事業報告(2021年1月1日から2021年12月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当連結会計年度の主要な取組み

今期も、世界的な新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)の影響により、各種競技大会の中止・延期や規模の縮小、直営店の臨時休業等の状況が一部継続しておりました。感染症拡大に伴いベトナム南部の工場における一時的な生産停止もありましたが、各地域での供給体制の確保および手元在庫の有効活用により、2021年の売上影響の極小化を目指しました。また、世界的なコンテナ不足による海上輸送費の上昇もありました。

売上高および営業利益は、全地域においてパフォーマンスランニングが好調に推移したこと等により、当連結会計年度において前期比大幅増収増益となりました。また、4年ぶりに売上高4,000億円を超過しました。

✔デジタル

全世界におけるECの売上高は伸長し、前期比では連結は+23%でした。結果としてEC売上比率は16%となりました。
デジタルに関して、今期は下記の取組みを行いました。

①ランニングプログラムの提供

日本において、一般ランナーのパフォーマンス向上を目的にさまざまなランニング体験が得られる新しいサービス「アシックスプレミアムランニングプログラム」を4月に、11月には、ランニングを習慣化したい方から自己記録更新を目指すランナーまで全3コース(「エントリーコース」「ステップアップコース」「スピードコース」)を用意した「ASICS Running Program(アシックスランニングプログラム)」を実施しました。

②ASICS World Ekiden 2021(アシックスワールドエキデン2021)を開催

11月に、バーチャル駅伝レース「ASICS World Ekiden 2021(アシックスワールドエキデン2021)」を開催しました。オンライン上で結成されたチームで「デジタルたすき」を繋ぐ新しい形のランニングイベントとなっており、昨年同様に多くの方にご参加いただきました。全世界の人々と共にランニングを楽しむことができる機会を提供します。

③パーソナルコーチングサービス『Runmetrix(ランメトリックス)』の提供

カシオ計算機株式会社(以下、カシオ)との協業で開発したランナー向けパーソナルコーチングサービス『Runmetrix』を1月に発表、3月より専用モーションセンサーの販売を開始しました。カシオがもつウエアラブルデバイスの開発力やセンシング技術のノウハウと、アシックスがもつスポーツ工学の知見やデータという両社の強みを生かしたアプリと端末で、初心者から上級者まで、ランナーの目的やレベルに合わせたパーソナルコーチングを実現しています。

④NFTオークションの実施

7月に、アシックス初となるシューズのNFT(※)である「SUNRISE RED NFTコレクション」をデジタルオークションで販売しました。

「SUNRISE RED NFTコレクション」は、アシックス初となるシューズのNFTです。オークションで落札したすべての所有者は、アニメーションやアプリケーション(Metaverse含む)において使うことができる本コレクションの3Dモデルやテキスチャーを受け取ることができます。アシックスは、デジタルマーケティング分野を強化しており、デジタル技術を活用したスポーツやライフスタイルにおける新たな楽しみ方を積極的に提案していきます。

※NFT:Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略称で「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」

✔パフォーマンスランニング

パフォーマンスランニングの売上高は、全地域において大幅増収となり、前期比30%以上成長しました。

また、ストライド型、ピッチ型(※)の走法に応じて設計したトップアスリート向けのレーシングシューズである「METASPEED Sky(メタスピードスカイ)」を3月に、「METASPEED Edge(メタスピードエッジ)」を6月に市場投入しました。これらのシューズを着用した国内外のトップランナーの活躍もあり、12月末時点で194を超える自己ベストが出ました。

※ 長距離走における走法は、スピードを上げるに従い主に一歩の歩幅(ステップ長)が変化するストライド型と、スピードを上げるに従い一歩の歩幅も足の回転数(ピッチ)も変化するピッチ型の2つに分類することができます。また、走行スピードは歩幅の長さ×足の回転数の式で求められ、ストライド型では歩幅をより伸長させること、ピッチ型では歩幅の伸長に加え足の回転数を上げることが走速度向上に重要であることが当社の研究で分かりました。

✔オニツカタイガー

オニツカタイガーの売上高は、前期比14%の増収となりました。

2月にミラノファッションウィークにブランドとして初めて参加。9月にも参加して22年春夏コレクションを発表しました。今後はミラノとロンドンを中心にヨーロッパでもブランドの活動範囲を徐々に広げていく予定です。

加えて、北京王府井にて中国で初となるTHE ONITSUKA(ジ・オニツカ)のストアを1月に、カリフォルニア州のビバリーヒルズにアメリカ西海岸で初となる旗艦店を3月に、世界屈指のショッピングストリートであるロンドンのリージェントストリートに世界最大の旗艦店を5月に、マレーシアクアラルンプールに旗艦店を11月にオープンしました。

✔主要地域の状況

全ての主要地域において、主にパフォーマンスランニングが好調に推移したことにより、前期比で増収増益となりました。日本では前期比16%、北米では32%、欧州で22%、中華圏では28%の大幅増収となりました。

✔サステナビリティ

サプライチェーンを通じて気候変動対策に取組み、温室効果ガス排出量の削減活動を実施していることが評価され、国際NPOであるCDPから上位企業8%が獲得する「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー・ボード」に3年連続で選定されました。また、世界の代表的なESG投資指標である「Dow Jones Sustainability Indices」の「Asia/Pacific Index」対象銘柄に7年連続で選出されました。12月には、サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲットの達成状況に応じて排出権を購入する国内初(当社調べ)のスキームを採用するサステナビリティ・リンク・ボンドを発行しました。

今後も引き続き、事業のあらゆる場面でサステナビリティに配慮した取り組みを推進し、持続可能な社会の実現に向け、さらなる貢献に努めます。

✔ROAツリーマネジメント

中期経営計画の目標指標の一つであるROAの最大化に向けての取組みを実施し、ROAは前期比で△5.0%から2.8%と約8%向上しました。

まず、ROA改善への施策を社内で浸透させるため、勉強会等を開催し落とし込みを図りました。そして、収益性向上に対して、コストオーナーによる販管費コントロールの取組みを強化させました。前期比で販管費率は48%から44%と約4%低減しました。

また、資金効率の観点では、前期比で在庫が減少する等、在庫抑制に継続的に取り組んだ結果、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)は前期比で172日から134日と38日間の短縮となりました。

連結決算ハイライト

① 売上高

感染症の影響はあったものの、パフォーマンスランニングやコアパフォーマンススポーツを中心に、全ての地域で好調に推移し、売上高は404,082百万円と前期比22.9%の増収となりました。

② 売上総利益

上記増収の影響により、199,878百万円と前期比30.8%の増益となりました。

③ 営業利益

上記増収の影響に加え、粗利益率の改善などにより、営業利益は21,945百万円となりました。

④ 経常利益

上記増収増益の影響などより、経常利益は22,166百万円となりました。

⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益

上記増収増益の影響により、親会社株主に帰属する当期純利益は9,402百万円となりました。

パフォーマンスランニング

P.Run

コアパフォーマンススポーツ

CPS

スポーツスタイル

SPS

アパレル・エクィップメント

APEQ

オニツカタイガー

OT

カテゴリー別の業績は、上記のとおりであります。

なお、一部カテゴリーについて算出方法を変更したことに伴い、前連結会計年度の売上高の実績を組み替えて表示しております。

また、当連結会計年度よりカテゴリー経営の更なる深化を目指し、カテゴリーが管理可能な費用を定義した上で、新たに「カテゴリー利益」を前連結会計年度の実績と併せて算出しております。

報告セグメント別の概況

報告セグメント別の業績は、次のとおりです。

日本

売上高 1,099 億円
前期比 16.4 %増
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売上高は、パフォーマンスランニングやコアパフォーマンススポーツが好調であったことにより、109,911百万円と前期比16.4%の増収となりました。

セグメント利益につきましては、上記増収の影響および販管費率の低下などにより、1,193百万円と黒字に転換しました。

北米

売上高 861 億円
前期比 31.8 %増
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売上高は、パフォーマンスランニングやコアパフォーマンススポーツが好調であったことにより、86,176百万円と前期比31.8%の増収となりました。

セグメント利益につきましては、上記増収の影響および粗利益率の改善などにより、848百万円と黒字に転換しました。

欧州

売上高 1,066 億円
前期比 22.1 %増
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売上高は、パフォーマンスランニング、コアパフォーマンススポーツやスポーツスタイルが好調であったことにより、106,604百万円と前期比22.1%の増収となりました。

セグメント利益につきましては、上記増収の影響および粗利益率の改善などにより、10,889百万円と前期比138.2%の大幅増益となりました。

中華圏

売上高 525 億円
前期比 27.9 %増
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売上高は、パフォーマンスランニングやオニツカタイガーが好調であったことにより、52,593百万円と前期比27.9%の増収となりました。

セグメント利益につきましては、上記増収の影響に加え、ホールセールやリテール向け商品の粗利益率の改善などにより、9,147百万円と前期比112.5%の大幅増益となりました。

オセアニア

売上高 247 億円
前期比 24.2 %増
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売上高は、パフォーマンスランニングやスポーツスタイルが好調であったことにより、24,756百万円と前期比24.2%の増収となりました。

セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、3,347百万円と前期比23.6%の増益となりました。

東南・南アジア

売上高 109 億円
前期比 27.5 %増
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売上高は、パフォーマンスランニングやオニツカタイガーが好調であったことにより、10,903百万円と前期比27.5%の増収となりました。

セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、964百万円と前期比533.7%の大幅増益となりました。

その他

売上高 351 億円
前期比 24.3 %増
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売上高は、パフォーマンスランニングやコアパフォーマンススポーツが好調であったことにより、35,133百万円と前期比24.3%の増収となりました。

セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、1,797百万円と前期比284.3%の大幅増益となりました。

対処すべき課題

(Ⅰ)長期ビジョン「VISION 2030」

当社は、「健全な身体に健全な精神があれかし」を創業哲学とし、主に「パフォーマンス・アスリート」のための「プロダクト」を中心にビジネスを展開してきました。しかし、世界の60歳以上の人口が今後非常に速いペースで伸びていくことが予測され、より長く健康でいることが注目されています。また「健康」の定義も、昨今は身体の健康だけでなく、心の健康まで含めるようになっています。このように急激に変化していく社会環境の中で創業哲学を実現するため、誰もが「ライフタイム・アスリート」として、スポーツを通じて心も身体も満たされるライフスタイルを創造していくことを目指し、そのために当社が2030年にあるべき姿としてVISION2030を策定しております。

「Performance Athlete」のサポートから、「Lifetime Athletes in All of Us」
私たち誰もが一生涯運動・スポーツに関わり心と身体が健康で居続けられる世界の実現へ。

2030年に向けて、当社は「プロダクト」に加え、「ファシリティとコミュニティ」「アナリシスとダイアグノシス」これら3つの事業ドメインでビジネスを拡大し、人々の心と身体の健康を実現していきます。

また、すべての事業ドメインに共通するテーマとして、「Digital」「Personal」「Sustainable」を掲げ、進化を続けるデジタル技術を活用し、各個人に合わせてパーソナライズされた製品・サービスを、環境に配慮したサステナブルな手法で開発・提供していきます。

これら3つのテーマを通じて、各事業ドメインを単独で成長させつつ、それぞれの事業ドメインが交わり相乗効果を生み出すことで、お客様に提供する価値の最大化を図ります。

あらゆる角度からお客さま一人ひとりに最適な価値を提供することで、
質の高いライフスタイルの実現に貢献することを目指します。

(Ⅱ)中期経営計画2023

事業環境の認識

コロナ禍において、免疫力を高めること、健康でいることの重要性がさらに高まり、健康であり続けるための手段として、身体を動かすこと、スポーツを行うことがより人々にとって身近なものになりました。そしてスポーツには身体的な効果だけではなく、気分転換やストレス発散など心の健康を実現するといった精神的な効果もあると考えられているため、世界各国における自粛や制限された生活の中で、心の健康を保つためにスポーツを始める人、また継続していく人も多くなっています。また、生活者の購買動向として、コロナ禍で普及したEコマースでの購入や非接触型決済方法の普及がさらに進み、デジタルを活用したツールがより多くの人の日常に取り入れられ、ますます拡大していくことが予測されます。脱炭素社会に向けた地球規模での取り組みも、今後より一層大きく動いていくと想定しています。こうした社会環境の変化や地球環境への意識の高まりを重要な環境変化として捉え、重点的に対応していきます。

VISION2030と中期経営計画2023の位置づけ

中期経営計画2023は、VISION2030実現のための重要な最初の3ヵ年計画であり、将来の持続的成長に向けて、まずはランニングにおいてプロダクトを軸に3つの事業ドメインの連携を強めることに注力します。また、収益性にフォーカスすることで、安定した財務基盤の確立を目指します。

中期経営計画2023の進捗状況

コロナという未曽有の危機にありながらも、注力カテゴリーであるランニング市場が成長していることもあり、売上も成長トレンドに入っています。そして利益体質の確立に向けた選択と集中施策の実行により、収益力も大きく改善しており、中期経営計画2023を達成するための基盤となる1年となりました。

戦略目標である「デジタルを軸にした経営への転換」では、当社会員プログラムのOneASICS会員数が2022年1月末時点で550万人を突破し、中期経営計画における2023年の目標を前倒しで達成しました。EC売上も前年同期比で23.3%の成長を実現し、全体の粗利益率の改善に繋げています。また、もう一つの戦略目標である「事業活動を通したサステナブルな社会の実現」では、繊維由来のリサイクル材を活用した商品の発売や、新たな循環型ビジネスモデル構築に向けた取り組みを通じて、高い外部評価もいただいており、今後も強化することで世界の人々の心身の健康とスポーツができる環境を守ることに貢献していきます。

重点戦略の一つとして掲げた主力のパフォーマンスランニングでは、新商品の「METASPEED Sky/Edge」を着用して、数多くのアスリートたちが成果を生み出してくれました。それらの製品をはじめとする高い商品評価もあり、主要地域である日米欧においてランニングシューズ市場で高いマーケットシェアを達成しております。ランニング専門店との取り組みの継続や、コロナ禍で新たにランニングを始めた顧客層の取り込みを通じて、このポジションを維持・拡大していきます。

また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、当社はゴールドパートナー(スポーツ用品)として、参加アスリートおよびボランティアの方々に向けたサポートを実施いたしました。無観客開催となりましたが、日本選手団や契約アスリートなど、数多くの国々の選手の活躍によりアシックスブランドを全世界に発信することができました。今後も様々な活動を通じて真の共生社会の実現に向け貢献していきます。

連結業績(実績・計画)
●「中期経営計画 2023」詳細

https://corp.asics.com/jp/investor_relations/management_policy
※ページ下部にある「中期経営計画 2023」をご参照ください

連結計算書類