(2)対処すべき課題
住宅ローン市場を取り巻く環境としましては、長期的には少子高齢化に伴う人口の減少によりマーケット全体は縮小傾向に向かうと予想されるものの、住宅需要は人口よりも世帯数に影響を受けることから、人口減少に比して世帯数自体は大きく減少しないと想定しております。また、地域別では地方から大都市圏への人口流入を背景とした住宅需要の活性化、セグメント別では国の中古物件流通促進政策を背景とした中古セグメント等、住宅ローン市場において引き続き成長が見込める領域が存在すると想定しております。
このような事業環境を踏まえ、当社グループは、住宅ローン市場の成長ポテンシャルの着実な取込みを通じたシェアアップによる住宅ローン事業の中期的な成長を基盤としつつ、川上・川下領域への事業拡大を進めております。
① 中核ビジネスの成長
(主な取り組み内容)
当社グループはこれまで、お客さまのニーズに応じた多様な商品を、FC(フランチャイズ)店舗、直営店舗に加えて不動産業者や大手デベロッパーなどを対象とする直販ホールセール営業やWebチャネル(ARUHIダイレクト)など様々な販売チャネルを拡大して提供することでより大きな市場により効率よくアクセス可能な体制を整備すると共に、全国に130のFC店舗と直営店舗/直販拠点を展開(2018年3月31日現在)し、お客さまの意思決定を左右する不動産業者への営業に加え、お客さまに住宅ローンの相談から手続きまでのアドバイスを対面で行ってまいりました。
今後の取り組みとしては、変動金利商品を含む、商品ラインナップの拡充を目指すフルライン戦略やお客さまが自らの希望に合わせてリアルチャネルとWebチャネルを自由に行き来できるオムニチャネル戦略を推進することで、お客さまの多様化するニーズへの対応に引き続き取り組んでまいります。
加えて、テクノロジーの活用による認知度の向上(「ARUHI家の検索」及び「ARUHIマガジン」等)、利便性の向上(Webチャネル「ARUHIダイレクト」)、クオリティオブライフの向上(住生活関連サービス「ARUHI暮らしのサービス」)及び事務処理スピードの向上(RPA:Robotic Process Automation)等を図り、これら4つのドライバーを成長エンジンとして、住宅ローン事業の中期的な成長を加速させてまいります。
(対処すべき課題)
a.変動金利型住宅ローン市場への参入
日本銀行によるマイナス金利政策や変動金利型住宅ローン金利引き下げ競争の激化を背景とした当社の主力商品である「フラット35」の金利競争力が相対的に低下する可能性がある中で、当社グループは今後、変動金利型住宅ローンを志向されるお客さまの開拓にも取り組んでまいりますが、その際固定金利型住宅ローンである「フラット35」と銀行代理業者として取扱う変動金利型住宅ローンとでは、お客さまの属性に違いがあること等から、新たな顧客層や不動産会社等への営業強化による営業基盤強化、及び魅力的な変動金利型住宅ローン商品の開発等が課題であると認識しております。
b.FC店舗網の拡大に伴う販売体制及びコンプライアンス体制の強化
当社グループはFC店舗網の強化に取り組んでおり、FC店舗を含む人材の安定的な確保と雇用の拡大、能力向上とコンプライアンス体制の強化が課題であると認識しております。従って、FC運営法人の指導サポート体制の強化、新規出店及び新規店舗の早期育成、許認可事業の全社横断的管理、継続的な臨店監査の実施等に積極的に取り組むべく専門部署を設置し、引き続き販売体制及びコンプライアンス体制の強化に取り組んでまいります。
c.Webチャネル(ARUHIダイレクト)の推進
当社グループはこれまでFC店舗や直営店等のリアルチャネルにおいて住宅ローンのお申し込み、ご契約に関するお手続きなど幅広いサービスを対面で提供してまいりましたが、多様化するお客さまのニーズに合わせ、住宅ローンのWeb申込サービスである「ARUHIダイレクト」を開始いたしました。今後はリアルチャネルとWebチャネルを自由に行き来できる導線を確保し、オムニチャネル化へ向けた取り組みを推進していくことが課題であると認識しております。
d.RPA(Robotic Process Automation)推進による顧客利便性と事務効率の向上
当社グループは住宅ローン業務において、最先端テクノロジーを活かしてバリューチェーン上の業務プロセスの再構築に取り組み、お客さまの利便性と事務効率の向上に取り組んでまいりましたが、今後も引き続きRPAを推進し、住宅ローン業務の自動化・ペーパーレス化等を通じた更なる事務処理能力、精度の向上及び事務コストの削減に取り組んでまいります。
また、RPA技術を用いた他金融機関等への事務受託サービス等、最先端テクノロジーを活かした新サービスの開発及び収益化に取り組んでまいります。
② 川上・川下領域への事業拡大
(主な取り組み内容)
当社グループは住宅ローン事業を中核ビジネスと位置づけ、中核ビジネスの川上領域である家探しサービス「ARUHI家の検索」から、川下領域である住宅購入後の住生活関連サービス「ARUHI暮らしのサービス」の提供によって、お客さまの生涯を通じて価値を提供できるよう事業領域の拡大に引き続き取り組んでまいります。
具体的には、「ARUHI家の検索」とは、Webで家賃や年齢など、簡単な質問に答えるだけで、現在の家賃をベースにしたおすすめエリア、物件種別及び条件に合う物件の提示や住宅ローンのシミュレーションを行うサービスであり、金融と不動産の両方に接点を持つ当社グループならではのポジショニングを活かして、過去の取引データを基に住宅購入検討者に対して最適化された物件情報及びローン情報を提供しようとするものです。
また、「ARUHI暮らしのサービス」とは、住生活に関する様々な提携企業の商品・サービスの優待特典を、当社グループの住宅ローンを利用したお客さまに入会金・年会費無料で提供するサービスであり、今後も提携社数の充実を図ると共にお客さまの利用効率向上に取り組んでまいります。
③ 内部管理体制及び経営管理体制の強化
全国規模の店舗網の拡大に伴い、コンプライアンス意識の更なる向上と法令遵守体制の一層の強化の必要性が増している中、当社は、許認可事業を全社横断的に管理する組織の新設、店舗指導サポート体制の強化や内部監査担当部署による継続的な臨店監査の実施等により、内部管理体制の強化に取り組んでおります。また、ガバナンス体制の見直し、ERM(統合リスクマネジメント)の導入、管理会計システムの強化等、経営管理体制の強化に取り組んでおります。
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