事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

(1) 全般の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、下期に向けて持ち直しの動きがみられたものの、新型コロナウイルス感染症の影響により年度を通じて厳しい状況が続きました。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、鉄道をご利用になるお客さまが大幅に減少したことに加え、生活サービス事業につきましても、駅構内店舗や駅ビル、ホテルなどのご利用実績が減少しました。このような状況の中、お客さまや社員等の感染防止対策の徹底と、安全・安定輸送およびサービス品質の確保にグループの総力を挙げて取り組みました。また、2020年9月にポストコロナ社会に向けた対応方針である「変革のスピードアップ」を発表しました。様々な取組みのレベルとスピードを上げ、グループ経営ビジョン「変革 2027」の実現に向けた歩みを加速させていきます。

当連結会計年度の決算につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、運輸事業や流通・サービス事業、不動産・ホテル事業が大幅な減収となったことなどにより、営業収益は前期比40.1%減の1兆7,645億円となりました。また、これに伴って営業損失は5,203億円(前期は営業利益3,808億円)、経常損失は5,797億円(前期は経常利益3,395億円)、親会社株主に帰属する当期純損失は5,779億円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益1,984億円)となりました。

当期の業績
①「信頼」を高める
【「究極の安全」の追求】

「グループ安全計画2023」のもと、一人ひとりの「安全行動」と「安全マネジメント」の進化・変革や、新たな技術を積極的に活用した安全設備の整備にグループ一体で取り組みました。

(具体的な取組み)
  • ・ホームドアの設置工事を推進し、当連結会計年度末までに61駅(線区単位では72駅)の整備を完了
  • ・2019年の台風第19号による河川の氾濫等による被害を踏まえ、車両避難の判断を支援する「車両疎開判断支援システム」を全78箇所に導入
  • ・全乗務員職場に配備したシミュレータを活用し、実際の映像による実践的な訓練を実施
  • ・首都直下地震等を想定し、対象エリア・設備を拡大したさらなる耐震補強を推進するとともに、2021年2月に発生した福島県沖地震の被害状況を踏まえた対策を検討
  • ・セキュリティ向上を目的に、手荷物検査の一環として2020年8月に東京、上野、大宮の各駅で危険物探知犬の運用試験を実施
  • ・GNSS(Global Navigation Satellite System)および携帯無線通信網を活用した新たな列車制御システムについて、2024年度の導入をめざし2020年9月から2021年1月まで八高線で走行試験を実施
  • ・羽越本線・陸羽西線の一部区間で実施しているドップラーレーダーを用いた列車運転規制に、AIを活用した突風探知手法を2020年11月に導入
  • ・新幹線の大規模改修に向けて改修材料や作業の機械化などの技術開発を推進するため、2020年12月に実物大の模擬設備をJR東日本総合研修センターに構築

スマートホームドア®(亀戸駅)

新幹線大規模改修に向けた実物大の模擬設備

【サービス品質の改革】

「サービス品質改革中期ビジョン2020」のもと、輸送障害の発生防止や輸送障害時のお客さまへの影響拡大の防止などの取組みを加速しました。

(具体的な取組み)
  • ・輸送障害発生率の減少に向け、首都圏在来線の電気設備等の強化を推進
  • ・自然災害時における列車の計画的な運転見合わせについて、早期に情報提供をする仕組みを構築し、2020年12月の大雪時に実施
  • ・お困りのお客さまに積極的にお声かけする「声かけ・サポート」運動を通年で実施
  • ・当社のホームページおよび「JR東日本アプリ」にて、首都圏13線区15区間の過去約1週間の車内混雑状況の情報提供を開始
  • ・「JR東日本アプリ」における列車などの混雑状況をリアルタイムに情報提供するサービスについて、2020年7月に対象線区を山手線から首都圏の主な線区に拡大
  • ・2020年12月にトンネル内を含む新幹線の全線で携帯電話サービスを開始
  • ・インターネットJR券申込サービス「えきねっと」について、「JRE POINT」との連携や割引きっぷの予約・購入への対応など、2021年6月のリニューアルに向けて準備を推進
  • ・画面に触らず操作が可能な「非接触型の案内AIシステム」を2021年3月に海浜幕張駅へ導入
  • ・車いす用フリースペースを設置した北陸新幹線E7系を、2021年7月から導入する準備を推進
  • ・グループ社員一人ひとりの「考動」を促し、サービスに関するJR東日本グループとしての方向性を示す「サービス品質改革ビジョン2027」を2021年3月に策定

列車および駅の混雑状況の情報提供

非接触型の案内AIシステム(海浜幕張駅)

【ESG経営の実践】

持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、事業を通じて社会的な課題の解決に取り組む「ESG経営」を実践しました。

(具体的な取組み)
  • ・2050年度のCO₂排出量実質ゼロをめざす環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」について、2020年5月に鉄道事業、9月にグループ全体の目標として公表し、12月に達成に向けたロードマップを策定
  • ・グループの中長期的な価値創造や、事業活動におけるサステナビリティの取組みなどを紹介するため、2020年8月にグループとして初となる統合報告書「JR東日本グループレポート2020(INTEGRATED REPORT)」を発行
  • ・「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」のフレームワークを活用し、将来の気候変動が鉄道事業にもたらす財務的影響額を試算した情報を2020年8月に初めて開示
  • ・スピードを上げてエネルギー戦略を推進するため、2020年6月に「エネルギー戦略部」を設立
  • ・プラスチック削減の取組みについて、エキナカやホテルなどで使用するストローに続きレジ袋の代替素材への置換えを2020年9月までに完了し、環境省主催の「みんなで減らそう レジ袋チャレンジ」において「企業部門優秀賞」を受賞
  • ・㈱東北バイオフードリサイクルを通じて、東北地方における食品リサイクル・バイオガス発電事業に参画することを2020年7月に発表
  • ・水素社会の実現に向けて、竹芝地区内と東京駅を循環する燃料電池バス「JR竹芝 水素シャトルバス」の運行を2020年10月に開始
  • ・水素をエネルギー源としたハイブリッド試験車両「HYBARI」について、2022年3月頃からの実証試験開始に向け準備を推進
  • ・電気自動車の再生バッテリーを踏切保安装置の電源に活用するフィールド試験を行い、2021年度に常磐線および水戸線の踏切に試行導入
  • ・障害のある方のアートを駅の仮囲いに掲出し、それを活用してトートバッグを製作した取組みが「第3回 日本オープンイノベーション大賞」において「環境大臣賞」を受賞
  • ・子育て支援施設の整備を推進(当連結会計年度末の子育て支援施設数は累計145箇所)

JR東日本グループレポート2020

JR竹芝 水素シャトルバス

ハイブリッド試験車両「HYBARI」(イメージ)

仮囲いアートミュージアム

②「心豊かな生活」を実現
【輸送サービスの質的変革】

移動を快適で便利にするために輸送サービスの魅力向上に努めるとともに、新型コロナウイルスの感染防止対策を実施しながら、交流人口の拡大に向け、流動促進等に取り組みました。

(具体的な取組み)
  • ・保守作業時間を拡大し、鉄道工事における働き方改革の実現や鉄道設備の設置・保守のスピードアップを図るため、2021年3月のダイヤ改正で終電時刻の繰上げなどを実施
  • ・新しい生活様式に合わせたオフピーク通勤や、季節毎のご利用の平準化などを促す方策の検討を推進
  • ・東北新幹線盛岡~新青森間の速度向上をめざし、2020年10月から騒音対策などの必要な設備整備の工事に着手
  • ・次世代新幹線の実現に向け、試験車両「ALFA-X(アルファエックス)」の走行試験を継続
  • ・新幹線の自動運転の実現に必要な技術の蓄積と検証を行うため、2021年秋頃にE7系を活用して上越新幹線の新潟駅~新潟新幹線車両センター間にて試験を実施予定
  • ・羽田空港アクセス線(仮称)の東京貨物ターミナル~羽田空港新駅(仮称)間における鉄道事業許可を2021年1月に取得
  • ・2020年6月に、渋谷駅埼京線ホームを山手線と並列化し、乗換えの利便性を向上
  • ・2020年12月から横須賀・総武快速線に新型車両E235系を投入して営業運転を開始
  • ・2021年3月から内房線、外房線等の一部区間に新型車両E131系を投入し、ワンマンによる営業運転を開始
  • ・2021年3月に、東海道線特急をE257系リニューアル車両に統一し、駅できっぷを受け取ることなく座席指定して乗車できる「えきねっとチケットレスサービス」を開始
  • ・2021年3月に、常磐線(各駅停車)に自動列車運転装置(ATO)を導入

羽田空港アクセス線(仮称)

渋谷駅埼京線ホーム並列化

【くらしづくり(まちづくり)】

リアルとデジタルを融合したくらしづくり、多様な魅力あるまちづくりを推進し、収益力の向上をめざしました。

(具体的な取組み)
  • ・シェアオフィス事業「STATION WORK」について、2020年8月に横浜駅に「STATION DESK」を開業するなど当連結会計年度末までに134箇所へ拡大し、さらに強力に推進するために、2025年度までに全国で1,200箇所の展開を新たな目標として設定
  • ・品川開発プロジェクトにおいて、先進的な環境技術等を活用したエネルギーマネジメント等を行うことを目的として、2020年4月に㈱えきまちエナジークリエイトを設立
  • ・高輪ゲートウェイ駅で、消毒作業や搬送等のロボットの実証実験を2020年7月から開始し、2020年12月からはエレベーターとロボットの自動連携等に関する実証実験を追加
  • ・品川開発プロジェクトをコアとした新たな分散型まちづくりに向けて、KDDI㈱と2020年12月に基本合意書を締結
  • ・ワーケーションやシェアオフィスの拡大など新たなライフスタイルの創造に向けて、㈱西武ホールディングスと2020年12月に包括的連携を発表
  • ・オープンイノベーションを推進するため、地方創生などをテーマとした「JR東日本スタートアッププログラム2020」で18件の提案を採択し、実証実験等を実施
  • ・駅の価値最大化を目的に、2021年4月に子会社の㈱JR東日本リテールネット、㈱JR東日本フーズ、㈱JR東日本ウォータービジネスおよび㈱鉄道会館を合併し、㈱JR東日本クロスステーションとする準備を推進
  • ・世代を超えてくらしやすい生活空間を創造する「沿線くらしづくり構想」の実現に向けて、2021年4月に子会社の㈱JR中央ラインモールとJR東京西駅ビル開発㈱を合併し、㈱JR中央線コミュニティデザインとする準備を推進
  • ・2025年度の「JRE MALL」取扱高1,300億円達成に向けて、㈱千趣会と2020年9月に資本業務提携を締結し、2021年3月から「ベルメゾン」を出店するなど協業サービスを開始
  • ・駅を交通の拠点から、ヒト・モノ・コトがつながる暮らしのプラットフォームへと転換する「Beyond Stations構想」を2021年3月に発表
  • ・地域とともに街の魅力や価値を高めていくため、「KAWASAKI DELTA」(神奈川)や「MEGURO MARC」(東京)などの開業に向けた準備を推進
  • ・10,000室を超えるホテルチェーンとなることをめざし、秋田、いわきなどでホテルの開業に向けた準備を推進
  • ・5G基地局について、2025年度の100箇所設置に向けて2021年3月に3駅の構内に設置

ワーケーション拡大(GALA湯沢)

(株)JR東日本クロスステーション

JRE MALLにおける(株)千趣会との提携

【地方創生】

観光振興や地方中核駅を中心としたまちづくりに加え、農林漁業の6次産業化など、東日本エリア全域の地方創生に取り組み、「地方を豊かに」していきます。

(具体的な取組み)
  • ・新幹線など列車を活用した荷物輸送サービスについて、日本郵便㈱や自治体・事業者などと連携して、地域食材の首都圏販売や、首都圏で好評のスイーツなどの地方都市販売を実施
  • ・日本郵便㈱と連携し、2020年8月から内房線江見駅で郵便局窓口業務と駅窓口業務の一体運営を開始
  • ・東日本大震災後の仙台市集団移転跡地に、体験型観光農園「JRフルーツパーク仙台あらはま」(宮城)を2021年3月に開業
  • ・エキナカや「JRE MALL」での農産品の販売拡大、駅や列車を活用した農産品輸送などを推進するため、生産者との接点および物流ネットワークを有する㈱農業総合研究所と2020年10月に資本業務提携
  • ・「JRE MALL」内に、ふるさと納税サイトを2020年10月に開設
  • ・2021年4月から開催する「東北デスティネーションキャンペーン」に向けて、東北および首都圏において「TOHOKUサポーター」制度による気運醸成を行うとともに、「のってたのしい列車」や二次交通を活用し広域周遊の実現に向けた準備を推進
  • ・旅のコンサルティングや東日本エリアの地域情報発信を行う拠点「JR東日本 駅たびコンシェルジュ」を、2021年3月に川崎駅と秋田駅に開業
  • ・2021年3月から青森駅新駅舎を供用開始し、地域と連携して駅ビル、行政施設およびホテルの開発を推進

JRフルーツパーク仙台あらはま(イメージ)

【Suicaの共通基盤化・MaaS推進】

「JRE POINT」の魅力向上、Suicaの利用拡大および「MaaSプラットフォーム」の活用により、移動や決済の利便性を向上させました。

(具体的な取組み)
  • ・Suica、MaaS、データマーケティングを三位一体で推進するために、2020年6月に「MaaS・Suica推進本部」を設立
  • ・「キャッシュレス・消費者還元事業」に参画するとともに、駅ビル・エキナカにおけるキャッシュレスでの支払い時に「JRE POINT」の還元率をアップする独自キャンペーンを実施
  • ・楽天ペイメント㈱との連携により、2020年5月から「楽天ペイ」アプリ内でSuicaを利用可能とし、12月に楽天ポイントからSuicaへのチャージサービスを開始
  • ・2020年7月から、「JR東日本アプリ」と「えきねっとアプリ」を連携し、スムーズな指定席予約機能の提供を開始
  • ・2020年7月から始まった「マイナポイント事業」に参画し、マイナポイントに申し込んだSuicaにチャージをした方へ「JRE POINT」を付与するキャンペーンを実施
  • ・2020年10月から、「エキュート」など約300店舗で「JRE POINT」サービスを順次拡大
  • ・Suica定期券でオフピーク通勤されるお客さま向けの「オフピークポイントサービス」や、Suicaで同一運賃区間を繰り返しご利用されるお客さまに向けた「リピートポイントサービス」を、「JRE POINT」の新サービスとして2021年3月に導入
  • ・「JRE POINT」を電子チケットに交換し、地域の店舗などで利用できるキャッシュレスサービスについて、2021年4月からの開始に向けた準備を推進
  • ・地方におけるSuicaの利用基盤拡大に向け、2021年3月に宇都宮・盛岡エリアで「地域連携ICカード」のサービスを導入
  • ・2020年7月に東京海上日動火災保険㈱と業務提携契約を締結し、自動車事故発生時に代替交通手段を選択できるMaaSの実証実験を12月に開始
  • ・観光型MaaS「TOHOKU MaaS」について、宮城県の秋保エリアでオンデマンド交通の実証実験を行うなど、「東北デスティネーションキャンペーン」にあわせて東北6県8エリアで展開する準備を推進
  • ・2020年12月から2021年3月まで「ググっとぐんMaaS」の実証実験の一環として、Suicaとマイナンバーカードを紐づけ、前橋市内のバスやデマンド交通を割引で利用できる「MaeMaaS」などを実施
  • ・「リアルタイム経路検索」の実証実験について、2021年1月から京王電鉄㈱および小田急電鉄㈱と、3月から西日本旅客鉄道㈱および相模鉄道㈱と連携して実施
  • ・2021年3月から日本航空㈱とMaaS領域において連携し、日本からハワイへの旅行者に対する実証実験の準備を推進

オフピークポイントサービス

「TOHOKU MaaS」のポスター

【東京2020オリンピック・パラリンピック】

東京2020オリンピック・パラリンピックについては、開催が延期となりましたが、引き続き「東京2020オフィシャルパートナー(旅客鉄道輸送サービス)」として、コミュニケーションスローガン「TICKET TO TOMORROW」のもと準備を進めました。

(具体的な取組み)
  • ・競技会場周辺等の駅改良を推進し、千駄ケ谷駅、新木場駅などで工事を完了するとともに、2020年7月に新宿駅東西自由通路の供用を開始
  • ・鉄道のセキュリティ強化に向け、防犯カメラ等の増設およびネットワーク化による集中監視を行うとともに、社員等による警備強化や駅・列車内への防護用品配備を実施
  • ・山手線ホームの発車標に、列車が駅に到着するまでの時間を表示し、分かりやすい情報提供を実施
  • ・東京2020大会の各競技の見どころ・観戦ポイントを紹介する「TOKYO SPORTS STATION」を電車内のビジョンを中心に放映を継続
  • ・一般社団法人日本ボッチャ協会とゴールドパートナー契約を2020年8月に締結し、2020年9月および11月に合宿の会場を提供するなど日本代表の強化を支援

(一社)日本ボッチャ協会とゴールドパートナー契約締結

【世界を舞台に】

グループの技術やノウハウを結集し、アジアを中心に輸送サービスおよび生活サービスを展開しました。

(具体的な取組み)
  • ・JR東日本グループとして海外初出店となる「ホテルメトロポリタン プレミア 台北」について、2021年夏の開業に向けて準備を推進
  • ・子会社の日本コンサルタンツ㈱が日本工営㈱とともに、インドネシアにおいて「ジャカルタMRT南北線 運営維持管理 コンサルティングサービス」を受注し、2020年10月に契約締結
  • ・子会社の㈱総合車両製作所が住友商事㈱とともに、フィリピンにおいてマニラ地下鉄向けに鉄道車両240両を受注し、2020年12月に契約締結

ジャカルタMRT(MRT Jakarta提供)

③「社員・家族の幸福」を実現

「変革 2027」がめざす持続的成長の基盤となるグループ全社員の働きがいの創出に向け、「業務改革」、「働き方改革」、「職場改革」を進めるとともに、経営体質の強化に取り組みました。

(具体的な取組み)
  • ・社員の多様な意欲を柔軟に受け止め、一人ひとりの社員が様々なフィールドでより一層活躍・成長することを目的とした「新たなジョブローテーション」を2020年4月から実施
  • ・「変革 2027」の実現をめざし、新たな気持ちでチャレンジするシンボルとして、2020年5月から駅係員や乗務員の制服をリニューアルしたほか、2021年度にメンテナンス社員の制服をリニューアルするための準備を推進
  • ・社員の働きがい向上のために、育児・介護関連休暇の拡充等の制度改正や一部の現業機関へフレックスタイム制の導入を推進
  • ・お客さまのより近くで創意を発揮することを目的として、職種を越えた現業機関等の社員によって構成する「組織横断プロジェクト」の設置を推進

セグメント別の状況

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運輸事業では、新型コロナウイルスの感染防止対策の徹底と、安全・安定輸送およびサービス品質の確保にグループの総力を挙げて取り組みました。

(具体的な取組み)

  • ・駅や車内での消毒や換気等の実施、駅係員および乗務員のマスク着用などの「安心」「清潔」のPR活動に加え、Suicaや「新幹線eチケット」等非接触サービスの利用を促進
  • ・2020年7月に全方面の新幹線を対象に「お先にトクだ値スペシャル(50%割引)」を発売したほか、国の推進する「Go To トラベルキャンペーン」に合わせた旅行商品を発売
  • ・2020年11月に「お先にトクだ値スペシャル(50%割引)」の設定区間を拡大
  • ・2021年3月に「タッチでGo!新幹線」のサービスエリアを拡大

しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、鉄道事業やバス事業が大幅な減収となったことなどにより、売上高は前期比43.9%減の1兆1,677億円となり、営業損失は5,323億円(前期は営業利益2,505億円)となりました。

「お先にトクだ値スペシャル(50%割引)」のポスター

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流通・サービス事業では、エキナカの新規開業や既存事業のレベルアップによる価値向上を図りました。

(具体的な取組み)

  • ・2020年5月に仙台駅「牛たん通り」、「すし通り」をリニューアルオープン
  • ・2020年6月に「エキュート上野」(東京)新エリアに4ショップを開業
  • ・2020年8月に当社最大規模のエキナカ商業施設「グランスタ東京」(東京)を開業
  • ・2020年8月に「エキュートエディション横浜」(神奈川)を開業
  • ・2020年10月に無人決済小型スーパーマーケット「KINOKUNIYA Sutto目白駅店」(東京)を開業
  • ・2021年3月にフードラボ「Kimchi,Durian,Cardamom,,,(キムチ,ドリアン,カルダモン,,,)」(東京)を新大久保駅に開業

しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、駅構内店舗や広告代理業が大幅な減収となったことなどにより、売上高は前期比33.8%減の3,799億円となり、営業損失は135億円(前期は営業利益343億円)となりました。

グランスタ東京

KINOKUNIYA Sutto目白駅店

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不動産・ホテル事業では、大規模ターミナル駅開発や沿線開発など「くらしづくり(まちづくり)」を推進し、地域とともに街の魅力を高めました。

(具体的な取組み)

  • ・複合施設「WATERS takeshiba」(東京)として、2020年4月にオフィスおよび「メズム東京、オートグラフ コレクション」、6月に「アトレ竹芝(第Ⅰ期)」、8月に「アトレ竹芝(第Ⅱ期)」、10月に「JR東日本四季劇場[秋]」を開業
  • ・2020年4月に「ホテルメトロポリタン鎌倉」(神奈川)を開業
  • ・2020年5月に「ホテルメトロポリタン川崎」(神奈川)を開業
  • ・2020年6月に「JR東日本ホテルメッツ横浜」(神奈川)、「JR東日本ホテルメッツ横浜桜木町」(神奈川)を開業
  • ・2020年6月に「CIAL横浜」(神奈川)、「NEWoMan横浜」(神奈川)を開業
  • ・2020年6月に大規模賃貸住宅「びゅうリエットグラン新宿戸山」(東京)への入居を開始
  • ・2020年9月に「日比谷OKUROJI」(東京)を開業
  • ・2020年11月に「ホテルメトロポリタン山形 南館」(山形)を開業
  • ・2021年2月に「JR仙台イーストゲートビル」(宮城)を開業

しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、駅ビルやホテル業が大幅な減収となったことなどにより、売上高は前期比21.1%減の2,915億円となり、営業利益は前期比79.7%減の151億円となりました。

メズム東京、オートグラフ コレクション

日比谷OKUROJI

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その他の事業では、Suicaの利用拡大や海外鉄道プロジェクトなどを推進しました。

(具体的な取組み)

  • ・Suica電子マネーについて、カフェやスーパーマーケットなどへの導入を進めるなど、加盟店開拓を継続し、当連結会計年度末のSuicaの発行枚数は約8,590万枚、「モバイルSuica」の会員数は2020年9月に1,000万人を達成
  • ・海外鉄道プロジェクトについて、子会社の日本コンサルタンツ㈱が「インド国高速鉄道建設事業詳細設計調査」のコンサルティング業務に取り組むとともに、インド高速鉄道公社から受注した研修施設の施工監理業務を2020年10月に完了

しかしながら、情報処理業において受託収入が減少したことや、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、クレジットカード事業が大幅な減収となったことなどにより、売上高は前期比11.3%減の2,435億円となり、営業利益は前期比38.2%減の147億円となりました。

「モバイルSuica」アプリ(イメージ)

セグメント別の業績の状況

当社グループにおけるセグメント別の業績の状況は、次のとおりです。

(注) 当社は、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(企業会計基準第17号 平成22年6月30日)および「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第20号 平成20年3月21日)におけるセグメント利益又は損失について、各セグメントの営業利益又は営業損失としております。

対処すべき課題

① 経営の基本方針(グループ理念)

〇私たちは「究極の安全」を第一に行動し、グループ一体でお客さまの信頼に応えます。

〇技術と情報を中心にネットワークの力を高め、すべての人の心豊かな生活を実現します。

② 今後の経営環境の変化

わが国の経済情勢は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けており、当面の間は移動需要の減少など、当社グループにとって非常に厳しい環境が続くと考えております。

また、中長期的には、より一層の人口減少や高齢化の進展が見込まれるとともに、自動運転等の技術革新やグローバル化の変容など、経営環境が大きく変化していくことが想定されます。

加えて、当社グループは、会社発足から30年以上が経過し、鉄道のシステムチェンジや社員の急速な世代交代など、様々な変革課題に直面しております。

③ 中期的な会社の経営戦略

グループ経営ビジョン「変革 2027」において、将来の環境変化を先取りした経営を進めてきましたが、今後もお客さまのご利用は以前の水準には戻らないという考えのもと、2020年9月にポストコロナ社会に向けた対応方針である「変革のスピードアップ」を発表しました。今後、様々な取組みのレベルとスピードを上げ、「変革 2027」の実現に向けた歩みを加速させていきます。

私たちの強みであるリアルなネットワークとデジタルを掛け合わせ、「ヒト起点」の発想で鉄道を中心としたビジネスモデルを進化させ、構造改革を推進することにより、サスティナブルなJR東日本グループをめざします。

輸送サービスの収益力の回復を図りつつ、生活サービス、IT・Suicaサービスの成長を加速することにより、2025年度には運輸事業セグメントとそれ以外のセグメントの営業収益の比率を「6:4」にしていきます。引き続き、成長分野に経営資源を重点的に振り向け、「5:5」の早期実現をめざします。

④ 目標とする経営数値

2018年7月3日に発表したグループ経営ビジョン「変革 2027」において、2022年度をターゲットとした数値目標を設定しておりましたが、経営環境の急激な変化を踏まえ、2021年1月に2025年度を新たなターゲットとした数値目標を以下のとおり設定いたしました。

⑤ 「変革 2027」実現に向けた具体的な取組み

グループ経営ビジョン「変革 2027」の実現に向けて、「安全」は引き続き経営のトッププライオリティと位置づけ、「収益力向上(成長・イノベーション戦略の再構築)」、「構造改革(経営体質の抜本的強化)」および「ESG経営の実践」に取り組んでまいります。

○ 安全

安全・安定輸送に磨きをかけ、当社グループのすべての基盤であるお客さまや地域の皆さまからの「信頼」を高めます。また、駅や車内の消毒・換気等、お客さまに「安心」「清潔」な環境でご利用いただくための取組みを徹底するなど、グループの社会的使命を果たしていきます。

安全・安定輸送に向けて、一人ひとりの「安全行動」と「安全マネジメント」の進化・変革に取り組むとともに、新たな技術を活用した安全設備の整備や、昨今の自然災害の激甚化も踏まえた、災害リスクの減少に取り組みます。これにより、重大事故に至るリスクを極小化し、「お客さまの死傷事故ゼロ、社員の死亡事故ゼロ」の実現をめざします。

乗務員シミュレータによる訓練

○ 収益力向上(成長・イノベーション戦略の再構築)

鉄道事業を取り巻く環境が厳しさを増す一方で、ライフスタイルの多様化は、大きなチャンスでもあると考えています。成長・イノベーション戦略を再構築し、グループの強みであるリアルなネットワークとデジタルを掛け合わせ、「新しい暮らしの提案」や「新領域への挑戦」に取り組みます。

「新しい暮らしの提案」においては、テレワークやワーケーションといった多様な働き方の応援、「JRE POINT」を基軸とした新たなサービスの展開、「JRE MALL」の強化、便利で魅力的な駅空間の創造としての「Beyond Stations構想」の推進、MaaSやデジタル技術を活用した新しい旅の提案およびグループ一体の顧客戦略などを実施します。また、「新領域への 挑戦」として、不動産アセットマネジメント事業への参画による回転型ビジネスモデルの構築、列車を活用した荷物輸送サービス、スタートアップ企業等との協業、5Gアンテナインフラシェアおよびロボット技術の導入などを推進します。

Beyond Stations構想(イメージ)

○ 構造改革(経営体質の抜本的強化)

固定費割合が大きい鉄道事業を中心に、新技術を活用し、チケットレス、ドライバレス運転やスマートメンテナンスをはじめとしたデジタルトランスフォーメーション(DX)をさらに加速させ、生産性の向上に取り組みます。

また、運賃制度や列車ダイヤといった事業運営の基本となる事項について、ご利用状況等を踏まえ、より柔軟な運用に向けて検討を行うとともに、設備のスリム化やグループ経営の最適化などを推進します。

○ 「ESG経営」の実践

環境、社会、企業統治の観点から「ESG経営」を実践し、事業を通じて社会的な課題を解決することで、地域社会の持続的な発展に貢献するとともに、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組みを推進します。

環境については、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの電源開発などを進めることにより、2030年度までに東北エリアにおけるCO₂排出量ゼロ、2050年度までに当社グループ全体のCO₂排出量「実質ゼロ」をめざします。また、地方創生については、引き続き沿線や地域の皆さまと力を合わせ震災復興に向け幅広い取組みを推進するとともに、観光流動創造による関係人口の拡大、さらには6次産業化による地域経済の活性化などに取り組みます。

ゼロカーボン・チャレンジ2050(イメージ)

連結計算書類