事業報告(2019年4月1日から2020年3月31日まで)

伊藤忠エネクスグループの現況に関する事項

事業の経過及びその成果

当連結会計年度(2019年4月1日から2020年3月31日)における日本経済は、緩やかな回復基調で推移したものの、海外経済の不確実性や中東地域における地政学的リスクなど、先行き不透明な状況が続きました。さらに、年明けには全世界で新型コロナウイルスが感染拡大し、国内外の景気の停滞感が急速に強まっております。

また、国内エネルギー業界は、石油元売の統合、電力・ガスの小売全面自由化による異業種からの参入、業界の垣根を超えた連携、気候変動への世界的な環境意識の高まり等、取り巻く状況は大きく変化しております。

このような環境のもと、当社グループは、2019年4月に2ヵ年の中期経営計画『Moving2020 翔ける』を公表し、以下基本方針に基づき、事業を推進してまいりました。

~成長戦略の推進~

①収益基盤の維持・深化

②海外・周辺分野の開拓

③新規事業の創出

~組織基盤の進化~

①グループ経営の強化

②成長を支える人材戦略

③イノベーションの推進

※定量計画につきましては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を考慮し、2020年5月15日に見直しを行っています。詳細につきましてはP16をご覧下さい。

このような活動の結果、当社株主に帰属する当期純利益が過去最高益となり、5期連続の過去最高益更新となりました。

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事業区分別の概況

ホームライフ事業

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主な取扱商品・サービス

LPガス、灯油、都市ガス(大分県中津市・関東)、産業用ガス、電力、生活関連機器、スマートエネルギー機器、リフォーム、家庭用リチウムイオン蓄電システム、ガス容器耐圧検査サービス、溶接用資材

当期の概況

LPガス販売事業では、四国エリアに伊藤忠エネクスホームライフ四国(株)を新設し、全国8つのエリアで独自の販売戦略を進め、当期末でのLPガス直売顧客軒数は551千軒となりました。家庭向け電力販売事業では、顧客基盤の拡大を推進し、当期末での顧客軒数が98千軒となりました。産業ガス事業では、電子部品輸出減少等が影響し販売数量は前期比減となりましたが、事業拡大を目的に、産業ガス販売事業のグループ再編を行うことで経営資源を積極的に活用できる体制整備を行いました。損益面では、暖冬に伴う販売数量減やLPガス輸入価格下落に伴う在庫影響により前期を下回りました。

対処すべき課題

LPガス販売事業においては、お客さまとの関係を太く強固にしていくために、お客さま目線でのサービスや商品を提供していく「ファーストワンマイルを極める」という考えを基本として、以前より進めてきた顧客ベネフィット施策の拡充に注力し、更なる顧客基盤の拡大を推進していきます。

また2019年7月に再編を行った産業ガス事業においては、上流から下流における商流機能の強化として、物流機能の強化、グループネットワークの活用による顧客基盤の拡大等、事業領域の深化、変革に努めてまいります。

海外事業においては、新たに開設したタイの駐在員事務所から、近隣各国をリサーチし、フィリピンでのLPガス販売事業に次ぐ今後の収益の柱を模索してまいります。

カーライフ事業

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主な取扱商品・サービス

ガソリン、灯油、軽油、電力、自動車、レンタカー、生活・車関連商品サービス、石油製品輸出入、ターミナルタンク賃貸

当期の概況

当期10月より、カーライフ部門としてCS関連事業と自動車関連事業を中心に新たにスタートいたしました。石油製品の販売数量は国内製品需要の減少傾向に加え、記録的な暖冬により前期を下回る結果となりました。一方で業界再編の影響によりCS小売市況は堅調に推移しました。また、経営の効率化、顧客基盤の更なる拡大を目的に、当社グループ会社のエネクスフリート(株)とエネクス石油販売東日本(株)を経営統合しました。当社グループ会社であり、日産自動車系列のディーラー事業を行っている大阪カーライフグループ(株)の自動車販売台数は、消費増税等の影響により前期を下回る結果となりました。以上により、損益面では前期を下回りました。

対処すべき課題

CS関連事業においては国内の石油製品需要が構造的に減退する中で、新たな価値・サービスを提供することでネットワークの維持を目指していきます。まずは2020年度より個人向けカーリースの提供を開始します。また防災対策など地域貢献も積極的に行ってまいります。自動車関連事業においては、これまでCS関連事業において培ってきた顧客基盤や販売ノウハウ等の経営資源を活用することで、大阪カーライフグループ(株)を中心に更なる販売強化を図ってまいります。また、ベトナムの大型商業施設でのカーライフ事業(洗車等)を展開予定です。国内で培った知見を活かし、海外での新たな基盤構築を目指します。

※カーライフ・ステーションの略で、当社が提案する複合サービス給油所。

産業ビジネス事業

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主な取扱商品・サービス

ガソリン、灯油、軽油、重油、LPガス、AdBlue、GTL燃料、法人向け給油カード、アスファルト、船舶用燃料、石炭灰リサイクル、スロップ回収・リサイクル

当期の概況

国内の石油製品需要の減少により、産業燃料の販売量は前期を下回る結果となりましたが、アスファルト・船舶燃料・自動車用燃料給油カード事業では新規顧客の獲得等により、販売収益は前期を上回りました。これらにより、損益面も前期を上回りました。また環境ビジネス部を新設し、環境負荷低減に向けた事業として、車両の排気ガスを浄化するAdBlue※1や天然ガスを原料とするGTL燃料※2の販売を進め、GTL燃料は国土交通省NETISに登録されました。更に、リサイクル事業として、船舶から回収した廃油のリサイクル、当社の火力発電所から排出される石炭灰を再利用して販売するフライアッシュ事業などにも注力してまいりました。

対処すべき課題

産業燃料販売においては顧客基盤の維持、拡大の為、熱供給等新たなサービスの展開を図ります。その他事業においては、アスファルトや船舶燃料の販売、ターミナルなどの物流設備の有効活用により、地域の産業を支えていきます。また、環境関連商材としてGTL燃料やAdBlue等の販売拡大、新たな事業領域への進出を積極的に進め、環境負荷低減、リサイクル等の環境事業の拡大も図ってまいります。

※1 アドブルー。ディーゼル車の排気ガスを分解して無害化する際に使われる世界標準の高品位尿素水。

※2 Gas to Liquidsの略称。天然ガス由来の製品で、環境負荷の少ない、クリーンな軽油代替燃料。

電力・ユーティリティ事業

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主な取扱商品・サービス

電力(石炭火力発電所、天然ガス火力発電所、風力発電所、水力発電所、太陽光発電所)、蒸気、地域熱供給サービス、総合エネルギーサービス、電熱供給サービス、電力需給管理サービス、アセットマネジメント事業

当期の概況

電力販売分野では、家庭向けを中心とした低圧電力販売量は増加しましたが、法人向け大規模高圧契約の減少により小売電力販売量は前期を下回りました。2020年2月には九州電力(株)との電力小売事業の提携を決定し、更なる魅力的なサービス提供を検討しています。

熱供給分野では夏場の気温が前期に比べ低く推移したことにより、熱需要、損益ともに前期を下回りましたが、今後の新たな収益基盤として、横浜市新市庁舎を含む、横浜市北仲通南地区が新規熱供給地区に加わりました。

発電分野では原材料調達価格の下落により、損益面では前期を上回りました。

以上により、損益面においては、電力事業における一定の利幅確保が奏功し、前期を上回りました。

対処すべき課題

電力小売り全面自由化から5年目を迎え、電力小売の競争は益々激しくなってきました。新電力の淘汰が進む中、デジタル新技術の採用と顧客基盤の活用により、家庭用・低圧需要家向け電力販売事業を推進してまいります。

また、ESG投資・環境問題が重視される中、地球環境への貢献と持続可能な社会の実現を目指すために、開発投資した再生可能エネルギー発電設備等を安定的にエネクス・インフラ投資法人に供給することを通じて、再生可能エネルギーの普及・拡大を推進してまいります。

直前3事業年度の財産及び損益の状況

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連結計算書類