事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

企業集団の現況

当事業年度の事業の状況

事業の経過および成果

当事業年度における経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大の継続や社会情勢の変化、デジタル技術の普及などが、国内外の経済や社会、顧客のライフスタイルや嗜好に影響を与えました。新型コロナウイルス感染拡大に対しては、当社グループは、従業員や家族、顧客をはじめとする様々なステークホルダーの安全を最優先に考え、感染拡大を防ぐための取り組みを実施しております。また、デジタルを活用した販売・マーケティングを強化するなど、顧客のライフスタイルや嗜好の多様化に適合するための様々な施策を推進しました。そして、IP(Intellectual Property:キャラクターなどの知的財産)の世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」をさらに強化し、グローバルでの展開を拡大するための取り組み、成長の可能性が高い地域や事業の強化に向けた取り組み、世界の各地域においてALL BANDAI NAMCOでグループが一体となり総合力の発揮を目指す取り組みなどの施策を推進しました。さらには、急激な環境変化を踏まえ、2021年4月よりスタートする予定だった中期計画について、新しい時代における新しい戦略を策定することが必要と判断し、そのスタートを1年延期しました。当事業年度は、あらたな中期計画の戦略を推進するための事業基盤や組織体制を整備する期間と位置づけ、戦略の検討、組織再編や事業間の連携強化のための様々な取り組みを推進しました。

当事業年度につきましては、新型コロナウイルス感染拡大により、国内外の多くの地域で小売店やアミューズメント施設の休業、イベントの中止などで各事業が大きな影響を受けた前事業年度を上回る業績となりました。事業面ではデジタル事業とトイホビー事業が好調に推移したほか、各事業において顧客のライフスタイルや嗜好の変化に適合するための様々な施策をスピーディに推進したことや、グループの幅広い事業のポートフォリオが効果を発揮しました。

この結果、当事業年度の業績は、売上高889,270百万円(前事業年度比20.0%増)、営業利益125,496百万円(前事業年度比48.2%増)、経常利益133,608百万円(前事業年度比52.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益92,752百万円(前事業年度比89.7%増)となりました。

事業別の営業概況

(注) 2021年4月1日付で事業区分を変更したため、前事業年度の事業区分を当事業年度において用いた事業区分に組み替えて比較しております。

デジタル事業

売上高
前事業年度比 %増
詳細はこちらを閉じる

(単位:

デジタル事業につきましては、家庭用ゲームにおいて「ELDEN RING(エルデンリング)」や「テイルズ オブ アライズ」などのワールドワイド向け新作タイトルの販売が好調だったほか、既存タイトルのリピート販売がユーザーに向けた継続的な施策により好調に推移しました。また、ネットワークコンテンツにおいては、新作タイトルが好調な出足となるとともに主力タイトルが安定的に推移したものの、年間では好調だった前事業年度にはおよびませんでした。なお、当事業年度においては、前事業年度と比較し新規大型タイトルの投入が増えたため、開発費などの初期費用が増加しました。

この結果、デジタル事業における売上高は378,173百万円(前事業年度比11.9%増)、営業利益は69,634百万円(前事業年度比22.6%増)となりました。

主要な事業内容

ネットワークコンテンツの企画・開発・配信、家庭用ゲームなどの企画・開発・販売

売上高
前事業年度比 %増
詳細はこちらを閉じる

(単位:

トイホビー事業につきましては、「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデルやコレクターズフィギュア、キャラクターくじなどのハイターゲット層(大人層)向けの商品が、デジタルを活用した販売・マーケティングや、海外における展開拡大により好調に推移しました。また、前事業年度にアミューズメント施設の休業により影響を受けた景品などの商品販売が回復しました。さらに、国内においては、定番IPや新規IPを活用した玩具に加え、海外向けのトレーディングカード、菓子やカプセルトイなどの玩具周辺商材が人気となりました。

この結果、トイホビー事業における売上高は373,625百万円(前事業年度比24.2%増)、営業利益は52,319百万円(前事業年度比33.9%増)となりました。

主要な事業内容

玩具、カプセルトイ、カード、菓子・食品、アパレル、生活用品、プラモデル、景品、文具などの企画・開発・製造・販売

売上高
前事業年度比 %増
詳細はこちらを閉じる

(単位:

映像音楽事業につきましては、「機動戦士ガンダム」シリーズや「ラブライブ!」シリーズ、「アイドルマスター」シリーズなどのIPの映像・音楽パッケージソフトの販売を行ったほか、IP関連のライセンス収入が業績に貢献しました。また、ライブイベントにおいては、配信や新技術の活用などの環境変化に対応したあらたな形のライブイベントへの取り組みを進めたことなどにより、前事業年度に比べ開催回数が増加しました。

この結果、映像音楽事業における売上高は53,941百万円(前事業年度比57.6%増)、営業利益は5,698百万円(前事業年度比267.9%増)となりました。

主要な事業内容

映像・音楽コンテンツの企画・制作・運用、アーティストの発掘・育成、ライブエンターテインメント事業

売上高
前事業年度比 %増
詳細はこちらを閉じる

(単位:

クリエイション事業につきましては、「機動戦士ガンダム」シリーズや「ラブライブ!」シリーズなどの新作映像作品の制作を行いましたが、コスト先行のビジネスモデルのため利益への貢献は限定的となりました。また、ガンダムなどの人気拡大にともないライセンス収入が好調でしたが、IPの情報発信を行う「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」については、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けました。

この結果、クリエイション事業における売上高は37,564百万円(前事業年度比33.1%増)、営業利益は2,830百万円(前事業年度比3.3%増)となりました。

主要な事業内容

アニメーションの企画・制作、著作権・版権の管理・運用、アニメ作品に係る音楽制作ならびに楽曲および原盤の管理・運用

アミューズメント事業

売上高
前事業年度比 %増
詳細はこちらを閉じる

(単位:

アミューズメント事業につきましては、新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けたものの、国内アミューズメント施設の既存店売上高が前事業年度比で115.5%となり回復の兆しが見えたほか、欧州やアジアのアミューズメント施設についても前事業年度比で回復しました。アミューズメント事業においては、今後も効率化に加え、グループの商品・サービスの活用を強化するなどのバンダイナムコならではの取り組みを推進し収益基盤の強化を目指します。

この結果、アミューズメント事業における売上高は82,344百万円(前事業年度比28.8%増)、営業利益は4,051百万円(前事業年度は8,379百万円の営業損失)となりました。

主要な事業内容

アミューズメント機器の企画・開発・生産・販売、アミューズメント施設の企画・運営など

売上高
前事業年度比 %増
詳細はこちらを閉じる

(単位:

その他事業につきましては、グループ各社へ向けた物流事業、その他管理業務などを行っている会社から構成されており、これらのグループサポート関連業務における効率的な運営に取り組んでおります。

この結果、その他事業における売上高は27,667百万円(前事業年度比12.2%増)、営業利益は347百万円(前事業年度比42.4%減)となりました。

主要な事業内容

流通・物流、管理業務など各ユニットをサポートする事業

直前3事業年度の財産および損益の状況

(注)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しており、当事業年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。

対処すべき課題

当社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための取り組みを継続するとともに、社会の一員として社会や顧客からの要請や期待に応えていきたいと考えております。世界各国における新型コロナウイルス感染拡大が継続した場合、販売店休業などによる消費への影響に加えて、イベントの延期や自粛およびそれにともなうプロモーションなどへの影響、商品・サービスや映像作品の開発・制作スケジュールへの影響、生産スケジュールなどへの影響、アミューズメント施設などの休業などが発生する可能性があります。当社グループは、従業員や家族、顧客をはじめとする様々なステークホルダーの安心・安全を最優先に考え、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、衛生管理の徹底や各国・地域の政府・自治体からの要請に基づいた事業の運営などの取り組み、多様な働き方への対応などを継続してまいります。また、事業面においては、影響を最小限のものとすべく、情報収集と臨機応変な対応を継続するほか、デジタル技術の活用強化などにより、ライフスタイルの変化に迅速に対応してまいります。さらに、中長期での持続的な成長に向け取り組むべき様々な課題に対しては、IP軸戦略のもと、各地域で各事業がALL BANDAI NAMCOでより一体となり取り組むとともに、2022年4月よりスタートした中期計画において、課題に対応した戦略を推進してまいります。

① グループ横断で取り組むべき課題

企業の社会的責任を果たすために

当社グループは、“社会における存在意義”や“なぜその事業や企業活動を行うのか”“私たちがバンダイナムコで働く意味”を表す「パーパス」をグループの最上位概念としています。バンダイナムコグループのパーパスで特に重要な要素は、“つながる”“ともに創る”という要素で、バンダイナムコとファン(IPファンやパートナー、地域社会などあらゆるステークホルダー)が「夢・遊び・感動」を通してつながることで“Fun for All into the Future”を実践してまいります。今後、様々な機会を通じ経営者自身がパーパスについて発信を行うことで、グループ社員の理解の深化と、事業や行動を通じたパーパスの実践につなげてまいります。

当社グループではエンターテインメントを通じた「夢・遊び・感動」を世界中のファンへ提供し続けるため、「バンダイナムコグループのサステナビリティ方針」を掲げ、ファンとともに持続可能な社会の実現に向けた活動を推進してまいります。中期計画においては、重点戦略に「サステナビリティ」を設定し、グループが向き合うべき社会課題としてマテリアリティを特定(重要項目を再選定)しました。今後、マテリアリティに沿った具体的なアクションプランを推進してまいります。また、グループ社員が遵守すべき行動規範となるバンダイナムコグループコンプライアンス憲章を制定しており、これらのもと、「グループサステナビリティ委員会」とその推進組織である「グループサステナビリティ部会」、さらには「グループリスクコンプライアンス委員会」、「グループ情報セキュリティ委員会」、「内部統制委員会」を開催するとともに、様々な課題への対応や体制の強化をはかるほか、社内への啓発活動など各種施策に取り組むことで社内意識の向上に継続的に取り組んでまいります。

IP軸戦略のさらなる強化に向けて

当社グループでは、流通・メディアの寡占化やネットワークの普及、プラットフォームの多様化や技術進化、グローバル市場での競争激化などの環境変化に対応するため、IP軸戦略のさらなる進化に取り組みます。

新規IP創出にあたっては、IPプロデュースユニットにおいて映像・音楽・ライブイベントに関するノウハウを集約しIP創出とプロデュース力を強化します。また、商品・サービスや映像作品発の取り組み、グループの連携による取り組み、全体最適の視点で投資を行う「バンダイナムココンテンツファンド」の活用、次世代クリエイターを応援する「夢応援団」などによるパートナー企業やクリエイターとの連携など、あらゆる方向からIP創出を強化します。

そしてIP軸戦略において、ファンとより深く、広く、複雑につながるためのあらたな取り組みとして、IPごとのメタバースを開発します。「IPメタバース」によって、バンダイナムコとファンが、さらにはファン同士が長期にわたって深く、広く、複雑につながる関係を構築し、つながり方の質を追求します。

IP価値最大化に向けては、より長期的な視点であらゆるパートナーとオープンに協業するほか、事業の最大化はもちろんのこと、IPの可能性を拡大するための取り組みを推進します。地域や事業を横断して展開するIPにおいては、グループ横断プロジェクトによりIP価値最大化を目指します。中期計画においては戦略的な投資も行い、IP価値最大化に向けた様々な取り組みを推進してまいります。

このほか、IP軸戦略の推進にあたっては、IPそのものやその世界観を尊重した活動を行うため、パートナー企業や行政と連携し、模倣品の排除や啓発活動などの知的財産保護のための活動を行ってまいります。

グローバル市場での事業拡大に向けて

当社グループが、中長期で持続的な成長を続けるためには、グローバル市場での事業拡大が不可欠と考えております。世界の各地域においてALL BANDAI NAMCOで一体となり戦略を推進するため、組織再編や各事業の拠点集約などを行い、この体制のもと事業の構築に取り組みます。特に北米と中国内地を重点地域とし、IPを軸とした商品・サービスの開発やマーケティング面において強力に事業間連動を実施するほか、ワールドワイド展開をはかるIPについてはグループ横断プロジェクトにより取り組みます。また、日本発IPの商品・サービスの海外展開に加え、各地域発のIP展開に取り組むなどIPポートフォリオの強化をはかります。さらに、グローバル人材の育成に向けて、多様な人材の採用に加え、地域や事業を横断した人事交流や研修により育成を推進します。

技術の進化と変化への対応に向けて

デジタル化をはじめとする技術の進化により、エンターテインメントにおける選択肢が多様化し、顧客の嗜好やライフスタイルの変化のスピードが速くなるとともに、グローバル規模での競争が激化しています。当社グループでは、従来のビジネスモデルにこだわることなく、顧客の嗜好やライフスタイルに対応したあらたな価値創造やプラットフォームへの対応、ビジネスモデルの変革に積極的に取り組んでまいります。これらの推進にあたっては、グループに閉じることなく、国内外のパートナー企業やクリエイターなどと密接な連携をはかってまいります。

② 各ユニットにおける課題

エンターテインメントユニット

<デジタル事業>

当業界においては、「プラットフォームの多様化」、「ネットワークなどの技術進化」、「顧客ニーズの多様化」、「開発期間の長期化と投資額の上昇」などの課題があります。これらの課題に対応するため、商品・サービスの開発にあたってはクオリティを重視し絞り込んだタイトルの開発を行うとともに、リリース後においてもアップデートや追加コンテンツの提供、イベントの開催などの顧客に向けた継続的な施策により、商品・サービスの長期展開をはかっております。また、あらたなプラットフォームの登場は顧客獲得の機会ととらえ、各プラットフォームの特性にあわせたタイトル提供を行っています。このほか、既存の事業や商品・サービスの枠を超え、IPメタバースの開発など顧客ニーズの多様化や技術進化に対応したあらたなエンターテインメントやビジネスモデルの創出に取り組んでまいります。さらには、技術進化や環境変化、あらたなプラットフォームに迅速に対応するため、技術研究をさらに強化してまいります。

<トイホビー事業>

当業界においては、「少子化による国内市場の縮小」、「顧客ニーズの多様化」、「商品生産地域の集中」「原材料の価格上昇」などの課題があります。これらの課題に対応するため、国内において圧倒的No.1の地位確立を目指し、ターゲット層の拡大や新規事業の創出に取り組んでおります。海外においては、ハイターゲット層向け商品の事業拡大やIPポートフォリオの拡充、販路の拡大、EC販売強化などの取り組みを行い、中長期的な成長を目指してまいります。また、開発生産面においては、バリューチェーンの改革により、スピードやクオリティ、価格面でも競争力のある商品展開を進めてまいります。このほか、該当する法規制や業界が定める品質・安全基準などを踏まえ、より厳しい自社品質基準の設定や生産委託先の定期的なCOC(Code of Conduct:行動規範)監査の実施などにより品質・安全の徹底および労働環境の適正化をはかっております。商品の生産においては、自社の生産拠点を日本、タイ、フィリピン、ベトナムに設けているほか、取引先工場においても品質基準の担保を大前提に生産拠点の分散をはかっております。

IPプロデュースユニット

当業界においては、「IP創出における競争激化」、「優秀な人材の育成、確保」などの課題があります。これら課題に対応するため、ユニット内の組織再編を行うことで映像・音楽・ライブイベントに関するノウハウや機能を集約し、より多彩でユニット内のみならずグループの各事業や外部パートナーとの協業により相乗効果を発揮できるIP創出機能の強化をはかります。また、映像制作や制作技術向上のための投資を積極的に行うほか、制作現場の環境や体制の整備、クリエイターの育成、社内外のパートナーやクリエイターとの連携強化に取り組んでまいります。さらには、映像・音楽・ライブイベントとデジタル技術を融合させた新しいエンターテインメント創出に取り組んでまいります。

アミューズメントユニット

当業界においては、「顧客ニーズの多様化」、「環境変化の激化」などの課題があります。これらの課題に対応するため、施設事業や業務用ゲーム機事業において、IPやグループのリソースを活用するなど、バンダイナムコならではの展開を行い、グループの各事業とより一体となることで、安定して収益をあげることができる強い基盤づくりに取り組みます。同ユニットは、IP軸戦略におけるグループの重要な顧客接点として、グループの商品・サービスの販売、IPの訴求や顧客ニーズを収集する役割も果たしてまいります。

株主の皆さまにおかれましては、今後とも一層のご支援とご指導を賜わりますよう、よろしくお願い申しあげます。

(注)「対処すべき課題」は2022年4月1日付の新しい事業区分で記載しております。

連結計算書類