事業報告(2019年4月1日から2020年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当連結会計年度における日本経済は、雇用環境の改善は続いていたものの、世界的な景気減速の影響を受け、製造および設備投資は減速しました。世界経済は、米国の堅調な企業業績がけん引していたものの、米中貿易摩擦の長期化等により中国の景気が減速する中、第4四半期には新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、急速に悪化が進んでおります。

このような状況の下、当連結会計年度の業績は、国内販売は4,023億9千万円(前連結会計年度比2.5%減)、海外販売は3,971億6千万円(同0.5%増)となった結果、売上高は7,995億5千万円(同1.0%減)となりました。

利益面につきまして、売上総利益は減収に伴い、1,049億円(同0.5%減)、営業利益は191億6千万円(同24.0%減)となりました。経常利益は190億8千万円(同28.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は151億4千万円(同24.8%減)となりました。

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セグメント別の概況

機能素材

売上高 1,693 億円
前期比 5.7 %減
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機能素材につきましては、国内・海外ともに売上は減少しました。

機能化学品事業は、国内外における自動車生産台数の減少により、塗料原料およびウレタン原料の売上が減少したことから、事業全体として売上は減少しました。

スペシャリティケミカル事業は、国内外における半導体関連等の電子業界向けを中心としたエレクトロニクスケミカルの売上や、加工油剤原料の売上が減少したことから、事業全体として売上は減少しました。

この結果、売上高は1,693億1千万円と前連結会計年度に比べ、103億円(5.7%減)の減収となりました。営業利益は53億6千万円と前連結会計年度に比べ、1億3千万円(2.4%減)の減益となりました。

加工材料

売上高 2,670 億円
前期比 3.0 %減
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加工材料につきましては、国内での売上は微減となり、海外での売上は減少しました。

カラー&プロセシング事業は、国内での工業用および包装材料用の合成樹脂や導電材料の売上が減少したものの、国内・海外における情報印刷関連材料の売上が増加したことから、事業全体として売上は増加しました。

OA・ゲーム機器業界への合成樹脂の販売を中心とするポリマーグローバルアカウント事業は、国内、グレーターチャイナおよびアセアンにおいて売上が減少したことから、事業全体として売上は減少しました。

この結果、売上高は2,670億7千万円と前連結会計年度に比べ、81億2千万円(3.0%減)の減収となりました。一方、営業利益は、国内の製造子会社の収益性の改善等により、85億2千万円と前連結会計年度に比べ、4億3千万円(5.3%増)の増益となりました。

電子

売上高 1,151 億円
前期比 5.9 %減
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電子につきましては、フォトリソ材料関連、モバイル機器用電子部品向け・半導体業界向け等の変性エポキシ樹脂関連の売上が増加したものの、半導体中間工程用等の精密加工関連、装置関連、ディスプレイ関連部材の売上が減少したことから、事業全体として売上は減少しました。

この結果、売上高は1,151億2千万円と前連結会計年度に比べ、71億9千万円(5.9%減)の減収となりました。また、営業利益は一部の海外製造子会社の収益性の悪化等により、53億9千万円と前連結会計年度に比べ、20億円(27.1%減)の減益となりました。

モビリティ・エネルギー

売上高 1,260 億円
前期比 9.5 %減
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モビリティソリューションズ事業は、国内でのカーエレクトロニクス関連部材の売上が微減となり、国内・海外での樹脂ビジネスの売上が減少したことから、国内・海外ともに売上は減少しました。

この結果、売上高は1,260億円と前連結会計年度に比べ、132億3千万円(9.5%減)の減収となりました。営業利益は18億9千万円と前連結会計年度に比べ、11億6千万円(38.1%減)の減益となりました。

(注)当連結会計年度より、従来の「自動車・エネルギーセグメント」から「モビリティ・エネルギーセグメント」に名称を変更しております。

生活関連

売上高 1,215 億円
前期比 33.9 %増
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生活関連につきましては、国内での売上は微減となったものの、海外での売上は大幅に増加したことから、全体として売上は大幅に増加しました。

ライフ&ヘルスケア製品事業は、食品素材分野において、トレハ®等の売上は国内では微減となったものの、海外では増加しました。また、第2四半期連結会計期間において新たに買収したPrinovaグループの売上が加わったことから、海外での売上は大幅に増加しました。スキンケア・トイレタリー分野では、AA2G®の国内での売上は減少しましたが、海外においては主に欧州での販売が好調であったことから売上は増加しました。医療・医薬分野では、製剤事業の売上は減少したものの、医薬品原料・中間体、医用材料の売上は増加したことから、事業全体として売上は増加しました。

化粧品・健康食品の販売を行うビューティケァ製品事業は、全般的に販売が低調であったことから、事業全体として売上は減少しました。

この結果、売上高は1,215億4千万円と前連結会計年度に比べ、307億5千万円(33.9%増)の増収となりました。一方、Prinovaグループの当期における利益貢献は企業結合に係る一過性の費用の発生等により限定的となりました。さらに一部の国内製造子会社の収益性が悪化した結果、営業利益は39億7千万円と前連結会計年度に比べ、6億7千万円(14.5%減)の減益となりました。

その他

特記すべき事項はありません。

対処すべき課題

※新型コロナウイルス感染症の影響および当社グループの考え方

当社グループは、新型コロナウイルス感染症の拡大収束後に予想される顧客・市場・社会の変化に対応し、新たな提供価値を創出することを重要な課題と認識しております。

新型コロナウイルス感染症がサプライチェーン、グローバリゼーションに与える影響に鑑み、当社グループとして、ビジネスモデルの見直しが求められます。例えば、デジタルトランスフォーメーション(注)(以下、DX)の推進においては先端技術の採用などにより、外部環境の変化に対応した経営戦略を推進してまいります。

なお、当社グループの基本理念、ビジョン、長期経営方針に変更はありません。2020年度に最終年度となる中期経営計画「ACE-2020」(以下、「ACE-2020」)については、計画にある各施策の遂行を基本としますが、新型コロナウイルス感染症による影響を分析し、適宜、新たな施策を講じてまいります。

(注)デジタル技術とデータを活用して、顧客や社会のニーズに対応するため、製品やサービス、ビジネスモデル、業務プロセス、組織、企業風土などを変革し、競争優位性を確立すること。

当社は、2032年までを対象とする「長期経営方針」および2016年度~2020年度の5ヶ年を対象とする「ACE-2020」に掲げる事項を対処すべき課題と捉えております。

基本理念

当社は、グループの共通の価値観として、以下の経営理念、ビジョン、NAGASEウェイを掲げております。

長期経営方針

当社グループは、創業200年の節目を迎える2032年度に向かい、「現行比3倍の利益水準の常態化」を目指して、「成長に向けたチャレンジ」と「成長を支える経営基盤の強化」を骨子とした長期経営方針を2014年度に策定しております。

「成長に向けたチャレンジ」においては、注力領域への経営資源の投下と、従来からのビジネスモデルに依存する体質からの脱却を通じ、これまでの事業の延長だけではなし得ない飛躍的な成長を目指します。「成長を支える経営基盤の強化」は、「成長に向けたチャレンジ」を成功に導くために、事業の拡大とグローバル化に寄与する経営基盤を構築してまいります。

中期経営計画「ACE-2020」について

長期経営方針の目標実現のために、2016年度からの17年間を3つのStageに分け、2016年度から2020年度までの5ヶ年をStage1:「変革期」と位置付け、「ACE-2020」をスタートしました。

ACE-2020」の“ACE”は、Accountability(主体性)、Commitment(必達)、Efficiency(効率性)を表しています。

ACE-2020」では、商社中心の考え方から、商社をグループ機能のひとつと考え、製造、研究、海外ネットワーク、物流、投資の各機能を最大限活用し、グループ一丸となって世界へ新たな価値を創造し、提供することを目指しております。

ACE-2020」の定量目標および推移は下表のとおりです。

ACE-2020」の骨子と施策

ACE-2020」では、「収益構造の変革」と「企業風土の変革」の2つの変革を実行しております。

① 収益構造の変革

重点施策①-1:「ポートフォリオの最適化」

ACE-2020」では、経営資源の最大効率化を進めるために、成長性、収益性、事業規模を観点に、事業を「注力領域」、「育成領域」、「基盤領域」、「改善領域」の4つの領域に仕分けを行い、各領域にあった戦略実行により、事業拡大を図っております。

当期は、「注力領域」であるライフ&ヘルスケアにおいて、米国のPrinova Group, LLC(以下、Prinova社)を子会社化しました。Prinova社は、北米・欧州を中心に食品素材販売、配合品製造および最終製品の受託製造までを手掛けるバリューチェーンの垂直統合型事業を展開しており、NAGASEグループの既存事業とのシナジー創出により成長を図ってまいります。また、(株)林原の海外ビジネスの拡大を図るべく中国(厦門)にアプリケーション開発ラボ「長瀬食品素材 食品開発中心(厦門)」を設立しました。なお、食品素材・食品添加物・機能性素材分野の強化を目的に、2020年4月1日にフード イングリディエンツ事業部を新設しました。

同じく「注力領域」であるエレクトロニクスにおいては、成長が見込まれる次世代情報通信市場(5G市場)に経営資源を投入しました。NAGASEグループが持つ要素技術とネットワークの有効活用が可能となる高機能素材および高速通信世代に要求される技術ソリューションにおいて、次年度以降につながる基盤を構築しました。

「育成領域」では、2016年度よりIBM社と共同で開発しているマテリアルズ・インフォマティクス(注)1(以下、MI)のプロジェクトは順調に進んでおり、次年度、NAGASEグループ内外に対して、サービス開始を見込んでおります。また、デジタルマーケティングのプラットフォーム(注)2開発のため、専門性の高い人的資源を確保し、米国(フィラデルフィア)に拠点を開設しました。なお、MIプロジェクトやデジタルマーケティングの展開を含むNAGASEグループのDX推進を目的に、2020年4月1日にグローバルマーケティング室を設置しました。

ナガセR&Dセンターでは、従前より取り組んできた希少アミノ酸「エルゴチオネイン」の研究が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2019年度課題設定型産業技術開発費助成事業に採択されました。エルゴチオネインの生産において、化学合成から環境配慮型バイオプロセス確立への研究を進めております。

「基盤領域」では、中国における環境規制の強化および貿易摩擦による供給不安を解消することを目的にリスクケミカルの調査・分析を行い、バリューチェーン上で情報を共有しました。また、国内外における合成樹脂の販売は、減速する市場においても、高機能樹脂を中心に前年水準の販売量を維持し、「基盤領域」における商社機能を果たしました。

また、(株)アイエンスを関連会社化し、排水・循環水・排ガス処理事業のグローバル展開を図ってまいります。上下水の水質向上は持続可能な社会を実現するためのグローバルな課題のひとつであり、今後も、「基盤領域」のネットワークを活用して環境貢献事業への展開を進めてまいります。

「改善領域」では、一部の不採算事業の撤退を決定しました。

(注)

  • データと人工知能を用いて新規材料や代替材料の探索などを効率よく行う情報科学の手法。
  • 顧客の閲覧・購入履歴のデータを活用し、人工知能などを用いたデータ解析を行うことによる効率的なマーケティング手法とその仕組み。

重点施策①-2:「収益基盤の拡大・強化」

ACE-2020」では、商社業・製造業それぞれが独自の重要業績評価指標(KPI)設定と施策実行により、各機能を向上させるとともに、それぞれの機能を活用した新たな事業の創造を目指しております。

商社業は、海外の売上規模の拡大によりグローバル展開のさらなる加速を目指し、製造業は、将来の注力事業の育成とコストダウンによる経営の安定化(損益分岐点の改善)を進めております。

当期は、注力エリアである米州において、高付加価値事業の創出等を目的に、樹脂等の分野における革新的な技術プラットフォームおよび優れた製品開発能力を有する米国のINTERFACIAL CONSULTANTS社を子会社化しました。

製造業においては、前期より継続しておりましたグループ製造責任者会議を発展させ、グループ製造連携委員会を発足しました。同委員会は、NAGASEグループとしての標準的な製造管理体制を構築し、安全・品質・環境対応などの非財務項目の改善活動を促進してまいります。

② 企業風土の変革

重点施策②-1:「マインドセットの徹底」

ACE-2020」では、「主体性・責任感・危機意識の醸成」、「トップメッセージの共有化」、「モニタリングとPDCAの徹底」を進め、グループ一丸となって主体的に行動を起こす仕組みづくりに取組んでおります。

当期は、「モニタリングとPDCAの徹底」として、注力および育成領域における新規施策の収益貢献が想定に届かず、各施策の蓋然性評価および課題抽出を実施しました。

重点施策②-2:「経営基盤の強化」

ACE-2020」では、「効率性の追求」を進め、連結の売上高販管費率の0.5%改善を目指しております。また、「人財育成」を進め、競争力向上と持続的発展を可能にする人財を育成しております。

当期は、「効率性の追求」として、コーポレート機能の強化および間接業務(取引リスクマネジメントとオペレーション)の生産性向上を目的に、組織と機能の集約化を進めました。次年度より、長瀬ビジネスエキスパート(株)は、グループ全体の取引リスクマネジメントの高度化と効率性の向上を担うことになりました。

「人財育成」においては、多様な人財の活用を方針として、労働年齢に対応する人事制度の変更、グローバルのリーダー候補の可視化、リーダー人財の育成計画などの仕組みづくりを行いました。

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連結計算書類