事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
1.当連結会計年度の事業の状況
事業の経過及び成果
当連結会計年度における日本の株式市場は、継続的な物価上昇と賃上げ機運の高まりから、約30年続いたデフレ経済からの脱却の兆しが見られ、好調に推移しました。米中関係や中東、ウクライナ情勢等をはじめとする地政学リスクや、世界各国の中央銀行の金融政策の動向等、先行き不透明感はありますが、そのような不安定な世界情勢の中でも、日本の株式市場は、全体的に堅調な企業業績等が評価され、大きく上昇しました。その結果、2024年3月22日にはTOPIXが史上最高値に迫る2,813.22ポイントをつけ、2024年3月末時点でTOPIXは2,768.62ポイント(2023年3月末比+765.12ポイント)となりました。
このような状況において、当社を含むJPXグループ(本事業報告において、㈱日本取引所グループ及びその子会社からなる企業集団を指しております。)は、安定的市場運営という伝統的な取引所としての機能を強化しながら、同時に、その枠組みに過度にとらわれず新たな領域へも進んでいく意思を込めたExchange & beyondというスローガンの下、グローバルな市場間競争における日本の金融・資本市場全体の魅力向上に貢献するため、3つのFocus(Focus 1 企業のイノベーション・成長と資産形成の循環促進、Focus 2 マーケット・トランスフォーメーション(MX)の実現、Focus 3 社会と経済をつなぐサステナビリティの推進)に掲げる施策を着実に実施しました。
当社グループの当連結会計年度の連結業績は、営業収益は1,528億71百万円(前連結会計年度比14.1%増)、営業費用は715億54百万円(同6.0%増)、営業利益は874億44百万円(同28.1%増)となり、税引前利益は874億4百万円(同28.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は608億22百万円(同31.2%増)となりました。
事業区分別の概況
①取引関連収益
取引関連収益は、現物の売買代金並びに金融デリバティブ及びコモディティ・デリバティブの取引高等に応じた「取引料」、取引参加者の取引資格に応じた「基本料」、注文件数に応じた「アクセス料」、利用する売買システム施設の種類に応じた「売買システム施設利用料」等から構成されます。
当連結会計年度の現物市場における1日平均売買代金は4兆9,975億円(注)、金融デリバティブ市場の取引高合計は4億201万単位、コモディティ・デリバティブ市場の取引高合計は1,772万単位となりました。
この結果、当連結会計年度の取引関連収益は、基本料が9億78百万円(前連結会計年度比0.8%減)、現物取引料が391億63百万円(同24.7%増)、金融デリバティブ取引料が108億38百万円(同4.6%増)、コモディティ・デリバティブ取引料が14億76百万円(8.0%増)、その他アクセス料・売買システム施設利用料等が91億29百万円(同1.9%増)となり、合計615億85百万円(同16.0%増)となりました。
(注) プライム、スタンダード、グロース、TOKYO PRO Marketにおける普通株式及びETF・ETN/REIT等の立会内及び立会外の一日平均売買代金の合計を記載しております。
主な取組み内容
- ● 中流動性銘柄(TOPIX Mid400構成銘柄)における呼値の単位の適正化
- ● 望ましい投資単位の下限(5万円以上)の水準を撤廃
- ● 日経225マイクロ先物、日経225ミニオプション、TONA3か月金利先物等のデリバティブ新商品の取引開始
②清算関連収益
清算関連収益は、㈱日本証券クリアリング機構が行う金融商品債務引受業に関する清算手数料等から構成されます。
当連結会計年度の清算関連収益は、328億85百万円(前連結会計年度比17.4%増)となりました。
主な取組み内容
- ● 上場デリバティブ取引に係る証拠金の計算方法においてVaR方式を導入
- ● 金利スワップ取引清算業務におけるクロスマージン制度の対象に金利先物取引を追加
(注)VaR方式:過去の一定期間におけるマーケットデータの変動に基づいてポートフォリオの想定損益額を計算し、その一定水準の損失をカバーする金額を算出する方式
クロスマージン制度:異なる清算対象取引についてリスク相殺を行い、担保負担の軽減を図る制度
③上場関連収益
上場関連収益は、上場会社等から時価総額に応じて受領する「年間上場料」、新規上場や上場後の新株券の追加上場などの際に受領する「新規・追加上場料」から構成されます。
当連結会計年度の上場関連収益は、新規・追加上場料が増加したことなどから、155億90百万円(前連結会計年度比14.1%増)となりました。
主な取組み内容
- ● IPOのサポートを推進し、95件のIPOを実現(TOKYO PRO Marketは除く)
- ● 投資者の視点を踏まえた「資本コストや株価を意識した経営」のポイントと事例の公表
- ● アクティブETFの上場実現
④情報関連収益
情報関連収益は、情報ベンダー等への相場情報の提供に係る収益である相場情報料、指数ビジネスに係る収益等から構成されます。
当連結会計年度の情報関連収益は、相場情報料が増加したことに加え、指数ビジネスに係る収益が増加したことなどから、297億63百万円(前連結会計年度比7.8%増)となりました。
主な取組み内容
- ● TOPIXの段階的ウエイト低減銘柄の再評価結果を公表。TOPIXの見直しを推進
- ● JPXプライム150指数やTOPIX Micro Cap等の新指数の算出開始
- ● 「J-Quants」をはじめとする新規データサービスの提供開始
⑤営業費用
当連結会計年度の営業費用は、人件費が223億96百万円、システム維持・運営費が190億99百万円、減価償却費及び償却費が182億98百万円となったこと等から715億54百万円(前連結会計年度比6.0%増)となりました。
2.直前3連結会計年度の財産及び損益の状況
