事業報告(2019年4月1日から2020年3月31日まで)

SUBARUグループの現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当期の世界経済は、年度終盤までは通商問題の長期化などにより減速しましたが、当社グループの重点市場であります米国においては、良好な雇用・所得環境を背景に個人消費は堅調に推移しました。国内においては、輸出の減少や自然災害の発生などで設備投資や国内需要が減少し、個人消費は力強さを欠く状況が続きました。2020年1月以降には、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な経済活動の停滞により、景気の先行きが不透明な状況となりました。

このような環境のなか、当社グループは、「安心と愉しさ」の提供を通じて、お客様から共感され、信頼していただける存在となることを目指し、中期経営ビジョン「STEP」を推進しております。2年目となる当期においては、風通しの良い会社づくりのための「組織風土改革」とブランドの根幹である信頼をより強固にするための「品質改革」および「SUBARUづくりの刷新」を最重要テーマとして掲げ、これらの改革をSUBARUグループ一丸となって推進いたしました。

さらに、自動車業界が大きな変革期を迎えているなかで、当社グループが、強固なブランドを構築し持続的に成長していくための基盤強化に取り組んでおります。2019年9月にはアライアンスの強化として、トヨタ自動車株式会社との長期的連携関係のさらなる発展を目指し、新たな業務資本提携に合意しました。また、2020年1月には気候変動に関する中長期目標(ロードマップ)を公表いたしました。これらの取り組みにより、個性と技術革新で脱炭素社会の実現に貢献する活動を着実に進めてまいります。

当期の連結業績は次のとおりとなりました。売上収益は、自動車売上台数の増加などにより、3兆3,441億円と前期比1,880億円(6.0%)の増収となりました。

利益面につきましては、為替変動による減益要因があったものの、自動車売上台数の増加および販売奨励金の抑制などにより、営業利益は2,103億円と前期比286億円(15.7%)の増益、税引前利益は2,077億円と前期比216億円(11.6%)の増益、親会社の所有者に帰属する当期利益も1,526億円と前期比112億円(7.9%)の増益となりました。なお、新型コロナウイルス感染拡大による当期業績への影響は軽微でありました。

※当社は第89期(当期)より、従来の日本基準に替えて国際財務報告基準(IFRS)を任意適用しております。これに伴い、比較対象となる第88期連結業績につきましても、IFRSに組み替えたうえで、比較・分析を行っております。

2017年10月に判明いたしました完成検査における不適切な取扱いへの対応等につきましては、2020年4月24日に国土交通省へ第七回目となる再発防止策の四半期毎実施状況を報告いたしました。今回の四半期毎実施状況では、当社が掲げた65項目のすべての再発防止策が検討段階を終了し、運用段階となりましたことを同省へ報告いたしました。

当社は今後も、再発防止策を継続し、深めていくことで、風化防止を図り、高い規範を持った職場風土への変革を進めてまいります。そして、お客様をはじめとするすべてのステークホルダーの信頼を回復し、さらに高めていくことができるよう、取り組みを進めてまいります。

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事業別の概況

売上高
前期比 %増
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当社の重点市場であります米国の自動車全体需要は、SUV(多目的スポーツ車)を含むライトトラック系が前期を上回ったものの、乗用車系は前期を下回り、1,654.9万台(前期比3.6%の減少)となりました。また、国内の自動車全体需要は、登録車、軽自動車とも前期を下回り、503.9万台(前期比4.2%の減少)となりました。

このような自動車全体需要の動向のなか、海外は、米国において「フォレスター」および「アセント」が好調に推移したことなどにより、売上台数は90.8万台と前期比4.3万台(5.0%)の増加となりました。また、国内は「インプレッサ」の販売が減少したことなどにより、売上台数は12.6万台と前期比1.0万台(7.7%)の減少となりました。

以上の結果、海外と国内の売上台数の合計は、103.4万台と前期比3.3万台(3.3%)の増加となり、売上収益は3兆1,939億円と前期比1,863億円(6.2%)の増収となりました。また、セグメント利益も、2,003億円と前期比282億円(16.4%)の増益となりました。

商品・技術面につきまして、SUBARUの安全性能に関して第三者機関から高い評価を獲得いたしました。

米国では、IIHS(道路安全保険協会)によって行われた2020年の安全性評価において、「アウトバック」「レガシィ」「フォレスター」「クロストレック※1 ハイブリッド」が最高評価である「トップセイフティピックプラス(TSP+)」を獲得いたしました。

また「アセント」「クロストレック」「インプレッサ」「WRX」(いずれもアイサイトおよびステアリング連動ヘッドライト※2装備車)が、「トップセイフティピック(TSP)」を獲得いたしました。

※1:日本名:SUBARU XV

※2:WRX以外の3車種は、ハイビームアシスト機能付き

国内では、国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)が実施した、自動車の安全性能を比較評価する自動車アセスメント(JNCAP)において、「フォレスター」「インプレッサ」「SUBARU XV」が、予防安全性能評価で最高ランクとなる「ASV+++(エー・エス・ブイ・トリプルプラス)」を獲得いたしました。

さらに、「フォレスター」は、衝突安全性能評価において、最高得点を獲得し「衝突安全性能評価大賞」を受賞いたしました。

欧州では、欧州各国の交通関連当局などで構成される独立機関が実施している安全性能評価「ユーロNCAP」において、「フォレスター」が2019年安全性能テストで最高評価の「ファイブスター」を獲得したことに加え、各部門で最高得点を獲得したモデルに与えられる「ベスト・イン・クラス賞」を、スモールオフロード/MPV部門において受賞いたしました。

売上高
前期比 %増
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「ボーイング787」および「ボーイング777X」の生産が増加したことなどにより、売上収益は1,421億円と前期比80億円(6.0%)の増収となりました。一方、セグメント利益は、51億円と前期比10億円(15.9%)の減益となりました。

なお、当期において、ボーイング787型機の中央翼の生産累計機数1,000機を達成し、2020年1月に中央翼と主脚格納部を組み合わせた中央翼パッケージを出荷いたしました。

また、日本の警察庁から「SUBARU BELL 412EPX」を1機受注したことを発表しました。「SUBARU BELL 412EPX」として世界初受注となり、2021年3月に警察庁への納入後、岩手県警察に配備される予定です。

売上高
前期比 %減
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売上収益は80億円と前期比64億円(44.2%)の減収となりました。一方、セグメント利益は、36億円と前期比3億円(8.8%)の増益となりました。

対処すべき課題

① 新型コロナウイルスへの対応

事業への影響と対応

新型コロナウイルスの全世界的な感染拡大により、生産面では、国内の群馬製作所および米国のスバル オブ インディアナ オートモーティブ インク(SIA)における操業の一時停止を含む生産調整を行いました。また、販売面でも外出規制などにより、様々な制約を受ける事態となりました。このような生産・販売活動における急激な変化は、当社の事業活動に大きな影響を及ぼしております。

当社は感染症発生の初期から、CEO(最高経営責任者)をトップとした「新型肺炎対策本部」を設置し、CRMO(最高リスク管理責任者)による全体統括のもと、国内外のグループ各社などから情報収集を行ってまいりました。お客様やお取引先様、従業員の健康と安全を最優先に、感染予防策の徹底、時差通勤や在宅勤務の拡充、さらに地域医療現場への支援などの対応を行いました。

今後の取り組み

今回のコロナショックにより、当社は、環境の変化に負けない強い事業構造を作る必要性を改めて認識いたしました。今後の先行きは不透明ではありますが、これを好機と捉え様々な領域での構造改革を実行してまいります。具体的には、働き方改革の実践による業務効率の向上など、これまでの対応で得た知見も活かしつつ、固定費構造の改革、投資の選択と集中をさらに推進し、強靭な事業基盤と収益構造を構築することに取り組んでまいります。

② 中期経営ビジョン「STEP」の推進

自動車業界が大変革期にあるなかで、事業環境の変化を見極め、スピード感をもって対応していくことが必要であると認識しており、それを実現するために、中期経営ビジョン「STEP」を策定し、2018年7月に公表いたしました。その取り組みの全体像は、下表のとおりです。

このなかでも重点項目である「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUづくりの刷新」および「アライアンスの強化」の活動状況と今後の取り組みは、以下のとおりです。

組織風土改革

「風通しの良い何でも言える会社」を目指し、経営陣が自ら率先して、全社で継続的に組織風土改革を推進しております。社内報を通じた定期的な経営メッセージや全社の活動状況の情報発信に加え、当期は「役員講話リレー」を年間を通じて実施いたしました。経営層が現場へ赴き、自らの言葉で改革の本気度を従業員へ直接伝え、率直な意見交換を行う機会を設けるなど、全社で一丸となって改革を進めてまいりました。良い変化や兆しが現れてきている職場の活動を全社に拡げるべく、2020年度は対話の機会をさらに増やし、全従業員の変化やその実感につなげてまいります。

品質改革

2019年4月に品質方針を改訂し「お客様が安心して長く使い続けることが出来る品質」№1を目指して品質改革の活動を進めております。中期経営ビジョン「STEP」を策定した際に設定した品質向上に向けた投資枠1,500億円(5年間)につきましても、部品やその構成を決める商品企画段階から生産に至るプロセスの改善、品質マネジメントの強化など、具体的な品質改善計画と併せて策定いたしました。そのほかに、完成検査問題を風化させないために、従業員全員を対象に振返りを行うイベントなどを開催し、全社一丸となり品質最優先の土壌の強化を推進しております。

SUBARUづくりの刷新

SUBARUが提供するお客様価値の向上を目指す活動として、「新SUBARUづくり活動」を進めております。「高品質」「高付加価値」「低コスト」の商品の実現に向けて、開発初期の構想段階から生産、アフターサービスまでを考慮したクルマづくりを目指し、これまで以上に開発の上流の段階から品質を向上させる開発プロセスの改革に取り組み、「生まれの品質」の向上を進めております。

アライアンスの強化

自動車業界の大変革期を乗り越えるためには、CASEを含む新しい領域への対応が必須です。この課題に対し、当社はトヨタ自動車株式会社と長期的提携関係のさらなる発展・強化を目的に、2019年9月に新たな業務資本提携を行いました。「SUBARU BRZ」「TOYOTA 86」の次期モデル共同開発に加え、全輪駆動(AWD)技術、電動化技術、コネクテッド領域および自動運転分野で協業を拡大し、両社の絆をさらに強め、力を合わせていくことで、CASE時代においてもSUBARUらしさを磨き続け、お客様に強く共感いただけるクルマづくりを目指します。

※CASE:Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の略称

その他の活動についても計画どおり進めており、中期経営ビジョン「STEP」の実現に邁進いたします。

中期経営ビジョン「STEP」取り組み全体像(9Box+1)
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連結計算書類