事業報告(2021年3月1日から2022年2月28日まで)

1. 企業集団の事業の概要

当社ならびに連結子会社286社の連結営業収益は8兆7,159億円となり過去最高を更新しました。また、営業利益1,743億円、経常利益1,670億円、親会社株主に帰属する当期純利益は65億円となりました。

当期は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)変異株の急激な拡大により緊急事態宣言等の活動規制が繰り返され長期化したこと、それに伴い消費マインドの冷え込みが続いたこと等、大変厳しい外部環境になりました。このような環境のなか、内食需要への対応を強化したSM(スーパーマーケット)事業をはじめ、DS(ディスカウントストア)事業、調剤併設型のドラッグストアの展開を加速するヘルス&ウエルネス事業は、コロナ拡大前を上回るセグメント利益を計上しました。また、GMS(総合スーパー)事業、総合金融事業、ディベロッパー事業、サービス・専門店事業は、変化するニーズへの迅速な対応や成長の基盤づくりを推進し損益改善しました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、大きく改善しました。

【グループ共通戦略】

当社を取り巻く経営環境は、人口動態の変化や気候変動に伴うお客さまの行動変化、また、デジタル技術のあらゆる生活への浸透、環境・健康意識の高まり、競争環境の構造的な変化等に加え、コロナの拡大によりお客さまの行動・意識・価値観が大きく変容したことで、従来から起きていた社会変化のスピードが、より一層加速しています。このような環境変化をグループの飛躍的成長を遂げるための好機と捉え、2030年に向けた持続的成長への移行を目指し、「2021~2025年度 中期経営計画(以下、新中計)」を策定しました。新中計では、グループ共通戦略としてデジタルシフトの加速と進化、サプライチェーン発想での独自価値の創造、新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化、イオン生活圏の創造、アジアシフトの更なる加速の5つの変革に加え急速に重要性が高まる環境グリーンへの取り組みを加速させています。既存の事業モデルの革新を図り、新たな成長モデルを確立するとともに、収益性を高め、生み出した経営資源を新たな成長領域へ集中的に投下することで、グループ一体となって新しい成長機会を獲得してまいります。

新中計初年度の当期は、2021年9月にお客さまの更なる利便性向上とグループ共通デジタル基盤の整備のため、WAONPOINTへのポイント統合を行うとともに、グループ共通のタッチポイントとなるイオンのトータルアプリ「iAEON」のサービスを開始しました。また、トップバリュ商品の価格据え置きを宣言しお客さまの生活防衛意識の高まりへの迅速な対応を図りました。

【グループ構造改革】

地域での競争力を圧倒的に高めるため、2021年9月、株式会社フジ(以下、フジ)、マックスバリュ西日本株式会社(以下、MV 西日本)および当社は、2024年のフジとMV 西日本の合併について基本合意し、2022年3月には合併に先立ちフジとMV 西日本が当社の連結子会社となる共同持株会社を設立しました。また、株式会社キャンドゥの公開買付けを実施し、2022年1月、同社は連結子会社となりました。今後、保有する事業・経営ノウハウをグループで共有することにより、効率的な事業運営とビジネスモデルの強化を図り更なる成長を実現してまいります。

■連結営業成績および財産の状況の推移
■事業の種類別セグメントの状況

(1)各事業の成果

小売・サービス

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・GMS事業では、イオンリテール株式会社が、お客さまの生活防衛意識の高まりに対応すべく価格据え置きしたトップバリュの拡販や継続する内食需要を捉える取り組みを強化した食品の売上高が引き続き好調に推移しました。今年開催6年目となったブラックフライデーセールは、店舗、オンラインの両面で取り組みを強化しました。また新型コロナウイルス感染症下で需要拡大したネットスーパーでは配送枠の拡大やピックアップ方法の拡充、配送便予約サービスの導入など利便性向上に取り組み売上が伸長しました。加えて、マーチャンダイジング・サイクルの精度改善に努め在庫高を大幅に削減したほか、天候・客数等の環境をAIが学習し適切な価格設定を行う「AIカカク」等の導入により利益率向上に努めました。

・SM事業では、マックスバリュ東海株式会社が根強い節約志向等に対応し専用アプリの販促やトップバリュの展開強化を行うとともに、地域で親しまれる「じもの」商品の拡充や地域食材を活用した商品開発、各地の自治体や学生との協働による健康を意識した惣菜や弁当の商品開発を行う等、地域に根差した活動に取り組みました。加えてキャッシュレスセルフレジの導入拡大を進め店舗業務の効率化を図りました。また、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社では、スマートフォン決済サービス「Scan&Go Ignica」の利用店舗が500店舗を超える規模に拡大しました。DS事業では、グループ内の再編を推進し、首都圏における小型DS事業のドミナンスを加速し新たな成長戦略を築くことを目的として、2021年3月に株式会社ビッグ・ エーとアコレ株式会社を経営統合、2021年6月にイオンビッグ株式会社がマックスバリュ長野株式会社と合併するなどグループ内再編を通じて構造改革への対応を図りました。

・ヘルス&ウエルネス事業では、ウエルシアホールディングス株式会社および同社連結子会社は、調剤併設店舗数の増加等により処方箋枚数が引き続き増加し、物販も積極的な新規出店や地域ドラッグストア企業のグループ化等の成長戦略が奏功し、売上高は前期を上回りました。また、生産性改善の取り組みとして、店舗人時数の適正化に向け管理の徹底や自動発注等の推進により店舗業務の効率化を推し進めるとともに薬剤師の適正配置を図る等、人件費を中心に適正化を図りました。

・サービス・専門店事業では、イオンディライト株式会社が、従来の常駐型個別管理の品質を担保しながら新たな施設管理モデルであるエリア管理への変革により省人化を実現するなど、顧客施設の管理コスト削減に取り組みました。中国では、受託拡大に注力し、堅調に事業を拡大しました。株式会社イオンファンタジーは、人気キャラクターの同社限定景品をはじめとした売れ筋景品の集中展開や大手お菓子メーカーとのコラボ景品の展開を強化したプライズ部門、および新規事業のオンラインクレーンゲーム「モーリーオンライン」が好調に推移しました。

金融

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・総合金融事業では、オンラインサービスの拡充やグループ共通ポイントを活用したイオン生活圏の構築、新規事業の創出等、中長期的な成長に向けた取り組みを進めました。国内では、イオンカードのグループ共通ポイント制度への変更により利便性を高めたほか、「iAEON」へのコード決済機能「AEON Pay」導入や電子マネー「WAON」のApple Payサービスを開始するなど、グループのキャッシュレス化を一層推進しました。また、イオン・アリアンツ生命保険株式会社の健康増進型終身医療保険「元気パスポート」の販売を開始し、イオングループの強みを活かしてお客さまに新たな価値を提供するクロスセルの取り組みを推進しました。海外では、各国にてデジタル技術の活用や、健康ニーズの取り込みを推進しました。タイにおいては保険事業の再編やアプリによる保険商品の提案、健康関連施設の優待特典付きカードの発行を開始しました。マレーシアでは保険仲立人会社を子会社化し、保険取扱商品の拡大を図りました。また、継続して審査の精緻化や債権回収体制の構築に努め、貸倒関連費用が大幅に改善しました。

ディベロッパー

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・ディベロッパー事業では、イオンモール株式会社が、クーポン配信や、モール内の目的のお店までのナビ機能等、お客さまの利便性向上のためのサービスを組み込んだ「イオンモールアプリ」の会員に向けてロイヤリティ企画を実施する等、認知度向上に向けたイベントの実施、また、来店頻度の向上につなげる施策を推進した結果、会員数が大幅に増加しました。海外の最重点出店エリアであるベトナムでは、今後の新規出店用地の確保に向けて同国内の4つの省との間で「ショッピングモール開発に関する投資および事業推進に関する包括的覚書」を締結し地方政府との連携強化を図りました。また、同社は、ESGの取り組みを拡充すべく、社会課題の解決と環境配慮を目的としたサステナビリティ・リンク・ボンドとしての社債を初めて発行しました。

国際

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・マレーシアにおいては、コロナの感染再拡大により、衣料・住居余暇関連の売場が閉鎖になる等の影響を受けましたが、食品の品揃えの見直し、生鮮および冷凍食品の売場を拡大する等、内食需要の高まりへの対応を強化しました。またオンライン強化の一環で、機能的な画面設計やパーソナライズ機能等を有するBoxedのECプラットフォームを活用したネットスーパーを開始しました。ベトナムでは、数カ月に渡り継続したロックダウンの影響を受けましたが、移動販売やコロナ下で来店できないお客さまへの注文販売等の取り組みを強化しました。中国のネットスーパーにおいては、ネット販売でのニーズが高いカテゴリーを重点とした販売促進に取り組むとともに、受注から配送までの時間を1時間で完了する取り組みを強化した結果、売上高は伸長しました。

●営業収益 構成比
●営業利益(百万円)

数字でみるイオン

イオンは、強い競争力を有する小売、金融、ディベロッパー、サービス等、グループ各事業・企業が有機的に結びつき、高いシナジーを創出する総合グループへの進化を目指し、革新に挑戦し続けています。

日本・中国・アセアンで店舗を展開しています。

(2)環境・社会への取り組み

「持続可能な社会の実現」と「グループの成長」の両立を目指す「イオン サステナビリティ基本方針」のもと、事業活動を通じて様々な環境・社会課題の解決に取り組んでいます。より深刻な環境課題に対して、4つの中長期かつグローバル水準の目標を定め、多くのステークホルダーの皆さまと連携して、達成に向けて取り組みを推進しています。

【脱炭素社会の実現】

事業活動におけるエネルギー使用の削減が地球温暖化防止に寄与すると考え、2008年より具体的数値目標を定め、CO2排出量の削減に取り組んでいます。2018年に策定した「イオン 脱炭素ビジョン」では「店舗」「商品・物流」「お客さまとともに」の3つの視点で「店舗で排出するCO2等を総量でゼロにする」ことを目指しています。

この目標をより前倒しで達成するために、2030年までに日本国内の店舗で使用している電力の50%を再生可能エネルギーに切り替える新たな目標を定めました。国内の全てのイオンモールについては、2025年までに使用電力を100%再生可能エネルギーへの転換を目指しています。

再生可能エネルギーの調達量拡大に向けては、太陽光発電設備の積極的な導入やお客さまからの余剰電力の買い取り強化など、多様な手法を活用しています。加えて、脱炭素型住宅(ZEH)の新築・リフォームや電気自動車(EV)の購入を検討しているお客さまに向けた商品や金融サービスの提供にも力を入れています。

このような取り組みが評価され、国際的な環境調査と情報開示を行う非営利団体CDPより、最高評価の「気候変動Aリスト」に3年連続で選出されました。今後もグループが持つあらゆるリソースを活用して脱炭素化の実現に向けた取り組みを加速してまいります。

【使い捨てプラスチックの削減】

脱炭素型かつ資源循環型の新たなライフスタイルの定着を目指し、「イオン プラスチック利用方針」のもと、使い捨てプラスチックの削減、化石由来から環境配慮素材への転換、店舗を拠点とした資源循環モデルの構築の3つの柱で持続可能なプラスチック利用に取り組んでいます。

新たな取り組みとして、2021年5月より、関東エリアのイオン店舗で、従来使い捨てされていた日用消耗品・食品の容器の繰り返し利用を可能にする商品提供システム「Loop(ループ)」に参画、計58店舗で販売しています(2022年2月末現在)。

また、2022年3月より、イオン店舗で回収した使用済みペットボトルから生まれたリサイクル樹脂を、ペットボトル本体に100%使用した『トップバリュ グリーンアイオーガニック』茶飲料4品目をリニューアル発売しました。

イオンは「事業活動を通じた取り組み」に加えて「公益財団法人イオンワンパーセントクラブの活動」「公益財団法人イオン環境財団の活動」の3つの柱で環境・社会貢献活動を推進しています。

【新型コロナウイルス感染症関連支援】

未来を担う子どもたちの支援

新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、特に大きな負担を強いられている子どもたちと子育て世帯のくらしを応援するため、2020年12月に「イオン こども食堂応援団」を発足。本プロジェクトの一環として、2021年度の夏・冬に全国の店舗および事業所で「全国こども食堂応援募金」を実施し、合計約6,444万円を認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえに寄付しました。

店舗の場を活用した啓発活動なども含めた、これらの活動を通じて、人と人とが支え合い、共助の絆で結ばれる地域コミュニティづくりに取り組んでまいります。

医療従事者への支援

医療現場の第一線で対応されている医療従事者の皆さまの力になりたいとの思いから、2021年4月29日から6月30日の間に緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が講じられた地域の店舗および事業所にて「新型コロナウイルス医療従事者支援募金」を実施しました。お客さまからお寄せいただいた募金約3,752万円に、公益財団法人イオンワンパーセントクラブを通じた同額の支援金を加え、計約7,505万円を、1都1道2府18県6政令市に寄付しました。新型コロナウイルス感染症がいち早く終息し、地域全体が安心して平和に日常生活が過ごせるよう、全社一丸となって、感染防止対策に取り組んでいます。

<2021年度の主な募金・支援活動>

【イオンの森づくり】

環境問題は平和を脅かす課題と捉え、植樹を通じて環境問題の解決に取り組むという想いのもと、1991年より植樹活動を継続して行っています。日本および世界各地のお客さまとともに進めてきた植樹活動は、累計植樹本数が1,241万本となりました。

2021年度は、公益財団法人イオン環境財団が林野庁関東森林管理局との協定に基づき、地域の森の再生を目指す「君津イオンの森づくり」などの植樹活動を行いました。また、新型コロナウイルスの影響で実際の植樹活動が難しい中、植樹地に出向かずに森づくりに参画できる取り組みとして「苗木の里親プロジェクト」を実施しました。お客さまや従業員に苗木をお預けし約1年間育てていただいた後、イオンの森に植樹します。

誰もが働きやすく、働きがいのある会社を目指しています。

【ダイバーシティの推進】

当社はダイバーシティ&インクルージョンの推進を経営戦略の一つとして捉え、多様な人材が能力を十分に活かし、革新し続ける組織の実現を目指しています。女性管理職比率については、50%を目標とし2021年度は、26%となりました。国内外のグループ会社の役員900名が参加した役員コンプライアンス研修をはじめ、のべ2,000名以上の管理職が参加したオンライン研修を通じ、多様性と心理的安全性が尊重された組織を堅持し、現在求められるマネジメントへの意識改革を強化しました。育児・介護休業法の改正を機に、「仕事と育児の両立支援」オンライン研修にも男性育休促進の要素を取り入れ、女性社員に限らず育児中の男性社員、上司、人事担当者等350名が参加し、グループ企業の好事例紹介等を通じ、意識改革の一助となりました。また、次世代管理職候補となる若年層の女性を対象に、ライフプランを多面的に捉える研修を新規に導入し、グループ各社の従業員の交流を深める機会を設けるなど女性が持続的に活躍できる環境作りに努めました。

【健康への取り組み】

イオンは、グループとして社員の健康づくりが企業活動の要であり、社員が健康であってこそ地域のお客さまにも健康と幸福をもたらすサービスを提供できるという考えのもと、従業員とその家族の健康増進に取り組んでいます。卒煙の取り組みでは、グループを挙げて取り組んでおり、115社で就業時間内禁煙・敷地内禁煙を実施しています。また地域と従業員の安全安心のため、新型コロナウイルスワクチン職域接種に積極的に取り組んできました。こうした取り組みが評価され前年に引き続き「健康経営優良法人2022(ホワイト500)」に認定されました。健康経営優良法人は、グループ26社が取得しています。今後も従業員が自身の健康状態を把握し改善できるよう、継続して取り組んでまいります。

(3)コーポレート・ガバナンス

【コーポレート・ガバナンス改革の歩み】

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当社は、企業価値を継続的に高める基盤づくりとして、「コーポレート・ガバナンス」の改革に継続的に取り組んでいます。2003年には、取締役会の経営の監督機能と業務執行機能を分離する「委員会等設置会社(現:指名委員会等設置会社)」に移行しました。また、当社では取締役の過半数を社外取締役とし、「指名」「報酬」「監査」の各委員会の議長をすべて社外取締役とすることで、経営の透明性と公平性を一層高めています。2016年にはグループの企業経営と企業統治に関する基本姿勢などを示した「コーポレートガバナンス基本方針」を制定し、企業活動の指針としています。今後も、最適な企業統治体制を目指して改革してまいります。

♦コーポレート・ガバナンス ハイライト
取締役会&3委員会の構成

※社外取締役4名全員は、東京証券取引所の定める独立役員の要件を満たしており、独立役員として同取引所に届け出ています。

【各機関の主な役割と開催状況】
【取締役会の活動報告】

取締役会では、持続的な成長と企業価値の向上を目指し、長期的な視点のもと、活発な議論を行っています。2021年度は、2025年度までの中期経営計画で掲げた5つの変革「デジタルシフトの加速と進化」、「サプライチェーン発想での独自価値の創造」、「新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化」、「イオン生活圏の創造」、「アジアシフトの更なる加速」等の諸施策の進捗状況や経営上の課題を中心に議論を重ねてまいりました。さらに取締役会を補完するものとして、経営統合や企業買収等、当社グループに大きな影響がある案件については社外取締役から意見を求める会議を設けるなど、タイムリーな情報共有と議論を行ってまいりました。また、独立社外取締役だけが参加する討議を実施し、グループガバナンスのあり方と取締役会の実効性向上について率直な意見交換がなされ、その意見は取締役会の場において執行側に示されています。これは独立社外取締役が当社の中長期的企業価値やガバナンスを一層向上させようとの考えに基づき実施されたものであり、独立社外取締役の監督機能が発揮されたものと考えています。加えて、独立社外取締役と取締役3名との間で個別に面談を実施し、豊富な経験、幅広い見識、専門的知見に基づき、中長期的な課題やその対策について活発な意見交換や議論を行っています。これらの取り組みにみられるように取締役会のみならず取締役の間でもグループ全体の企業価値向上を目指した充実した議論がなされており、当社の持続的な成長を促す監督機能が実質的に機能していることを確認しております。今後もコーポレート・ガバナンスの一層の強化に努めてまいります。

2. 企業集団の対処すべき課題

当社グループを取り巻く事業環境は、パンデミックによる大変化にとどまらず、それ以上の速度、規模、多様性をもって、今後も急激に進展していくことが予見されます。イオンは、急速に変化する環境下でこそ、常に変革し続ける企業集団であるべきと考えています。

このように過去にない規模の環境変化を飛躍的成長の機会と捉え、2021年4月、「2021〜2025年度 中期経営計画」(以下、新中期経営計画)を策定いたしました。新中期経営計画では、2030年に“イオンのありたい姿”を掲げており、事業展開する日本、中国、アセアン、それぞれの地域の豊かさに結びつく循環型かつ持続可能な経営の実現を目指しています。

この実現に向けて、2025年度以降の持続的成長を支える事業基盤確立を着実に成し遂げていく上で、グループ共通で推進する重点取り組みは以下のとおりです。

新中期経営計画におけるグループ共通戦略

デジタルシフトの加速と進化

お客さまにとって、店舗やEコマースといったチャネルの概念が希薄化する中、これまでのリアルかつ物販中心のビジネスから、リアルとデジタルを融合し、利便性と満足度の高い顧客体験の提供を目指しています。

グループ各社では、ネットスーパーの拡大、店舗での利便性向上に向けた取り組み、加えてオペレーション効率化など、多様性に富むデジタル施策を積極的に推進しています。同時に、グループで利用可能なポイントの共通化や、グループ各社が提供するサービスを1つにまとめたトータルアプリ「iAEON」の配信など、イオンとお客さまとをつなぐための重要な基盤構築をグループとして強化しています。リアル・デジタル双方で顧客接点を拡大することにより、お客さまの生活情報データを活用し、ネット専業企業にはないリアルの現場視点から新たなイノベーションへとつなげてまいります。

サプライチェーン発想での独自価値の創造

業態やチャネル等あらゆる垣根が希薄化し、シームレスな競争環境へと変化する中、プライベートブランド商品を中心に、イオンの理念・思想を反映した独自性のある商品・サービスの創造に向けた様々な取り組みを、グループの総力を挙げて推進しています。

植物性原料への置換えによるサステナビリティに配慮した商品など、ナショナルブランドが手掛けていない新たな領域での独自商品開発を加速しています。加えて、デリカ・生鮮食品など食のSPA化に向けた基盤強化や、非食品領域で他社にはないコンセプトの商品を生み出している均一価格雑貨販売業態の子会社化など、独自価値の開発・提案力強化に向けた取り組みを推進することにより、これまで以上にご支持いただけるよう変革を進めてまいります。

新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化

ウエルシアの事業拡大の推進に加えて、医療と健康を軸とした地域のコミュニティ拠点の展開や、未病改善・予防に向けて積極的に支援を行う保険サービスの提供など、「健康」の要素を組合せた新たな提供価値の構築を各事業領域において推進しています。グループ各社の取り組みをより魅力的、且つ満足度の高い水準へ引き上げ、グループ間連携、他社・他業界連携により、お客さまニーズを様々な角度から包括的に満たす新たな商品・サービスの提案につなげてまいります。

イオン生活圏の創造

これまで進めていた「リージョナルシフト」の次ステップとして、地域に根差した商品、サービス、生活基盤の提供に向けた地域会社化の推進や、各地域に必要なサービス・機能、社会資本が補完された地域の核となる拠点づくりなどを通じて「イオン生活圏」の構築に取り組んでいます。より豊かなくらしの実現と、地域社会の課題解決に積極的に参画し、地域の発展に最も貢献する企業体へと進化することを目指してまいります。

アジアシフトの更なる加速

マルチフォーマットの店舗網拡充に加え、社会のデジタル化が進むアジアにおいて、ECプラットフォームとの協業によりオンラインとリアルの融合を加速する取り組みを推進しています。併せて、商業流通の一気通貫サービスの提供など、新たな需要に着目した新規事業展開を図っています。アジアの成長ポテンシャルを着実に取り込み、次の収益の柱にすべく事業成長を加速してまいります。

GX(グリーン・トランスフォーメーション)

急激に進む気候変動や生物多様性の逸失といった環境問題に対して、あらゆるステークホルダーがカーボンニュートラル(脱炭素)をはじめ、環境問題の解決に向けて動き出しています。今後、地球環境にやさしい暮らしのニーズはますます高まり、企業における環境の取り組みは、事業活動の前提になると認識しています。

私たちは、すべてのステークホルダー、とりわけお客さまと従業員とともに事業活動を通じて地球環境に負荷をかけない取り組みを強化してまいります。加えて、これまで推進してきた植樹活動など環境改善につながる施策に同時並行で取り組んでまいります。

これら2つのアプローチを通じて積極的にリーダーシップを発揮し、地域の豊かさにつながるサステナブルな社会の実現に向けて貢献してまいります。

3.会社の体制および方針

当社のコーポレートガバナンスの基本的な考え方
イオンは「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という基本理念を全ての企業活動の指針とした経営を追求してきました。
このような価値観に基づき、当社のコーポレートガバナンスのあり方を、以下の5つの基本姿勢を中核とした「コーポレートガバナンス基本方針」として定めています。
お客さま基点、現場主義による価値創造
お客さまの幸福感の実現を最大の企業使命として、お客さまとの接点である現場主義を貫き、常にお客さま基点で考えることで、変化するお客さまのニーズに対応した最適な価値創造を追求します。
最大の経営資源である人間の尊重
人間こそが最大の経営資源であるとの信念に基づき、従業員を尊重し、多様性を重視し、教育機会を積極的に提供することで従業員が自己成長に努め、強い絆で結ばれ、お客さまへの貢献を至上の喜びとする従業員で構成された企業を目指します。
地域社会とともに発展する姿勢
地域社会の一員、心を持った企業市民として、同じ地域社会の参加者であるお客さま、従業員、株主、取引先とともに発展し、地域社会の豊かさ、自然環境の持続性、平和に貢献することを目指します。
長期的な視野と絶えざる革新に基づく持続的な成長
お客さま、地域社会の期待に応え続けるために、変化する経営環境に対応するための絶えざる革新に挑戦することで、長期的な視野に立った価値創造を伴う持続的な成長と、グループ全体の継続的な価値向上を志向する経営に努めます。
透明性があり、規律ある経営の追求
お客さま、ステークホルダーとの積極的な対話に努め、評価を真摯に受け止め、常に自らを律することで、透明性と規律がある経営を追求します。

4.配当金について

当社の株主還元政策は、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元のバランスの最適化を図ることを重点施策と位置付け、連結業績を勘案した配当政策を行ってまいります。

1株当たり年間配当金につきましては、前年以上を維持しつつ、連結配当性向30%を目標として定め、さらなる利益成長ならびに株主還元に努めていきます。

また、当社は株主の皆さまの利益還元の機会を充実させる目的で、剰余金の配当を年2回実施することとし、会社法第459条の規定に基づき取締役会の決議によって剰余金の期末配当を行うことができる旨を定めています。

【当期の剰余金の配当について】

当期の剰余金の期末配当は、2022年4月8日開催の取締役会決議により、1株当たり普通配当18円とさせていただきます。これにより、中間配当18円と合わせた当期の年間配当金は1株当たり36円となります。なお、期末配当金の支払開始日(効力発生日)は2022年5月2日(月曜日)とさせていただきます。

年間配当金の推移(1株当たり)

連結計算書類