事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過及びその成果
当連結会計年度の日本株式市場は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による前期3月の大幅な下落から、新型コロナウイルス感染症の欧米諸国での新規患者数の減少や、治療薬に関する報道、経済活動の早期再開への期待などにより、4月から上昇し始まりました。世界的に新型コロナウイルス感染拡大が続いたものの、経済活動の再開や米国雇用統計の改善を受け、日経平均株価は新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復しました。その後は、欧州諸国を中心に新型コロナウイルス感染再拡大が顕著になるなど一時的に軟調な展開となるものの、日経平均株価は各国の積極的な財政、金融政策、ワクチンの接種開始などを背景に経済活動が正常化するとの期待から大幅に上昇し日経平均株価は1990年8月2日以来の30,000円台を回復しました。年度末にかけて米国の金融緩和策の「出口」への警戒感、なお続く新型コロナウイルスの変異株による感染再拡大などから下落したものの、日経平均株価は前期末に比べ54.2%と大幅に上昇し29,178.80円で取引を終えました。
このような市場環境のもと、当社グループの当連結会計年度末運用資産残高は、1兆5,356億円(注1)と前期末に比して36.7%と大幅に増加しました。
事業の持続的かつ安定的な基盤となる収益力を示す指標である基礎収益(注2)は、残高報酬の増加及び新型コロナウイルスの影響に伴う旅費交通費の減少等により、前期比23.8%増の44億44百万円(前期は35億91百万円)となっており、実質的な収益体質は着実に強化されております。
日本株式を投資対象とする運用戦略は、子会社であるスパークス・アセット・マネジメント株式会社が運用するファンドについて、運用評価機関から継続して高い評価を受けております。また、私どもの投資哲学や運用スタイルへの関心も引き続き高いことから、日本の個人投資家の皆様に「日本株ならスパークス」とのSPARXブランドをさらに幅広く認知いただくよう努めております。
アジア株式を投資対象とする運用戦略は、東京・香港・韓国のファンドマネジャーがアジア企業への調査などを共同で行っており、投資アイディアを共有することを続けた結果、パフォーマンスも上がり運用資産残高の増加につながり始めています。アジア企業の調査を通じ、今まで日本株式運用で培った運用手法を伝承することで「アジア株もスパークス」とのSPARXブランドを構築してまいります。
再生可能エネルギー発電事業のインフラ資産や不動産を投資対象とする実物資産の運用戦略は、全国の発電施設への投資を31件実行しており、再生可能エネルギー投資戦略の運用資産残高は2,409億円の規模となっております。太陽光のみでなく、風力・バイオマス発電所も安定稼動させており、今後も投資対象先を拡大してまいります。また、発電事業等の開発段階から運転開始までのフェーズにおける投資(グリーン・フィールド投資)に加えて、運転開始後のフェーズにおける投資(ブラウン・フィールド投資)にフォーカスした、長期的に安定したキャッシュ・フローを源泉としたファンドも運用しております。ブラウン・フィールドのファンドでは、当社グループで開発した発電設備のみならず外部からの発電設備の取得も行うことができます。今後も引き続き再生可能エネルギーファンドのパイオニアとして皆様のご期待にお応えするべく、魅力的な投資商品の提供を行ってまいります。
次世代の企業の成長に資する投資を長期的な視点から実践し、投資会社として未来を創造する新たな領域を開拓するため設立した未来創生ファンドは、投資が完了した1号ファンドだけでなく2号ファンドにおいてもIPO等のイグジット案件も出てきており、これまでの投資の成果が、具体的に投資家の皆様へのリターンとして実現してきております。また、宇宙企業に投資を行う宇宙フロンティアファンドや、日本における高い技術・技能を維持しモノづくりの力を今後も発展させていくために、優れた技術・人財・サービスを有する国内のモノづくり企業に投資する日本モノづくり未来ファンドを設立しております。これらのファンドについても投資を着実に実行し、投資実績を積み上げ、質の高い投資を通じて、革新的な技術やビジネスモデルで世界をリードする企業を発掘・育成することで未来社会に貢献することを目指してまいります。
上記の結果、当連結会計年度における残高報酬(注3)は前期比2.0%増の109億22百万円となりました。さらに、成功報酬(注4)は、前期比91.6%増の31億66百万円となり、営業収益は前期比14.6%増の142億95百万円となりました。
営業費用及び一般管理費は、前期比0.6%減の79億46百万円となりました。これは主に成功報酬の増加に伴い利益が増加したことで業績賞与が増加したものの、新型コロナウイルスの影響により旅費交通費が減少したこと等により費用が減少したものです。
これらの結果、営業利益は前期比41.7%増の63億49百万円、経常利益は前期比39.9%増の61億89百万円となりました。また、投資有価証券評価損及び減損損失を特別損失に計上し、税金等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比50.7%増の34億68百万円となりました。
(注1)当連結会計年度末(2021年3月末)運用資産残高は速報値であります。
(注2)基礎収益とは、経常的に発生する残高報酬(手数料控除後)の金額から経常的経費を差し引いた金額であり、当社グループの最も重要な経営指標のひとつであります。
(注3)残高報酬には、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所等の管理報酬を含んでおります。
(注4)成功報酬には、株式運用実績から発生する報酬の他に、不動産購入・売却に対して当社グループがファンドから受ける一時的な報酬や、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所スキームの組成の対価等として受ける一時的な報酬(アクイジションフィー)及び再生可能エネルギーファンドが、投資対象である発電所を売却して譲渡益が発生する場合に受領する報酬を含んでおります。
対処すべき課題
新型コロナウイルス感染症が世界経済へ悪影響を及ぼす一方、各国の積極的な財政・金融政策、ワクチンの接種開始などを背景に経済活動が正常化するとの期待から、日経平均株価をはじめ、各国株式市場が概ね堅調に上昇したことに加え、引き続き安定して高い運用実績を維持した結果、当年度のグループ運用資産残高(AUM)は前年度末比36.7%増加し、1兆5,356億円(注1)となりました。
これに合わせて、費用面も引き続き適切にコントロールしたことで、事業の持続的かつ安定的な基盤となる収益力を示す指標である基礎収益(注2)は、前年度比23.8%増の44億44百万円(前年度は35億91百万円)となり、安定的に稼ぐ力を着実に強化することができました。
また当年度は、前年度に比して成功報酬がさらに増加したことによって、当社グループ特有の残高報酬と成功報酬によるハイブリッド型収益モデルが有効に機能し、営業利益は前年度比41.7%増の63億49百万円(前年度は44億79百万円)となり、増収増益を達成しました。
来年度についても当社グループの厚い人財力、投資力によって運用パフォーマンスの質を維持し、増収増益を目指すとともに、当社グループのミッションである「世界を豊かに、健康に、そして幸せにする」を実現するため、ESG(注3)への取り組みを通じて継続的な企業価値向上を実現すべく、主として以下の課題に取り組んでまいります。
課題の第一として、5年後の2026年3月期までに運用資産残高(AUM)3兆円を達成するため、市場に影響されない安定的な投資戦略と収益性の高い投資戦略によるハイブリッドのビジネスモデルを、引き続き強化・拡大してまいります。
成長実現のための4本柱(「日本株式」「ワンアジア株式」「実物資産」「プライベートエクイティ」)という、従来からの高収益な上場株式の投資戦略と安定性の高い実物資産/プライベートエクイティ投資戦略のAUMを、2026年3月末までの5年間で、前年度末残高の倍にあたる3兆円に増加させることを当面の目標としてそれぞれ引き続き強化することに加え、今後も当社グループならではの革新的な投資戦略を継続的に構築し、ビジネスモデルをさらに多様化・安定化することで、持続的な企業価値向上を実現してまいります。
また、日本株式サステナブル投資戦略や再生可能エネルギー投資戦略など、直接的にESGを投資対象とすることが明確な個別の投資戦略以外の投資戦略も含めたビジネスモデル全体と、当社グループのミッション、ビジョン、パーパスなどと合わせて、当社グループのサステナビリティについての取組みを明確にし、投資対象の多角化によるシナジー効果など、当社の強みについて株式市場と適切に対話することで、株式市場から適切にご評価いただけるようIR活動にも取り組んでまいります。
4本柱についての、当面の主な課題は以下の通りです。
日本株式投資戦略については、例えばこの4月にも、代表的な外部評価機関であるR&I社から、国内中小型株式部門は過去20年、国内株式コア部門は過去10年のトラックレコードでそれぞれ最優秀賞をいただくなど、長期に渡る非常に高いパフォーマンスを背景に、当面1,000億円程度のAUMを目標に再拡大しているロング・ショート戦略や、エンゲージメント戦略など収益性の高いオルタナティブ商品への取組みを強化してまいります。
また、欧州などを中心にESG投資への需要がコロナ禍で一層加速する中、今年度AUMが倍増したサステナブル投資戦略については、特に海外機関投資家から引き続き強いご関心を寄せて頂いております。ただ闇雲に規模を追うのではなく、質の高い運用を継続しつつも、来年度はAUMを更に倍増させてまいります。
ワンアジア株式投資戦略については、日本・韓国・香港の3拠点が一丸となった運用力強化が成果に結びつつあり、良好な運用成績を背景に今年度はAUMを倍増させることが出来ました。中長期的には、本投資戦略を日本株式投資戦略と同規模以上に成長させるべく、時間を掛けて重層的で高品質な運用体制を構築してまいります。
実物資産投資戦略については、太陽光から、バイオマスや地熱など引き続き高い投資リターンが見込まれる発電所へと、開発の重点を移すとともに、グリーン水素(注4)やコーポレートPPA(注5)など、固定価格買取制度後を見据えた投資戦略の開発を積極的に進めてまいります。
プライベートエクイティ投資戦略については、未来創生2号ファンドからの投資が順調に進んでいることから、今年度は「カーボン・ニュートラル」にも資する会社も投資対象に含めた、新しいファンドのローンチを目指してまいります。また今後、未来創生1号、2号ファンドが投資した企業が、株式市場に上場する等エグジットすることに伴う売却益の一部が、当社グループの成功報酬として計上されてまいりますので、この成功報酬を最大化するためにも引き続き売却活動に注力してまいります。その他、今年度設立した宇宙フロンティアファンドや日本モノづくり未来ファンドについても、投資を着実に実行し、質の高い投資を通じて、革新的な技術やビジネスモデルで世界をリードする企業を発掘・育成し、未来社会に貢献することを目指してまいります。
さらに上記の4本柱に加えて、AIの利用が前提となった新しい時代の成長領域であるエネルギー、医療・介護、金融などと、量子コンピュータなどの新しい道具が結びつく領域へ、保守的な財務運営方針のもと、一定の自己資金やグループ内リソースの範囲で、当社グループROEの向上に貢献する当社らしい投資をさらに進めてまいります。またこのような成長領域への投資を通じて、新しいビジネスをゼロから生み出す企業文化と起業家精神を活性化し、これまでのファンドビジネスをさらに強化するとともに、企業文化や変わらない投資哲学を次世代に継承しながら、新しい取り組みを自律的に続けることのできる強い組織を創造してまいります。