(13.7%)減少の1,285億円、税引前利益は同227億円(11.4%)減少の1,762億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同204億円(13.8%)減少の1,280億円となりました。
(事業報告に関する注記)
- 金額及び株式数は表示単位未満を四捨五入しています。33~38ページに記載の比率は百万円単位で比較した比率で、表示単位未満を四捨五入しています。
- 写真、グラフ等はご参考として掲載しています。
- 35~37ページに記載の売上高構成比の数値合計は、「その他の事業」及び「調整及び消去」(売上高構成比計△0.7%)の項目があるため100%になりません。
連結業績ハイライト




事業セグメント別の状況
コアコンポーネント

半導体関連部品事業における情報通信インフラ市場向け有機基板及び産業・車載用部品事業における半導体製造装置用ファインセラミック部品等の高付加価値製品の売上増を主因に、増収増益となりました。
主要な事業内容
半導体製造装置用部品等の各種ファインセラミック部品や車載カメラモジュール、電子部品やICを保護するセラミック・有機パッケージ等を産業機械や自動車関連、情報通信市場向けに展開しています。




電子部品

売上高は、産業機器市場及び自動車関連市場向けを中心にセラミックコンデンサ等の需要が増加したことを主因に増加しました。事業利益は、原材料等の価格高騰の影響や、スマートフォン向け部品の需要減速に加え、子会社において年金債務に係る追加費用等を計上したことから減少しました。
主要な事業内容
コンデンサや水晶部品、コネクタ、パワー半導体等の各種電子部品やデバイス等を情報通信や産業機器、自動車関連、民生市場向けに展開しています。





ソリューション

売上高は、ドキュメントソリューション事業及び機械工具事業における主要製品の販売増を主因に増加しました。事業利益は、コミュニケーション事業における携帯電話端末の販売台数の大幅な減少に加え、構造改革に伴う在庫評価減等の一時的な費用の計上並びに各事業における原材料及びエネルギーの価格や物流コスト等の高騰の影響を受けたことから、減少しました。
主要な事業内容
一般向けから各種産業向けの空圧・電動工具や、複合機及びプリンター、携帯電話端末、情報通信サービス、住宅用蓄電システムなどの多種多様な機器、システム、並びにソリューションサービスを展開しています。





設備投資の状況
当期は、コアコンポーネントセグメントにおいて、5Gや半導体関連市場向け製品の需要増へ対応すべく、前期に引き続き積極的な設備投資を実施しました。また、電子部品セグメントにおいては、生産能力拡大のため海外に新たな工場を建設しました。さらに、研究開発体制の強化を目的に新たな研究開発施設も開設しました。これらの結果、当期の設備投資額は、前期に比べ221億円(14.6%)増加の1,739億円となりました。

対処すべき課題
AI技術や5G通信技術の進化とともに社会全体のデジタル化が加速しており、今後も半導体関連産業や電子部品産業の更なる拡大が見込まれます。また、技術の進化と併せて、脱炭素等の環境対応や労働人口減少に対する生産現場のスマート化の進展等、様々な社会課題の解決に貢献する技術やサービスへのニーズが高まっています。
当社はこれらの環境変化を事業機会と捉え、当社の強みである幅広い事業領域と多様な技術、強固な財務基盤を活用し、社会課題の解決に貢献する製品やソリューションの展開を通じ、事業拡大を図ります。
① 既存事業の拡大及び新規事業の創出に向けた投資の強化
AIの活用領域拡大に伴い、中長期的に5G/6Gや半導体、モビリティ関連市場での各種製品の需要が見込まれます。これらの市場においては、より高精細、高性能、高品質な製品供給が求められる一方、需要の変動や技術革新の加速化により、生産能力だけでなく、ニーズの変化にタイムリーに対応できる供給体制の構築が必要となっています。当社は高シェア製品を中心に、引き続き国内外において新工場棟の建設を進めるとともに、デジタル技術の活用による生産現場のスマートファクトリー化等の積極的な設備投資を進め、既存事業の拡大に努めます。
また、新製品・新技術開発の促進に向けて、グループ内外の経営リソースの一層の活用による開発力の強化及びスピードアップ、並びに人材育成に努め、事業領域の拡大を図ります。
さらに、長期的な事業成長を支える新規事業の創出に向けた研究開発への投資も積極的に進めています。新素材等の応用展開による様々な領域への新製品開発をはじめ、当社の強みである幅広い技術資産を組み合わせることにより、独自性が高く、社会課題の解決に貢献する新規事業の創出を図ります。
<既存事業の拡大に向けた主な設備投資>

② 収益性向上に向けた事業の選択と集中
当社は、高収益事業の一層の収益性の向上並びに課題事業の収益性改善を図るため、経営陣主導による事業モニタリングを強化し、事業体制や事業領域、製品展開の見直し等を進め、事業の選択と集中に取り組んでいます。
コアコンポーネントセグメント及び電子部品セグメントにおいては、より高収益な事業体制の構築に向けて高付加価値製品等の競争優位領域に注力するとともに、生産性向上に向けたスマートファクトリーの導入や生産管理面でのデジタル活用等による効率化を進めます。
ソリューションセグメントにおいては、保有している様々な技術や製品の融合により、新たな事業モデルを構築するとともに、構造改革を実行することで収益性の改善・向上を図ります。
<コミュニケーション事業の構造改革>

③ サステナブル経営の推進
当社は持続的な企業運営に向けて、環境や社会課題への対応並びにコーポレート・ガバナンスの強化に取り組みます。
環境面では脱炭素社会の実現を目指し、再生可能エネルギーの普及に努めています。自社拠点への太陽光発電システムの設置導入を進めるとともに、地域・社会全体での温室効果ガス排出量削減に向けて、太陽電池、燃料電池、蓄電池の3つの電池を活用した新たなサブスクリプション型の事業モデル等のインフラ構築の促進に取り組んでいます。
社会面では、経営理念である「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」の実現を目指し、社員一人ひとりがいきいきと活躍できるよう、働きやすさの醸成に努めています。多様な人材が柔軟に働くことで、社会課題を把握し、課題を解決する事業の創出につながるものと考えています。
コーポレート・ガバナンスについては、企業価値向上を目指し、取締役会の更なる多様性や実効性の向上、中長期の事業戦略及び資本戦略に関する積極的な議論等を進めます。また、リスクマネジメント及びコンプライアンスの推進等により、サステナブル経営の実践を図ります。
<サステナブル経営の推進に向けた主な取り組み>
