事業報告(2020年3月1日から2021年2月28日まで)

1. 企業集団の事業の概要

当社ならびに連結子会社287社の連結営業収益は8兆6,039億円、営業利益1,505億円、経常利益1,388億円、親会社株主に帰属する当期純損失は710億円となりました。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、毎日の暮らしを根本から変えるとともに、経済活動の制限や停滞をもたらし、当社を取り巻く経営環境は、大変厳しいものになりました。

このような環境のなか、当社は、暮らしを支えるライフラインとしての使命を果たすべく、危機的な変化をチャンスとして捉え、感染症対策と事業継続の両立に注力しました。国内外で緊急事態宣言等の行動規制が敷かれた第1四半期で特に大きな影響を受けましたが、コロナ下での変化や新たに生まれた需要の取り組みに継続して取り組み、生活必需品を扱うSM(スーパーマーケット)事業、ヘルス&ウエルネス事業が好調に推移しました。

【新型コロナウイルスへの対応】

安全・安心なお買物環境や職場環境を実現すべく、科学的な根拠に基づいた防疫の取り組み基準を示した「イオン新型コロナウイルス防疫プロトコル」を2020年6月に制定しました。また、オンラインショッピングの広がりに対応しネットスーパーの配達能力拡大や受取方法の多様化を進めました。さらにデジタルを活用した非接触・非対面ニーズに対応した窓口の設置、スマートフォンによる決済やキャッシュレス化の推進、新しい生活様式に対応した売場展開を進めるなど、コロナ下で急増する需要の取り込みやサービスの充実に注力しました。

【グループ構造改革】

当期は、新たな成長に向けたグループ構造改革を加速すべく、2020年3月、北海道でイオン北海道株式会社とマックスバリュ北海道株式会社、東北地域ではマックスバリュ東北株式会社とイオンリテール株式会社東北カンパニーの食品事業等が経営統合しました。近畿地域では株式会社ダイエーと株式会社光洋、2020年9月には九州地域でイオン九州株式会社、マックスバリュ九州株式会社、イオンストア九州株式会社が経営統合しました。これにより前期のマックスバリュ西日本株式会社による株式会社マルナカおよび株式会社山陽マルナカの経営統合、マックスバリュ東海株式会社によるマックスバリュ中部株式会社との経営統合と合わせ、全ての地域で再編が完了しました。各地域の統合会社は、ローカル志向、低価格志向、健康志向等の食の多様化やさらなる安全・安心意識の高まり、Eコマースやコンビニエンスストア等との食の市場を巡る競争等に対応し、最も地域に貢献する企業を目指してまいります。

また、2021年3月、ディスカウントストア事業を担う株式会社ビッグ・エーとアコレ株式会社を経営統合しました。新型コロナウイルスの感染拡大による新しい生活様式の常態化と働き方の変化、節約志向の高まりを見据え、首都圏における同事業のドミナンスを加速し、新たな成長戦略を築くことを目的としています。さらに当期は、株式会社ツヴァイ、株式会社イオンフォレストの全株式を売却、タルボットジャパン株式会社およびクレアーズ日本株式会社が運営する事業を終了するなどグループ企業の戦略的整理・統廃合を推進しました。

■連結営業成績および財産の状況の推移
■事業の種類別セグメントの状況

(1)各事業の成果

小売・サービス

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・GMS事業では、イオンリテール株式会社が、コロナ下で需要が急増したネットスーパーにおいて、専用カウンターやロッカー、駐車場での受け取り等、店舗で受け取れるサービスを約200店舗に拡大し、受け取り方法の多様化を進めました。また、感染症拡大の影響による生活防衛意識の拡大に応え、生活必需品をお求めやすい価格で提供することに努めました。今年開催5年目となったブラックフライデーセールは、密を避け10日間に延長するとともにご予約販売会とECセールを先行して実施するなど消費喚起や需要拡大に資する取り組みに注力しました。加えて、経費コントロールや在庫削減等の経営効率の改善への取り組みを強化しました。

・‌SM事業は、コロナ下における内食需要等の高まりに対応し、売上は好調に推移しました。昨年度に地域再編が完了したマックスバリュ東海株式会社では、経営統合による規模の拡大を活かした販促企画の実施、地産地消など地域密着経営の更なる推進を図りました。また、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスグループでは、店舗における感染防止対策を徹底し、会計の際にレジに並ぶことなく、ご自身のスマートフォンで、スムーズにお買物が可能となる決済「Scan&Go Ignica」の拡大、フルセルフレジ・セミセルフレジの導入や生産性向上に取り組み、本部と店舗の人員配置の見直し等を進めました。

・ヘルス&ウエルネス事業では、ウエルシアホールディングス株式会社および同社連結子会社が、外出自粛やテレワーク等による化粧品需要の減少等の影響を受けましたが、感染症予防対策商品や食品等の需要増により物販の売上は好調に推移しました。調剤についても、薬価改定の影響に加えて、受診抑制による処方箋枚数の減少、長期処方の増加による処方箋単価の上昇等の影響もありましたが、調剤併設数の増加などのウエルシアモデルの推進により、既存店が好調に推移いたしました。

・サービス・専門店事業では、イオンディライト株式会社が、日本、中国、アセアンを跨いだ新型コロナウイルス対策本部をいち早く立ち上げ、グループの各店舗に向けて、業務用マスク、アルコール、アクリルパーティションといった衛生資材を継続的に提供するとともに防疫対策を組み込んだ「ニュースタンダード(新基準)クリーニング」の提供を開始する等、ウィズコロナ時代に対応した店舗づくりへの支援を行いました。また株式会社コックスは、機能性にくわえファッション性を追求したマスクを販売するなど拡大するマスク需要に積極的に対応しました。

金融

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・‌総合金融事業では、グループの小売業やECチャネル、顧客基盤を活用し、デジタル化や事業の効率化、新たな収益機会の創出に向けたビジネスモデルの変革への取り組みを加速しました。株式会社イオン銀行では、非対面・非接触および店舗滞在時間の最小化の取り組みとして、テレビ相談・手続き窓口の増設、オンラインでの予約システムや金融相談サービスの拡充を図りました。また、本年はイオンカード発行開始から20周年を迎え、イオンカード20周年キャンペーンを実施し顧客基盤の拡大ならびに取扱高の拡大に注力しました。カードショッピングについては、食品スーパーやドラッグストア等に加えホームセンターや家電量販店等での取扱高が伸長しました。

ディベロッパー

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・ディベロッパー事業では、イオンモール株式会社が、4月に緊急事態宣言下で全国164施設全てを臨時休業しましたが、5月末には全施設の営業を再開しました。営業再開にあたっては、出入口でのAIによる検温器設置、外気取り込み量増加によるモール館内の換気機能強化等、感染拡大防止と安全・安心のための対策を実施しました。また、新しい生活様式に合致したエンターテインメントとして、屋外駐車場を活用したドライブインシアターを実施した他、ウィズコロナ時代の新たなデジタルツールとしてイオンモールアプリを全面リニューアルし、エリア視点に基づくセールス活動の展開とともに、来店時間のピーク分散やアイドルタイムでの飲食店利用等、お客さまの行動変容に合わせたリアル・オンラインの両チャネルを活用したサービスを提供しました。

国際

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・マレーシアでは、お客さまがオンラインで注文した商品を店舗駐車場でお渡しするドライブスルー型の受け渡しサービスや、お客さまのお買物を代行するパーソナルショッパー、シニアのお客さまを対象に注文商品を配達するバイク便等、新たな取り組みを推進しました。また、ベトナムでは、社会行事への対応を継続的に強化したほか、新型コロナウイルスの感染拡大後は、大型販促企画を実施し消費喚起の取り組みに注力しました。

・中国においては、1年で最も売上規模の大きい春節のピークに合わせた販促が奏功しました。春節後はコロナ下で大きな影響を受けるなか、ネット通販へのさらなるシフトやまとめ買いの急速な拡大等のお買物行動の変化に対応した取り組みを推進しました。さらにイオンアプリのサービスを全店舗に導入しリアル店舗を持つ強みを活かした情報やサービスの提供の充実に努めました。

●営業収益 構成比
●営業利益(百万円)

数字でみるイオン

イオンは、強い競争力を有する小売、金融、ディベロッパー、サービス等、グループ各事業・企業が有機的に結びつき、高いシナジーを創出する総合グループへの進化を目指し、革新に挑戦し続けています。

日本・中国・アセアンで店舗を展開しています。

(2) 環境・社会への取り組み

イオンは「持続可能な社会の実現」と「グループの成長」の両立を目指すサステナブル経営を実践し、事業活動を通じて社会が抱える様々な課題の解決に取り組んでいます。

「イオン サステナビリティ基本方針」のもと、環境面では4つの中長期かつグローバル水準の目標を定め、多くのステークホルダーの皆さまと連携して、達成に向けて取り組みを推進しています。

2020年度の主な活動

【脱炭素社会の実現】

事業活動におけるエネルギー使用の削減が地球温暖化防止に寄与すると考え、2008年より具体的数値目標を定め、CO2排出量の削減に取り組んでいます。現在は2018年に策定した「イオン 脱炭素ビジョン2050」の達成に向けて、省エネルギーの推進、再生可能エネルギーへの転換を進めています。2019年度のCO2排出量実績は約10%削減となり、多様な手法を導入して着実に削減につなげています。

2020年度の省エネルギーの取り組みでは、イオンそよら海老江にてスーパーマーケットで世界初となる「人流等のデータとAIを活用した空調エネルギー削減システム」の実証実験を開始しました。再生可能エネルギーの調達拡大では、太陽光発電の導入を加速するPPAモデルの導入、お客さまからの卒FIT電力の買い取りサービスを推進するとともに、イオンで初めて、使用電力の100%を再生可能エネルギーで賄う店舗の運営を開始しました。

このような取り組みが評価され、国際的な環境調査と情報開示を行う非営利団体CDPより、最高評価の「気候変動Aリスト」に2年連続で選出されました。評価対象となった世界の5,800以上の企業のうち「Aリスト」に選ばれたのは270社(日本企業は53社)となります。

【使い捨てプラスチックの削減】

1991年よりお客さまとともに「買物袋持参運動」を実施するなど、資源循環の促進に向けた取り組みを継続して行っています。現在は「イオン プラスチック利用方針」のもと、使い捨てプラスチックの削減や環境配慮素材への切り替えなど持続可能なプラスチック利用に取り組み、ステークホルダーの皆さまとともに、脱炭素型かつ資源循環型の新たなライフスタイルの定着を進めています。

新たな取り組みとして、2021年2月より、丸紅グループと共同で、店舗でお客さまから回収する使用済みペットボトルを、再商品化する「ボトル to ボトル プロジェクト」を開始しました。

【イオンの森づくり】

環境問題は平和を脅かす課題と捉え、植樹を通じて環境問題の解決に取り組むという想いのもと、1991年より植樹活動を継続して行っています。日本および世界各地のお客さまとともに進めてきた植樹活動は、累計植樹本数が1,223万本を超えました。

2021年からは新たな取り組みとして、イオンおよび公益財団法人イオン環境財団は、地域および自然との共生を目的とした「イオンの里山づくり」に取り組みます。地域住民とイオンピープルが協働し、新たな森づくりを目指してまいります。

【コロナ下における子どもの「食」支援】

新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、特に大きな負担を強いられている子どもたちと子育て世帯のくらしを応援するため、2020年4月に「新型コロナウイルス 子ども支援募金」を実施、公益財団法人イオンワンパーセントクラブからの寄付と合わせ、支援活動を行う3団体に約4,800万円を寄付しました。また、2020年12月には、継続的な子どもの「食」支援を行う「イオン こども食堂応援団」を発足し、お客さま募金と公益財団法人イオンワンパーセントクラブからの寄付と合わせ、約4,500万円を寄付しました。店舗の場を活用した啓発活動なども含めた、これらの活動を通じて、人と人とが支え合い、共助の絆で結ばれる地域コミュニティづくりに取り組んでまいります。

【東日本大震災10年 復興支援への取り組み】

東日本大震災により甚大な被害を被った被災地の復興・創生への取り組みは、10年の節目を迎えました。

2012年3月に「イオン 心をつなぐプロジェクト」を発足、10年間で東北地方沿岸部への30万本の植樹、ボランティア活動への30万人の従業員参加を目標に掲げ、活動をスタートし、当初目標を達成しました。2016年度からは被災地との交流を通じて地域課題の解決への支援を目指す「イオン 未来共創プログラム」を開始しました。地域の皆さまとの意見交換やワークショップなどを通じて相互理解を深め、地元産品の商品化や販売支援、地域イベントの開催などに協働で取り組んでいます。

2021年3月には、未だに深刻な課題を抱える福島県に対し、当社および公益財団法人イオンワンパーセントクラブより復興・創生支援金1億円を寄付しました。県産品の安全性や魅力に関する理解促進等の取り組みに活用いただく予定です。

今後も、地域の皆さまとともに、東北の新たな復興ステージ実現につながる支援を継続し、グループを挙げて一日も早い復興・創生に寄与してまいります。

【ダイバーシティの推進】

ダイバーシティの推進は社会的課題への対応だけではなく、経営戦略の一つとして捉えています。国籍・性別・年齢・心身の障がいの有無・性的指向と性自認等による差別を排し、能力と成果に貫かれた人事を基本的な考え方としています。多様な人材の能力を十分に活かし、劇的な環境変化にも果敢に対応し、常にお客さまのニーズに柔軟に応じ革新し続ける組織の実現を目指しています。ダイバーシティ推進が生み出す、従業員とその家族、お客さま、会社の3者の満足を“ダイ満足”と名付け、グループ全体で様々な活動に取り組んでいます。地域に根ざし、事業特性を活かしたグループ企業のダイバーシティ推進の好事例を共有されるようになりました。また、女性階層別研修をはじめ障がい者活躍、LGBT等をテーマにした研修“ダイ満足”カレッジをオンラインで開催し、全国各地の拠点からの参加が容易になり、グループ横断的な繋がりを通じ多様な知見やロールモデルと接点を持つことができる等、グループならではの強みを発揮しています。こうした取り組みが評価され、2021年3月には女性活躍推進に優れた上場企業として「なでしこ銘柄」に4年連続で選定されました。

【健康経営への取り組み】

イオンは、グループとして社員の健康づくりが企業活動の要であり、社員が健康であってこそ地域のお客さまにも健康と幸福をもたらすサービスを提供できるという考えのもと、健康経営を推進しています。2020年度には、喫煙者数25%削減を掲げグループ115社で就業時間内禁煙・敷地内禁煙を順次開始しました。また新型コロナウイルス感染症を踏まえた取り組みとしてインフルエンザ予防接種の促進等を実施しました。こうした取り組みが評価され2021年3月には、「健康経営優良法人2021(ホワイト500)」に認定されました。

(3) コーポレート・ガバナンス

【コーポレート・ガバナンス体制】

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当社は、グループ全体を視野に入れた基本理念に基づく経営、透明かつ持続性と安定性を持った経営、お客さまを原点とした絶えざる革新を追求し、これらを実践するための最適な企業統治体制として、指名委員会等設置会社を選択しています。これにより、経営の監督と業務執行を分離して、執行役に大幅な権限移譲を行い迅速な経営の意思決定を実現する体制を整える一方、社外取締役を過半数とする指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3委員会を設置して、経営の透明性と客観性を担保しています。

【各機関の主な役割と開催状況】
【取締役会の活動報告】

取締役会では、その持続的な成長と企業価値の向上を目指した長期的な視点のもと、毎回活発な議論を行っています。2020年度においては、2025年度までの中期経営計画策定に向けて相当程度の時間をかけて議論を重ねてまいりました。気候変動や人口動態といった従来の変化に新型コロナウイルス感染症がもたらす影響を加味し、当社にとって重要な環境変化を踏まえたうえでグループポートフォリオ戦略について十分な討議と評価を行いました。そしてデジタルシフトのさらなる加速、投資計画、フリーキャッシュフローの水準など、これまで議論してきた経営上の課題を反映した包括的な計画が策定されました。

ほかにも独立社外取締役だけが参加する討議を複数回実施し、グループガバナンスのあり方と取締役会の実効性向上について率直な意見交換がなされ、その意見は取締役会の場において執行側に報告されています。これは独立社外取締役が当社の中長期的企業価値やガバナンスを一層向上させようとの考えに基づき実施されたものであり、独立社外取締役の監督機能が発揮されたものと考えています。加えて、独立社外取締役と取締役3名との間で個別に面談を実施し、豊富な経験、幅広い見識、専門的知見に基づく活発な意見交換や議論を行っています。中長期的な課題やその対策についての質疑応答がなされ、取締役間の相互理解を促進する極めて有益な場となっています。

これらの取り組みにみられるように取締役会のみならず取締役の間でもグループ全体の企業価値向上を目指した議論が充実しており、当社の持続的な成長を促す監督機能が実質的に機能していることを確認しております。今後もコーポレート・ガバナンスの一層の強化に努めてまいります。

2. 企業集団の対処すべき課題

2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大により、お客さまの行動・意識・価値観は大きく変容しました。

さらに、人口動態の変化、気候変動に伴うお客さまの行動変化、デジタル技術のあらゆる生活への浸透、環境・健康意識の高まりや、競争環境の構造的変化など、従来から起きていた社会変化のスピードが、コロナ下においてより一層加速し、当社を取り巻く経営環境にも大きな影響を与えています。中長期的な視野で今後10年を見据えると、過去に経験した変化とは異なる環境変化に直面すると認識しています。当社は、こうした環境変化をグループの飛躍的成長を遂げるための好機と捉え、2030年に向けた持続的成長への移行を目指し、イオングループ中期経営計画(2021~2025年度)(以下、新中期経営計画)を策定しました。

新中期経営計画におけるグループ共通戦略

新中期経営計画では、これまで取り組んできたリージョナル、デジタル、アジアとそれらを支える投資の4つのシフトをさらに加速するとともに、2025年以降の持続可能な成長を実現する事業基盤の構築に向け、グループ共通戦略として「5つの変革」を掲げました。グループ各事業は既存の事業モデルの革新を図り、新たな成長モデルを確立するとともに、収益力を高め、生み出した経営資源を新たな成長領域へ集中的に投下することで、グループ一体で新しい成長機会を獲得してまいります。

この新しい成長機会の獲得に向けたグループ共通戦略の要点は以下の通りです。

① デジタルシフトの加速と進化
社会や生活におけるデジタル化が加速度的に進展し、リアルとデジタルの融合による利便性の追求やデータの重要性がより一層高まることが想定されます。
マルチフォーマットによる店舗網、商品、顧客データ、決済、インフラ等の強みとデジタルの融合を進めることにより、お客さまへ利便性と満足度の高い体験価値を提供してまいります。会員基盤のグループ共通化、スマートフォンアプリの開発、さらにはDX推進に向けたシステム開発を加速するため、2020年1月に新会社(Aeon Smart Technology)を設立しました。また、中国においては、Aeon Digital Management Centerによる最新鋭のシステムの開発、さらにはアジア各国で展開するグループ各社へのデジタルサービス提供やノウハウ移転を進め、デジタルを活用した新たな顧客体験の提供や、業務生産性の向上、デジタル人材の育成を推し進めてまいります。
デジタル事業の強化に向けては、既に出資・提携関係にある米国Boxed、ドイツSIGNA Sports United GmbH、英国Ocadoと連携した取り組みが始動しており、グループの新たな成長の柱とすべく、B2CのみならずB2B領域も含めた事業成長スピードを加速してまいります。
② サプライチェーン発想での独自価値の創造
リアルでの業態の垣根を超えた競争に加え、ネット企業、さらにはメーカー・生産者が直接販売するD2C(Direct to Consumer)の流れなどボーダレスな競争が激化しているなか、独自性のある商品・サービスの提供が企業競争力の源泉であると認識しています。

グループ共通プライベートブランド(PB)商品であるトップバリュのみならず、グループの専門業態が開発を担う専門性の高いPB商品、地域事業会社による生鮮・デリカを中心としたローカルPB商品の開発に向けて、サプライチェーンの川上から川下までをトータルで管理・効率化するモデルを志向し、他社とは差別化された独自価値を積極的に提供してまいります。

地域事業会社は地域密着による強みを最大限発揮するとともに、グローバル調達、ナショナルブランド商品については、グループのスケールメリットを活用した需要集約を加速してまいります。また、外食と同等の提供価値の実現に向け、次世代型プロセスセンターのモデル構築に着手いたします。
③ 新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化
ヘルスケアに関するお客さまニーズは、これまでの疾病予防や治療に加え、健康意識や免疫力強化の意識の高まりにより、未病など新たな領域へ拡大しています。
予防・治療・未病などの健康意識の高まりに対応するため、商品の販売だけでなく、様々な角度からお客さまのニーズを満たす提案を行い、新たなヘルス&ウエルネス市場を開拓するリーディング企業となることを目指してまいります。
④ イオン生活圏の創造
これまで進めていた「リージョナルシフト」の次ステップとして、自社の強みであるマルチフォーマットの店舗網や事業とデジタルを融合し、それぞれの地域に根ざした「イオン生活圏」の構築を目指します。
生活をさらに便利で豊かなものにしたいというお客さまのニーズに応えるため、あらゆる事業が一体となり、商品・サービスのみならず、生活圏の“核”となる拠点をシームレスに提供してまいります。事業活動を通じて、「消費者」と「地域生活者」としてのお客さま、および地域社会に対して絶えず貢献し、それぞれの地域No.1企業の集合体となることを目指します。
⑤ アジアシフトの更なる加速
アジアの中間所得層は今後も増加が見込まれ、新たな顧客セグメントの取り込みがグループの成長に不可欠と認識しています。これまでも「アジアシフト」を推進すべくグループの出店スピードの向上とエリア拡大を図ってまいりましたが、アジアの小売市場では、デジタル成長がリアルと同程度、または上回ることから、アジアではリアル・デジタルを同時並行で推進し事業成長を加速してまいります。
アジア全体を1つの市場と捉え、グループ経営資源の投下先を明確にし、グループ総力を挙げてアジアシフトを加速し、今後も拡大し続ける成長市場を取り込んでまいります。

3.会社の体制および方針

当社のコーポレートガバナンスの基本的な考え方
イオンは「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という基本理念を全ての企業活動の指針とした経営を追求してきました。
このような価値観に基づき、当社のコーポレートガバナンスのあり方を、以下の5つの基本姿勢を中核とした「コーポレートガバナンス基本方針」として定めています。
ⅰ お客さま基点、現場主義による価値創造
お客さまの幸福感の実現を最大の企業使命として、お客さまとの接点である現場主義を貫き、常にお客さま基点で考えることで、変化するお客さまのニーズに対応した最適な価値創造を追求します。
ⅱ 最大の経営資源である人間の尊重
人間こそが最大の経営資源であるとの信念に基づき、従業員を尊重し、多様性を重視し、教育機会を積極的に提供することで従業員が自己成長に努め、強い絆で結ばれ、お客さまへの貢献を至上の喜びとする従業員で構成された企業を目指します。
ⅲ 地域社会とともに発展する姿勢
地域社会の一員、心を持った企業市民として、同じ地域社会の参加者であるお客さま、従業員、株主、取引先とともに発展し、地域社会の豊かさ、自然環境の持続性、平和に貢献することを目指します。
ⅳ 長期的な視野と絶えざる革新に基づく持続的な成長
お客さま、地域社会の期待に応え続けるために、変化する経営環境に対応するための絶えざる革新に挑戦することで、長期的な視野に立った価値創造を伴う持続的な成長と、グループ全体の継続的な価値向上を志向する経営に努めます。
ⅴ 透明性があり、規律ある経営の追求
お客さま、ステークホルダーとの積極的な対話に努め、評価を真摯に受け止め、常に自らを律することで、透明性と規律がある経営を追求します。

4.配当金について

当社の株主還元政策は、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元のバランスの最適化を図ることを重点施策と位置付け、連結業績を勘案した配当政策を行ってまいります。

1株当たり年間配当金につきましては、前年以上を維持しつつ、連結配当性向30%を目標として定め、さらなる利益成長ならびに株主還元に努めていきます。

また、当社は株主の皆さまの利益還元の機会を充実させる目的で、剰余金の配当を年2回実施することとし、会社法第459条の規定に基づき取締役会の決議によって剰余金の期末配当を行うことができる旨を定めています。

【当期の剰余金の配当について】

当期の剰余金の期末配当は、2021年4月9日開催の取締役会決議により、1株当たり普通配当18円とさせていただきます。これにより、中間配当18円と合わせた当期の年間配当金は1株当たり36円となります。なお、期末配当金の支払開始日(効力発生日)は2021年4月30日(金曜日)とさせていただきます。

年間配当金の推移(1株当たり)

連結計算書類