株主の皆さまへ

ご挨拶

2023年5月
取締役 代表執行役社長

株主の皆さまには、平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

2022年度は、新型コロナウイルス感染症が収束に向かい経済が動き出したものの、世界的なインフレを背景に、物価高による生活者のくらしへの影響に加え、企業経営においても、これまでにないコスト上昇圧力を受けることとなりました。こういった厳しい事業環境下において、グループ中期経営計画で掲げた成長戦略を確実に実行フェーズに移すことで、2022年度グループ連結業績においては、増収増益を確保することができました。

商品の取り組みにおいては、「トップバリュ」による生活応援の姿勢を打ち出すとともに、独自性のある商品開発を進めることで、多くのお客さまからご支持をいただくことに繋がりました。また、デジタル面においては、セルフレジの拡充や店舗スタッフを支援するデジタルツールの導入などにより、利便性や生産性向上といった成果に現れています。

2023年度は、グループ中期経営計画3年目となる折り返し地点であり、さらに実行性を高め、2030年を見据えた新たな成長基盤の確立に向け、取り組んでまいります。

イオンは、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」という基本理念のもと、絶えず革新し続ける企業集団として「お客さま第一」を実践してまいりました。

不確実性の高まる時代だからこそ、長年にわたって大切にしてきた企業の軸となる基本理念に基づく経営が、より重要になってくると考えております。

こうしたグループとしての姿勢を、ステークホルダーの皆さまにより深くご理解いただくために、基本理念について、その背景や意味合いを綴った内容に改めました。本件は、株主総会で定款の一部変更についてご提案をさせていただきます。

イオンを取り巻く事業環境は、大きく変化すると同時に、当社自身も、事業領域が多角化し、営業収益は9兆円を超える企業集団に成長しました。改めて、イオンの存在価値や進むべき方向を明確にすべきと考え、このたび長期視点で当社グループのありたい姿を示した「イオングループ未来ビジョン」を策定いたしました。

株主さまをはじめ、多くのステークホルダーの皆さまに、イオンのありたい姿に共感をいただくことで、いつの時代も多くの方々から期待され、応援される企業であり続けたいと思います。

株主の皆さまにおかれましては、今後とも変わらぬご支援とご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

イオングループ未来ビジョン

お客さまやビジョンに共感するステークホルダーとともに、笑顔が広がる未来のくらしを創造するグループでありたい。自らの革新と共創のリードにより、一人ひとりも社会も豊かにし、成長するグループでありたい。そのような想いを実現するため、このたび「イオングループ未来ビジョン」を策定しました。いつの時代もイオンが多くのステークホルダーの皆さまから期待され、応援される企業であり続けるように、お客さまを原点に絶えず革新し続ける不変の基本理念のもと、未来を創造してまいります。

未来ビジョンに関して詳しくはこちら

イオンの基本理念

お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。 イオンは、小売業が平和産業であり、人間産業であり、地域産業であると信じ、その使命を果たす企業集団として永続するために、お客さまを原点に絶えず革新し続けてゆきます。

平和は、戦争や災害からの復興にしても、平穏な生活の維持・増進にしても、能動的で意識的な関与なしにはもたらされません。こうした思いの原点には、岡田卓也名誉会長相談役の実体験があります。戦後、チラシを手にして店頭に並ばれたお客さまが「戦争が本当に終わったんだな」と涙された姿を見て、小売業の存在こそが平和の象徴であると実感したと言います。そこから、小売業が成り立つためには平和が大前提であり、小売業は平和の維持に貢献していかねばならないと決意したのです。

平和とは、戦争や暴力がないというだけに止まりません。心の安寧に加えて、戦争や災害さらにはさまざまな不幸から立ち上がり、乗り越える力をも含むものです。21世紀になっても戦争は止まず、大震災や異常気象などの自然災害が頻発しています。今こそ平和の価値があらためて問い直されています。平和はそのままで与えられるものではありません。平和は、わたしたちが能動的で意識的に関与することによってはじめて保たれるのです。

イオンは平和に反することは決して行いません。また、そうした行為や活動には与しません。イオンが目指すのは積極的な平和への貢献です。

人間に関しては、一人ひとりを信じ、尊重することで、その人の能力や思いが花開き、さらに人とつながることによって、より幸福な状態が生じます。

岡田名誉会長は、小売業を「人間くさい産業」と呼びました。それは「人の道」を重んじること、すなわち人間を尊重することです。個性、尊厳、自律性の尊重は言うまでもありません。それに加えて、人間が持つ可能性を信じ、仕事や学びを通じて成長し、よりよく人間的になることを後押しすることでもあります。人間はひとりで成長することは困難です。「人とのつながり」のなかで、他者とともによりよく人間的になっていくのです。それは幸福の実現であるとともに、人の間にある規範を求めるものでもあります。小売業は人々の幸福と規範の産業なのです。

地域もまた、地域ごとの多様性と自立性に敬意を払い、その特有のニーズに応え、手入れをし続けることによってはじめて豊かなコミュニティが実現します。

小売業はもともと地域に根ざした産業であり、地域とともに繁栄するものです。地域やそこにおけるコミュニティの豊かさを守っていくためには、不断に手入れを怠らないことが必要です。それは、小売業の重要な使命のひとつなのです。これからはますます、地域やコミュニティの重要性が増していきます。イオンは、地域に特有の産品を発展させ、地域の人々の豊かな暮らしを促進し、地域やコミュニティの繁栄に能動的に貢献してゆきます。

イオンが目指しているのは、こうした平和への積極的な関与・人間の幸福と規範の下支え・地域の繁栄への貢献です。それが「お客さまを原点に」、すなわちお客さまを第一にするということの重要な基盤なのです。

お客さまを第一にするということは、自分第一ではない、つまり自分たちの都合で考え、動くのではないということです。その反対に、常にお客さまを第一に考え、誠実に行動すること、これがイオンの基本です。これを自分を映す鏡とし、すべてのイオンピープルのあらゆる判断と行動の基準とします。ややもすれば自社や自分にとって有利なこと、都合が良いことに流されがちになりますが、そうした傾向を断固否定し、乗り越えてゆくことが求められています。

そのためには、イオンは革新し続ける企業集団でなければなりません。

企業にとって、成長し存続し続けることは最重要の課題です。しかし、革新し続けることなくしては、企業は衰退し滅亡してしまいます。たとえ現状を続けることが安定的で楽なことであっても、それに安住せず、常に自らを変えていかなければなりません。そして、革新し続けるためには、お客さまの変化やさまざまな社会の変化について、常に先を見る先見性や洞察力が必要です。イオンピープルの一人ひとりは、お客さまの生活や社会が求めるものの進化と変化を先取りしてゆく所存です。

家業から企業へ、そして産業へとイオンは変貌してきました。もともとダイナミックな企業文化を備えているのです。何よりも恐れているのは、ますます激しくなっていく変化の中で、求められる革新や企業家精神を失い、大企業に特有の停滞に陥っていくことです。変化することのない、現状のままが続くような静的な均衡は続きません。より新しい革新に取って代わられないためには、イオンが最大かつ最先端の革新者であり続けるしかありません。それは創業の精神を保持することで常に刷新し続け、時代を先取りした組織であるという覚悟なのです。

イオンは、以上のことの浸透と実践を通じて、平和、人間、地域の維持と発展に貢献しうると信じて、行動してゆきます。