事業報告(2017年4月1日から2018年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

(1)事業の経過及びその成果

 当連結会計年度における我が国経済は、海外経済の動向や金融市場に不透明感はありましたが、堅調な企業業績を受け、雇用状況も改善していることから、概ね景気は緩やかな回復基調で推移しました。
 当社グループが属する住宅関連業界については、雇用・所得環境の改善傾向が続いていることに加え、政府による住宅取得支援制度の継続や日本銀行による金融緩和政策等の影響により住宅ローン金利が低水準で推移していることを背景として、住宅取得需要は底堅く推移しております。
 このような状況のもと、当連結会計年度の当社グループの新規融資実行件数は、①主力商品である「フラット35」関連商品については、融資金利が過去最低水準を維持しており、新規借入需要が堅調に推移するなか、代理店運営体制の強化や当社グループ独自商品である「ARUHIスーパーフラット8」「ARUHIスーパーフラット9」等の商品販売に注力したこと、②2015年度に導入した銀行代理業者としての変動金利商品の販売が本格的な軌道にのってきたこと、などを背景として堅調に増加しました。
 一方、住宅ローン金利の低下局面で昨年度に急速に高まっていた借換需要は、当連結会計年度当初より落ち着いた動きとなっており、借換融資実行件数は昨年度と比較して大きく減少しました。
 このような状況のもと、融資実行業務に関しては、借換融資実行件数減少の影響が大きく、オリジネーション・フィー売上が減少する一方、「フラット35」のパッケージ・ローンである「フラットα」や当社独自の商品である「スーパーフラット」などに関する貸付債権流動化関連の営業収益が増加したことから、当連結会計年度の営業収益は20,433百万円(前連結会計年度比4.8%減)と昨年度に対し小幅な減少となりました。一方、借換の大きな減少に伴う営業費用の減少もあり、税引前利益は5,199百万円(前連結会計年度比6.9%増)と昨年度に対して増益となりました。当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益は4,769百万円(前連結会計年度比47.8%増)となりました。なお、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益が大きく増加している要因は、前連結会計年度においては当社の税務上の繰越欠損金に対して繰延税金資産を認識しておりませんでしたが、2017年7月1日に当社の子会社であった旧アルヒ株式会社を吸収合併したことに伴い、当連結会計年度において、将来その控除対象となる課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で、1,240百万円の繰延税金資産を認識したことによるものです。
 なお、当社グループは住宅ローン事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

〈ご参考〉業績ハイライト

営業収益

20,433百万円 (前期比4.8%減)

税引前利益

5,199百万円 (前期比6.9%増)

当期利益

4,769百万円 (前期比47.8%増)

ARUHIにおける融資実行件数の推移(住宅ローン商品及び投資用マンションローンの合計件数)

 年間20兆円※1(新規貸出額)という巨大な住宅ローン市場において、外部環境にも大きく左右されず、融資実行件数は成長を実現しております。

 以上により、当社グループの当連結会計年度の営業収益は以下のとおりとなりました。

続きを見る閉じる

(2)対処すべき課題

 住宅ローン市場を取り巻く環境としましては、長期的には少子高齢化に伴う人口の減少によりマーケット全体は縮小傾向に向かうと予想されるものの、住宅需要は人口よりも世帯数に影響を受けることから、人口減少に比して世帯数自体は大きく減少しないと想定しております。また、地域別では地方から大都市圏への人口流入を背景とした住宅需要の活性化、セグメント別では国の中古物件流通促進政策を背景とした中古セグメント等、住宅ローン市場において引き続き成長が見込める領域が存在すると想定しております。
 このような事業環境を踏まえ、当社グループは、住宅ローン市場の成長ポテンシャルの着実な取込みを通じたシェアアップによる住宅ローン事業の中期的な成長を基盤としつつ、川上・川下領域への事業拡大を進めております。

① 中核ビジネスの成長

(主な取り組み内容)
 当社グループはこれまで、お客さまのニーズに応じた多様な商品を、FC(フランチャイズ)店舗、直営店舗に加えて不動産業者や大手デベロッパーなどを対象とする直販ホールセール営業やWebチャネル(ARUHIダイレクト)など様々な販売チャネルを拡大して提供することでより大きな市場により効率よくアクセス可能な体制を整備すると共に、全国に130のFC店舗と直営店舗/直販拠点を展開(2018年3月31日現在)し、お客さまの意思決定を左右する不動産業者への営業に加え、お客さまに住宅ローンの相談から手続きまでのアドバイスを対面で行ってまいりました。
 今後の取り組みとしては、変動金利商品を含む、商品ラインナップの拡充を目指すフルライン戦略やお客さまが自らの希望に合わせてリアルチャネルとWebチャネルを自由に行き来できるオムニチャネル戦略を推進することで、お客さまの多様化するニーズへの対応に引き続き取り組んでまいります。
 加えて、テクノロジーの活用による認知度の向上(「ARUHI家の検索」及び「ARUHIマガジン」等)、利便性の向上(Webチャネル「ARUHIダイレクト」)、クオリティオブライフの向上(住生活関連サービス「ARUHI暮らしのサービス」)及び事務処理スピードの向上(RPA:Robotic Process Automation)等を図り、これら4つのドライバーを成長エンジンとして、住宅ローン事業の中期的な成長を加速させてまいります。

(対処すべき課題)

a.変動金利型住宅ローン市場への参入

 日本銀行によるマイナス金利政策や変動金利型住宅ローン金利引き下げ競争の激化を背景とした当社の主力商品である「フラット35」の金利競争力が相対的に低下する可能性がある中で、当社グループは今後、変動金利型住宅ローンを志向されるお客さまの開拓にも取り組んでまいりますが、その際固定金利型住宅ローンである「フラット35」と銀行代理業者として取扱う変動金利型住宅ローンとでは、お客さまの属性に違いがあること等から、新たな顧客層や不動産会社等への営業強化による営業基盤強化、及び魅力的な変動金利型住宅ローン商品の開発等が課題であると認識しております。

b.FC店舗網の拡大に伴う販売体制及びコンプライアンス体制の強化

 当社グループはFC店舗網の強化に取り組んでおり、FC店舗を含む人材の安定的な確保と雇用の拡大、能力向上とコンプライアンス体制の強化が課題であると認識しております。従って、FC運営法人の指導サポート体制の強化、新規出店及び新規店舗の早期育成、許認可事業の全社横断的管理、継続的な臨店監査の実施等に積極的に取り組むべく専門部署を設置し、引き続き販売体制及びコンプライアンス体制の強化に取り組んでまいります。

c.Webチャネル(ARUHIダイレクト)の推進

 当社グループはこれまでFC店舗や直営店等のリアルチャネルにおいて住宅ローンのお申し込み、ご契約に関するお手続きなど幅広いサービスを対面で提供してまいりましたが、多様化するお客さまのニーズに合わせ、住宅ローンのWeb申込サービスである「ARUHIダイレクト」を開始いたしました。今後はリアルチャネルとWebチャネルを自由に行き来できる導線を確保し、オムニチャネル化へ向けた取り組みを推進していくことが課題であると認識しております。

d.RPA(Robotic Process Automation)推進による顧客利便性と事務効率の向上

 当社グループは住宅ローン業務において、最先端テクノロジーを活かしてバリューチェーン上の業務プロセスの再構築に取り組み、お客さまの利便性と事務効率の向上に取り組んでまいりましたが、今後も引き続きRPAを推進し、住宅ローン業務の自動化・ペーパーレス化等を通じた更なる事務処理能力、精度の向上及び事務コストの削減に取り組んでまいります。
 また、RPA技術を用いた他金融機関等への事務受託サービス等、最先端テクノロジーを活かした新サービスの開発及び収益化に取り組んでまいります。

② 川上・川下領域への事業拡大

(主な取り組み内容)

 当社グループは住宅ローン事業を中核ビジネスと位置づけ、中核ビジネスの川上領域である家探しサービス「ARUHI家の検索」から、川下領域である住宅購入後の住生活関連サービス「ARUHI暮らしのサービス」の提供によって、お客さまの生涯を通じて価値を提供できるよう事業領域の拡大に引き続き取り組んでまいります。
 具体的には、「ARUHI家の検索」とは、Webで家賃や年齢など、簡単な質問に答えるだけで、現在の家賃をベースにしたおすすめエリア、物件種別及び条件に合う物件の提示や住宅ローンのシミュレーションを行うサービスであり、金融と不動産の両方に接点を持つ当社グループならではのポジショニングを活かして、過去の取引データを基に住宅購入検討者に対して最適化された物件情報及びローン情報を提供しようとするものです。
 また、「ARUHI暮らしのサービス」とは、住生活に関する様々な提携企業の商品・サービスの優待特典を、当社グループの住宅ローンを利用したお客さまに入会金・年会費無料で提供するサービスであり、今後も提携社数の充実を図ると共にお客さまの利用効率向上に取り組んでまいります。

③ 内部管理体制及び経営管理体制の強化

 全国規模の店舗網の拡大に伴い、コンプライアンス意識の更なる向上と法令遵守体制の一層の強化の必要性が増している中、当社は、許認可事業を全社横断的に管理する組織の新設、店舗指導サポート体制の強化や内部監査担当部署による継続的な臨店監査の実施等により、内部管理体制の強化に取り組んでおります。また、ガバナンス体制の見直し、ERM(統合リスクマネジメント)の導入、管理会計システムの強化等、経営管理体制の強化に取り組んでおります。

続きを見る閉じる

〈ご参考〉コーポレート・ガバナンスに関する取組み

■コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方

 当社は、住宅ローン専門金融機関として「住生活総合プロデュース業」をビジョンに掲げ、住宅ローン関連ビジネスだけでなく、お客様の家探しから住宅の購入、その後の日々の暮らしまで、お客様の住生活にかかるライフステージに寄り添う企業を目指しています。

 コーポレート・ガバナンスは、当社の目指す姿を実現するための企業価値向上に向けての取組みであり、①当社グループの経営課題と外部環境の変化への対応、②健全性や透明性を確保した経営、これらをスピーディーに実践するための意思決定の仕組みであります。

 当社は、戦略的でスピード感のある意思決定を適切な監督の下で推進するため、以下の基本方針を設定しています。

  • 1) 株主の権利に配慮し、権利を適切に行使する環境の整備を行います。また、持続的な成長や企業価値の向上のため、株主総会及びその他の対話の機会を重視し、積極的に対話を行います。
  • 2) 取締役会等は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、企業戦略等大きな方向性を示し、適切な執行のリスクテイクを支えるとともに、実効性の高い監督を行います。
  • 3) 永続的な企業価値の向上のため、お客様・従業員・取引先・債権者・地域社会等の様々なステークホルダーと協働し相互の利益や価値を尊重します。
  • 4) 会社の経営成績及び財政状態だけでなく、非財務情報としての経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスについて積極的に開示し情報提供の充実による透明な経営を行います。

■当社のコーポレート・ガバナンス体制

 当社は、戦略的でスピード感のある意思決定を適切な監督の下で推進するため、以下の体制を構築しております。

続きを見る閉じる

連結計算書類

  • 連結財政状態計算書を
    見る
  • 連結損益計算書を見る
議決権を行使する