事業報告(2019年4月1日から2020年3月31日まで)
企業集団の現況
当事業年度の事業の状況
事業の経過および成果
当事業年度における経済環境は、第3四半期までは国内で緩やかな回復傾向で推移しましたが、海外では減速の傾向が見られました。また、第4四半期においては、新型コロナウイルス感染拡大により世界の経済全体が大きな影響を受けることになりました。
当社グループは、2018年4月より、従来のビジネスモデルや常識にこだわることなく、次のステージに向けあらゆる面でCHANGEするという思いをこめた中期ビジョン「CHANGE for the NEXT 挑戦・成長・進化」を掲げる3ヵ年の中期計画をスタートしました。中長期的な成長に向け、IP(Intellectual Property:キャラクターなどの知的財産)の世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」のさらなる進化のための取り組み、成長の可能性が高い地域や事業の強化に向けた取り組み、世界の各地域においてALL BANDAI NAMCOでグループが一体となり総合力の発揮を目指す取り組みなどの施策を推進しました。
当事業年度につきましては、第4四半期において新型コロナウイルス感染拡大による影響が発生しましたが、国内外のハイターゲット層(大人層)に向けた商品が人気となったトイホビー事業が好調に推移したほか、各事業の主力IP商品・サービスが安定的に推移しました。
この結果、当事業年度の業績は、売上高723,989百万円(前事業年度比1.1%減)、営業利益78,775百万円(前事業年度比6.3%減)、経常利益79,797百万円(前事業年度比8.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益57,665百万円(前事業年度比9.0%減)となりました。
事業区分別の概況
(単位:)
トイホビー事業につきましては、国内において「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデルやコレクターズフィギュアなどのハイターゲット層(大人層)向けの商品、「DRAGON BALL」シリーズや「仮面ライダー」シリーズ、「スーパー戦隊」シリーズ、「ワンピース」などの定番IPの玩具および周辺商品が好調に推移しました。海外においては、アジア地域においてハイターゲット層に向けた商品や「ウルトラマン」シリーズなどの商品が人気となりました。欧米地域では、ハイターゲット層に向けた商品の販売・マーケティング強化に向けた取り組みを推進しました。
この結果、トイホビー事業における売上高は253,714百万円(前事業年度比4.5%増)、営業利益は26,733百万円(前事業年度比23.1%増)となりました。
主要な事業内容
玩具、カプセルトイ、カード、菓子・食品、アパレル、生活用品、プラモデル、景品、文具などの企画・開発・製造・販売
(単位:)
ネットワークエンターテインメント事業につきましては、ネットワークコンテンツにおいて、ワールドワイド展開している「DRAGON BALL」シリーズや「ワンピース」、国内の「アイドルマスター」シリーズなどの主力タイトルがユーザーに向けた継続的な施策により安定的に推移しました。家庭用ゲームにおいては、新作タイトル「ドラゴンボールZ KAKAROT」や「CODE VEIN」などが人気となったほか、既存タイトルの「DRAGON BALL」シリーズや「TEKKEN7」、「DARK SOULS」シリーズなどのリピート販売が、ユーザーに向けた継続的な施策により海外を中心に人気となりました。
この結果、ネットワークエンターテインメント事業における売上高は328,079百万円(前事業年度比3.8%減)、営業利益は43,879百万円(前事業年度比7.7%減)となりました。
主要な事業内容
ネットワークコンテンツの企画・開発・配信、家庭用ゲームなどの企画・開発・販売
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リアルエンターテインメント事業につきましては、アミューズメント施設において、国内既存店売上高が安定的に推移したほか、バンダイナムコならではの体験を楽しむことができる“場”を提供する新業態の展開を推進しました。しかしながら、第4四半期において新型コロナウイルス感染拡大を受け、国内外の施設を休業した影響を受けました。業務用ゲームは新製品投入の延期などにより、大型タイトルの発売や人気タイトルのバージョンアップがあった前事業年度に及びませんでした。また、足元の市場環境を踏まえ、業務用ゲームの仕掛品などの評価損を計上したほか、一部施設に係る減損損失を特別損失に計上しました。
この結果、リアルエンターテインメント事業における売上高は91,753百万円(前事業年度比9.6%減)、営業損失は1,502百万円(前事業年度は4,264百万円の営業利益)となりました。
主要な事業内容
アミューズメント機器の企画・開発・生産・販売、アミューズメント施設の企画・運営など、リアルエンターテインメント事業
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映像音楽プロデュース事業につきましては、「アイドルマスター」シリーズや「ラブライブ!サンシャイン!!」、「アイドリッシュセブン」などの映像音楽パッケージソフトの販売やライブイベントの開催、「ガールズ&パンツァー」の新作映像の劇場公開などのIPプロデュース展開により、話題喚起をはかり人気となりました。しかしながら、複数の高付加価値パッケージソフトの発売があった前事業年度とのプロダクトミックスの違い、第4四半期において新型コロナウイルス感染拡大を受け、イベント開催の延期や自粛を行ったことなどにより、利益面においては前事業年度には及びませんでした。
この結果、映像音楽プロデュース事業における売上高は46,951百万円(前事業年度比3.1%増)、営業利益は8,032百万円(前事業年度比8.7%減)となりました。
主要な事業内容
映像・音楽コンテンツの企画・制作・運用、アーティストの発掘・育成、ライブエンターテインメント事業
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IPクリエイション事業につきましては、映像制作においては、40周年を迎えた「機動戦士ガンダム」シリーズなどにおいて新作映像の公開や様々な情報の発信によりIPの話題喚起をはかり人気となりました。また、IP創出強化に向け、グループ横断での取り組みやアニメ制作体制強化などの施策を推進しました。なお、プロダクトミックスなどの違いにより利益面においては前事業年度を上回りました。
この結果、IPクリエイション事業における売上高は19,750百万円(前事業年度比12.1%減)、営業利益は5,758百万円(前事業年度比14.7%増)となりました。
主要な事業内容
アニメーションの企画・制作、著作権・版権の管理・運用、アニメ作品に係る音楽制作ならびに楽曲および原盤の管理・運用
(単位:)
その他事業につきましては、グループ各社へ向けた物流事業、印刷事業、その他管理業務などを行っている会社から構成されており、これらのグループサポート関連業務における効率的な運営に取り組んでおります。
この結果、その他事業における売上高は35,752百万円(前事業年度比20.1%増)、営業利益は1,864百万円(前事業年度比55.7%増)となりました。
主要な事業内容
流通・物流、印刷、管理業務など各ユニットをサポートする事業
直前3事業年度の財産および損益の状況
対処すべき課題
当社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための取り組みを継続するとともに、社会の一員として商品・サービスを通じ世界中の人々に「夢・遊び・感動」を提供するという企業理念にのっとり、社会や顧客からの要請に応えていきたいと考えております。世界各国における新型コロナウイルス感染拡大が継続した場合、販売店休業などによる消費への影響に加えて、国内外においてイベントの延期や自粛およびそれに伴うプロモーションなどへの影響、商品・サービスの開発スケジュールや運営体制への影響、自社工場および協力工場における生産スケジュールなどへの影響、アミューズメント施設などの休業、映像制作スケジュールや作品公開への影響などが発生する可能性があります。当社グループは、従業員や家族、顧客をはじめとする様々なステイクホルダーの安全を最優先に考え、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、衛生管理の徹底や各国・地域の政府・自治体からの要請に基づいた勤務体制導入や事業の運営などの取り組みを継続してまいります。また、事業面においては、影響を最小限のものとすべく、情報収集と臨機応変な対応を継続してまいります。
さらには、中長期での持続的な成長に向け、取り組むべき課題に対しては、2018年4月~2021年3月の中期計画の重点戦略により、ALL BANDAI NAMCOで一体となり取り組んでまいります。また、中期計画の各戦略の成果と課題については、成果における可能性をさらに広げるとともに課題を解決し、中長期で持続的な成長に向けた基盤を強固なものとすべく、2021年4月よりスタート予定の次期中期計画の戦略策定を行っております。
① グループ横断で取り組むべき課題
企業の社会的責任を果たすために
当社グループは、「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」をビジョンとして、多彩なIPを活用した商品・サービスなどを通じて「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けることをミッションとしています。また、当社グループの存在意義は、世界中の人々がIPを通じ国境や言語を超えてコミュニケーションできる世界の創出に貢献することにあると考えています。
当社グループではエンターテインメントを通じた「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けるため、「環境・社会貢献的責任」、「経済的責任」、「法的・倫理的責任(コンプライアンス)」の3つの責任を果たすことを盛り込んだ、グループを横断する「CSRへの取り組み」を定め、グループ社員が遵守すべき行動規範となるグループコンプライアンス憲章を制定しております。これらのもと、「グループCSR委員会」とその推進組織である「グループCSR部会」、さらには「グループリスクコンプライアンス委員会」、「グループ情報セキュリティ委員会」、「内部統制委員会」を開催するとともに、社内への啓発活動などの各種施策に取り組むことで社内意識の向上に継続的に取り組んでまいります。これらに加え、当社グループの企業理念やエンターテインメントに携わる責任と誇りについて様々な機会を通じ経営者自身が発信を行うことで、社内における理解の深化に努めております。
IP軸戦略のさらなる強化に向けて
当社グループでは、流通・メディアの寡占化やネットワークの普及、プラットフォームの多様化や技術進化などの環境変化に対応するため、IP軸戦略のさらなる進化に取り組みます。具体的には、商品・サービス発や映像作品発の取り組み、中長期的かつ全体最適の視点で投資を行う「バンダイナムココンテンツファンド」の活用、「バンダイナムコアクセラレータープログラム」や次世代クリエイターを応援する「夢応援団」などによるパートナー企業やクリエイターとの連携など、あらゆる方法で新規IP創出を強化します。また、IP価値最大化に向け、グループの事業間連動や横断プロジェクトの推進、新規事業の創出育成や展開地域の拡大、あらたなプラットフォームへのスピーディーな対応をはかります。これらのIP創出およびIP価値最大化に向けた取り組みを推進するにあたっては、通常投資に加え中長期を見据えたIPなどへの戦略投資を実施してまいります。さらに当社組織「IP戦略本部」が中心となり、中長期的にIP軸戦略を強化すべく、「機動戦士ガンダム」シリーズや「DRAGON BALL」シリーズなどの定番IPのワールドワイド展開、新規IP創出プロジェクトなどのグループを横断した戦略的な取り組みを行ってまいります。これらの取り組みに加え、IP軸戦略の推進にあたっては、IPそのものやその世界観を尊重した事業活動を行うため、パートナー企業や行政と連携し、模倣品の排除などの知的財産保護のための活動を行ってまいります。
グローバル市場での事業拡大に向けて
当社グループが、ビジョンである「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」となるためには、グローバル市場での事業拡大が不可欠と考えております。欧米およびアジア地域において、各地域の特性にあわせた展開を行うため、地域統括会社と各地域の事業会社がALL BANDAI NAMCOで一体となり取り組む体制を構築しています。これにより、日本発IPの商品・サービスの海外展開に加え、各地域発のIP展開に取り組むなどIPポートフォリオの強化をはかっているほか、事業カテゴリーの拡充にも取り組んでいます。
また、中期計画において重点地域と位置づける中国市場においては、ALL BANDAI NAMCOで一体となり取り組むための基盤づくりを行うとともに、グループだけでなく現地のパートナー企業などと密接な連携をはかり、事業の本格展開に着手しております。
② 各ユニットにおける課題
トイホビーユニット
当業界においては、「少子化による国内市場の縮小」、「顧客ニーズの多様化」、「商品生産地域の集中」などの課題があります。これらの課題に対応するため、国内において圧倒的No.1の地位確立を目指し、ターゲット層の拡大や新規事業の創出に取り組んでおります。海外においては、各地域でニーズの高いハイターゲット層向け商品の事業拡大や、中国市場での本格展開に向けた取り組みを行い、中長期的な成長を目指してまいります。また、開発生産面においては、バリューチェーンの改革により、スピードやクオリティ、価格面でも競争力のある商品展開を進めてまいります。このほか、該当する法規制や業界が定める品質・安全基準を踏まえ、より厳しい自社品質基準の設定や第三者機関による生産委託先の定期的なC.O.C.(Code of Conduct:行動規範)監査の実施などにより品質・安全の徹底をはかっております。商品の生産においては、自社の生産拠点を日本、タイ、フィリピン、ベトナムに設けているほか、取引先工場においても品質基準の担保を大前提に生産拠点の分散をはかっております。
ネットワークエンターテインメントユニット
当業界においては、「プラットフォームの多様化」、「ネットワークなどの技術進化」、「顧客ニーズの多様化」、「開発投資額の高騰」などの課題があります。これらの課題に対応するため、商品・サービスの開発にあたってはクオリティを重視し絞り込んだタイトルの開発を行うとともに、リリース後においてもアップデートや追加コンテンツの提供、イベントの開催などの顧客に向けた継続的な施策により、商品・サービスの長期展開をはかっております。また、あらたなプラットフォームの登場は顧客獲得の機会ととらえ、各プラットフォームの特性にあわせたタイトル提供を行っています。このほか、既存の事業や商品・サービスの枠を超え、ネットワークなどの技術進化に対応したあらたなエンターテインメントやビジネスモデルの創出に取り組んでまいります。さらには、技術進歩や環境変化、あらたなプラットフォームに迅速に対応するため、技術研究をさらに強化してまいります。
リアルエンターテインメントユニット
当業界においては、「顧客ニーズの多様化」、「環境変化の激化」などの課題があります。これらの課題に対応するため、業務用ゲームの企画開発力、最先端の技術力、IPの世界観を活かすノウハウなどを活用した当社グループならではの施設運営を行ってまいります。また、機器開発から顧客への提供までのバリューチェーンを保有する強みを生かすほか、多様化や環境変化に迅速に対応してまいります。リアルエンターテインメントユニットはグループにおける顧客接点として、IPの訴求や顧客ニーズを収集する役割も果たしてまいります。
映像音楽プロデュースユニット
当業界においては、「顧客ニーズの多様化」、「IP創出における競争激化」などの課題があります。これらの課題に対応するため、外部パートナー企業などとの積極的な連携によりIP創出体制の強化をはかっているほか、映像・音楽・ライブイベントを融合させた新しいエンターテインメントやIPの創出・プロデュースに取り組んでまいります。
IPクリエイションユニット
当業界においては、「IP創出における競争激化」、「優秀な人材の育成」などの課題があります。これらの課題に対応するため、グループの各事業と密接に連携したIPのプロデュースを行うことでIP創出を強化してまいります。また、映像制作や制作技術向上のための投資を積極的に行うほか、様々な才能を持つ外部パートナーとの協業を強化するとともに、クリエイターの正社員化や育成に取り組んでまいります。
株主の皆さまにおかれましては、今後とも一層のご支援とご指導を賜わりますよう、よろしくお願い申しあげます。