事業報告(2023年3月1日から2024年2月29日まで)
企業集団の現況に関する事項
当事業年度の事業の状況
① 事業の経過及びその成果
a.連結経営成績に関する説明
当連結会計年度の経営成績は、営業収益は4,231億6千8百万円(前期比106.3%)と増収で過去最高を達成、営業利益は464億1千1百万円(同105.5%)、経常利益は370億8千6百万円(同101.9%)といずれも増益となりました。カテプリ(北海道)の管理・運営業務終了を決定したことによる店舗閉鎖損失引当金繰入額6億5千万円、減損損失19億6千万円等、特別損失に36億6千万円を計上しましたが、前連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症による損失30億3千7百万円、固定資産除却損24億9千9百万円、減損損失44億6千1百万円、店舗閉鎖損失引当金繰入額20億1千7百万円等、特別損失に132億2千9百万円を計上し、特別損益が前期比111億4百万円改善したことから、税金等調整前当期純利益は363億7千4百万円(同147.9%)となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は203億9千9百万円(同157.0%)と増益となりました。
連結経営成績




セグメント別経営成績

各国における営業概況は次に記載のとおりです。なお、海外現地法人の決算期は12月末のため当連結会計年度の業績は2023年1月~12月累計期間の業績となります。
海外(中国)

イオンモール武漢江夏(湖北省武漢市)

中国既存モール専門店売上 前期比推移

2022年12月にゼロコロナ政策が緩和され、特に江蘇省、湖北省のモールを中心に客足は回復基調で推移しました。中国では不動産市場の低迷等による経済成長率の低下が懸念されていますが、当社モールは飲食、アミューズメント業種を中心に好調に推移しました。7月28日には中国の旗艦店であるイオンモール武漢経開(湖北省武漢市)を増床リニューアルオープンしました。これらの結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比130.3%(対象21モール)と伸長しました。
海外(ベトナム)

イオンモール ハイフォンレチャン(ハイフォン市)

ベトナム既存モール専門店売上 前期比推移

4月以降、輸出製品工場の倒産による若年層の失業率増加等、外需低迷や電力不足に伴う経済成長鈍化の影響に加え、前年が政府のウィズコロナ政策への転換によってペントアップデマンド(抑制されていた需要)が顕在化し好調だった反動から、第2四半期(4月~6月)および第3四半期(7月~9月)の既存モール専門店売上は前年を下回るトレンドで推移しました。第4四半期(10月~12月)は、11月に実施したブラックフライデー企画等の集客強化策の効果もあり、前年並みのトレンドに改善しました。これらの結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比104.4%(対象6モール)と伸長しました。
海外(カンボジア)

イオンモール ミエンチェイ(プノンペン都)

新型コロナに伴う行動制限は大幅に緩和され、当社モールは通常営業しました。一方、イオンモール ミエンチェイの前面道路となるフンセン道路の陸橋工事による渋滞については、迂回路や周辺道路の開通工事等の渋滞対策が進められていますが、集客面で大きく影響を受けました。既存モールでは、11月4日に1号店イオンモール プノンペン(プノンペン都)を増床リニューアルしましたが、増床エリアの一部区画での工事遅れや大型専門店との交渉が難航し、また、中国人旅行客を中心としたインバウンド需要の減少による影響を受けました。これらの結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比90.9%(対象2モール)となりました。
海外(インドネシア)

イオンモール タンジュンバラット(南ジャカルタ区)

ウィズコロナへの移行により行動制限が緩和され、人流の正常化、経済活動の活発化に伴い内需が堅調に推移したことから、当社モールへの集客は改善基調となりました。既存モールでは、1号店イオンモールBSD CITY(バンテン州)において、2021年の第1期リニューアルに続き、44店舗を刷新する第2期リニューアルを実施しました。これらの結果、当連結会計年度の既存モール来店客数は前期比119.7%(対象4モール)と伸長しました。
日本

イオンモール豊川(愛知県)

既存モール専門店売上 前期比推移

3月13日より新型コロナ感染対策としてのマスク着用が個人の判断となり、また5月8日より新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に引き下げられたことでお客さまの外出意欲は改善、各モールでは集客イベントを継続的に実施しました。加えて、イオンモールアプリやWAON POINT施策との連動等、マーケティングデータに基づくお客さまの購買意欲を喚起する取り組み、ハロウィンやブラックフライデー、年末年始商戦における大型プロモーション等、さまざまな集客強化策を実施しました。インフレによる物価上昇が客単価アップに繋がり、当社モールの売上は改善基調で推移しました。これらの結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比105.6%(対象91モール)となりました。
成長施策および新たな取り組み
2024年2月期(2023年度)を初年度とする中期経営計画(2023~2025年度)を策定し、これまで成長施策として推進してきたESG経営のさらなる進化を図るべく、「国内外におけるリージョナルシフトの推進」「ヘルス&ウエルネスプラットフォームの創造」を取組方針とし、ステークホルダーの皆さまに対して経済価値、社会価値、環境価値を創出する「真の統合型ESG経営」の実現により持続的な成長をめざしていきます。具体的には、「海外成長マーケットにおける事業機会の発掘と事業化」「国内におけるビジネスモデル改革の推進」「既存事業の枠組みにとらわれない新たなビジネスモデルの創出」を成長施策として展開し、成長を支える基盤構築として「サステナブル視点での財務基盤強化と組織体制構築」を推進していきます。

国内外におけるリージョナルシフトの推進


グローバルな目標を、出店する各国、各地域というローカルな特性に翻訳し、その地域に関わる、多様な立場の人たち、ステークホルダーと対話しながら新しい価値を生み出していく行動こそが、「持続可能な地域の創造」につながると考えています。
私たちは、地域課題にフォーカスし、共感できる人たちとともに、新しい価値を創造するために行動し、地域のため共感を醸成し、ひととのつながりを深め、広げる企業をめざしてまいります。

地域課題にフォーカスし、共感できる人たちとともに、新しい価値を創造する
ヘルス&ウェルネスプラットフォームの創造

当社は施設の「めざす姿」を「体の健康、精神の健康、環境の健康、社会的健康を基盤に、豊かな人生をデザインしていく、それが自己実現につながる施設」とし、当社がLife Design developerとして、事業活動を通じ、Well-beingな暮らしづくりを継続してサポートするプラットフォームづくりができるよう取り組んでいきます。


“体の健康(ヘルス)”を超えて、一人ひとりのライフスタイルデザインをサポート
海外成長マーケットにおける事業機会の発掘と事業化
成長性の高いエリアにおける物件の探索・確保を進め、新規出店を加速していきます。最重点出店エリアであるベトナムでは、ホーチミン市を中心とした南部、ハノイ市を中心とした北部の両エリアに加えて、中部エリアの周辺都市においてもドミナント出店を推進していきます。中国では、成長性の高い内陸部の湖北省・湖南省を重点出店エリアと位置づけ、新規出店を加速していきます。また、モール単一フォーマットによる事業展開から、各国および各地域が抱える課題を深掘りし、商業施設の枠組みにとらわれない新たな事業機会を探索していくことで、地域ごとの特性に合わせた新たな価値創造モデルで事業展開を図っていきます。
ベトナムにおける新規物件確保の推進
現在展開する南部エリア(ホーチミン市・ビンズオン省)、北部エリア(ハノイ市・ハイフォン市)にベトナム第3経済圏である中部エリア(ダナン市・フエ省)を加え、その周辺都市におけるドミナント出店を加速しています。今後、さらなるベトナム事業の基盤確立をめざし、地方都市への展開を推進していくことで、著しい経済成長を遂げるベトナムの持続的な発展とまちづくりに貢献していきます。
12月に南部のカントー市および北部のバクザン省との間で新たに「ショッピングモール開発に関する投資および事業推進についての包括的覚書」をそれぞれ締結しました。また、2024年1月には北部のクアンニン省において、開発会社であるViet Phatグループとショッピングモール開発事業の協力に関する基本合意書を締結しました。

- 2023年12月
- 南部のカントー市、北部のバクザン省との相互協力協定を締結
■Bac Giang(バクザン)省
北部に位置し、首都ハノイ市から車で約1時間、約190万人の人口を有する都市

■Can Tho(カントー)市
ホーチミン市から西南に約160Kmに位置し、人口約125万人を有する中央政府直轄市

- 2024年1月
- クアンニン省において、開発会社であるViet Phatグループと協力協定を締結
■Quang Ninh(クアンニン)省
北東部に位置し、約135万人の人口を有する都市

成長性の高い中国内陸部における出店拡大
2023年11月に湖北省4号店となるイオンモール武漢江夏をオープンしました。当モールでは、大人から子供まで楽しめるエンターテインメント施設や多様な食を体験できるゾーンを配置しました。また、モール館内に5つのテーマごとの吹き抜け空間を配置する他、屋上にはバスケットコートやイベント広場、芝生の多目的広場等のさまざまな用途で活用可能な公園を設置し、幅広い世代のお客さまが交流できるスペースを設けています。
湖南省においては、2024年に1号店イオンモール長沙星沙(湖南省長沙市)、2025年に2号店イオンモール長沙湘江新区(湖南省長沙市)の出店を計画しています。湖南省は中国華中エリアに位置し、その省都である長沙市は直近10年間の人口増加が300万人を超える等、近年高い経済成長を継続しています。当社は長沙市政府と2021年5月に包括的連携契約(5年間で5ヶ所のモール出店)を締結しており、今後も地域に新たな価値を提供し、持続的な成長をめざしていきます。
- 2023年11月
- イオンモール武漢江夏 オープン


- 2024年・2025年
- 湖南省長沙市に2店舗の出店が決定
湖南省長沙市は直近10年間の人口増加が300万人を超える等、高い経済成長を継続


国内におけるビジネスモデル改革の推進
国内においては、外部環境では人口減少、少子高齢化に伴う人手不足が顕在化し、また内部環境ではアパレル業種を中心とする専門店売上の低迷、建築コスト高騰による投資効率の低下等が大きな課題となっています。このように日々大きく変化する事業環境を機会とし、変わりゆく地域の課題やお客さまの価値観、潜在的なニーズに対応すべく、既存のビジネスモデル改革を推進していくことで、国内事業における集客力強化および収益性向上を図っていきます。
お客さまの五感を満たす快適な空間の提供
お客さまの消費行動や購買習慣の変容が加速する中、当社ではカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験価値)を創造し、リアルモールの魅力を最大化していくことで、継続的に集客力向上を図っています。開放的で居心地の良い外部ゾーンに対するお客さまのニーズが高まる中、「安らぎ」や「心地よさ」といった五感に訴えかける仕掛けを取り入れる等、お客さまにとって憩いの場となる施設環境づくりを推進しています。
THE OUTLETS SHONAN HIRATSUKAでは、オープンエアな環境を最大限活かし、館内各所に植栽景観を構築、施設中央には緑溢れるテラス席を設けた開放的な空間を配置することで、公園を散歩しながらショッピングを楽しめるような、居心地の良さを感じられる環境空間としました。また、イベントコートには、約300インチの大型LEDビジョンを設置、一面に敷き詰められた人工芝でくつろぎながら、スポーツ・エンターテインメントイベントの観戦や、観覧しながらの飲食もお楽しみいただける空間を創出しました。
- 2023年4月
- THE OUTLETS SHONAN HIRATSUKA オープン
「安らぎ」や「心地よさ」といった五感に訴えかける仕掛けを取り入れ、お客さまに憩いの場を提供

緑溢れるテラス席を設けた開放的な空間

大型LEDビジョンでのパブリックビューイングを楽しめる
抜本的な事業構造改革の実行
外部環境およびお客さまの価値観が加速度的に変化する中、既存事業における深化を進めてきましたが、一部の当社施設においてはこの変化への対応が十分ではなく、集客力および収益性の低迷によりキャッシュ・フロー創出力が低下しています。活性化投資を含めた商圏内の競争力アップと運営効率の改善を進めるほか、不動産・財務的なアプローチからの抜本的な構造改革を視野に入れた取り組みを進めています。2023年6月には、カテプリの管理・運営業務を2024年6月末で終了することを決定いたしました。将来的な営業利益の最大化に向けて、引き続き抜本的な事業構造改革を確実に実行していきます。
マーケットに合わせた出店モデルの展開
今後のモール開発の方向性は、様々な視点でのマーケット分析に基づき、出店エリアの立地特性に応じた多様な開発パターンによる出店モデルの構築を推し進めることで、新たな価値提案を図っていきます。
2023年10月にオープンしたJIYUGAOKA de aoneは、自由が丘の街に時間と共に馴染んでいく環境デザインをめざし、都会的で緑豊かな街歩きのできる街路空間を環境デザインコンセプトとしています。開放感あふれる屋外空間として約1,000㎡からなる緑豊かなテラスを3階に配置し、地域の人々・来街者の方々が憩い集える空間を提供します。また、多摩産材ヒノキを通路や階段部分にウッドデッキとして利用し、資材の地産地消に取り組むほか、使用電力の100%を実質的にCO2フリー電力で賄う施設運営とし、地球温暖化防止および脱炭素社会実現に向けた取り組みを推進しています。
- 2023年10月
- JIYUGAOKA de aone オープン
東京都目黒区の自由が丘駅至近に、緑豊かな街歩きのできる空間を創出


緑道を歩きながらお店や公園のようなテラスに、偶然出会う自由が丘らしい商業環境を実現
2023年12月には、2019年2月に閉店したダイエー横浜西口店の跡地にCeeU Yokohamaがオープンしました。敷地内にはコミュニティを醸成する空間として公開空地を配置するほか、一般社団法人 横浜西口エリアマネジメントに参画しイベントやワークショップを実施することで、周辺エリアの活性化や賑わいを創出します。また、神奈川県産木材をエレベーターホール壁面に利用し、資材の地産地消に取り組むほか、使用電力の100%を実質的にCO2フリー電力で賄う施設運営とし、地球温暖化防止および脱炭素社会実現に向けた取り組みを推進しています。
- 2023年12月
- CeeU Yokohama オープン


隣接する横浜ビブレと合わせて横浜西口エリアの賑わい創出に寄与する施設をめざす
既存事業の枠組みにとらわれない新たなビジネスモデルの創出
変化のスピードが速い不確実性の時代において、当社は既存事業の発展のみならず、新たな価値創造に向けた事業創出に注力し、事業領域の拡大に向けた取り組みを推進していきます。
複合開発機能の拡充
複合開発機能の拡充に向けては、活力ある地域、コンパクト+ネットワーク型の都市の実現のために、資本業務提携等を通じたパートナー企業との連携強化により、地域の暮らしの未来を共創していきます。地域共創は、グローバルな課題を地域課題に因数分解し、共感できる人たちとともに、新しい価値を創造して、この課題をひとつずつ解決することを考えており、2023年3月には同じ理念を持つ分譲マンションおよび収益不動産事業を柱とする株式会社マリモとの資本業務提携を行いました。政府の進める“立地適正化計画”の目的である「持続可能な都市構造への再構築」の実現、「都市拠点への居住機能や医療・福祉・商業、公共交通等のさまざまな都市機能の誘導による、コンパクト+ネットワーク型の都市の実現」に貢献できるという考えのもと、市街地における再開発・複合開発事業を推進するとともに、地域に暮らしの未来を創造していきます。
- 2023年3月
- 株式会社マリモとの資本業務提携

提携する目的
~地域の暮らしの未来を共創~
活力ある地域、コンパクト+ネットワーク型の都市の実現
主な取り組み
- 1)多機能複合型大規模開発の推進
- 2)市街地再開発事業の推進
- 3)市街地における複合開発の推進
- 4)イオンモール資産利用の高度化
- 5)「マリモ地方創生リート」による地方への投資促進
共創パートナーの募集
「AEON MALL OPEN INNOVATION PROGRAM」を10月から11月にかけて開催し、3つのテーマからパートナーを募集しました。変化のスピードが速い不確実性の時代において、当社がお客さまからの期待に応え、今まで以上に地域から支持されるために、当社の価値創造に共感いただくスタートアップ企業や大学、行政の皆さまと共に事業シナジーや新たなサービスの創出を図っていきます。
■募集テーマ
- ①ヘルス&ウエルネスプラットフォームの創造
- ②リアルショッピングの魅力最大化
- ③地球環境と共生する地域基盤の形成
提案数:185件/168団体

スタートアップ企業への出資を通じた新たな事業創出
CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)「Life Design Fund」を設立し、スタートアップ企業への出資等を通じて、スタートアップ企業が持つ最先端の技術やノウハウを結集することで、新たな価値提供等を行い、地域課題の解決、店舗運営の高度化を通じた事業価値創造に挑戦していきます。第1号案件として、小売・商業施設DXを支援する株式会社COUNTERWORKSに出資、第2号案件として、事業者向け卸・仕入れのマーケットプレイスを運営するorosy株式会社に出資、また、2024年3月には第3号案件として、株式会社ATOMicaに出資しました。
- 2023年4月
-
コーポレート・ベンチャー・キャピタル
Life Design Fundを設立
運営会社:イグニション・ポイントベンチャーパートナーズ株式会社
設立 :2023年4月
運用期間:10年
設立規模:30億円

投資方針





物流課題解決に向けた共同配送サービスの展開
ドライバー不足や小口多頻度化、燃料価格の高騰に加え、2024年にはドライバーの時間外労働の上限規制が適用される等、物流課題の深刻化が進む中、当社はパートナーである専門店企業への価値提供として、共同配送サービスを展開しています。
共同配送サービスとは、専門店企業の物流拠点から、イオンモール、他社商業施設、路面店等の店舗への配送や、店舗間配送、返品配送を当社が担うもので、専門店企業のコスト削減と物流サービスの品質維持を実現します。2月より近畿・東海エリアへのサービス提供を開始しましたが、多くの企業さまからのご要望にお応えし、12月より提供エリアを7エリア24都道府県に拡大しました。将来的には梱包資材やハンガーなどの共通化により経済価値と環境価値の両立を実現させることで、持続可能な物流網の構築に寄与していきます。
- 2023年12月
- 共同配送サービスの提供エリア拡大


パートナーである専門店企業さまのコスト削減と物流品質の維持を実現するとともに、持続可能な物流網を構築。専門店企業さまをインフラの側面から支援することで、更なるビジネスチャンスへとつなげていきます。
サステナブル視点での財務基盤の強化と組織体制の構築
急速かつ急激に事業環境が変化する中、当社がめざす「真の統合型ESG経営」の実現に向けた取組方針である「国内外におけるリージョナルシフトの推進」「ヘルス&ウエルネスプラットフォームの創造」を推進すべく、「ファイナンスミックスの推進と資産ポートフォリオの最適化」、「経営監督機能の強化と迅速な業務執行体制の構築」、「最も重要な経営資源としての人的資本活用」を通じて、サステナブル視点での財務基盤の強化および組織体制の構築に取り組むことで、持続的な成長を可能とする経営基盤強化を図っていきます。
「イオンモール まちの発電所」の拡大
脱炭素への取り組みとして、各地域での再生可能エネルギー(以下、「再エネ」という。)直接契約による実質CO2フリー電力調達から、順次地産地消の再エネ(PPA(注1)手法含む)への切り替えを進め、2040年度には当社直営モールにおいて100%地産地消の再エネでの運営へ引き上げていきます。
2022年9月より自己託送方式(注2)による低圧・分散型太陽光発電設備「イオンモール まちの発電所」の稼働を開始しました。2023年秋より第2弾を順次運転を開始し、第1弾との合計では、全国約1,390か所の低圧太陽光発電所で発電した電力約120MW(イオンモール7~8施設分の消費電力に相当)を自己託送方式で全国のイオンモール約50施設に電力供給します。本年度は新たな取り組みとして、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)(注3)を採用し、耕作放棄地の計画的・効率的な利用により農業振興を進めることで、再エネの普及と共に地域経済の活性化にも貢献していきます。
また2024年1月には、日本最大規模の包括ソーラーカーポートを導入するオンサイト太陽光PPA契約を締結しました。ソーラーカーポートは、駐車場スペースを有効活用し屋根と太陽光発電設備を導入することで、駐車場利用者の利便性向上に加え、新たに再エネ由来の電力を生み出す取り組みとして注目が高く、2025年度までに合計50店舗以上の稼働開始をめざし、導入を拡大していきます。
- (注1)「Power Purchase Agreement(販売契約モデル)」の略称で、PPA事業者が電力需要家の敷地や屋根等を借り太陽光発電システムを設置し、そこで発電した電気を需要家に販売する事業モデル。
- (注2)遠隔地の太陽光発電設備で発電した電気を、送配電事業者の送配電設備を利用し、自社施設または自社グループの施設へ送電すること。
- (注3)農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備を設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有する取り組み。


サーキュラーエコノミーに貢献するバイオガス発電の導入
当社はサーキュラーエコノミー(注)の概念を採り入れたモールづくりとして、脱プラスチック、食品リサイクル、衣料品回収等、モール内で発生する資源を循環させる取り組みを推進しています。
4月に開業したイオンモール豊川では、施設内で発生する食品生ごみを利用して「バイオガス」エネルギーとして活用しており、発電した電力は全てモールで消費しています。生ごみを大幅に抑制することで地域の環境負荷低減、ごみ処理負荷低減を実現していきます。
(注)従来の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・ 製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等をめざすもの。
第1回脱炭素都市づくり大賞 環境大臣賞
国土交通省および環境省は2030年度までにネットゼロの実現をめざすとともに、まちづくりGXや資源循環・ネイチャーポジティブの推進に取り組む、優れた脱炭素型の都市の開発事業の表彰を実施。イオンモール豊川は延床面積10万㎡以上の施設として初めてZEB Ready認証を受けており、高い省エネ性能を有している点が評価され、環境大臣賞を受賞しました。
ダイバーシティ経営の推進:プラチナえるぼし認定の取得
2023年3月に女性活躍推進法に基づく優良企業として「プラチナえるぼし」認定を取得しました。同認定は、女性活躍の推進に積極的に取り組む企業を認定する制度「えるぼし」企業のうち、行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況について、特に優良な企業に対し厚生労働大臣より認定を受けるものです。今回の認定では、女性管理職候補者の育成研修の実施や、ライフステージにより制約がある社員も昇進・登用にあたって評価することにより、誰もが公平にチャンスを与えられ挑戦できる環境を整備したこと、また子育てしながら働く従業員の活動支援を目的とした事業所内保育施設「イオンゆめみらい保育園」を全国22園導入しているほか、2019年には、男性の育児休業取得促進を目的に、独自の「育児休業扶助金(イクボス応援金制度)」など、働き方の選択の幅を広げる様々な取り組みが評価されました。


健康経営の推進:健康経営優良法人2024に認定
従業員のWell-beingが企業活動のベースであり、従業員が健康であることにより、地域のお客さまに健康と心の豊かさをもたらすサービスを提供できるとの考えのもと、健康経営を推し進めています。
経済産業省と日本健康会議の主催で特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度である健康経営優良法人制度において、2024年3月に「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に5年連続で認定されました。


②設備投資等の状況
当連結会計年度における設備投資総額は、1,066億8千4百万円(長期前払費用を含む)であります。
その内訳は、モール事業における「日本」499億1千1百万円、「中国」314億6千2百万円、「ベトナム」86億2千5百万円、「カンボジア」81億8千9百万円、「インドネシア」84億9千6百万円等であります。「日本」においては、新規モールであるイオンモール豊川、THE OUTLETS SHONAN HIRATSUKAの開設、既存モールであるイオンモール幕張新都心の活性化、伊達物件、須坂物件の土地を取得したこと等による投資を実施しました。「中国」においては、新規モールであるイオンモール武漢江夏の開設と既存モールであるイオンモール武漢経開の増床、「ベトナム」においては、2024年に開設するイオンモール フエの設備代金支払い、「カンボジア」においては、既存モールであるイオンモール プノンペンの増床、「インドネシア」においては、2024年に開設するイオンモール デルタマスの設備代金支払い等による投資を実施しました。
③資金調達の状況
当連結会計年度におきましては、長期借入金として既存取引銀行等より458億8千2百万円、社債の発行により900億円の調達をいたしました。
財産及び損益の状況の推移
① 企業集団の営業成績及び財産の状況の推移





② 当社の営業成績及び財産の状況の推移

重要な親会社及び子会社の状況
① 親会社との関係
当社の親会社はイオン株式会社であり、同社及び同社の子会社で当社の議決権を58.82%(直接保有58.23%)保有しております。
当社は同社に対し資金の寄託運用を行っております。取引条件につきましては、一般的に金融機関と行われている取引条件を基準とし、取締役会で定めた社内規程に則り、親会社から独立して当該取引の実施の可否を決定していることから、当社の利益を害するものではないと判断しております。
② 重要な子会社の状況
主要な事業内容(2024年2月29日現在)
当社グループは、イオン株式会社を親会社とする当社および連結子会社57社(株式会社OPA、他国内6社、AEON MALL (CHINA) BUSINESS MANAGEMENT CO.,LTD.、他中国38社、カンボジア3社、ベトナム2社、インドネシア3社、シンガポール1社、ミャンマー2社)、持分法適用会社1社で構成され、当社はモール事業を行っています。連結子会社のうち、株式会社OPA他2社は都市型ショッピングセンター事業、54社はモール事業等を行っています。
当社は、イオングループのディベロッパー事業を担う中核企業として、一般テナントのほか、GMS事業を営むイオンリテール株式会社およびイオングループ各社に対して当社モールの店舗を賃貸しています。
対処すべき課題
社会変化による影響が当社事業にとってすべてリスクになるのではなく、それぞれの地域に焦点を合わせて考えれば、多くの機会も発掘できると考えています。全国一律で事業を捉えるのではなく、地域ごとに抱えている顕在化した課題や、今後発生する潜在的な課題を想定し、その課題への対応をビジネスに変えられるように取り組んでいきます。
①2030年ビジョン
不確実性が高まる時代において、持続可能(サステナブル)な社会をつくる、また強靭(レジリエント)な組織をつくりあげていくことを目的として、2030年ビジョン「イオンモールは、地域共創業へ。」を新たに策定しました。お客さま、地域社会、パートナー企業さま、株主・投資家さま等の同じ志を持つステークホルダーの皆さまとともに、「つながる」を創造し、広げ、深め、持続可能な地域の未来につながる営みを共創する企業をめざしていきます。

②中期経営計画(2023~2025年度)
2030年ビジョンの実現に向けて、2024年2月期(2023年度)を初年度とする中期経営計画(2023~2025年度)では、これまで成長施策として推進してきたESG経営のさらなる進化を図るべく、「国内外におけるリージョナルシフトの推進」「ヘルス&ウエルネスプラットフォームの創造」を取組方針とし、ステークホルダーに対して経済価値、社会価値、環境価値を創出する「真の統合型ESG経営」の実現により持続的な成長をめざしていきます。具体的には、「海外成長マーケットにおける事業機会の発掘と事業化」「国内におけるビジネスモデル改革の推進」「既存事業の枠組みにとらわれない新たなビジネスモデルの創出」を成長施策として展開し、成長を支える基盤構築として「サステナブル視点での財務基盤強化と組織体制構築」を推進していきます。

中期経営計画に基づく取り組み内容については、P24~34をご参照ください。
③イオンモールの重要課題(マテリアリティ)
SDGsと日本および海外における社会課題を考慮したマテリアリティ分析を実施、ステークホルダーおよび自社にとっての重要度を評価し、ESG視点での重要課題として「地域・社会インフラ開発」「地域とのつながり」「環境」「ダイバーシティ・働き方改革」「責任あるビジネスの推進」の5分野10項目からなるマテリアリティを定めています。
マテリアリティに掲げた10項目の重要課題に対し、2050年にめざす姿として掲げたKGI(最終目標)に合わせて、2030年までに達成すべき具体的なKPI(中間目標)を設定しました。全社で課題を共有し一体となって解決に取り組むことで、社会的・経済的な価値を創出するとともに持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。
マテリアリティに基づく主な行動指針や目標、具体的な取り組み状況等については次の通りです。

当社ウェブサイト「イオンモールのマテリアリティ」についてもご参照ください。
https://www.aeonmall.com/sustainability/materiality/
(脱炭素社会の実現)
「イオン脱炭素ビジョン」に基づく脱炭素への取り組みとして、2040年までに国内での当社事業から排出するCO2等を総量でゼロにすることをめざします。
太陽光発電設備およびEV充電器の設置等の省エネルギー活動を継続的に推進してきましたが、今後はこれらの削減策に加え、各地域での再生可能エネルギー(以下、再エネという。)直接契約の推進等により、2025年度までに国内約160モールで使用する電力を再エネに転換することを目標としています。その上で、現在各地域での再エネ直接契約による実質CO2フリー電力調達から、順次地産地消の再エネ(PPA(注)手法含む)へ切り替え、2040年度には当社直営モールにおいて100%地産地消の再エネでの運営へ引き上げていきます。
脱炭素社会の実現に向けては、海外を含めて取り組みを推進し、全ての事業活動で排出するCO2等を総量でゼロにすることをめざし、取り組みを加速いたします。
(注)「Power Purchase Agreement(電力販売契約モデル)」の略称で、PPA事業者が電力需要家の敷地や屋根等を借り太陽光発電システムを設置し、発電した電力を需要家に販売する事業モデル。
当社ウェブサイト「イオンモールのサステナビリティ」についてもご参照ください。
https://www.aeonmall.com/sustainability/
(サーキュラーモールの実現)
廃棄物や資源の問題に対しては、サーキュラーエコノミー(注)の考え方をモールの運営に取り入れ、資源循環を行える仕組みを構築することで、廃棄物を「削減する」という考えから「ゼロにする」という前提で、地域における循環型経済圏の構築に取り組んでいきます。循環型社会の実現に向けては、お客さま、地域社会、パートナー企業さま等のステークホルダーとともに、脱プラスチック、食品リサイクル、衣料品回収等の取り組みを通じて、「サーキュラーモール」の実現をめざしています。
(注)従来の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等をめざすもの。
(生物多様性の保全)
事業活動全体における生態系への影響を把握し、お客さまや行政、NGOなどステークホルダーの皆さまと連携しながら、その影響の低減と保全活動を積極的に推進します。また、イオン ふるさとの森づくりに加えて、資源循環の取り組みやグリーン購入の促進を通じて生物多様性の保全を行い、自然資源の持続可能性と事業の成長の両立をめざします。
自社事業が自然へ及ぼす影響を分析し、自然に関するリスクと機会に対応するため、自然関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TNFD」という。)(注1)フォーラムに参画し、TNFDの提言するLEAPアプローチ(注2)を用いて分析を行いました。また、TNFDに沿った情報開示にむけて、2023年9月に公表されたTNFD最終提言に則り、分析結果と自社の取り組みを整理しています。
(注)
- 1.企業が事業を通じて自然に及ぼす影響、リスク、機会、生物多様性への配慮を可視化し、自社の報告書やWebサイトで開示するための枠組み。
- 2.TNFDにより開発された、自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ。

(人的資本経営)
当社がめざす「真の統合型ESG経営」の実現に向け、持続的成長を可能にする最も重要な資源は「人的資本」です。人材の成長が、当社の企業価値を持続的に高めることにつながると認識し、経営戦略と連動した人的資本経営で、人材戦略を推進していきます。

(人材ビジョン・組織ビジョンの策定)
「真の統合型ESG経営」を実現するための取り組みを実行する基盤となる「人」と「組織」のあり方について、経営理念に基づいて策定した「人材・組織ビジョン」があります。
当社グループで働くすべての従業員が「Life Design Producer」であることを再認識し、自らの個性を活かしながらステークホルダーの皆さまとの「共感」「共創」により課題解決を進めていきます。その上で、「革新し続けるプロフェッショナル集団」として、信念をもって「持続可能な地域の未来」を拓いてまいります。

(ダイバーシティ経営の推進)
人権を尊重し、性別や国籍に関わりなく、一人ひとりが持てる能力を最大限に発揮できるダイバーシティ経営の推進に取り組み、更なる多様性の確保をめざします。
女性活躍を支援する取り組みを行っており、事業所内保育園「イオンゆめみらい保育園」の整備、男性従業員の育休取得率3年連続100%の達成、また女性の上位職へのチャレンジ意欲を醸成する研修等の教育機会を増やしています。このような取り組みにより、女性活躍の推進に積極的に取り組む企業として「プラチナえるぼし」に認定されました。また、「ジェンダー平等・LGBTQ+フレンドリー会社へ」を目標に、同性パートナー婚について家族としての福利厚生制度を適用、ジェンダー平等に関する理解促進の研修を行う等、人権や個性を尊重し、誰もが働きやすい職場づくりを行っています。

(健康経営の推進)
従業員のWell-beingが企業活動のベースであり、従業員が健康であることにより、地域のお客さまに健康と心の豊かさをもたらすサービスを提供できるとの考えのもと、健康経営を推進しています。健康経営優良法人認定制度においては、2024年3月に「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に5年連続で認定されました。
(人材育成)
人材・組織ビジョンをもとに、「相手よし、地域よし、未来よし」の視点で、様々なパートナーと共感し、その想いをつなぐ地域共創に取り組む人材育成をめざしています。
「教育は最大の福祉」の考えのもと、一人ひとりが持てる能力を最大限発揮できるよう能力開発の機会を提供しています。例えば、教育研修では、新入社員研修をはじめとする年次別や階層別研修以外にも、希望するポジションへの配属をめざして学ぶ公募型の研修を重視しています。自分のキャリアを自律的に捉え、自己のありたい姿を実現するために、成長に向かってチャレンジする風土の醸成に取り組んでいます。
当社の成長戦略を牽引する海外事業においては、2025年までに、新たにモールのゼネラルマネージャーを中心に多くの新規赴任者が必要と考えています。「グローバル人材コース」や「海外トレーニー制度」などの育成プログラム、各ユニットから海外への異動を含め、計画的な赴任者育成を行っています。グローバルな視点の啓発や、スキル・語学の習得など、一貫した海外人材の育成コースを設定し、グローバル人材の育成と適切な配置を図っています。
(責任あるビジネスの推進)
イオンの基本理念および人権基本方針に基づき、人権を尊重し、性別や国籍等に関わりなく企業の発展に参画できる組織、またすべての従業員の能力が最大限に発揮できる職場の実現をめざしています。人権リスクへの対応は、人材育成や従業員の能力発揮のための重要な基盤ととらえ、取り組みを推進しています。
人権尊重への取り組みを通じて、すべての人々に人権が尊重される社会をめざし、『責任あるビジネス』をマテリアリティとして設定しました。人権に関する取り組みの推進体制としては、企業活動における人権への負の影響の防止・軽減・救済に対し人権尊重責任を果たせるよう、主体的に対応する部門の責任者で構成されるESG推進分科会で検討・議論を行い、代表取締役社長を委員長とするESG推進委員会で意思決定を行っています。
イオン人権基本方針では人権デュー・ディリジェンスの実施を明記しており、イオンの指針にしたがって当社でも2020年から取り組みを開始しました。バリューチェーンの上流を中心に人権デュー・ディリジェンスを実施し、将来的には実施範囲を委託先や専門店へ拡大し、バリューチェーン全体における「持続可能な取引のためのガイドライン(注)」の遵守状況の確認や、負の影響への対応・軽減に向けた取り組みの検討を進めていきます。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」においても示されているとおり、人権保障の担い手としての役割を担うべく、当社でも持続可能なバリューチェーンを構築するための取り組みを継続していきます。
(注)人権侵害となるような事案発生を未然に防ぎ、持続可能なバリューチェーンを構築するため、イオンの人権基本方針、イオンサプライヤー取引行動規範を参考に、当社独自に策定。