事業報告(2019年4月1日から2020年3月31日まで)
企業集団の現況
事業の経過及び成果
① 経済環境
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善を背景に、景気は緩やかな回復基調が持続したものの、米中の貿易摩擦に加え、年度後半の新型コロナウイルス感染症の国内外における拡大などの影響により、先行きに対する不透明感は拭えない状況にあります。
リース業界におきましては、2019年度のリース取扱高は前年度比6.2%増加して5兆2,983億円(公益社団法人リース事業協会統計、速報値)となりました。
② 企業集団の状況
こうした環境の下、当社グループは、2017年度~2021年度を対象期間とする中期経営計画「Frontier Expansion 2021」に取り組んでおります。中期経営計画の3年目となる2019年度もコーポレートスローガンである『前例のない場所へ。』の実践を通じ、新しいビジネス領域を切り拓き、事業ポートフォリオのフロンティアを拡大し続ける企業グループを目指して、計画に掲げたビジネス戦略・マネジメント戦略を着実に遂行いたしました。
2019年度における中期経営計画の遂行状況は次のとおりであります。
【ビジネス戦略】
中期経営計画「Frontier Expansion 2021」のビジネス戦略を着実に実行するため、不動産や航空機など成長ドライバーとなる戦略分野に経営資源を積極的に投入するとともに、新たなビジネス領域の拡大を進め、収益性の高い事業ポートフォリオの構築に取り組みました。
不動産分野では、大型商業施設を対象とした新規アライアンス先との協業など、有力デベロッパーとの提携取引拡大に取り組み、営業資産残高は中期経営計画で設定した中間目途値を大きく上回りました。
エネルギー・環境分野では、当社グループとして最大規模となる大規模太陽光発電所が新たに2基稼働しました。当社グループが運営する大規模太陽光発電所は2020年3月末現在で34基稼働しており、約57,000世帯分のクリーン電力を供給しております。また、消費電力の100%再エネ化を宣言した企業・団体を対象とした当社独自のファイナンスプログラム「芙蓉 再エネ100宣言・サポートプログラム」をスタートさせ、再エネ化・省エネ化に取り組むお客様へのサポートを進めました。
医療・福祉分野では、地域金融機関等との関係強化を進め、診療・介護報酬債権早期支払サービス「FPSメディカル」の取扱高が伸長しました。また、医療関係者向け季刊誌「Fuyo Medical Info」を発行し、病院経営に資する情報提供を積極的に行うことで、お客様との更なる関係深化を図りました。
航空機分野では、保有機体数、営業資産残高が着実に増加したほか、当社として初めて退役航空機の部品を販売するパーツアウト事業を開始いたしました。
海外分野では、北米を中心にピックアップトラックや物流機器のリース事業を展開する持分法適用関連会社2社との協業を推進いたしました。2018年度に有人化したシンガポール現地法人の営業活動も軌道に乗り、営業資産残高は順調に増加しました。
新たな事業領域であるBPO(※)分野では、連結子会社の株式会社インボイスが提供する通信・公共料金の一括請求サービスの拡販を進めました。また、総合アウトソーシング事業を行うNOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社を連結子会社化することで、幅広いBPOサービスを提供できる体制を構築いたしました。
※BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、お客様の業務の効率化や経営資源の集中などを目的に、一部業務処理を受託する事業です。
【マネジメント戦略】
マネジメント戦略では、ビジネス領域の拡大に伴い多様化するリスクに備えて、新規事業の取組推進に対応したリスク管理体制を充実させるとともに、海外現地法人を含めたグループベースでのコンプライアンス体制の整備を進めました。
資金調達では、営業資産の増強やグループの拡大に対応するため、社債の発行や債権の流動化など調達の拡充を進めました。なお、「芙蓉 再エネ100宣言・サポートプログラム」の原資として発行したグリーンボンドが、その新規性や独自性が評価され、環境省が創設したESGファイナンス・アワード・ジャパンのボンド部門において金賞(環境大臣賞)を受賞しました。
また、「働き方改革」の実現に向けて、各種会議資料のペーパーレス化や、ワークフローシステム(※)導入による回付書類の電子化を進め、業務の生産性・効率性の向上に取り組みました。
※ワークフローシステムは、経費精算や稟議書等の書類を電子化して、申請・承認手続を行うシステムです。
以上のことから、当社グループの連結業績につきましては、次のとおりとなりました。
当連結会計年度の契約実行高は前年度比14.5%増加の1兆3,597億3百万円となり、当連結会計年度末の営業資産残高(割賦未実現利益控除後)は前連結会計年度末比1,211億6千7百万円(5.4%)増加して2兆3,839億9千2百万円となりました。
損益面では、売上高は前年度比15.2%増加の7,123億3千万円、営業利益は前年度比16.1%増加の414億2千3百万円、経常利益は前年度比12.6%増加の440億4千5百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度比2.6%増加の261億8千7百万円となりました。
中期経営計画で設定した中間目途値に対しては、営業資産残高は順調に積み上がり、経常利益、ROA(営業資産残高経常利益率)はこれを上回る実績となりました。



セグメントの業績
当連結会計年度におけるセグメントの業績は次のとおりであります。
[リース及び割賦]
リース及び割賦の契約実行高は前年度比3.1%増加して5,802億5千6百万円となり、営業資産残高は前連結会計年度末比1.9%増加して1兆6,920億5千1百万円となりました。リース及び割賦の売上高は前年度比2.1%増加して5,288億5千3百万円となり、セグメント利益は前年度比10.8%増加して331億3千4百万円となりました。
[ファイナンス]
ファイナンスの契約実行高は前年度比27.4%増加して7,792億8千3百万円となり、営業資産残高は前連結会計年度末比16.0%増加して6,655億5千7百万円となりました。ファイナンスの売上高は前年度比6.7%増加して159億7千9百万円となり、セグメント利益は前年度比9.9%増加して113億3千万円となりました。
[その他]
その他の契約実行高は前年度比98.7%減少して1億6千3百万円となり、営業資産残高は前連結会計年度末比6.7%減少して263億8千3百万円となりました。その他の売上高は前年度比96.1%増加して1,674億9千7百万円となり、セグメント利益は前年度比26.8%増加して92億5千4百万円となりました。
企業集団の対処すべき課題
① 経営理念
当社グループは、次の4つを恒久的な経営理念として掲げ、その実現に努めております。
- ・リース事業を通じて企業活動をサポートし、社会の発展に貢献する。
- ・顧客第一主義に徹し、最高のサービスを提供する。
- ・創造と革新を追求し、株主・市場から評価される企業を目指す。
- ・自ら考え積極的に行動する社員を育て、働き甲斐のある職場を創る。
② 中期的な経営方針・戦略
今後の経済見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により経済活動の急速な悪化が続いており、厳しい状況が続くものと予測しております。
このような状況の下、当社グループは、コーポレートスローガンである『前例のない場所へ。』の実践を通じた新しいビジネス領域やビジネスモデルへのたゆまぬ挑戦により事業ポートフォリオのフロンティアを拡大し、国内リース事業を取り巻く環境が大きく変化していく中でも力強く持続的に成長する企業グループを目指してまいります。
中期経営計画の4年目となる2020年度も、経営目標の達成に向けて、中期経営計画「Frontier Expansion 2021」で掲げている3つの戦略、『戦略分野の選択と集中』、『フロンティアへの挑戦』、『グループシナジーの追求』を軸として、【ビジネス戦略】及び【マネジメント戦略】を着実に推進してまいります。
【ビジネス戦略】
1 戦略分野の選択と集中
最も成長が期待できる6つの「戦略分野」を利益成長のドライバーと位置付け、この分野に経営資源を集中的に投入してまいります。不動産、航空機などの良質な営業資産を積み上げつつ、BPOやモビリティビジネスをはじめとした収益性の高い新しい事業領域を拡大させることで、ROAの向上を図ってまいります。
「コア分野」においては、顧客基盤の維持・拡大により、当社グループの強みを維持・強化してまいります。なお、従来「コア分野」の一つとしていたオートリースは、新たな成長が見込まれるフロンティア(新領域)として、モビリティビジネスに位置付けを変更しております。
[戦略分野]
- ・不動産
- ・エネルギー・環境
- ・医療・福祉
- ・航空機
- ・海外
- ・新領域(※1)
[コア分野]
- ・国内コーポレート(※2)
- ・ベンダーリース
- ・ファイナンス
※1 新領域は新規事業やビジネス領域の拡大など新しい取組となるビジネスの総称であります。
※2 国内コーポレートはグループ各社の国内法人のお客様を中心としたビジネス分野を表しております。
2 フロンティアへの挑戦
「新領域」における取組として、グループ拡大に伴い多様な業務受託サービスの提供が可能となったBPO事業において、グループ全体でのお客様ニーズの把握とそれに対応したサービスメニューの提供を進めることで、お客様の「働き方改革」・「人手不足」への対応をサポートしてまいります。
また、新たな成長が見込まれるモビリティビジネスでは、オートリースに止まらず、車両・物流・倉庫に関連する事業に領域を拡げるとともに、2020年4月に連結子会社化したヤマトリース株式会社との連携によるシナジーを創出することで、グループ全体でビジネスの展開を加速させます。
3 グループシナジーの追求
グループの本社移転に伴いグループ会社間での連携をより一層緊密なものとし、お客様の多様なニーズに応じたソリューションをグループベースで柔軟かつ迅速に提供するとともに、本社機能の集約を進めることで、更なる生産性の向上に向けグループシナジーの最大化を図ってまいります。
【マネジメント戦略】
ビジネス戦略を支える経営基盤の強化戦略として、次のマネジメント戦略を推進してまいります。
1 フロンティア拡大に伴う新たなリスクへの対応力強化
2 コーポレート機能強化及び生産性向上
3 グループ力発揮のためのガバナンス体制の強化
また、当社グループの事業活動を通じて社会と企業の共有価値を創造するCSV(Creating Shared Value)経営の考え方を更に推し進め、持続可能な社会づくりに貢献するとともに、企業価値の向上に取り組んでまいります。
加えて、当社グループのBCP(業務継続計画)基本原則に基づき、新型コロナウイルス感染防止に取り組むとともに、お客様の事業継続に重大な影響を与えないことを最優先に業務の継続に努めてまいります。
③ 目標とする経営指標
中期経営計画「Frontier Expansion 2021」では、計画最終年度である2021年度の目標を以下のとおり設定しております。

経営目標の達成に向けて最大限努力してまいります。
株主の皆様におかれましては、より一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。