事業報告(2023年4月1日〜2024年3月31日)








- ※1.
- 当社グループの連結計算書類は国際会計基準(IFRS)に基づいて作成しております。
- ※2.
- 2023年度実績は、第159回定時株主総会第1号議案が原案どおり承認可決されることを条件として支払われる配当予定額により算出しております。
- ※3.
- 「女性リーダー比率」は、2023年5月に公表した中期経営計画の策定に伴い新たに導入した未財務目標として算出しております。
- ※4.
- 「重大災害」は、死亡、後遺症(障がい)が残る災害のこと、「重要災害」は、重大災害につながる恐れのある災害のこととしております。
- ※5.
- 件数は、構内で発生したすべての重大・重要災害を対象とし、被災者属性による区別はしておりません。
- ※6.
- 2023年度実績は集計中であり、当社ウェブサイトや統合報告書にて開示を予定しております。
事業の経過およびその成果

当事業年度(2023年4月1日~2024年3月31日)における経済環境は、インフレに伴う金融引締めの継続やロシア・ウクライナ戦争に加え、中東での紛争勃発による地政学リスクの高まりで、地域間の強弱があるものの、世界的に景気は減速しました。米国では、利上げの効果がみられる一方で、人手不足を背景としたサービス価格の高止まりなどの根強いインフレが残っていることから、連邦準備制度理事会(FRB)は、5会合連続で金利を据え置きました。中国では、長引く不動産不況が影響し、個人消費が低調に推移しました。また、米中貿易摩擦による輸出入の制約やサプライチェーンの見直しを背景とした対中投資の減少が景気回復の重石になっています。日本では、インバウンド需要や企業の設備投資が堅調に推移し、景気が緩やかに回復しました。なお、為替相場は、日本銀行によるマイナス金利政策の解除後も、依然として日米の金利差に乖離があり、円安の流れが継続しました。
このような中、当社グループの主要な市場においては、ハイエンドスマートフォン向けに光学フィルムや透明粘着シート、工程保護フィルムの需要が増加しました。また、車載ディスプレイや新たな市場として、仮想現実(VR)向け光学フィルムの需要が増加しました。自動車材料は半導体不足の影響が緩和し需要が回復しました。半導体や電子機器の生産に使用される製品は、在庫調整が一巡し需要が緩やかに回復しました。一方、ハイエンドノートパソコン、タブレット端末用光学フィルムおよびデータセンター向け製品は市況の悪化により需要が減少しました。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン向け核酸アジュバント(核酸免疫補強剤)は当事業年度において売上収益を計上しておりません。
以上の結果、売上収益は前事業年度と比較し1.5%減(以下の比較はこれに同じ)の9,151億3千9百万円となりました。また、営業利益は5.5%減の1,391億3千2百万円、税引前当期利益は5.4%減の1,389億1百万円、当期利益は6.0%減の1,027億5千5百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は5.9%減の1,026億7千9百万円となりました。なお、当事業年度の対米ドル為替レートは、前事業年度と比較し6.8%円安の1ドル143.9円となり、円安による影響は、営業利益で240億円の増益要因となりました。
事業区分別の概況

インダストリアルテープ


主要な製品または事業
基盤機能材料(接合材料、保護材料、プロセス材料、自動車材料等)
基盤機能材料は、前事業年度に対して売上収益が伸長しました。ハイエンドスマートフォン向け組み立て用部材は、新製品の投入により需要が増加しました。また、自動車材料は、第1四半期に譲渡したNVH(Noise, Vibration, Harshness)事業を除くと、国内や欧州を中心に自動車生産の回復により需要が増加しました。半導体メモリやセラミックコンデンサーの生産に使用される工程用材料は、前事業年度の第4四半期を底に緩やかに回復基調となり、需要が増加しました。
以上の結果、売上収益は3,521億5千8百万円(2.7%増)、営業利益は392億8千1百万円(44.3%増)となりました。
オプトロニクス


主要な製品または事業
情報機能材料(光学フィルム等)、回路材料(CIS※、高精度基板等)
- ※Circuit Integrated Suspension
情報機能材料は、売上収益が前事業年度におよびませんでした。ハイエンドノートパソコンやタブレット端末の巣ごもり需要が一巡し、光学フィルムや透明導電性フィルムの需要が減少しました。一方、ハイエンドスマートフォン向けでは光学フィルムに加えて透明粘着シートや工程保護フィルムの需要が堅調に推移しました。また、VR向け光学フィルムは新たな生産ラインで量産を開始しました。
回路材料は、売上収益が前事業年度におよびませんでした。CIS(Circuit Integrated Suspension)はデータセンター向け高容量ハードディスクドライブ(HDD)の需要が減少し、稼働調整などによるコスト抑制を進めました。ハイエンドスマートフォン向け高精度基板は、前事業年度比で搭載機種が増加しました。
以上の結果、売上収益は4,699億9百万円(2.6%減)、営業利益は1,239億7千1百万円(2.7%減)となりました。
ヒューマンライフ
営業利益 5億1千9百万円


主要な製品または事業
ライフサイエンス(核酸受託製造、核酸合成材料、核酸創薬、医療関連材料等)、メンブレン(高分子分離膜)、パーソナルケア材料(衛生材料等機能性フィルム)
ライフサイエンスは、売上収益が前事業年度におよびませんでした。核酸受託製造は、COVID-19の収束に伴い、ワクチン向け核酸アジュバントの需要が減少しました。一方、核酸医薬市場は、大型疾患向けの商用化が見込まれており、今後の需要拡大への対応として米国マサチューセッツ州の拠点に新設した工場で、試作生産を開始しました。核酸医薬の創薬は、肺線維症治療薬の臨床第2相試験の結果を受けて、ブリストルマイヤーズ スクイブ社より追加インライセンスのオプション権を行使しないとの通知を第2四半期に受領しました。また、同社より、当社との肝線維症・肝硬変に関する製剤の独占ライセンス契約に基づく、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療を対象とした臨床第2相試験についても中止するとの通知を受領しました。なお、難治性の癌治療薬は、ライセンスアウトに向けて、引き続き治験に取り組んでおります。医療関連材料は、経皮吸収薬の需要が通院患者の増加に伴い回復しました。
メンブレン(高分子分離膜)は、売上収益が前事業年度におよびませんでした。各種産業用途向け高分子分離膜の需要が中国を中心に減少しました。
パーソナルケア材料は、2022年6月に買収したMondi社のパーソナルケア事業が通年で寄与したことにより、前事業年度に対して売上収益が伸長しました。主力であるおむつ向け製品に加え、コア材料である機能性フィルムの特性を活かした新たな用途展開を進めるとともに、生分解性技術を用いた環境貢献型の新製品開発に取り組んでおります。
以上の結果、売上収益は1,245億1百万円(3.2%減)、営業損失は94億9千万円(前事業年度は営業利益5億1千9百万円)となりました。
その他
営業利益 △38億9千2百万円
(△は損失)
- ※未だ十分な売上収益を伴っていない事業が中心であり、構成比率としては僅少なため表記しておりません。

主要な製品または事業
新規事業、その他製品
当セグメントには未だ十分な売上収益を伴っていないその他製品が含まれております。主として、開発者向けにフレキシブルセンサのキット販売を行っております。
以上の結果、売上収益は1千2百万円(7.0%減)、営業損失は56億6千1百万円(前事業年度は営業損失38億9千2百万円)となりました。
経営課題および計画
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、経営理念の核である「新しい発想でお客様の価値創造に貢献します。」というミッションのもと、ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の中心に据えて、事業を通じた社会課題の解決に努め、持続可能な未来を実現するために、地球環境と社会に貢献しながら成長し続ける企業グループを目指します。
当社グループには、これまでの歴史で培ってきた基幹技術、多様な事業領域や強い知的財産、さらには幅広い業界における顧客基盤といった強みがあります。これらの強みを結集し、当社グループ独自のマーケティング活動である「三新活動」※1と「ニッチトップ戦略」※2で、イノベーションを加速させ、地球環境や社会に貢献できる製品やソリューションを創出していきます。
当事業年度において、当社グループは、地球環境や人類・社会、世の中にとって「なくてはならない」存在となり、ESGを経営の中心に置き、持続的な成長をさらに加速させるために、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を見直しました。当社グループは、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)領域に対して定めた10のマテリアリティに取り組むことで、社会課題の解決と経済価値の創造の両立を実現し、企業価値向上を図ります。

- ※1.
- 新用途開拓と新製品開発に取り組むことで、新しい需要を創造する活動
- 2.
- 変化しながら成長するマーケットを見極め、その中のニッチな領域を対象に、当社グループ固有の技術・知見の融合と、ステークホルダーとの共創によりなくてはならない「製品」「機能」「ビジネスモデル」を継続的に生み出し、シェアNo.1を狙う、当社グループ独自の差別化戦略
(2)中長期的な会社の経営戦略
①2030年ありたい姿と中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」
当社グループは、2030年ありたい姿として、“ニッチトップクリエーターとして驚きと感動を与え続ける「なくてはならないESGトップ企業」”を掲げています。「Nittoらしさ」である、「チャレンジを楽しむ」社風・文化を土壌に、「環境・人類に貢献するニッチトップ」を創出し、お客様に最高の「驚きと感動」を提供することで、豊かな未来に貢献します。当社グループは、お客様やパートナーと共創イノベーションで新たな価値を生み出し、持続可能な地球環境・人類社会になくてはならない存在として、ステークホルダーからの信頼と期待に応えてまいります。

2023年度から2025年度までを実行期間とする中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」では、「ニッチトップ戦略×Nitto流ESG戦略」の実践をスローガンに掲げ、「環境・人類に貢献する事業ポートフォリオ変革」、「ニッチトップを生み出すイノベーションモデルの進化」、「人財・チームの挑戦を加速する組織文化の改革」、「変化を先取る経営インフラへの変革」の4つの重点項目に取り組んでいます。2030年ありたい姿「なくてはならないESGトップ企業」を実現するために、中期経営計画の確実な遂行を進めていきます。
②中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」の重点項目と進捗
a 環境・人類に貢献する事業ポートフォリオ変革
経済価値と社会価値の両軸で見極めた“伸ばすもの”に対しては重点投資を進める一方で、将来の成長が見込まれない、環境化学物質規制で製造できなくなる可能性があるなど、“残さないもの”に対しては、撤退・売却も含めた打ち手で構造改革を進めます。M&Aやスタートアップ企業への出資を含む戦略的アライアンスを積極的に活用し、新規領域では、環境ビジネス・ソリューションビジネス創出にもチャレンジすることで、事業ポートフォリオの変革を進めます。
当事業年度は、希少疾患からより多くの患者を対象とした治療薬の商用化が進むと見込まれる核酸医薬市場での受託製造事業の需要に対して、米国および国内で総額300億円超の設備投資を実施し、商用化の製造能力を持つ新工場が稼働しました。
新規領域では、環境ビジネスとして、脱溶剤化などによる消費エネルギー削減に加え、製造工程での排出が避けられないCO2の回収などのネガティブエミッション技術(大気中のCO2を回収・吸収し、貯蓄・固定することで大気中のCO2を除去する技術)の開発を加速させ、CO2削減のためのトータルソリューションとしての提案に向けて取り組んでいくネガティブエミッションファクトリー構想を推進しています。
b ニッチトップを生み出すイノベーションモデルの進化
当社グループは、社会課題に対してなくてはならないニッチトップソリューションを提供する差別化技術を磨き、PlanetFlags™/HumanFlags™を生み出すこと、マーケティング力の強化で事業開発力を高めること、お客様やパートナーとの共創による事業化の加速を進めることで、これまで当社グループが培ってきた勝ち方に加えて、新しい勝ち方の確立を進めていきます。
当事業年度においては、新たに14製品(累計24製品)をPlanetFlags™/HumanFlags™として認定いたしました。これらの製品をGlobal Niche Top™製品/Area Niche Top™※製品へ育ててまいります。
環境貢献分野において、当事業年度では、エア・ウォーター株式会社との協業により、家畜ふん尿バイオマス由来のCO2から牧草の保存に使用されるギ酸(乳牛の飼料である牧草サイレージを生産する際に、劣化を防ぐために使用される添加剤)を製造する取組みを開始しました。また、バイオ材料開発の米国スタートアップであるCrysalis Biosciences社との共同開発により、核酸製造の重要な原材料の一つであるアセトニトリル(溶剤)のバイオ化を推進しています。社会課題にフォーカスした次世代の環境技術を創出し、脱炭素化の加速と環境貢献分野での新規事業機会の獲得を目指します。
- ※「Global Niche Top」「Area Niche Top」は当社グループの登録商標です。
c 人財・チームの挑戦を加速する組織文化の改革
当社グループは、「人財は最も重要な財産」と位置付けています。持続的な成長に必要となる新しいイノベーションを生み出すために、チャレンジする機会の拡充と人事・育成制度の変革を行います。また、多様な事業展開や新たな勝ち方の構築を加速するために、事業開発人財の育成や異業種人財の獲得を強化し、個々の活躍を支えるインクルージョン施策に取り組みます。すべての従業員が活き活きと働く会社を目指し、「Nittoらしい」人的資本経営を進めてまいります。
従業員の声を集め、会社としての課題、各部署の課題を考え、一人ひとりが活き活きと働ける組織づくりにつなげるため、隔年でグローバルエンゲージメントサーベイを実施しています。2023年度のサーベイ(回答率94% 、回答者数23,776人)は、エンゲージメントスコアが前回比7pt上昇の81になり、各社・各拠点の活動の成果が表れる結果となりました。
また、専門性と多様性を拡充するため、当社において、2021年度よりキャリア人財の採用を強化しています。当事業年度においては、新卒人財とほぼ同数のキャリア人財を採用しました。
上記を含む様々な取組みの推進、積極的な情報発信を行ったことで、「人的資本調査2023」における「人的資本リーダーズ2023」および「人的資本経営品質(ゴールド)」を受賞、また、「D&I AWARD 2023」において、最高評価の「BEST WORKPLACE」に認定されました。
d 変化を先取る経営インフラへの変革
当社グループが目指す「ニッチトップ戦略×Nitto流ESG戦略」の実践には、取り巻く事業環境の変化を先取りすることが必要です。地政学リスクをはじめとしたサプライチェーンリスクへの先見力と対応力の向上や、デジタル活用によるデータドリブン経営の実践、資本効率性が高い、財務体質の維持・向上など、「なくてはならないESGトップ企業」を支える強靭な経営インフラへ、変革を進めます。
当事業年度においては、強靭なサプライチェーンを構築するために設立したサプライチェーンコミッティ活動の中で、地政学リスクや化学物質規制リスクなどのリスク対応や、未財務目標の一つであるサステナブル材料使用率を高める取組みを推進しました。また、資本効率性が高い、強靭な財務体質を維持・向上するため、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を明確にしました。当社グループは、ROE(財務領域)とPER(未財務領域)双方の観点からPBR向上を目指す考え方のもと、ROEを主たる経営指標の一つとして位置付け、当期利益率と資産回転率に主眼を置き、三新活動、ニッチトップ戦略、成長戦略と構造改革の遂行、ビジネスモデルの変革を進めてまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「Nitto for Everyone 2025」において、2025年度末における経営上の目標を、営業利益1,700億円、営業利益率17%およびROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)15%と定めました。
また、当社グループでは、現時点では未だ財務には至っていないが将来的に財務となり得る要素、あるいは財務に転換していく要素を“未財務”と呼び、9つの未財務指標を設定しています。これら未財務指標の目標達成に向けた活動を推進することで変革を加速し、企業価値向上を図ります。
なお、環境系未財務指標の一つであるCO2排出量は、「Nittoグループ カーボンニュートラル2050」の達成に向け、Scope1+2をターゲットに目標を設定しており、2023年度のCO2排出量は目標値を大幅に達成する見込みです。今後は、さらなる気候変動への対応を加速すべく、脱溶剤化や再生可能エネルギーの推進※1などに取り組み、2030年度目標を470kton/年からSBT※2に基づく400kton/年へと上方修正しています。
- ※1.
- 当社グループは、使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指していることから、RE100(企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ)への加盟を申請中です(2024年4月末現在)。
- 2.
- SBTとは、Science Based Targetsの略で、パリ協定で採択された科学的根拠に基づく目標(産業革命前比で気温上昇を1.5℃未満に抑える目標)と整合した、企業が設定する「温室効果ガス排出削減目標」を指します。当社グループは現在SBTへの加盟を申請中です(2024年4月末現在)。

(4)各セグメントの戦略と取組み
各セグメントにおける主な戦略と取組みは、次のとおりです。
・インダストリアルテープ
生成AIの普及や先進運転支援システムの技術進歩を背景に、半導体やセラミックコンデンサー向け工程用材料の需要が増加することが見込まれます。自動車材料は、モーターやバッテリーの周辺部材である絶縁材料やサブガスケット材の拡販とEVの性能向上に資する熱マネジメント材料の開発に取り組みます。また、急速に高まっている電子機器における修理する権利(Right to Repair)の機運に対し、当社グループの剥離技術を活用した新製品を投入し、事業拡大を図ります。これらの取組みを通じて、インダストリアルテープ全体として安定的に高い利益率を生み出せる事業基盤の構築を目指します。
・オプトロニクス
情報機能材料は、ディスプレイ市場が成熟化する中、フォルダブルスマートフォンなどのハイエンド製品向けに注力します。また、光学フィルムとその他周辺部材を合わせたトータルソリューションで、顧客の生産性向上や環境負荷低減に貢献します。当社グループの強みである耐久性に優れた車載向け光学フィルムは、1台当たりのディスプレイ搭載数の増加や面積拡大により需要は堅調に推移すると見込まれます。
なお、英国の拡張現実(AR)グラス開発企業TruLife Optics社の株式を一部取得することを決定しました。ARグラスの性能や快適さを向上させるために、当社グループの強みである光学設計技術や薄膜・多層塗工などの粘接着技術を活かした材料開発に注力していきます。
回路材料は、HDD市場の在庫調整が一巡し、需要が再び増加することが見込まれます。さらにデータセンター向けHDD市場において、新たな技術が実用化されるなど、HDDの高容量化が一段と進むことが想定されます。これらの需要に対し、ベトナム拠点に新工場を建設し、生産能力を増強する予定です。ハイエンドスマートフォン向け高精度基板は、顧客との関係を深め、将来の成長に資する製品の開発に取り組みます。
・ヒューマンライフ
ライフサイエンスは、核酸医薬の受託製造事業において、希少疾患からより多くの患者を対象とした治療薬の商用化への移行が期待されており、市場は中長期的に成長することが想定されます。また、核酸医薬市場の拡大を背景に、その製造に使用される合成材料(NittoPhase™)の需要増加が見込まれます。これらの成長市場に対して、生産能力の増強や生産性向上を図ります。核酸創薬においては、核酸DDS(Drug Delivery System)設計技術の開発とライセンス契約締結に注力していきます。なお、難治性の癌治療薬の開発は、臨床第1相試験が完了の見込みです。
メンブレンは、海水淡水化向けを戦略的に縮小する一方で、各国における排水規制強化に対して、排水・廃液のゼロ化に貢献する製品の需要が増加すると見込んでいます。
パーソナルケア材料は、おむつ向け衛生材料の新製品と生分解性技術を用いた環境貢献型製品の拡販により、収益性の改善を図ります。
・その他
その他における新規事業では、PlanetFlags™/HumanFlags™の候補となるテーマに経営資源を集中的に投入し、早期の事業化を目指します。
(5)その他
2024年1月5日付で公表しました「当社製水道用膜モジュールの認定制度に関する不適切行為について」(以下「本件不適切事案」といいます)について、当社は、外部専門家のみで構成される調査委員会(委員長:井越正人弁護士)を設置して、本件不適切事案の調査を依頼しております(2024年3月1日付「調査委員会の設置について」)。今後、その調査結果も踏まえたうえで、再発防止策の策定と内部管理体制の強化に取り組んでまいります。