事業報告(2023年4月1日~2024年3月31日)
JALグループ(企業集団)の現況に関する事項
事業の経過およびその成果
当期は、フルサービスキャリア・LCC等がけん引し、2019年度および前期を上回る利益水準を達成しました。
フルサービスキャリアの国際旅客は、月次ベースではコロナ禍前を上回る好調なインバウンド需要が寄与し、前期を大きく上回るお客さまにご利用いただくとともに、単価も高い水準を維持しました。また、新旗艦機エアバスA350-1000型機の導入、中東ドーハへの直行便の運航開始など、今後の成長に向け準備を整えました。国内旅客は、コロナ禍前と同水準の供給体制の下で、よりわかりやすくおトクで使いやすい運賃へと刷新し、前期を上回るお客さまにご利用いただきました。その結果、国際旅客・国内旅客とも前期を上回る収入となりました。
貨物郵便は、医薬品・生鮮品等の高付加価値貨物をはじめ需要の獲得に努めるとともに、ボーイング767-300ER型貨物専用機の運航も開始し、前期比で減収となったもののコロナ禍前を大きく上回る収入を確保しました。
LCCは、成田発着のネットワークの拡大により新たな人流の創出に取り組み、前期比での増収とともに、通期でのEBIT黒字化を実現しました。
マイル・ライフ・インフラは、生涯を通じてご搭乗および日常のさまざまなサービスのご利用でステイタスポイントがたまり、ステイタスや特典を獲得いただける「Life Status プログラム」を開始したほか、外国航空会社便のグランドハンドリングの受託を拡大するなど、人・モノのつながり創出により成長を図りました。
人的資本の充実に向けては、3年ぶりに約2,000名の新入社員を採用し、キャリア採用なども開始しました。また、DX教育などによる生産性向上や、4年ぶりの大幅なベースアップの実施など、人的資本経営を推進しました。
費用については、運航規模の拡大により燃油費が前期を上回りましたが、全社員でコスト抑制に取り組みました。
以上の結果、当期のJALグループの連結決算は、次のとおりとなりました。

各部門の状況

フルサービスキャリア(国際)
エアバスA350-1000型機とネットワーク拡大で成長をけん引

国際旅客需要は、10月の訪日外国人旅行者数がコロナ禍前の水準を上回るなどインバウンドが好調であったこと、また日本発需要についても徐々に回復したことにより、前年を大きく上回るお客さまにご利用いただき、通期では2019年度対比8割まで回復し、単価も前年に引き続き高い水準を維持しました。
事業運営では、燃油消費量・CO2排出量が従来機と比べ約15~25%削減でき、また最高の快適性を備えた国際線新旗艦機エアバスA350-1000型機を新たに導入し、1月から羽田=ニューヨーク線の就航を開始しました。また、日本の航空会社として初の中東への直行便となる羽田=ドーハ線を3月に新規開設し、提携パートナー社のネットワークを通じ、ドーハから欧州・アフリカ・南米方面への接続が可能となりました。
商品サービスでは、SKYTRAX(*1)「5スター」の7年連続認定、本邦唯一のAPEX(*2)「WORLD CLASS」の3年連続受賞など世界最高の品質として高い評価を受けました。
- (*1)英国を拠点とする航空会社の格付け会社
- (*2)APEX:
- お客さまの搭乗体験向上のために航空会社や航空関連メーカー、旅行関連企業などで構成する米国を拠点とする非営利団体

フルサービスキャリア(国内)
運賃の刷新と旅行機運の醸成で増収を実現

国内旅客需要は、業務需要はリモート会議の普及などで2019年度を下回りましたが、旅行機運の醸成に努め観光需要が回復しました。その結果、通期の需要はほぼ2019年度並みとなりました。
事業運営では、コロナ禍後のご旅行の再開に向けたキャンペーンとして、航空券やダイナミックパッケージのセールなどを展開し、観光需要の回復を図りました。北海道エアシステムにおいて4号機目となるATR 42-600型機を導入し、JALグループ国内線では12年ぶりの新たな空港への就航となる札幌(丘珠)=根室中標津線を2023年冬期ダイヤより開設しました。
商品サービスでは、4月にシンプルでわかりやすくおトクな運賃へリニューアルし、乗継運賃や繁忙期・混雑便でもマイルでご利用いただける特典航空券PLUSなどを多くのお客さまにご利用いただきました。また、羽田空港に続き2番目となる「JAL SMART SECURITY」を3月に那覇空港に導入し、羽田=沖縄(那覇)線が、ストレスフリーで一層快適にご利用いただけるようになりました。

貨物郵便
国際・国内で貨物専用機を導入し、物流ネットワークを強化

国際貨物
日本発着需要の回復が遅れている中、アジア・中国=北米間の需要獲得に努めるとともに、医薬品・生鮮品等の高付加価値貨物の獲得に注力し、コロナ禍前を大きく上回る収入となりました。2月には13年ぶりの自社貨物専用機を2機導入し、グローバルにロジスティクス事業を展開するDHL Express社との強固なパートナーシップを軸に、成田・名古屋・ソウル・台北・上海に就航しました。
国内貨物
旅客便の復便に伴い供給量が回復する中、柔軟な単価施策で需要を取り込み、収入最大化に努めました。また、2024年以降に懸念される陸上の輸送力確保の課題解決、環境に配慮した陸上からのモーダルシフトなど、持続的な物流ネットワークの構築に向け、2024年4月から開始するヤマトホールディングス株式会社との貨物専用機エアバスA321-200型機の運航路線・運航便数を決定しました。

LCC
成田を核としたネットワークを拡充し、新たな人流を創出

新たな人流の創出を目指し、積極的な国際線への展開でインバウンド需要を取り込み、通期黒字化を達成しました。
ZIPAIR
6月にサンフランシスコ線、7月にマニラ線、3月にバンクーバー線を成田から開設し、9都市へ就航を拡大する積極的な路線展開により需要を取り込みました。
スプリング・ジャパン
中国路線に関する入国規制が徐々に緩和される中、3年8ヶ月ぶりに成田=上海(浦東)線を再開し、着実に需要を取り込みました。
ジェットスター・ジャパン(持分法適用関連会社)
成田発着のネットワーク拡充を図るべく、12月に成田=旭川線を新規開設しました。また、国際線では成田=上海(浦東)線を再開し、国内観光需要とインバウンド需要を取り込みました。

マイル・ライフ・インフラ
人やモノのつながりを創造し、非航空事業の成長を実現
マイル/金融・コマースでの「JALマイルライフ」拡大、外国航空会社便のグランドハンドリング受託の拡大、ドローン物流などエアモビリティの推進を通じて、非航空事業の成長を図りました。
「Life Status プログラム」を開始
ご搭乗に加えて日常生活のさまざまなサービスのご利用によってステイタスポイントがたまり続け、新たなステイタスや特典を獲得いただける「Life Status プログラム」を1月から開始しました。
マイルがたまる・つかえるJAL Mallをリリース
JALオリジナル商品をはじめ幅広い分野の人気のショップが多数出展する総合オンラインショッピングモール「JAL Mall」を5月にオープンしました。
グランドハンドリングの受託を拡大
持続可能な生産体制の構築に努め、運航を拡大する外国航空会社便のグランドハンドリングを担い、インバウンド増加の実現を支えました。


対処すべき課題
「2021-2025年度JALグループ中期経営計画」の3年目となる2023年度は、2019年度を上回る利益を達成できました。一方で、不安定な世界情勢、物価上昇、人材不足など、社会全体に共通する新たな課題に直面しています。
こうした経営環境の変化を踏まえて、2025年度における中期経営計画の完遂、また中長期的な成長に向けて準備を進めるべく、「中期経営計画ローリングプラン2024」を策定いたしました。
2023年度から、ESG戦略を最上位の戦略と位置づけ、単に移動手段を提供するのではなく、環境に配慮しつつ、人やモノの移動を通じた関係・つながりの創出に取り組んでいます。
「関係人口の人数増大」と「地域との関わり度の向上」に努め、社会課題を解決するとともに、Green Transformation(GX)や人的資本経営を確実に進めてまいります。

JALグループが対処すべき課題については、目標達成の時間軸に従い以下のとおり整理し、取り組みを推進してまいります。

(1) 中期的な課題(~2025年)
① 利益目標の達成、事業構造改革の推進
ESG戦略の推進により事業構造改革を進め、2024年度利益目標 EBIT 1,700億円、2025年度利益目標 EBIT 2,000億円を達成し、レジリエンスと成長性を備えた事業構造を実現します。

② 経営目標の達成
事業領域横断の取り組みにより、2025年度経営目標を達成するとともに、事業運営のサステナビリティ向上を実現します。

(2) 中長期的な課題(~2030年/~2050年)
① 関係・つながりの創出(~2030年)
人・モノの「移動」を通じて「関係・つながり」を創ることで社会的価値・経済的価値を創出し、企業価値を向上させます。JALグループにおける「関係人口の人数」と「地域との関わり度」を数値化し、その向上に持続的に取り組むことで、2030年には、「関係・つながりの総量」を1.5倍に拡大させることを目指します。

② GX戦略(~2050年)
2050年までの「CO2排出量実質ゼロ」の実現に向けて対応を加速します。「省燃費機材への更新」を加速し、2030年度までに76%の機材を省燃費機材に更新します。「SAFの活用」は、国産SAFの製造開始・量産に向けた動きの本格化に対し、確実な調達に向けて製造事業者とのパートナーシップの深化を図ります。さらに、目標達成やCORSIA(*)に対応すべく、適切なタイミングで「排出権取引」により必要なクレジットも調達するとともに、「新技術」も積極的に活用してまいります。
- (*)CORSIA:
- 国際民間航空機関(ICAO)が採択した、国際線を運航する航空会社に対し、「2019年のCO2排出量の85%を超過した分」について、SAFやCO2クレジットを購入することなどを義務付ける制度。

③ 人的資本経営(~2030年)
人財投資を通じて多様な人財が多様なフィールドで活躍できる環境を整え、能力の発揮に応じた還元を行い、エンゲージメント向上と価値創造を実現します。

以上の取り組みを通じて「JAL Vision 2030」を実現し、多くの人々やさまざまな物が自由に行き交う、心はずむ社会・未来を実現すべく、全社員一丸となって進んでまいります。
