事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)

当社グループの現況に関する事項

事業の経過及びその成果

当期の経済環境

当期における世界経済は、一部で堅調な動きもありましたが、総じて低調に推移しました。米国では、政策金利が引上げられたものの、良好な雇用環境のもとで個人消費を中心に景気が緩やかに改善しました。欧州では、金融引締めの中でも物価の高い伸びが維持され、景気の停滞が続きました。中国でも、不動産市場の低迷や輸出の低調等から回復感を欠く状況が続きました。原油価格(WTIベース/1バレルあたり)は、主要産油国の供給抑制に伴い期初の80ドル台から9月には一時93ドル台まで上昇した後、世界経済の低調から12月にかけて一時67ドル台まで下落したものの、その後は中東情勢の悪化もあり再び上昇傾向に転じ、期末は83ドル台で終えました。
日本経済は、物価の上昇で個人消費が抑制される中、夏から秋にかけて景気が停滞する局面もありましたが、新型コロナウイルス感染症との共生を前提とした経済活動の正常化が進むもとで、賃金上昇やインバウンド需要の拡大等を背景とした回復傾向をたどりました。ドル・円相場は、米国長期金利の上昇・低下に連れて、期初の133円台から11月中旬にかけて151円台まで円安が進んだ後、12月末にかけて一時141円台まで円高に転じるも、再び円安が進み、日銀が3月にマイナス金利政策を解除した中でも期末は151円台で終えました。日経平均株価は、国内景気の回復傾向や円安に伴う企業業績の好調な推移、米国株価の上昇等を背景に期初の28,000円台から上昇し、3月下旬には一時41,000円台に乗せ、期末も40,000円台で終えました。10年物国債利回りは、日銀による7月の長期金利目標の上限引上げに伴い期初の0.4%台から11月初めに0.96%まで上昇するも、1月半ばにかけては米国の長期金利低下に連れて0.6%前後まで反落、その後は日銀が3月に長期金利操作を終了したものの、低金利政策が今後も続くとの見方が広がったことで緩やかな金利上昇にとどまり、期末は0.75%で終えました。

当社グループの当期の業績

当期の収益は、食料は食品流通関連事業での人流回復及び販売価格上昇による取引拡大に加え、食糧関連取引での取扱数量増加等により増収、住生活は国内不動産取引やEuropean Tyre Enterprise Limited(欧州タイヤ関連事業)の堅調な推移に加え、大建工業(株)の子会社化等により増収、機械は自動車関連事業での販売好調に加え、北米電力関連事業での運転・保守サービス取引増加及び再生可能エネルギー開発資産売却等により増収となり、一方、エネルギー・化学品はエネルギートレーディング取引、エネルギー関連事業及び化学品関連取引での市況価格下落の影響により減収となりましたが、全体としては前期比843億円(0.6%)増収の14兆299億円となりました。

売上総利益は、住生活は国内不動産取引やEuropean Tyre Enterprise Limitedの堅調な推移に加え、大建工業(株)の子会社化等により増益、食料はDoleでの物流コスト改善や食品流通関連事業での人流回復及び販売価格上昇による取引拡大に加え、食糧関連取引での取扱数量増加等により増益、第8は(株)ファミリーマートでの商品力・販促強化による客数及び客単価の伸長に伴う日商増加等により増益となり、一方、エネルギー・化学品は前期好調であったエネルギートレーディング取引の反動等により減益となりましたが、全体としては前期比1,025億円(4.8%)増益の2兆2,324億円となりました。

販売費及び一般管理費は、前第4四半期にコネクシオ(株)を連結除外したことによる減少はあったものの、大建工業(株)及び(株)ドームの子会社化、人件費の増加及び円安による経費増加等により、前期比1,026億円(7.2%)増加の1兆5,217億円となりました。

貸倒損失は、一般債権に対する貸倒引当金の減少等により、前期比11億円減少の77億円(損失)となりました。

有価証券損益は、リチウムイオン電池事業の再評価に係る利益はあったものの、前期の北米飲料機器メンテナンス事業及びコネクシオ(株)の売却に伴う利益の反動等により、前期比323億円(48.2%)減少の348億円(利益)となりました。

固定資産に係る損益は、伊藤忠エネクス(株)での固定資産売却に伴う利益及び前期のDoleでの減損損失の反動等により、前期比441億円改善の61億円(損失)となりました。

その他の損益は、前期比19億円減少の132億円(利益)となりました。

受取利息、支払利息の合計である金利収支は、米ドル金利上昇に伴う支払利息の増加等により前期比190億円悪化の465億円(費用)となり、受取配当金は、LNGプロジェクトからの配当金の減少はあったものの、石油ガス上流権益からの配当金の増加等により、前期比14億円(1.8%)増加の811億円となりました。その結果、金利収支に受取配当金を加えた金融収支は、前期比176億円減少の345億円(利益)となりました。

持分法による投資損益は、住生活はパルプ市況下落及び販売低調等によるITOCHU FIBRE LIMITED(欧州パルプ事業)の取込損益悪化に加え、前期好調であった海外不動産事業の反動等により減少、その他及び修正消去(注)はCITIC Limitedでは総合金融分野は堅調に推移したものの、米ドル金利上昇に伴う支払利息の増加及び前期の証券事業の再評価に係る利益の反動等による取込損益減少により減少となり、一方、機械は北米電力関連事業の取込損益増加に加え、前第3四半期における日立建機(株)の持分法適用開始及び前期のリース関連事業でのロシア向け航空機に係る損失の反動等により増加となりましたが、全体としては前期比43億円(1.4%)減少の3,163億円(利益)となりました。

(注)「その他及び修正消去」は、各事業セグメントに帰属しない損益及びセグメント間の内部取引消去が含まれています。

以上の結果、税引前利益は、前期比112億円(1.0%)減益の1兆957億円となりました。法人所得税費用は、税引前利益の減少等により、前期比184億円(7.0%)減少の2,438億円となり、税引前利益1兆957億円から法人所得税費用2,438億円を控除した当期純利益は、前期比72億円(0.9%)増益の8,519億円となりました。このうち、非支配持分に帰属する当期純利益502億円(利益)を控除した当社株主に帰属する当期純利益は、前期比13億円(0.2%)増益の8,018億円となりました。

(ご参考)

日本の会計慣行に基づく営業利益(売上総利益、販売費及び一般管理費、貸倒損失の合計)は、食料はDoleでの物流コスト改善や食品流通関連事業での人流回復及び販売価格上昇による取引拡大に加え、食糧関連取引での取扱数量増加等により増益、第8は(株)ファミリーマートでは外部環境変化や今後の事業基盤強化に向けたデジタル施策実行に伴う各種コストの増加はあったものの、商品力・販促強化による客数及び客単価の伸長に伴う日商増加等により増益となり、一方、エネルギー・化学品は前期好調であったエネルギートレーディング取引の反動等により減益となりましたが、全体としては前期比10億円(0.1%)増益の7,029億円となりました。

見通しに関する注意事項

本事業報告に記載されているデータや将来予測は、現在入手可能な情報に基づくもので、種々の要因により影響を受けることがありますので、実際の業績は見通しから大きく異なる可能性があります。従って、これらの将来予測に関する記述に全面的に依拠することは差し控えるようお願いいたします。また、当社は新しい情報、将来の出来事等に基づきこれらの将来予測を更新する義務を負うものではありません。

主要な事業内容

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、繊維や食料、住生活、情報・金融等の生活消費分野、機械や化学品、石油製品、鉄鋼製品等の基礎産業分野、そして金属資源、エネルギー資源等の資源分野において、トレーディング、ファイナンス、物流及びプロジェクト案件の企画・調整、資源開発投資・事業投資等の多角的な事業活動を展開しています。

セグメント別業績
  • (注1) 当社は、連結計算書類を国際会計基準(IFRS)に準拠して作成しています。
  • (注2) 「その他及び修正消去」には、各事業セグメントに帰属しない損益及びセグメント間の内部取引消去が含まれています。CITIC Limited及びC.P. Pokphand Co. Ltd.に対する投資及び損益は当該セグメントに含まれています。
  • (注3) 第8及び第8以外のセグメント(以下、「主管セグメント」という。)で株式持合いをしていた関係会社について、2022年10月1日付で当該持合いを解消し、主管セグメントのみの保有に変更しています。これに伴い、前期についても当該持合いが解消した前提で組替えて表示しています。
連結財政状態

総資産は、持分法で会計処理されている投資の増加及び取引増加による営業債権の増加並びに大建工業(株)の子会社化による増加に加え、円安に伴う為替影響等により、前期末比1兆3,743億円(10.5%)増加の14兆4,897億円となりました。

有利子負債から現預金を控除したネット有利子負債は、堅調な営業取引収入はあったものの、伊藤忠テクノソリューションズ(株)の追加取得に加え、配当金の支払及び自己株式の取得並びに円安に伴う為替影響等により、前期末比3,504億円(14.7%)増加の2兆7,416億円となりました。有利子負債は、前期末比3,510億円(11.7%)増加の3兆3,576億円となりました。

株主資本は、伊藤忠テクノソリューションズ(株)の追加取得による資本剰余金の減少に加え、配当金の支払及び自己株式の取得はあったものの、当社株主に帰属する当期純利益の積上げ及び円安に伴う為替影響等により、前期末比6,037億円(12.5%)増加の5兆4,270億円となりました。

株主資本比率は、前期末比0.7ポイント上昇の37.5%となり、NET DER(ネット有利子負債対株主資本倍率)は、前期末比若干増加の0.51倍となりました。

連結キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、第8、住生活及び食料での堅調な営業取引収入の推移に加え、機械及び金属での持分法投資からの配当金の受取等により、9,781億円のネット入金となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、住生活での大建工業(株)の子会社化による支払及び金属での持分法投資の取得に加え、第8、食料及びエネルギー・化学品での固定資産の取得等により、2,060億円のネット支払となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債及び借入金による調達はあったものの、伊藤忠テクノソリューションズ(株)の追加取得やリース負債の返済に加え、配当金の支払及び自己株式の取得等により、8,012億円のネット支払となりました。

現金及び現金同等物の当期末残高は、前期末比56億円減少の6,004億円となりました。

2023年度の定性的成果

当社グループは、中期経営計画「Brand-new Deal 2023」(2021年度から2023年度までの3ヵ年計画)において、「『マーケットイン』による事業変革」と「『SDGs』への貢献・取組強化」を基本方針としました。「Brand-new Deal 2023」最終年度である2023年度の具体的成果は、次のとおりです。

繊維カンパニー

高級バッグブランド「ゲラルディーニ(GHERARDINI)」の独占的な販売に関する権利取得(日本及び欧米)

当社は、2023年12月にイタリア・フィレンツェ生まれの高級バッグブランド「ゲラルディーニ」について、日本及び欧米における独占的な販売に関する権利を取得しました。ゲラルディーニのバッグは、その技術力の高さ、デザインの上品さ、優雅さによって世界中で愛されています。当社は、日本市場は(株)クイーポ、イタリア含む欧米市場はPelletteria Fiorentina Montecristo S.R.L.を通じて販売し、創業から130年を超える伝統あるブランドの魅力を発信します。
今後も長年にわたりブランドビジネスにおいて培ってきた経験と業界を牽引する圧倒的なノウハウを最大限に活用し、更なるブランドビジネスの拡大に取組んでいきます。

(1885年に芸術の都イタリア・フィレンツェで創業した高級バッグブランド)

「FILA」のシューズ・アパレルに関する新会社設立

当社は、イタリアのスポーツブランド「FILA」のシューズ・アパレルの企画・製造・販売を行うIFJ(株)を設立しました。FILAは、1911年にイタリアのビエラで生まれ、ファッション感度の高いスポーツブランドとしてZ世代を中心に支持を集めています。また近年では、日本を代表するアスリートへのウェア提供も実施しています。当社は、2006年にFILAの日本市場におけるマスターライセンス権を取得し、様々なカテゴリーの商品をサブライセンシー各社とともに展開しています。
今後は、IFJ(株)がシューズとアパレルが一体となったコレクションを企画・製造し、伝統あるブランドのアイデンティティを明確に発信する直営店を展開する等、FILAブランドの更なる価値向上へ取組を加速していきます。

(サブライセンシーであるニッキー(株)がウェア提供するプロゴルファーの天本ハルカ選手)

機械カンパニー

(株)ヤナセにて電気自動車・フェラーリ等の取扱商品を拡充

当社子会社である(株)ヤナセは、全国240拠点を超える販売・サービス網を有する国内最大の輸入車販売会社であり、20万人を超える全国のお客様に対して最上質の商品・サービスを提供し、「クルマのある人生」を創っています。
2023年10月、(株)ヤナセは電気自動車の更なる拡販に向けて、当社東京本社の隣に、メルセデス・ベンツでは都内初となる電気自動車専門ショールーム「メルセデスEQ青山」をオープンしました。また、2024年3月にFerrari Japan(株)とディーラー契約を締結、東京都新宿区にフェラーリ販売店を開設し、取扱ブランドの拡充を進めています。
今後も多様化するお客様のニーズを捉え、充実したサービスを提供していきます。

(ヤナセ フィオラーノ モトーリにて「フェラーリ」の販売開始)

北米における再生可能エネルギーファンドを設立

当社米国子会社Tyr Energy, Inc.は、2022年に設立した再生可能エネルギー開発会社Tyr Energy Development Renewables, LLCに続き、北米の再生可能エネルギー開発資産を投資対象とするファンドOverland Capital Partners, L.P.を設立しました。本ファンドを通じて20億米ドル程度の再生可能エネルギー事業を行う予定です。また、世界最大の独立系発電所運転・保守サービス会社である当社米国子会社NAES Corporationは、再生可能エネルギー分野においても約1,400か所、200万KWの太陽光発電所及び110万KWの風力発電所向けに資産管理・運転保守サービスを提供しています。
各社の有する機能とノウハウを活用し、日本国内を中心とした機関投資家向けに、成長著しい北米の再生可能エネルギー市場での優良投資機会を提供します。

(当該ファンドにて取組予定の風力・太陽光発電所イメージ)

金属カンパニー

北欧での世界最大級のグリーン水素バリューチェーンに参画

当社は、デンマークにおいてグリーン水素地産地消プロジェクトを進める水素生産の世界最大手であるEverfuel A/Sに、大阪ガス(株)と共同で出資しました。グリーン水素製造プロジェクトとしては世界最大級の規模となる同社第一号案件の商業運転が2024年中に予定されています。既に実績のある自社水素ステーションも活用し、産業・モビリティ分野への水素販売を行うことで地産地消のバリューチェーンを構築し、将来的には一大水素消費地になると見込まれるドイツへのパイプラインによる輸送も計画しています。
当社は、本事業の早期収益化及び日本を含むアジアや欧米への横展開に加え、水素を原料とするアンモニアやe-fuel(合成燃料)等、今後の需要拡大が見込まれる水素派生商品の製造事業への参画により脱炭素社会の実現に貢献していきます。

※再生可能エネルギーを利用し、水の電気分解によって生産される、製造時に二酸化炭素を排出しない水素

(Everfuel A/Sがデンマーク・オランダで展開する水素ステーション)

エネルギー・化学品カンパニー

大型蓄電池事業への本格参入

当社は、家庭用蓄電池事業等で培った知見を活かし、大型蓄電池事業に本格参入しました。太陽光や風力等の自然を相手にする再生可能エネルギーは発電タイミングや発電量が安定しないことが課題とされており、そのソリューションとして期待されるのが需給調整機能を持った大型蓄電池です。2023年6月のカネカソーラー販売(株)との取組を皮切りに、大阪ガス(株)、東京センチュリー(株)及び東急不動産(株)と計3件の蓄電所事業を立上げ、東京都とも日本初となる系統用蓄電池事業の官民連携ファンドを創設する等、市場をリードしています。また、電力網から切離された地域で、太陽光発電等の再生可能エネルギーと大型蓄電池をセットにした脱炭素電源ビジネスを進めるべく、炭鉱エリアで同ビジネスに取組む豪州UON PTY LTDに出資しました。
今後も大型蓄電池事業の更なる拡大に注力することで、より効率的な再生可能エネルギーの普及を促進していきます。

(豪州UON PTY LTDが展開する太陽光発電と大型蓄電池を組合わせた脱炭素ソリューション)

食料カンパニー

新ブランドメッセージ「フルーツでスマイルを。」のもとで付加価値戦略を推進

当社100%子会社である(株)ドール(ドール)は、フルーツで人々の様々な暮らしを笑顔にしていきたいという思いを込めて、日本オリジナルとなる新ブランドメッセージ「フルーツでスマイルを。」を策定しました。新ブランドメッセージのもと、「おいしさ」、「健康・美容効果」、「エシカル消費」を軸に、様々な取組を推進しています。おいしさを追求する取組として、パイナップルの選定に光センサーを導入し、糖度・酸度・熟度の3つで独自の厳しい基準をクリアした「極撰パイナップル」の販売を2023年より開始しました。また、健康・美容効果に関しては、腸の健康をテーマにバナナ喫食による腸活体験を普及・啓発する「バナ活®」を、エシカル消費に関しては、フルーツロス削減を目的に規格外バナナを使った商品開発やバナナの量り売り販売を推進しています。
今後もドールならではの付加価値創造を通じて、笑顔あふれる暮らしとサステナブルな社会の実現を目指します。

(「極撰」ブランドにパイナップルが新登場)

(規格外フルーツを活用したDoleフルーツスマイルスタンド(2023年夏にITOCHU SDGs STUDIOにて開催)と新ブランドメッセージ「フルーツでスマイルを。」)

住生活カンパニー

道路インフラの維持補修事業の推進

当社は、2023年5月に国内有数の橋梁メーカーであるオリエンタル白石(株)と資本業務提携契約を締結し、同社の第三者割当増資を引受け、筆頭株主となりました。日本の道路インフラの老朽化が深刻な社会問題となる中、近年工事量が増えている高速道路リニューアル工事において、同社は国内トップクラスの橋梁補修受注件数を誇ります。
当社は、同社との資本業務提携を足掛かりに、社会課題である道路インフラの維持補修需要を当社グループとしてワンストップで受けられる体制の構築を図るとともに、今後は特に橋梁の維持メンテナンス需要の増加が見込まれる地方自治体との官民連携事業等の推進により、安心・安全な社会基盤の実現を目指します。

大建工業(株)の非公開化による収益力強化

当社は、2023年8月より関連会社であった大建工業(株)に対する公開買付を実施し、同年12月に非公開化を完了しました。同社は、国内外に主要11工場を有する木質内装建材メーカーで、木質ボード・床材事業では国内シェアNo.1を誇ります。
国内新築住宅市場が縮小傾向にある中、当社グループのリソースを最大限活用のうえ、大建工業(株)と一体での経営効率化等により、主力の国内戸建向け事業での業界No.1の地位を更に磐石のものとします。また、今後の注力市場である国内非戸建事業(商業、公共施設等)での事業領域の拡大や、当社の北米建材関連事業と共同での木質ボードの海外展開等により、同社の更なる収益力強化と持続的な企業価値向上を図ります。

(大建工業(株)製品の導入実例 地域産材の不燃天井を使用した千葉県山武合同庁舎)

情報・金融カンパニー

リテール保険事業の取組拡大

当社子会社で、来店型保険ショップ事業を展開するほけんの窓口グループ(株)(ほけんの窓口)は、全国約700の店舗網と、独自の社員教育システムに支えられたコンサルティングサービスを強みとする業界最大手です。同社は、保険会社による直接販売が主流であった生命保険流通市場の中で、『お客さまにとって「最優の会社」』を経営理念に掲げ、多数の保険の中から特定の保険会社・保険商品に偏ることなく、お客様と一緒に最適な商品を選ぶことに最も注力しており、高評価をいただいています。加えて、老後資金に対する不安や資産形成に関するご相談へ対応すべく、2024年1月より、NISAやiDeCoの取扱を始め、オンラインで専門的な相談ができるサービスを開始しました。
今後もほけんの窓口の経営理念に沿ったサービスを拡大し、更なる事業成長を目指します。

(40社以上、300商品以上からお客様に合った保険選びをお手伝い)

伊藤忠テクノソリューションズ(株)の非公開化による成長加速

当社は、2023年8月より伊藤忠テクノソリューションズ(株)(CTC社)に対する公開買付を実施し、同年12月に非公開化を完了しました。IT市場は拡大する企業のデジタル化ニーズに応えるべく環境・構造変化が急速に進んでおり、非公開化によりCTC社と一体となることで、当社のネットワークや投資ノウハウ等の経営資源を最大限活用した資本業務提携やM&Aを通じた成長戦略を機動的に実行できる体制としました。現在、顧客企業のIT・デジタル活用支援に必要となるコンサルティングや、データ分析・活用の機能を強みとする企業群との資本業務提携を進めています。資本業務提携先のコンサルティング事業者の持つ顧客課題整理力を活用することで、課題の解きほぐしが重要となるシステム開発の上流工程を含む案件の獲得数が拡大する等、既にCTC社の利益成長の加速を示す結果が表れてきています。
今後は、以上に加えシステム開発リソースの拡充等の施策を更に強化することで、CTC社の企業価値最大化を目指します。

第8カンパニー

広告配信事業におけるドン・キホーテとの提携

当社は、2023年4月にドン・キホーテ等を展開する(株)パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH社)とリテールメディア事業での協業を開始しました。(株)ファミリーマート及びデジタル広告配信事業を展開する(株)データ・ワンが有する約2,900万人の会員データとPPIH社の会員データを連携し、国内最大級となる3,000万人超まで広告配信ユーザー数を拡充しました。加えて、PPIH社が持つ10万アイテムもの幅広い商品カテゴリーで購買行動を分析、お客様の興味・関心に対する理解度を高めることで、より一層個人のニーズに沿った広告・クーポンの配信を行うとともに、広告主にとっても更に効果的な広告配信を実現するものです。
今後もPPIH社との提携を核として小売事業者等と更なる提携を推進し、広告配信ユーザー数という「量」と、顧客理解を深めるための購買データの「幅」を拡充し、リテールメディア業界のトップランナーとして展開を拡大していきます。

ファミリーマート店舗へのデジタルサイネージの設置拡大

(株)ファミリーマート及びメディア事業を展開する(株)ゲート・ワンは、2024年3月までに全国47都道府県のファミリーマート約1万店舗に、広告だけでなく、ニュースやクイズ、ミュージックビデオ、お笑い等の様々なコンテンツを配信するデジタルサイネージ(FamilyMartVision)の設置を完了しました。1週間で約6,400万人が閲覧する国内最大規模のリテールメディアであり、独自コンテンツを目的とした来店につながる等、ファミリーマート店舗が情報発信の拠点となっています。
現在配信している「都道府県別」のコンテンツに加え、今後は、オフィス街や学校周辺等の店舗に絞った「立地別」、特定の属性のお客様が来店される比率の高い店舗に絞った「ターゲット別」のコンテンツ・広告配信等、広告主の様々なニーズにも対応していきます。また、設置可能なファミリーマート全店へのサイネージ設置を目指しており、来店されるお客様へ今までにない店舗体験を提供していきます。

(全国のファミリーマート約1万店舗にデジタルサイネージを設置完了)

対処すべき課題

来期の見通し

来期の世界経済を展望しますと、米国や欧州ではこれまでの金融引締めの効果が当面の景気を下押しするものの、物価の騰勢が落着けば利下げに転じると見込まれ、その後の景気は次第に持直していく見通しです。中国では、欧米景気の持直しに伴う輸出の復調が期待されるものの、不動産市場の低迷が内需を抑制し、力強さを欠いた経済状況が続くと予想されます。日本経済は、賃金上昇ペースの加速やインフレ率の低下により個人消費の回復力が強まる他、好調な企業業績等を背景とした設備投資の拡大、輸出の復調も期待できるもとで、景気の回復傾向が続く見込みです。ドル・円相場は、日本の長期金利の緩やかな上昇が続くもとで、一段の円安余地は限られる見通しです。原油価格(WTIベース/1バレルあたり)は、主要産油国の供給抑制が続く中で、期初の83ドル近辺で底堅く推移すると予想されます。
なお、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の一段の緊迫化、米国や欧州での利下げ転換の遅れ等から、世界経済が下振れする可能性については注視する必要があります。

経営方針「The Brand-new Deal ~利は川下にあり~」

昨今の激変する世界情勢に鑑み、為替や資源価格等をはじめとした経営環境に大きく左右されうる3ヵ年の計画を前例に従い策定するのではなく、ステークホルダーの皆様に、より有用な情報をお伝えするため、不確実なこの時代において、当社が長期にわたって羅針盤とすべき「経営方針」を定め、かつ目の前の1年間しっかりと自信を持って約束できる利益計画・財務関連指標や株主還元を、併せて公表しました。これまで当社の成長を支えてきた基本的な考え方や経営手法を踏襲する意味を込め、タイトルを「The Brand-new Deal」としています。全社員が「利は川下にあり」の考えに基づいてマーケティング力を磨き、世の中のニーズの変化を先取りするとともに、祖業である川下分野から川上・川中まで幅広い分野で培った資産・ノウハウを活用し、成長投資を加速させることで事業領域を拡大してまいります。投資を通じた着実な収益成長に加え、企業ブランド価値の向上、株主還元拡大の3本柱で、企業価値の持続的な向上を目指します。

<投資なくして成長なし>

「業績の向上」に向け、安定した事業基盤を活用した川下起点の投資を加速、事業領域の拡大及び事業基盤の強化・拡充により更なる成長を目指します。以下を実現することで、より消費者に近い川下ビジネスを開拓・進化させていきます。

  • ・ディビジョンカンパニー間の横連携によるシナジー極大化
  • ・事業の掛け合わせによるビジネス変革・創出

<企業ブランド価値の向上>

積重ねてきた先進的な取組により、外部からの高い評価を通じて「企業ブランド」を築き上げ、財務面の成長との相乗効果を生み、企業価値を向上。「マーケットインの発想」のもと、市場・社会・生活者の声に耳を傾け地道な定性面の磨きを継続し、以下の主要施策を通じて、ブランド価値の更なる向上を目指します。

  • ・人的資本の強化
  • ・ステークホルダーとの対話強化
  • ・SDGsへの貢献・取組強化
株主還元方針

2024年度の1株当たり配当金は、当社史上最高を更新する200円または配当性向30%のいずれか高い方とします。
自己株式取得についても、市場環境・キャッシュアロケーションの状況を踏まえ、総還元性向50%(約1,500億円の自己株式取得)を目途に、機動的・継続的に実行してまいります。

株主の皆様におかれましては、今後とも一層のご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。

連結計算書類