事業報告(平成29年4月1日から平成30年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
1.事業の経過及びその成果
当連結会計年度の日本株式市場は、期初には北朝鮮情勢など地政学リスクに対する懸念や米国の経済政策に対する期待感の後退などを受けて軟調に推移する場面もありましたが、米国経済指標の好調さと日本企業の収益の上昇を背景に堅調に推移しました。期中は北朝鮮リスクが再度断続的に意識され一時軟調となった局面もありましたが、ミサイル発射が秋以降一時的に行われなかったこと、加えて日本の10月の総選挙で与党の優勢が伝わり与党の勝利に終わったことで政治の安定を好感し、また日本企業の好業績とあわせて、日経平均株価は史上最長となる16連騰を記録し、21年ぶりの高値水準へと回復するなど、非常に力強い株価の推移が続きました。年を明けた1月後半から米国の長期金利上昇とそれを受けた米国株式の下落をきっかけに、世界的に株式市場が大きく調整しました。加えて日本株式市場は為替が円高ドル安となったこともマイナスに作用して大幅に調整が入り下落しました。財務省の文書改ざん問題をきっかけに安倍政権の支持率が急落したことが投資家心理を冷やす要因となるなど年度末まで不安定な推移となったものの、日経平均株価は前連結会計年度末に比べ13.5%上昇し21,454.30円で取引を終えました。
当連結会計年度の韓国株式市場も、期初は地政学的リスクが浮き彫りになり軟調に推移したものの、大統領選挙前後の政治的な不確実性が解消されたこと、好調な企業業績などを背景に堅調な動きとなり、秋以降、米国株式市場の良好さや北朝鮮の追加挑発がなく緊張が和らぐ場面もあったことから、韓国株式市場はさらに上昇しました。日本株式市場と同様に米国の長期金利の上昇がきっかけとなる世界株式市場の調整により2月は下落し、さらに米国と中国の貿易摩擦激化への懸念から不安定な動きとなったものの、結果的には不安定なまま期末を迎えましたが、期中までの上昇分までは下落せず、韓国総合株価指数(KOSPI)は前連結会計年度末に比べ13.2%上昇して2,445.85で取引を終えました。
このような市場環境のもと、当社グループの当連結会計年度末運用資産残高は、1兆1,240億円(注1)と前期末に比して16.8%増加しました。比較的報酬料率の高い日本地域の運用資産残高が伸びたため残高報酬が増加し、加えて良好なパフォーマンスにより成功報酬も増加したことから、当社グループの業績は前期比107.3%増の65億69百万円の営業利益となりました。
事業の持続的かつ安定的な基盤となる収益力を示す指標である基礎収益(注2)も前期比28.3%増の31億69百万円(前期は24億69百万円)となり、実質的な収益体質は一層強化されております。
日本株式を投資対象とする運用戦略は、ほぼ年間を通じて安定した市場環境下であったこともファンドのパフォーマンスの追い風となり、子会社であるスパークス・アセット・マネジメント株式会社が運用するファンドは、運用評価機関から継続して高い評価を受けております。また、私どもの投資哲学や運用スタイルへの関心も引き続き高いことから、日本の個人投資家の皆様に「日本株ならスパークス」とのSPARXブランドをさらに幅広く認知いただくよう、当社ウェブサイトを通じた動画配信やメディアへのアプローチなど広報及び宣伝活動を積極化しております。
アジア株式を投資対象とする運用戦略は、東京・香港・韓国のファンドマネジャーがアジア企業への調査などを共同で行っており、昨年5月に公募投資信託の設定をいたしました。アジア企業の調査を通じ、今まで日本株式運用で培った運用手法を伝承することで「アジア株もスパークス」とのSPARXブランドを構築してまいります。
再生可能エネルギー発電事業のインフラ資産や不動産を投資対象とする実物資産の運用戦略は、全国の発電施設への投資を25件実行しており、投資対象も太陽光、風力から、バイオマスなどへと拡大しており、当期はバイオマス発電所も運転開始にまで至りました。また、これまで提供してきた発電事業等の開発段階から運転開始までのフェーズにおける投資(グリーン・フィールド投資)に加えて、運転開始後のフェーズにおける投資(ブラウン・フィールド投資)にフォーカスした、長期的に安定したキャッシュ・フローを源泉としたファンドを設立し、機関投資家等向けにご提供を開始しております。これにより自ら開発した発電設備のみならず外部からの発電設備の取得も行うことができます。今後も引き続きインフラファンドのパイオニアとして皆様のご期待にお応えすべく、魅力的な投資商品の提供を行ってまいります。
次世代の成長に資する投資を長期的な視点から実践し、投資会社として未来を創造する新たな領域を開拓するため設立した未来創生ファンドは、平成30年3月末で367億円の規模となっております。当該ファンドは、既に国内外のベンチャー企業等への投資を着実に実行しており、来年度早々にも投資額が投資限度額に達する見通しであります。2号ファンドの設立準備を進め、運用資産残高の更なる積み上げを目指してまいります。
上記の結果、当連結会計年度における残高報酬は前期比14.6%増の85億68百万円となりました。一方、成功報酬(注3)は、良好なパフォーマンス等により前期比238.4%増の44億76百万円となり、営業収益は前期比48.5%増の132億27百万円となりました。
営業費用及び一般管理費は、前期比16.0%増の66億58百万円となりました。これは、主に営業収益の増加に伴う支払手数料及び堅調な業績に伴って賞与等が増加したことによるものです。
これらの結果、営業利益は前期比107.3%増の65億69百万円、経常利益は前期比109.7%増の66億68百万円となりました。税金等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比99.5%増の46億81百万円となりました。
(注1)当連結会計年度末(平成30年3月末)運用資産残高は速報値であります。
(注2)基礎収益とは、経常的に発生する残高報酬(手数料控除後)の金額から経常的経費を差し引いた金額であり、当社グループの最も重要な経営指標のひとつであります。
(注3)成功報酬には、不動産購入・売却に対して当社グループがファンドから受ける一時的な報酬や、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所スキームの組成の対価等として受ける一時的な報酬(アクイジションフィー)を含んでおります。
2.対処すべき課題
当年度は、前年度比で大幅な増収増益を達成し、AUM(運用資産残高)、営業利益、1株あたり配当という3つの主要な経営指標で、過去の業績ピーク時の約7割まで回復致しました(よって今年度の決算を「7合目決算」と総括しています)。
来年度以降は、10合目にあたるグループ運用資産残高2兆円の達成に向けて努力を続けるだけでなく、10合目を超えた先の新しい頂上に向かう準備のため、また、企業価値を継続的に高め、「世界で最も信頼・尊敬される投資会社になる」ことで、「世界を豊かに、健康に、そして幸せにする」というミッションを実現するため、主として以下の課題に取り組んでまいります。
課題の第一として、市場に影響されない安定的な投資戦略と収益性の高い投資戦略によるハイブリッド型のビジネスモデルを、さらに強化・拡大してまいります。
成長実現のための4本柱(「日本株式」「ワンアジア株式」「実物資産」「未来創生」)という、従来からの高収益な上場株式の投資戦略と安定性のある実物資産/未来創生の投資戦略とのハイブリッドモデルを強化することで、経営体質の更なる充実を図るとともに、特徴のある魅力的な「感動投資」(『結果としての運用パフォーマンスにとどまらず、その結果に至る投資の全プロセスを投資家の皆様に感動していただけるような当社の特徴ある投資』を意味します)を実践しつづけることで、今後とも当社ならではの投資戦略を継続的に構築し、ビジネスモデルを更に多様化・安定化してまいります。
既存ビジネスの中では、特にワンアジア株式投資戦略について、これまでも進めてきた韓国・香港のリサーチチームと東京のリサーチチームとの協業による強化をさらに進め、日本株で採ってきた商品の差別化戦略を徹底することで、日本・韓国・香港の3拠点が1つとなってアジア株のAUM拡大に不退転の決意で臨み、具体的に目に見える形で成果を出してまいります。
課題の第二として、今後の積極的な事業拡大を支える、効率的で顧客本位の業務執行体制を維持・改善してまいります。
「感動投資」の実践によりユニークな投資戦略を提供しつづけるには、役職員一人一人が個人及び組織のレベルで創造的かつ柔軟であることが必要不可欠です。また、革新的な投資の実践には、必ずしもこれまでの経験が参考にならず、形式的にルールに従うだけでは顧客本位とは言えないケースもあることから、顧客本位の真の意味を常に組織全体が問い続けることで、「もっといい投資」の実践を通して成長し続ける企業文化の構築も必要となります。
これらの課題を、会社や組織の枠を超えて全ての役職員が共有し、組織全体として協働できる体制と企業文化の維持・強化に継続して取り組むことが、お客様に継続的に選択・支持され、質の高い長期投資を実現するファンドを長く安定して運用し続けるための、安定した組織体制に繋がるものと考えます。
独立系の上場資産運用会社であればこその柔軟性を活かし、今後も顧客本位の業務運営に努めてまいります。
課題の第三として、事業の拡大を支える優秀な人材の確保、育成及び次世代のマネジメントを育成、登用してまいります。
当社グループのビジネスは、「人が全て」と言っても過言ではありません。この点から優秀な人材の採用を社内における最優先課題の一つと位置付け、人事部門、採用希望部門の他、関係部門やマネジメントも一丸となって積極的に取り組んでまいります。
一方で、人件費は経費の中で最も金額の大きい固定費であって、その調整は難しいばかりか、間違った採用は周囲に悪影響を与えることで、比較的小さい組織である当社グループにとっては死活問題ともなり得ます。よって採用自体は、多様性に配慮しつつも、当社グループの企業文化との親和性、周囲に良い影響を与えることのできる優れた人間性、変化への柔軟な対応力などを慎重に見極めてまいります。
また、次世代のマネジメント育成方法としては、社内の人材に対してより高い課題を与えて自覚を促していく他、社外から優秀な人材を採用し、ある程度の時間を掛けて育成することで社内の優秀な人材と切磋琢磨させていくことが合理的であると考えます。
当社は、コーポレートガバナンス・コード導入前より複数の社外取締役を選任するなど、ガバナンスの強化にはこれまでも留意してまいりましたが、今後は、次世代マネジメントの育成、登用などの重要な課題に対しても、より積極的に取り組んでまいります。
課題の第四として、「日本/アジアへの投資ならスパークス」という圧倒的な支持をいただけるブランドを、じっくりと構築してまいります。
運用商品は、運用パフォーマンスや運用資産残高など以外に目に見えるものが少なく、一般的には理解しにくいものだと考えます。そこで、広報や宣伝活動等の様々な手法を通じて、それぞれの運用商品の背景に共通して存在している当社グループの投資哲学や、具体的に各運用商品に反映されている投資の考え方、インテリジェンスを、目に見える形でご紹介することで、他社とは異なる特徴ある「感動投資」の意味するところを具体的にご理解頂き、短期的な運用パフォーマンスではなく、中長期の運用パフォーマンスの裏づけとなる当社の独自性・優位性をご支持頂けるように努めてまいります。
また、上記活動の結果、1,800兆円もの巨額の金融資産を有する日本の個人投資家に対して、当社を「世界の投資家の水先案内人(キャピタル・ナビゲーター)」として安心してご選択いただけるよう、また当社を、アジアを代表するブランドとしてご認識いただけるよう、高い志をもって、この挑戦に引き続き取り組んでまいります。
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