事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

当社グループの事業活動の状況

当社グループ(注)は、グループの企業価値の向上を目指し、証券業を中核とした事業活動を行っております。当社グループの当期(2021年度)の事業の概況は以下のとおりであります。

(注) 本事業報告において、「当社グループ」とは、当社及びその関係会社から成る企業集団を指します。

経済・市場環境

当期のわが国の経済は、2020年度に続き新型コロナウイルス感染症の影響を受け、経済活動が断続的に抑制されました。2021年4月に三度目の緊急事態宣言が発出されましたが、5月中旬には人出が増加傾向に転じたことなどもあって個人消費が持ち直し、4-6月期の実質GDPはプラス成長となりました。7月から開催された東京オリンピック・パラリンピック競技大会は個人消費を刺激したものの、東京都などに対する緊急事態宣言の再発出で7月から9月にかけて経済活動が抑制されました。さらに、国内自動車メーカーは、世界的な半導体不足や東南アジアでの感染拡大で部品の供給が滞り、大幅な減産を余儀なくされました。自動車の輸出や国内販売が落ち込んだこともあり、7-9月期の実質GDPはマイナス成長となりました。その後はワクチン接種の進展もあって感染拡大が落ち着き、経済活動が再開されました。旅行や外食などへの支出が急速に増加し、自動車の増産などもあって、10-12月期の実質GDPは感染拡大前である2年前の水準まで概ね回復しました。こうした中、政府は事業規模79兆円程度の経済対策を11月に決定しました。経済対策は2022年1-3月期以降のGDPを押し上げることが期待されましたが、1月には新規感染者数が急増し、自動車部品の供給が滞ったことや資源高も重なって経済活動は再び停滞しました。2月にはロシアがウクライナに侵攻し、日米欧などがロシアに対して経済制裁措置を実施した影響を受けて幅広い資源の価格が高騰しました。3月には日米金融政策の方向性の違いなどを反映して円安ドル高が進み、ドル円レートは一時125円/ドルまで進行しました。

株式市場においては、2020年度に株価が大幅上昇した反動に加えて、感染拡大防止策の断続的な実施や半導体不足などの影響により、当期は全般に上値が重い展開となりました。日経平均株価は、一時30,000円台を回復する場面もありましたが、当期末にかけてウクライナ情勢悪化への懸念から先行き不透明感が強まり、当期末の日経平均株価は27,821円43銭となりました。前期末比では△4.7%の下落となりました。

債券市場においては、世界的な景気の回復傾向を受けた金利の上昇圧力と、国内の極めて緩和的な金融環境の綱引き状態の中で、当期の10年国債利回りは小幅なプラス圏で推移しました。当期末にかけて、欧米での金融引き締めへの転換や、資源価格上昇をはじめとするインフレの進行を反映して、債券利回りは上昇基調を強めました。当期末の10年国債利回りは0.210%となりました。

連結業績の概況

(1)当社グループの損益の状況
(2)当社グループの資産・負債・純資産の状況

当社グループの事業活動の成果(各セグメントの実績)

リテール部門

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【主な商品・サービス】

株式、債券、投資信託、ラップ口座サービス、保険、預金、ローン、相続関連サービスなど

大和証券株式会社では、「クライアントファーストとクオリティNo.1の実現」に向け、「資産管理型ビジネスモデルへの転換」と「総資産アプローチによるソリューションビジネスの拡大」、「デジタルとリアルの融合によるお客様接点の拡大」により、お客様の最善の利益を追求しています。

当期は、前期に引き続き、お客様の声を起点とする商品・サービスの向上を目的に「お客様満足度協議会」を開催し、外国株式の取扱銘柄の拡充、相続手続きの迅速化によるお客様負担の軽減などに取り組みました。その結果、外部のNPS調査(注)において、対面証券部門で3年連続第1位を獲得しました。

お客様のあらゆるニーズに応える魅力的な商品・サービスの提供に努めており、2021年8月には、資産承継サポートと資産保全をコンセプトとしたラップ口座サービス「安心つながるラップ」の取扱いを開始しました。

また、2021年9月には、当社グループで組成する、主に都心部の不動産に小額で投資できる不動産小口化商品を販売ラインナップに加えました。

さらに、当社グループのお客様基盤の拡大や資産形成分野におけるサービス拡充のため、日本郵政グループ、信金中央金庫、株式会社クレディセゾンなど、強固なお客様基盤を有する企業と協業について検討を進めました。なお、2022年3月には、株式会社四国銀行と包括的業務提携について最終契約を締結しました。

店舗戦略については、効率的な営業店ネットワークを構築するため、小規模・低コストの営業所を増やした結果、当期末時点の国内店舗数は71営業所を含め、181店舗となりました。また、コロナ禍の中、ウェビナーやオンライン面談などのデジタルツールを積極的に活用することで、お客様との接点の拡充に努めました。

(注) NPS調査:NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が2021年10月に利用者を対象に実施した業界別のNPS(お客様のロイヤルティを数値化する指標)ベンチマーク調査結果。

ホールセール部門

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【主な商品・サービス】

グローバル・マーケッツ:株式、債券・為替、デリバティブ

グローバル・インベストメント・バンキング:株式の引受け、債券の引受け、M&Aアドバイザリー、上場コンサルティングなど

ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されています。

グローバル・マーケッツでは、主に機関投資家や事業法人を対象とした株式、債券・為替及びそれらの金融派生商品のセールス及びトレーディング、並びにリテール向けの商品供給及び販売サポートを行っています。

当期は、お客様の多様なニーズを踏まえたタイムリーな商品提供に加え、市場環境の変化に応じた株式・債券トレーディングが、収益に貢献しました。

また、「クオリティNo.1」の実現に努めた結果、日経ヴェリタスにおける会社別アナリストランキングでは、株式部門で4年連続第1位、金融市場部門で第2位を獲得しました。

グローバル・インベストメント・バンキングでは、有価証券の引受業務及びM&Aアドバイザリー業務などを行っています。

引受業務では、日本郵政株式会社の売出しやルネサスエレクトロニクス株式会社の公募売出しにおいてグローバル・コーディネーター(注1)を務めたほか、テスホールディングス株式会社によるSDGs-IPO(注2)、ソフトバンクグループ株式会社及びENEOSホールディングス株式会社による劣後債の発行など、多くの主幹事を務めました。

M&Aアドバイザリー業務では、国内において、凸版印刷株式会社によるトッパン・フォームズ株式会社の完全子会社化や株式会社フジとマックスバリュ西日本株式会社の経営統合などのグループ再編・業界再編など多くの案件に関与しました。海外においては、タイの9Basil Co., Ltd.との合弁会社DC Advisory (Thailand) Co., Ltd.を設立したほか、大和証券(中国)有限責任公司がM&Aアドバイザリー業務を開始しており、グローバルで質の高いM&Aアドバイザリーサービスを提供すべく体制強化を行いました。

(注1) グローバル・コーディネーター:株式の公募・売出しを国内外に対して実施するときに、全体の業務を統括する主幹事証券会社。

(注2) SDGs-IPO(Initial Public Offering):新規株式公開時の資金調達において、その資金使途及び発行体について、SDGsへの貢献、グリーンボンド原則などへの準拠性についての評価を第三者評価機関から取得したもの。

アセット・マネジメント部門

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【主な商品・サービス】

各種投資信託商品(組成・運用)、投資顧問、お客様・販売会社支援、不動産投資信託(組成・運用)など

大和アセットマネジメント株式会社は、運用力の強化や私募投資信託の販売会社の増加により運用資産残高の拡大に取り組みました。

「iFreeレバレッジNASDAQ100」、「脱炭素テクノロジー株式ファンド」の販売が好調で、それぞれ1,184億円、781億円の資金増加となりました。ETFへの資金流入を主因として、公募株式投資信託全体で当期の資金増加額は6,229億円、当期末の運用資産残高は23.6兆円となりました。

また、日本・中国両政府間の日中証券市場協力を背景とし、ETFを日本及び中国の証券取引所に相互に上場する「日中ETFコネクティビティ」に関して、中国株ETF2銘柄の上場が実現しました。

Global X Japan 株式会社は、テーマ型ETFやスマートベータ型ETF(注)などの12銘柄を上場させ、当期末の運用資産残高は683億円となりました。

不動産アセット・マネジメント分野では、新規物件の取得や資産の入替による不動産ポートフォリオの質の向上、既存物件の価値向上に努め、当期末の運用資産規模は1兆2,790億円となりました。

大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社は、2021年9月に、太陽光発電事業への投資に特化した私募ファンドである「DSREFコア・アマテラス投資事業有限責任組合」を組成しました。

(注) スマートベータ型ETF:財務指標や配当などの要素に着目して定量的に銘柄選定し、市場全体や業種別の平均よりも高いリターンを目指す指数に連動するETF。

投資部門

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【主な商品・サービス】

ベンチャー投資、プライベート・エクイティ投資、金銭債権投資、エネルギー・インフラストラクチャー投資など

大和企業投資株式会社は、国内外の様々なステージのベンチャー企業への投資を実行するとともに、投資先の上場などを通じた既存投資案件の回収を進めました。また、2021年10月にSSIアセットマネジメントをアドバイザーとするDAIWA-SSIAM Vietnam Growth Fund Ⅲ L.P.の組成を完了し、2021年12月に日本と台湾の未上場バイオベンチャーに投資する大和日台バイオベンチャー2号投資事業有限責任組合の組成を完了しました。

大和PIパートナーズ株式会社は、国内外で金銭債権、不動産ローンや企業向け投融資を実行しました。また、2022年3月に「ハイブリッド戦略による新たな資金循環の確立」に向け、ベンチャーデット(注1)事業を行うブルー・トパーズ株式会社(注2)を子会社としました。

大和エナジー・インフラ株式会社は、太陽光発電などの再生可能エネルギー事業に対する投資や、スペインで光ファイバー設備を提供するUcles Holdco S.L.への出資などのインフラ事業に対する投資を実行しました。

(注1) ベンチャーデット:スタートアップ企業に対する融資形態での資金提供を指し、株式の希薄化を抑えつつ成長資金を調達できる方法。

(注2) ブルー・トパーズ株式会社:2022年3月に大和ブルーフィナンシャル株式会社に商号変更。

その他

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【主な商品・サービス】

システムコンサルティング、システムインテグレーション、経済・社会に関する調査・研究、コンサルティング、銀行業務など

株式会社大和総研は、当社グループ向けシステム開発の効率性を向上させたことにより、ITコストの低減に貢献しました。このほか、株価や為替動向の予測などに関するAIの研究開発や当社グループ外の企業に対するシステムソリューションの提供を行いました。また、シンクタンクとしてESG/SDGsをはじめとする経済・社会の時流を踏まえた情報発信を積極的に行いました。

株式会社大和ネクスト銀行は、開業10周年を迎え、全国の大和証券株式会社の店舗網を通じて、魅力ある好金利の円預金や外貨預金、利便性の高いサービスを幅広いお客様に提供しました。2021年7月に応援定期預金の残高は1,500億円を突破しました。

株式会社CONNECTは、株式会社三菱UFJ銀行や株式会社リクルートとの資産形成ビジネスでの提携を開始しました。

2021年4月に設立した大和証券リアルティ株式会社は、当社グループのお客様向けに、不動産小口化商品の組成・販売を開始しました。

(3)当社グループの設備投資の状況

当社グループでは、お客様本位の営業体制の構築やお客様ニーズを捉えた商品・サービスの提供、事業の効率性・安全性を確保するためのインフラ整備、法令・制度への対応、リスク管理の高度化などを目的とする設備投資を行っております。

IT関連では、「デジタルとリアルのベストミックス」を追求するため、人とデータ・デジタル技術の強みを融合させ、収益拡大とビジネスの高度化・効率化を実現するための投資を行っております。当期は、営業員のコンサルティングをサポートするための新たなCRMシステム(注1)の構築、お客様にとって利便性の高い画面・メニュー構成を志向したインターネットサービスの刷新、日本郵政グループとの投資一任サービスに係る協業に向けたシステム対応など、お客様との接点拡大への取組みを進めました。また、大和証券株式会社の全役職員がデータを起点とした意思決定が行えるようデータを保管・分析する基盤の構築を進めるとともに、ミドル・バック業務の効率化、ゼロトラスト(注2)型セキュリティ基盤の導入に取り組みました。これらの取組みなどにより、総額約227億円のIT投資を行いました。

また、大和証券株式会社は、鶴見営業所、ふじみ野営業所、亀有営業所、新鎌ヶ谷営業所を新たに開設しました。

(注1)CRM(Customer Relationship Management)システム:お客様とのコンタクト履歴や取引記録などのお客様の情報を一元管理するシステム。

(注2)ゼロトラスト:社内外を問わず、守るべきデータ・システムへのあらゆるアクセスを信用せずに安全性の検証を行うセキュリティの考え方。

(4)当社グループの資金調達の状況

当社は、以下のとおり総額で300億円の社債を発行しました。

連結計算書類