事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当連結会計年度において、我が国は引き続き新型コロナウイルス感染症により、大きな制約に直面いたしました。度重なる変異株の感染拡大とその収束を経て、経済・社会活動の正常化にむけた動きが随所に見え始めた矢先、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、再度、世界を取り巻く経済状況は大きく不透明感を増しております。

コロナが後押しした急速なデジタル化の流れや、ブロックチェーン、メタバースの仮想空間技術、NFT(Non Fungible Token、非代替性トークン)、スマートコントラクト、Web3.0といった革新的に進化を続けるテクノロジーは、従来型の中央監視型社会システムの限界を白日の下に晒しました。今後、取引における仲介者の役割は低下し、商取引は限りなく当事者同士のP2P(ピアツーピア)に近づいていくことが想定されます。このように大きく変化する経営環境の中で、バックキャスティングによる事業の再定義は、あらゆる業界において、持続的成長の前提となっております。当社は、テクノロジーの進歩と脱炭素の潮流を経営に取り込み、「ガスや電気の小売」という従来のエネルギー事業の枠組みを刷新することが不可欠と考え、デジタルを軸にエネルギー最適利用の仕組みをワンストップで提供する「エネルギーソリューション企業」へとビジネスモデルを進化させてまいります。

当社は「エネルギーソリューション」をお客さまに提供することで、これまで築き上げたDX基盤をベースに、「コミュニティーと一体となった、災害に強く、エネルギーや暮らしに優しいスマートシティ」の実現を目指します。第一段階として、将来の企業価値成長のベースとなるファミリー層を中心に、電気とガスのセット販売を拡大していきます。第二段階では、分散型エネルギー源設備(DER:太陽光発電設備、蓄電池としてのEVやハイブリッド給湯器等)をお客さまに提供してスマートハウス化を推進し、各家庭におけるエネルギーの最適利用を実現させます。第三段階では家庭という境界線を超え、コミュニティー全体を配電ネットワークで繋ぎます。そして、メタバース(仮想空間)上の仮想発電所において、AIのディープラーニングのアルゴリズムがDERを制御することにより、コミュニティー全体のエネルギー利用を最適化させ、スマートシティの実現を目指します。このニチガス版スマートシティに向けた第一歩として、2022年2月、電気とガスの新セットプラン「でガ割007」の販売を開始いたしました。「でガ割007」は、CO2排出量実質ゼロを実現した新メニューです。そして、EVユーザーの夜間蓄電ニーズを意識し、深夜0時から朝7時までのご利用に対して特にメリットがあるよう設計しました。スマートシティに向けた「ガスと電気のハイブリッド化」を大きく前進させる商品として、「でガ割007」の販売を強化してまいります。

お客さまのエネルギー利用最適化に事業領域を進化させる戦略は、70年にわたり訴求し続けたエネルギー事業の高質化、顧客最優先の企業理念が礎となるものです。また、エネルギーレジリエンスや環境問題が喫緊の課題となる中で、社会の在るべき姿を想定し、オープンなエネルギープラットフォームによる事業者間の共創連携基盤を実現し、取り組むべきリスクと向き合う事を意味いたします。

複雑化する社会課題に対して、エネルギーの最適利用という新たなソリューションを提供し、社会に必要とされる会社であることは、持続的な企業価値創出の前提です。当社は、経済性と社会性を両立させながらESGに取り組み、中長期的な企業価値の向上を目指すというサステナビリティの方針を掲げております。この方針の下、投下資本利益率(ROIC)を強く意識して、効率性の高い資産にバランスシートを組み替え、株主様にとっての投資利回りであるROEを高めております。また、オープンイノベーションによるデジタル化やパートナーシップによる共創により、CO2排出量削減や働き方改革といった新たな社会課題の解決を図り、株主資本コストを上回る株主パフォーマンス(ROE)を追求し、株主価値の創造に努めております。

当社はこのような戦略を踏まえた上で、LPガスと電気をコア事業として位置づけ、資産の収益性を高めながら経営資源を投入しております。非対面でのバーチャル営業、完全無人デジタル営業所の展開等、営業活動でもお客さまのニーズを反映し、新たなテクノロジーを活用した次世代のコミュニケーションを推進しております。電気事業は、将来の分散型電源戦略に向かいながら、ガスとセットでファミリー層を中心に、収益も伴った形で顧客基盤を拡大させております。電力需要は、車両のEV化や社会のデジタル化の進展に伴い、今後急速に増大していくことが予測されます。鍵となる電源の調達も東京電力グループとのパートナーシップで適切に対応してまいります。

電気事業とガス事業とのシナジーの訴求はもちろんのこと、異業種とのシェアリングエコノミーを構築していくことは高度に変化し続ける地域社会のデジタル化、効率化、受益者ストレスの解消に資する大きな挑戦であります。お客さまへのラストワンマイルを支える当社は、このような環境やお客さまのニーズの変化と真摯に向き合う事で自らに変革を促し、常に変わり続け、更なる企業価値の創造に邁進してまいります。

当連結会計年度におきまして、売上高は1,625億52百万円(前期比13.3%増)、売上総利益は665億93百万円(同1.8%減)、営業利益は127億86百万円(同6.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は99億72百万円(同6.4%増)となりました。

前年度と比較して売上総利益および営業利益の減少した主な理由は、ガス原料の高騰とガス機器の品不足です。新型コロナウイルスの影響により停滞していた経済活動の再開によるエネルギー需要の高まりに加え、第4四半期にはロシアによるウクライナ侵攻に端を発する供給懸念により、ガスの原料価格は一年を通じ上昇基調が続きました。ガスの原料価格の上昇分については、LPガス・都市ガスともに、適切に販売価格へ転嫁しておりますが、都市ガスにつきましては、お客さまにご負担いただけるタイミングが来期以降となりますため(スライドタイムラグ)、売上総利益・営業利益が減少しております。一方、電気事業およびプラットフォーム事業は順調に顧客基盤を拡大し、利益の増加に貢献しております。「スペース蛍」や「夢の絆」、LPガスの「新配送システム」等も本格稼働し、DXの効果が経費削減という形で現れ始めました。キャッシュレス化を加速した戦略目的で保有していた株式の売却もあり、当期純利益段階においては過去最高益を更新する決算となりました。

業績サマリー

当連結会計年度のセグメント別の概況は次のとおりであります。

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事業区分別の概況

LPガス事業

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LPガス事業セグメントは、LPガス事業による売上高663億4百万円(前期比96億73百万円増)、売上総利益400億96百万円(同6億66百万円減)、附帯事業による売上高99億49百万円(同44億49百万円減)、売上総利益が32億89百万円(同2億95百万円減)となりました。

LPガス事業におきましては、原料価格上昇に伴い、今年度4月、10月、1月と3回の価格改定を実施し、適切に価格転嫁を行いました。営業につきましても、新型コロナウイルス感染拡大により営業活動が制限される中、自社社員の営業を強化することでお客さま数を前期末から2.9万件積み重ね、94.6万件といたしました。原料高は、同業他社にとっても厳しい環境であります。当年度は同業他社の訪問を強化し、商圏買収も含め、高効率・高品質なオペレーションをご利用いただく共創関係のご提案を積極的にすすめております。

LPガスセグメントの附帯事業の売上総利益が減少いたしましたのは、電子部品の供給懸念を原因としたガス機器の品不足による売上の減少が要因です。プラットフォーム事業は、新都市ガスプラットフォーム事業の他、アライアンス企業への保安、電気小売のプラットフォーム収益や、ガス器具のB to Bデジタルオーダーシステムである「タノミマスター」の収益等、各事業のサービス開始により売上総利益は前期と比較して2億円増大しております。

電気事業

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電気事業セグメントは、売上高275億93百万円(前期比94億22百万円増)、売上総利益27億90百万円(同11億82百万円増)となりました。

電気事業による売上総利益の増加は、既存のガス利用のお客さまを中心にセット販売で顧客を積み重ねていることによるものです。電気のセット率は前期末13.7%から当期末16.7%に上昇、お客さま数は前期末より5.5万件増加の27.9万件となりました。当事業の電源調達は、東京電力グループとの提携によって、日本卸電力取引所における価格高騰などの影響を受けずに、安定した電源調達を実現しています。そのため、お客さまへ電気を安定してお届けしながら、当社も安定した売上総利益の確保が可能となっております。

また、2022年2月には、実質再生可能エネルギー100%の新料金プラン「でガ割007」を販売開始いたしました。EV や太陽光発電のご利用にマッチする「でガ割 007」は、当社が目指すビジョン「スマートシティ構想」の第一歩であり、LPガス・都市ガス部門が地域密着で築いてきたお客さまとの繋がりであるラストワンマイルを担う現場力を活かし、販売を強化してまいります。

都市ガス事業

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都市ガス事業セグメントは、都市ガス事業による売上高537億33百万円(前期比63億97百万円増)、売上総利益194億44百万円(同12億円減)、附帯事業による売上高49億70百万円(同19億81百万円減)、売上総利益が9億72百万円(同2億16百万円減)となりました。

都市ガス事業による売上総利益の減少は、原料価格の上昇基調を要因とした「スライドタイムラグ」のマイナス影響によるものであります。「スライドタイムラグ」とは、都市ガスの原料費調整制度によるもので、原料価格の変動が、先に売上原価に、後に遅れて売価(料金)に反映されることから、発生するタイムラグのことで、当期間は原料価格が上昇基調であったことから、スライドタイムラグで大きくマイナスの影響を受けております。

都市ガスセグメントの附帯事業の売上総利益が減少いたしましたのは、LPガス機器同様、ガス機器の品不足による売上の減少が要因です。

連結計算書類