事業報告(2020年1月1日から2020年12月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

事業の全般的状況

第120期(2020年1月1日から2020年12月31日まで)における世界景気は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の制限や停滞により、大きく後退しました。

期後半には経済活動の再開が徐々に進み、中国をはじめ各国で持ち直しの兆しが見られましたが、欧州での感染拡大が再び深刻化し、米国での感染拡大が続くなど、年間を通じてはコロナ禍の収束には至らずに厳しい経済状況が続きました。為替相場につきましては、米国ドルは年平均で前期に比べ円高となりましたが、ユーロは前期並みとなりました。

このような中、当社グループは、5カ年経営計画「グローバル優良企業グループ構想 フェーズV」の最終年の当期、その主要戦略である事業ポートフォリオの「戦略的大転換」を加速すべく、商業印刷、ネットワークカメラ、メディカル、産業機器という新規事業4分野の拡大に取り組みました。

一方、事務機やカメラなどの現行事業においては、高い市場シェアの獲得・維持と高い利益率の確保を目指し、製品・サービスの更なる競争力向上に努めました。

しかしながら、コロナ禍の影響は大きく、複合機やレーザープリンターなどのオフィス向け製品は、本体、消耗品とも需要が減退し、また、市場が縮小しているレンズ交換式デジタルカメラは、ミラーレスの新製品の販売が好調だったものの、厳しい状況が続きました。

一方、インクジェットプリンターは、在宅需要が増加し、販売は好調に推移しました。

医療機器につきましては、コロナ禍により医療機関の設備投資が停滞する中、コロナ対応関連製品の需要もあり、微減収に留まりました。

また、渡航や外出が制限される中、影響の少なかった半導体露光装置は増収となりましたが、大きな影響を受けたFPD露光装置は設置遅れが生じて減収となり、また、ネットワークカメラは増収となりました。

これらの結果、当期の連結売上高は3兆1,602億円で前期比12.1%減、連結税引前当期純利益は1,303億円で前期比33.4%減、当社株主に帰属する連結当期純利益は833億円で前期比33.3%減となりました。

4つの新規事業

【商業印刷】

拡大するグラフィックアーツ市場向けの連帳プリンター

【ネットワークカメラ】

安心・安全な暮らしを見守るネットワークカメラ

【メディカル】

高精細画像と被ばく量の低減を両立するCT装置

【産業機器】

パネル量産に応える有機ELディスプレイ製造装置

決算のポイント

  • 当期は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の制限や停滞により、大きく景気が後退しました。こうした中、在宅需要を取り込んだインクジェットプリンターやミラーレスカメラの新製品の販売が好調だったものの、厳しい外部環境の影響を受け、連結売上高は前期比12.1%の減収となりました。
  • グループを挙げてコストダウンや経費削減を推し進めたものの、新型コロナウイルスの影響が長期化した結果、当社株主に帰属する連結当期純利益は前期比33.3%の減益となりました。

売上高・損益の推移

地域別売上高の構成

部門別売上高の構成

事業の部門別状況

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

オフィス向け複合機では、クラウド機能の拡張とセキュリティ機能の強化を図った新製品「imageRUNNER ADVANCE DX」シリーズが好調なスタートを切り、商業印刷向け大型複合機では、前期発売のカラー機「imagePRESS C165」の販売が伸長しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、複合機全体の販売台数は、大きく減少しました。

レーザー複合機およびレーザープリンターの販売台数につきましてもモノクロ機、カラー機ともに前期を大きく下回りました。

また、プリント需要が減少傾向にあることに加え、顧客のオフィスの休止が続いた影響もあり、サービス・消耗品の売上も減少しました。

上記の結果、当ビジネスユニットの連結売上高は1兆4,402億円で前期比17.8%減となりました。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

レンズ交換式デジタルカメラにつきましては、ミラーレスカメラで本体3機種、レンズ8機種の新製品を発売、このうち「EOS R5」と「EOS R6」が好調な売れ行きとなりましたが、市場の縮小に新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退も加わり、全体の販売台数は大幅に減少しました。

一方、インクジェットプリンターにつきましては、先進国や中国を中心に、在宅勤務・在宅学習が広がったことに伴い需要が増加し、製品本体の販売台数は前期を上回り、消耗品も売上を伸ばしましたが、デジタルカメラを合わせた当ビジネスユニットの連結売上高は7,122億円で前期比11.8%減となりました。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

医療機器につきましては、新型コロナウイルスの感染拡大により医療機関の経営環境が悪化、全体的に設備投資需要が伸び悩み、国内においては、前年の消費税増税前の駆け込み需要の反動もありました。また、期後半には徐々に状況は改善したものの、外出制限による商談の停滞、受注製品の設置遅れも生じました。

このような中、各国政府による緊急医療体制整備の動きを受け、肺炎検査向けCT装置やX線診断装置への需要に応えたほか、横浜市立大学との共同研究をもとに開発した新型コロナウイルス抗原定性検査キットの販売を開始しました。

上記の結果、当ビジネスユニットの連結売上高は4,361億円で前期比0.6%の微減となりました。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

渡航や外出が制限される中、影響の少なかった半導体露光装置はメモリー向けやイメージセンサー向けを中心に販売が大きく伸長し、有機ELディスプレイ製造装置もスマートフォン向けパネル等の需要を背景として増収となりましたが、FPD露光装置は海外主要顧客への設置活動が滞ったため減収となりました。

ネットワークカメラにつきましても、新型コロナウイルスの感染拡大の中で販売活動の制約の影響を受けましたが、非接触・非対面という特徴を活かした遠隔モニタリング等の新たなニーズが生まれたことから、増収となりました。

上記の結果、当ビジネスユニットの連結売上高は6,548億円で前期比4.9%減となりました。

対処すべき課題

当社グループは、2020年までの5年間、「グローバル優良企業グループ構想 フェーズV」を掲げ、市場の変化に伴い現行事業の縮小が進む中、新規事業の獲得と強化に挑戦し、事業ポートフォリオの転換を成し遂げてまいりました。

2021年から始まる新5カ年経営計画「グローバル優良企業グループ構想 フェーズⅥ」では、グループの生産性向上と新規事業の強化を基本方針として、以下の施策に取り組んでまいります。

1. 産業別グループへの全社的組織再編による事業競争力の強化

事業部門とグループ会社を「プリンティング」、「光学産業」、「産業機器」、「メディカル」の4つのグループに再編成し、各グループ内での事業シナジーを高め、新製品開発や製造の生産性を高めるとともに、変化する市場ニーズをとらえた新たなビジネスの創出を目指します。また、材料事業やセンサー等のコンポーネントの外販などの事業化を加速させます。

プリンティンググループ
カタログ印刷等の商業印刷事業を拡大するとともに、ラベル印刷やパッケージ印刷等の産業印刷を事業として確立します。また、オフィス市場では、電子写真技術とインクジェット技術双方の強みを生かして製品系列を拡充するとともに、デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応を強化します。
光学産業グループ
キヤノンが長年培ってきた光学技術とネットワーク技術を基軸として車載カメラ事業に参入するとともに、スマートシティ向け監視システムなどの社会インフラを見据えた事業領域の拡大を目指します。
産業機器グループ
イノベーションとコストダウンにより有機ELディスプレイ製造装置の競争力を更に強化するとともに、半導体露光装置やFPD露光装置のシェア拡大を図ります。
メディカルグループ
CT、MRI、超音波診断装置といった主力製品、診断ソリューションやAIを活用した画像解析アプリケーションの競争力を強化し、医療検査機器事業の拡大を図ります。また、検査試薬など検査装置周辺領域へ本格参入し、事業拡大を加速させます。

2. 本社機能の徹底強化によるグループ生産性の向上

キャッシュフロー経営の徹底による財務体質の強化に加えて、横串で全体最適を図る本社機能についても徹底強化を図り、各事業グループにおけるイノベーションや原価低減等の生産性向上を支えます。

以上の施策により、「フェーズⅥ」の最終年度である2025年には、売上高4兆5,000億円以上、純利益率8%以上、株主資本比率60%以上を目指します。

連結計算書類