事業報告(2020年1月1日から2020年12月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当連結会計年度の主要な取組み

当連結会計年度においては、世界的な新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)拡大により、各種競技大会の中止や規模の縮小、直営店の一時的な閉店、個人消費の冷え込み等、感染症の影響を大きく受ける年となりました。

中国にて感染症が確認されると、急速に全世界へと拡大しました。3月には欧州や米州でロックダウンを実施、日本でも感染者数は増加の一途を辿り、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の延期が決定しました。7月以降、当社が事業を行っている地域にて徐々に状況は改善に向かっていましたが、11月頃から感染症が再拡大し厳しい状況が再来しました。しかしながら、欧州を中心に主にパフォーマンスランニングが好調に推移したこと等により、11月に発表した前回予想を上方修正いたしました。なお、前期比での売上高は13%の減収となりました。

✔コロナ禍における取組み

① デジタル

全世界におけるEC(Eコマース)の売上高は大きく伸長し、前期比では北米は+112%、欧州は+133%、連結は+86%でした。多くのマラソン大会が中止される中、バーチャルレースという新しいランニングスタイルが拡大しました。当社においても、ASICS Runkeeperを活用し、Gold Coast Virtual Marathon等の約1,190大会ものバーチャルマラソン大会をサポートしました。また、11月に開催したバーチャル駅伝レース「ASICS World Ekiden 2020(アシックスワールドエキデン2020)」では、56,000人の方にご参加をいただき、世界最大規模のVirtual Raceとなりました。これは、オンライン上で結成されたチームで「デジタルたすき」を繋ぐ新しい形のランニングイベントであり、全世界の人々と共にランニングを楽しむことができる機会を提供しました。

② 販管費コントロール

筋肉質な財務体質の構築と収益性改善を目指し、グローバルで販管費の徹底的なコントロールに取組みました。マーケティング費用や人件費等の削減を実施し、前期比で123億円、計画比で313億円の販管費削減を実施しました。

③ 在庫管理の強化

上半期に今後の販売予測を鑑み、生産および発注の一部をキャンセルする等在庫圧縮管理を強化しました。併せて新商品の発売時期を変更し販売機会の適正化を図りました。これらの取組みの結果、当連結会計年度末の在庫高は、881億円と前期比で50億円の削減となりました。なお、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会関連在庫の増加45億円が含まれております。

✔パフォーマンスランニング

パフォーマンスランニングでは、カーボンプレートを内蔵したアシックス史上最も先進的なランニングシューズの「METARACER(メタレーサー)」に続き、軽量で反発性に優れたモデルである「BLAST BEYOND SERIES(ブラストビヨンドシリーズ)」として、「DYNABLAST(ダイナブラスト)」と「VERSABLAST(バーサブラスト)」を市場投入しました。また、独自のセンシング機能により「走り方」をデータ化しランナーをサポートする先進的なスマートシューズ、「EVORIDE ORPHE(エボライドオルフェ)」の販売を開始しました。内蔵されたセンサーによりランニング時の動きの評価、そしてその評価に基づきより良い走りに近づくためのおすすめのトレーニングメニューの提案まで行うことができます。

✔オニツカタイガー

ヴァレンティノの2020年秋冬メンズコレクションにて発表された、ヴァレンティノとのコラボレーションスニーカーを発売いたしました。また、6月10日に上海の南京路に旗艦店、7月27日にロンドンの中心街であるリージェントストリートに直営店、12月18日にはミラノに旗艦店をオープンしました。

✔主要地域の状況

中華圏では、主にパフォーマンスランニングの売上が25%以上成長(為替影響を除く)したことにより、前期比+4%の増収となりました。

✔サステナビリティ

世界の代表的なESG投資指標である「Dow Jones Sustainability Indices」(DJSI)の「Asia/Pacific Index」対象銘柄に6年連続で選出されました。また、気候変動問題への積極的な取組みとして、ファッション産業の環境負荷低減に向けた国際的枠組みであるTHE FASHION PACTに日本企業として初めて加盟をしました。

✔「VISION2030」の策定

アシックスが将来ありたい姿を長期的な視点で表した、2030年までの10年間にわたる長期ビジョン「VISION2030」を策定しました。これからの10年とその先に向けて、「プロダクト」「ファシリティとコミュニティ」「アナリシスとダイアグノシス」の3つの事業ドメインを成長させ、それぞれのドメインが交わり相乗効果を生み出すことで価値の最大化を図ります。そして、あらゆる角度からお客さま一人ひとりに最適な価値を提供することで、健康的で豊かなライフスタイルの実現に貢献することを目指します。

〇「VISION2030」詳細
https://corp.asics.com/jp/investor_relations/management_policy

※ページ下部にある「VISION2030」をご参照ください

連結決算ハイライト

① 売上高

感染症拡大の影響もあり、売上高は328,784百万円と前期比13.0%の減収となりました。

② 売上総利益

上記減収の影響により、152,858百万円と前期比14.9%の減益となりました。

③ 営業損失

販管費及び一般管理費の減少はあるものの、上記減収の影響により、営業損失は3,953百万円となりました。

④ 経常損失

上記に加え、支払利息の計上などにより、経常損失は6,923百万円となりました。

⑤ 親会社株主に帰属する当期純損失

上記に加え、米国子会社において法人税等還付税額の計上があったものの、直営店舗等の減損損失および感染症拡大に伴う店舗休止等損失を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失は16,126百万円となりました。

パフォーマンスランニング

P.Run

コアパフォーマンススポーツ

CPS

スポーツスタイル

SPS

アパレル・エクィップメント

APEQ

オニツカタイガー

OT

各カテゴリーには、間接費を一定の方法で配賦しております。
なお、一部カテゴリーについて算出方法を変更したことに伴い、前期実績を組み替えて表示しております。

報告セグメント別の概況

報告セグメント別の業績は、次のとおりです。

日本

売上高 943 億円
前期比 22.0 %減
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売上高は、感染症拡大の影響もあり、94,398百万円(前期比22.0%減)となりました。上記減収の影響などにより、セグメント損失は3,791百万円となりました。

北米

売上高 653 億円
前期比 17.2 %減
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売上高は、感染症拡大の影響を受け、65,377百万円(前期比17.2%減)となりました。セグメント損失は4,548百万円でした。

欧州

売上高 873 億円
前期比 8.6 %減
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売上高は、感染症拡大の影響を受け、87,342百万円(前期比8.6%減)となりました。粗利益率の改善に加え、販売費及び一般管理費削減などもあり、セグメント利益は4,572百万円(前期比59.5%増)となりました。

中華圏

売上高 411 億円
前期比 4.2 %増
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売上高は、感染症の影響を受けたものの、パフォーマンスランニングが好調であったことにより、41,118百万円(前期比4.2%増)となりました。

オセアニア

売上高 199 億円
前期比 8.0 %増
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売上高は、パフォーマンスランニングおよびスポーツスタイルが好調であったことにより、19,926百万円(前期比8.0%増)となりました。

セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、2,707百万円(前期比39.3%増)となりました。

東南・南アジア

売上高 85 億円
前期比 24.3 %減
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売上高は、感染症拡大の影響もあり、8,553百万円(前期比24.3%減)となり、セグメント利益は152百万円(前期比80.7%減)となりました。

その他

売上高 282 億円
前期比 22.2 %減
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売上高は、韓国および南米における感染症拡大の影響もあり、28,260百万円(前期比22.2%減)となり、セグメント利益は467百万円(前期比42.3%減)となりました。

対処すべき課題

(Ⅰ)長期ビジョン「VISION2030」策定

当社は、「健全な身体に健全な精神があれかし」を創業哲学とし、主に「パフォーマンス・アスリート」のための「プロダクト」を中心にビジネスを展開してきました。しかし、世界の60歳以上の人口が今後非常に速いペースで伸びていくことが予測され、より長く健康でいることが注目されています。また「健康」の定義も、昨今は身体の健康だけでなく、心の健康まで含めるようになっています。このように急激に変化していく社会環境の中で創業哲学を実現するため、誰もが「ライフタイム・アスリート」として、スポーツを通じて心も身体も満たされるライフスタイルを創造していくことを目指し、そのために当社が2030年にあるべき姿としてVISION2030を策定いたしました。

「Performance Athlete」のサポートから、「Lifetime Athletes in All of Us」
私たち誰もが一生涯運動・スポーツに関わり心と身体が健康で居続けられる世界の実現へ。

これからの10年に向けて、当社は「プロダクト」に加え「ファシリティとコミュニティ」「アナリシスとダイアグノシス」これら3つの事業ドメインでビジネスを拡大していきます。この3つの事業ドメインを通じて、人々の心と身体の健康を実現していきます。

すべての事業ドメインに共通して、この3つのテーマを掲げています。進化を続けるデジタル技術を活用し、各個人に合わせてパーソナライズされた製品・サービスを、環境に配慮したサステナブルな手法で開発・提供していきます。これら3つのテーマを通じて、各事業ドメインを単独で成長させつつ、それぞれの事業ドメインが交わることで相乗効果を生み出し、価値の最大化を図ります。

あらゆる角度からお客さま一人ひとりに最適な価値を提供することで、
質の高いライフスタイルの実現に貢献することを目指します。

(Ⅱ)中期経営計画2023策定

■前中期経営計画(AGP2020)の振り返り

2018年に計画を修正し、成長拡大ではなく収益性フォーカスへの方向転換を実施いたしました。修正後の数値目標はいずれも未達成であるものの、製販一体となったカテゴリー体制の導入と全社でのコストコントロールにより、収益性悪化を抑制することができました。また、ランニングも製品の評価が高まっており、注力してきたEコマースも消費者のデジタルシフトと相まって、急拡大しています。 一方で、 収益改善分野としていたアパレルやコアパフォーマンススポーツ、リテールビジネスでは、2016年以降の数年間、拡大路線において大きく投資したリテールやスポーツマーケティングが収益を圧迫し、十分な収益改善には至っておりません。また、デジタルを中心としたオムニチャネルにおけるリテールビジネスの再編も課題として捉えており、引き続き利益体質を確立するための戦略、施策にフォーカスしていきます。

■事業環境の認識

コロナ禍において、健康意識の高まりによって、心身の健康維持のための運動はこれまで以上に重要視されるようになっています。また、仕事や生活におけるあらゆるものがデジタル化しています。より持続的な社会を実現するために、消費に対する価値観やニーズの変化、さらに脱炭素社会に向けた地球規模での取り組みも、今後より一層大きく動いていくと想定しています。こうした社会環境の変化や地球環境への意識の高まりを、重要な環境変化として捉え、重点的に対応していきます。

■VISION2030と中期経営計画2023の位置づけ

中期経営計画2023は、VISION2030実現のための重要な最初の3ヵ年計画であり、将来の持続的成長に向けて、まずはランニングにおいてプロダクトを軸に3つの事業ドメインの連携を強めることに注力します。また、収益性にフォーカスすることで、安定した財務基盤の確立を目指します。

中期経営計画2023

戦略目標

デジタルを軸にした経営への転換

  • デジタルサービスと連携したランニングエコシステムを通して一生涯、心も身体も満たされるランニング体験を提供
  • デジタルを活用したタッチポイント拡大によるECビジネスの成長加速

事業活動を通したサステナブルな社会の実現

  • 世界の人々の心身の健康とスポーツができる環境を守ることへの貢献
方針

収益性を高めることに注力し、将来の持続的成長のための安定した財務基盤を確立する。

重点戦略

収益事業の拡大

  • パフォーマンスランニング、オニツカタイガーにリソースを集中し、収益成長を拡大
  • 中華圏の利益を伴う売上成長加速により、全社成長を牽引
  • 成長市場やサービス事業への投資により、将来の収益の柱を育成

収益事業への変革

  • アパレル事業の黒字化と、選択したスポーツカテゴリーへの集中の更なる徹底
  • ECを中心としたオムニチャネル戦略における直営店の再編
  • 売上規模の大きい日本、北米、欧州における収益性向上による全社収益力の強化

経営基盤の強化

  • デジタル、パーソナル、サステナブルを基軸としたイノベーションの創造
  • デジタルを活用したサプライチェーンにおけるオペレーションの効率・収益性の最大化
  • 人財の強化と活性化により、質の高い働き方の実現
  • カテゴリー利益の最大化とコストオーナーによるコストコントロール
  • ROAツリーマネジメントによる資産効率の最大化
  • 充実したガバナンス体制により中期経営計画2023の着実な実行とモニタリング
●「中期経営計画2023」詳細

https://corp.asics.com/jp/investor_relations/management_policy
※ページ下部にある「中期経営計画2023」をご参照ください

連結計算書類