事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)
企業グループの現況
当事業年度の事業の状況
事業の経過および成果
当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により依然として厳しい状況にある中、企業の生産活動や設備投資等において持ち直しの動きが続いていますが、個人消費等の弱さがみられます。
航空業界は、各国の入国規制や外出自粛等により人の移動が激減したことから世界的に厳しい状況にあります。
このような経済情勢のもと、当社においてもすべてのセグメントで甚大な影響を受けたことから売上高は大幅に減少し7,286億円(前期比63.1%減)となりました。運航規模の抑制による変動費の削減に加え、人件費等の固定費を削減し5,900億円のコスト削減策を実行しましたが、売上高の減少が非常に大きかったことから、営業損失は4,647億円(前期 営業利益608億円)、経常損失は4,513億円(前期 経常利益593億円)、親会社株主に帰属する当期純損失は4,046億円(前期 親会社株主に帰属する当期純利益276億円)となりました。なお、収支改善を進めるために、大型機を中心とした早期退役(28機)を含む航空機の大量退役を実施し、減損損失等の事業構造改革費用863億円を特別損失に計上しました。
当社は、事業における安全と品質の追求や環境効率性の追求等の取り組みが評価され、米国S&P Global社の「Sustainability Awards 2021」において、最高格付であるゴールドクラスに航空会社として唯一選定された他、世界の代表的な社会的責任投資の指標である「Dow Jones Sustainability World Index」の構成銘柄に4年連続で選定されました。今後も社会的価値と経済的価値の同時創造による持続的な成長を目指してまいります。
以下の頁で、当期におけるセグメント別の概況をお知らせいたします。
連結業績
セグメント別業績
(注)売上高にはセグメント間の取引を含みます。また、セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整を行っております。
セグメント別の概況
航空事業
グループ経営ビジョンに掲げている「世界のリーディングエアライングループ」を目指すための中核となるのが航空事業です。
ANAグループは、英国スカイトラックス社から新型コロナウイルス対策において最高評価の「5スター」に認定された他、過去10年間における様々な取り組みが評価され、英国の航空専門誌Flight Global社における「Decade of Airline Excellence Awards 2020」のアジア太平洋部門で「最優秀賞」を受賞しました。
※ スカイトラックス社は1989年創立、英国ロンドンに拠点を置く航空会社の格付会社です。
航空事業の概況について
新型コロナウイルスの世界的な流行により、旅客需要が著しく減退し、売上高は前期を大きく下回った一方で、貨物収入は需給環境を追い風に過去最高となりました。
国際線旅客
国際線旅客は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界各国での入国規制により、需要が著しく低迷したことで旅客数・収入ともに前期を大幅に下回りました。
路線ネットワークでは、大規模な運休・減便を継続する中でも、海外赴任・帰任等の需要動向を見極め、運航継続路線の選択や臨時便の設定等に努めました。また、貨物輸送を中心に需要が一定程度見込まれることから、12月から日本の航空会社として初めて成田=深圳線を開設した他、羽田=サンフランシスコ線の運航を開始しました。この結果、当期における運航規模は前期比で21.0%となりました。
営業・サービス面では、8月から日本発片道割引運賃を販売し、海外赴任や留学等の需要の取り込みを図った他、本年1月より、帰国時の行動制限に際してご利用いただけるホテルや交通手段を容易に手配できる「ご帰国あんしんサービス」サイトを新設しました。
国内線旅客
国内線旅客は、新型コロナウイルスの影響を大きく受け、旅客数・収入ともに前期を大幅に下回りました。5月の緊急事態宣言解除以降、需要は回復傾向にありましたが、12月から感染者数の増加に伴い再び減少に転じる等、感染者数の動向に連動して推移しました。
路線ネットワークでは、第1四半期の運航規模は前年同期比26.7%でしたが、需要の回復に合わせて運航便数を増やし、第2四半期(7月~9月)は同50.7%、第3四半期(10月~12月)は「Go Toトラベルキャンペーン」の効果もあり同61.4%となりました。しかし、第4四半期(本年1月~3月)は需要の減退に対して運航便を抑制した結果、同44.7%となる等、需要動向を注視しながら機動的に運航規模を調整しました。
営業・サービス面では、7月から日程や行先の変更の際に手数料がかからない「あんしん変更キャンペーン」を実施した他、MaaS(Mobility as a Service)に対応した当社グループ独自の経路検索サービスである「空港アクセスナビ」において、航空便の運航情報と連携した鉄道やバス・タクシー等の地上交通機関の経路の検索から予約・決済まで一気通貫して行える機能を拡充しました。今後も旅の始まりから終わりまでのシームレスな移動の実現に向けた取り組みを進め、利便性向上に努めてまいります。
貨物
国際線貨物は、新型コロナウイルスの影響により世界的に旅客便の運休・減便が発生し、貨物搭載スペースの供給量が低位に推移する中、第1四半期にマスク等の緊急物資の輸送需要が増加し、8月以降は自動車関連部品や半導体・電子機器等の需要の回復に加え、特に第4四半期(本年1月~3月)において海上輸送が混雑した結果、需給の逼迫は継続しました。このような状況において、当社グループでは、10月に成田=フランクフルト線、12月に成田=バンコク線に大型貨物機ボーイング777F型機を就航させた他、貨物専用機による臨時便や旅客機を使用した貨物臨時便を大幅に増やす等、積極的に需要の取り込みを図りました。
また、当社グループでは本年2月よりファイザー社製の新型コロナワクチンの輸送を開始しました。ワクチンの普及により安心して生活できる社会の実現に貢献すべく、厳密な温度管理のもと万全の態勢で輸送を行ってまいります。
LCC・その他
LCCは、新型コロナウイルスの影響により需要が大きく減退した結果、旅客数・収入ともに前期を大幅に下回りました。5月の緊急事態宣言解除以降、国内線の旅客需要は徐々に回復していたものの、感染者数の増加に伴い12月からは減少に転じています。
路線ネットワークでは、第1四半期の国内線の運航規模は前年同期比42.0%でしたが、旅客需要の増加に合わせたネットワークの回復に加えて、8月に成田=釧路線、成田=宮崎線、10月に新千歳=那覇線、仙台=那覇線、12月に中部=新千歳線、中部=仙台線を新規開設した結果、第2四半期(7月~9月)は同112.4%、第3四半期(10月~12月)は同132.2%となりました。第4四半期(本年1月~3月)には、本年1月に中部=那覇線、中部=石垣線、本年2月に成田=女満別線、成田=大分線を新規開設しましたが、旅客需要の減少に合わせて運休・減便を実施した結果、運航規模は前年同期比78.9%となりました。国際線では、全路線で運休が続いていましたが、入国制限の緩和等に伴い、10月より台北(桃園)への運航を部分的に再開しました。
営業・サービス面では、お客様に安心してご利用いただくために、11月から国内線の一部路線で航空券予約と新型コロナウイルス感染症の検査を同時に申込みできるサービスを実施しました。
また、LCC以外の航空事業におけるその他の収入は1,472億円(前期比34.8%減)となりました。なお、航空事業におけるその他には、マイレージ附帯収入、機内販売収入、整備受託収入等が含まれています。
航空関連事業
主に航空事業をサポートするため、空港地上支援、航空機整備、車両整備、貨物・物流、ケータリング(機内食)、コンタクトセンター等の事業をグループ各社が展開しています。



新型コロナウイルスの感染拡大による航空各社の運休・減便の影響により、旅客の搭乗受付や手荷物搭載等の空港地上支援業務の受託及び、機内食関連業務の受託が減少したこと等により、売上高は前期を下回りました。
コロナ禍における新たな取り組みとして、12月よりANA国際線エコノミークラスの機内食等のインターネット販売を開始しました。旅行気分を味わうことができる商品として好評をいただいており、商品ラインナップを拡充しながら増収に努めてまいります。
旅行事業
「ANAトラベラーズ」をブランド名称として、国内・海外旅行のパッケージ商品やダイナミックパッケージ商品の販売の他、旅先での体験や宿泊施設の単品販売等、幅広い旅行ビジネスを展開しています。



新型コロナウイルスの感染拡大により、海外旅行・国内旅行ともに大きな影響を受けたことから、売上高は前期を大きく下回り、営業損失となりました。
海外旅行は渡航制限の影響により、当社グループが主催する全ツアーの催行を中止しました。
国内旅行は「Go Toトラベルキャンペーン」の後押し等により、第3四半期(10月~12月)には需要は徐々に回復しましたが、感染者数増加の影響により12月からは減少に転じました。
商社事業
航空機の輸出入、リース・売却や航空機部品の調達、機内サービス・販売用品の企画調達、空港売店の運営をはじめ、食品や半導体に至るまで多様なビジネスを展開しています。



新型コロナウイルスの感染拡大により、リテール部門の空港免税店「ANA DUTY FREE SHOP」や空港物販店「ANA FESTA」等が大きく影響を受けたことから、売上高は前期を大きく下回り、営業損失となりました。
「ANA FESTA」の取扱高は、国内線旅客数の増加に伴い徐々に回復していましたが、12月からは減少に転じています。また、生活産業部門では、機内で提供する飲料・食品やアメニティ等の機用品の取り扱いが大幅に減少しました。
その他
不動産の資産管理や建物・施設の総合保守管理事業、研修事業等を行っています。また、遠隔操作ロボット「アバター」の開発により、新しい社会インフラを創造してまいります。



不動産関連事業の収入が堅調に推移した一方で、新型コロナウイルスの影響により、ラウンジの閉鎖に伴う受付管理業務の受託が減少した他、講師派遣等の研修事業の収入が減少した結果、売上高は前期を下回りました。
なお、4月に新たなビジネスモデルの創出を目的に「avatarin(アバターイン)株式会社」を設立し、遠隔操作ロボットであるアバターを観光やショッピング等で利用するサービスの検証を実施しています。サービスの普及・拡充やアバターの性能向上に取り組み、新しい社会インフラを創造してまいります。
コロナ禍における取り組み
コスト削減を徹底しました
当社グループでは、新型コロナウイルスの影響が顕在化すると同時に、グループをあげて様々な対応策に着手しました。
旅客需要の急減に合わせて運航規模を調整し、燃油費、空港使用料等の変動費を抑制しました。一方、需要が好調だった国際線貨物では、臨時便・チャーター便を大幅に増やし、積極的な需要の取り込みに努めました。
固定費については、人員稼働に大幅な余剰が出たことから、一時帰休制度を導入し、雇用調整助成金を活用した他、役員報酬や従業員給与・一時金等の人件費の削減に加え、外注作業の内製化や空港関連施設を中心とした賃料減額を実施しました。

多くの航空機の早期退役を実施しました
事業規模縮小に伴い、28機の早期退役を実施したことに加え、導入機材についても受領時期を後ろ倒しする等、次期以降の費用削減に努めました。
増収に向けた様々な取り組みを実施しました
コロナ禍で旅客収入が落ち込む中、ANAグループならではの新しい企画を実施し、増収に努めました。お客様からは大変好評をいただいており、継続的に実施しています。
●エアバスA380型機「FLYING HONU」チャーターフライト
ハワイ線に投入しているエアバスA380型機「FLYING HONU」を使用した国内遊覧飛行を実施しました。
●機内食のインターネット販売
ANA国際線エコノミークラスの機内食等のインターネット販売を開始しました。
●翼のレストラン HANEDA
羽田空港に駐機する国際線機材でファーストクラス・ビジネスクラスのお食事やサービスを提供しました。

清潔・衛生的な環境づくりを行いました
●機内の空気を3分ごとに換気
航空機は従来より、上空のきれいな空気を取り込み、約3分で機内の全ての空気を入れ替えています。また、高性能フィルター(HEPAフィルター※を全機種に搭載)により機内を循環する空気を浄化しています。このため、機内での感染の可能性は低いと言われています。
※HEPAフィルターは、病院の手術室の空調設備にも使用されているフィルターです。
<機内全体の空気循環イメージ>

●ANA Care Promise

ANAでは、航空機をより安心・安全にご利用いただくために、「ANA Care Promise」として、空港や機内等において以下の取り組みを行ってまいりました。
・常に衛生的で清潔な環境のご提供
・空港や機内でのマスクの着用
・機内の定期的な消毒
・機内の換気を徹底
・ソーシャルディスタンシング対応
Peachにおいても同様に清潔・衛生的な環境づくりに向けた様々な対策を実施してまいりました。

直前3事業年度の財産および損益の状況
(注)
- △は損失を表しております。
- 1株当たり当期純利益は、期中平均発行済株式総数(自⼰株式数を控除後の株式数)に基づき算出しております。1株当たり純資産は、期末発行済株式総数(自⼰株式数を控除後の株式数)に基づき算出しております。また、自⼰株式(普通株式)については、ANAグループ従業員持株会信託(従持信託)が所有する株式数および取締役への株式交付信託が所有する株式数を加算しております。なお、従持信託は、2017年7月をもって終了しております。
- 当社は、2017年10月1日付で普通株式10株につき1株の割合で株式併合を行っております。当該株式併合が第68期の期首に行われたと仮定して、「1株当たり当期純利益」および「1株当たり純資産」を算定しております。
対処すべき課題
当社グループは、アフターコロナの新常態でも持続的成長が可能な事業モデルに変革するとともに、新たな収益源として、顧客データ資産を活用したプラットフォーム事業を確立すべく、事業構造改革を進めてまいります。
① 短期:航空事業の規模を一時的に縮小することで、コロナ禍を乗り越えます。
・機材:大型機を中心とした退役の前倒しを行うとともに、今後導入する機材の受領時期を後ろ倒しします。
・人財:新規採用の抑制等による従業員数の削減を進めるとともに、待遇面の見直しを進め、人件費を抑制します。
② 短期~中期:航空事業モデルを変革し、各ブランドの特性を活かしながら、グループ全体で需要カバレッジを最大化します。
③ 中期:顧客データ資産を活用したプラットフォーム事業を確立し、新たな収益機会の創出を図ります。
・2021年4月にANA X株式会社とANAセールス株式会社の事業を再編し、プラットフォーム事業会社として「ANA X」を刷新するとともに、地域創生事業会社の「ANAあきんど」を設立しました。
・航空や旅行といった「非日常」に加え、「日常生活」を「マイル」と結びつけ、早ければ2022年度にご提供を開始する「ANAスーパーアプリ」を起点に、お客様の手のひらでスマホを使いながら、街中やネット上で「マイルで生活ができる世界」を創り上げてまいります。

不動産、金融、保険など、幅広い商材を取り扱う「デジタル市場」を形成し、スマホ上の「ANAスーパーアプリ」で利用できる決済機能を進化させます。マイルを「貯める・使う」の対象商品やサービスを、お客様それぞれに合った生活シーンで飛躍的に拡大し、お客様の利便性を更に高めます。

「地域でともに暮らすANAグループコンシェルジュ」を国内33支店(約120名)に配置し、ANAグループの多様なアセットを活用して、人の移動、物流、デジタル市場、決済機能、デジタルコミュニケーションチャネルといったトータルソリューションをご提案し、地域の課題解決をお手伝いします。

参考:ANAグループのESGに向けた取り組み
E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)に配慮した経営を推進し、持続的な成長を目指します。
E:環境
ANAグループは2050年度までにカーボンニュートラルを実現します
喫緊の課題である気候変動問題への取り組みを強化し、2050年度までに航空機の運航とそれ以外で排出するCO2を実質ゼロ*とし、事業を通じて持続可能でカーボンニュートラルな社会の実現に向けて責任を果たしてまいります。
*実質ゼロ・・・排出量抑制に努めながら、排出されたCO2を回収したりする技術革新等により、排出と吸収のバランスを取ること
<中長期環境目標>
資源類や食品ロスの削減を実現します
海洋プラスチック問題や食品ロスもグローバルな社会課題となっています。当社グループは、「事業活動で発生する資源類の廃棄削減」「機内食などの食品廃棄率削減」を進めています。

S:社会
企業運営にかかわる下記テーマについて継続的に取り組んでいきます。
人権尊重の徹底
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の影響から懸念が広がるサプライチェーン上の脆弱な立場の人々への人権リスクを、より一層注視するとともに、「国連のビジネスと人権に関する指導原則」に則り企業活動における人権尊重を徹底します。
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サプライチェーンマネジメント
2020年に従来の調達方針を見直し、人権リスクにも配慮した「調達基本方針」と「サプライヤー行動指針」で構成される「ANAグループ調達方針」を新たに策定しました。本方針は、事業活動に関わる役務にも適用されます。当社グループの事業は、様々な国籍の労働者に支えられており、特に脆弱な立場にある外国人労働者の雇用環境把握にも努めています。 -
航空機を利用した人身取引の防止
全客室乗務員を対象に人身取引防止にかかわる教育を実施し、機内で人身取引の可能性が疑われる事例を発見した際に、地上への通報を行う運用を行っております。2020年には、関係各所(官庁、国連機関等)からの協力も得て人身取引防止セミナーを開催するなど、一企業の枠を超えた取り組みを進めています。
<人権報告書>
当社グループは、2018年に日本で初めて「人権報告書」を発行し、以後毎年発行を続けています。

イノベーションを活用した社会課題の解決に向けた取り組み
ドローンを利用した緊急物資等の輸送やアバターによる遠隔医療等の実現に向けて、異業種企業と連携してまいります。
持続的成長を担うひとづくり
企業の持続的な成長に向け、人財の育成、働き続けられる環境整備、人的生産性向上に取り組みます。
お客様の多様性への対応
国籍、宗教、趣向、年齢、お体の状態などを問わず、お客様が安心して航空機をご利用いただけるように、ハード・ソフトの両面での対応を進め、ユニバーサルかつバリアフリーなサービスの提供に努めてまいります。

G:ガバナンス
「グループ経営理念」に基づき、当社グループを取り巻くすべてのステークホルダーの価値創造に資する経営を行うことにより、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現させてまいります。
これを確実に進めていくために、経営の迅速性、効率性が確保できる意思決定・業務執行体制と、経営の健全性、透明性が維持できる監督・監査体制を構築しております。
詳細につきましては、当社ホームページに掲載しております、「コーポレート・ガバナンス基本方針」ならびに「コーポレート・ガバナンス」に関する報告書をご参照ください(URL:https://www.ana.co.jp/group/about-us/governance/)。

次期の見通し
今後の経済見通しにつきましては、新型コロナウイルスの影響により厳しい状況にある中、各種政策の効果や海外経済の改善により持ち直しが期待されていますが、引き続き感染の動向が内外経済に悪影響を与えるリスクが懸念されています。
大都市圏における感染拡大を背景とした外出自粛の長期化や、世界各国の入国制限が当社に与える影響は大きく、前期に引き続き業績への影響は避けられないと考えています。一方でわが国においても本年2月よりワクチン接種が開始されており、既に接種の先行している諸外国の事例からも今後順調に接種が進めば感染拡大が沈静化し、航空需要が急速に回復することが期待されています。
このような状況下で当社グループでは、2020年10月27日に公表した「ANAグループの新しいビジネス・モデルへの変革」に基づき、コロナがもたらす人々の行動変容に対応し、感染症の再来にも耐え得る強靭な企業グループに生まれ変わるための事業構造改革プランを着実に遂行してまいります。ANAブランドを中心に航空事業の規模を一時的に縮小することで固定費の大幅な削減を進めた上で、今後の成長軌道への回帰を見据えた最適な航空事業のポートフォリオを追求するとともに、顧客データを活用したプラットフォーム事業の確立により新たな収益機会の創出を目指します。資金面では、劣後特約付シンジケートローン等の金融機関からの借入や、事業構造改革の加速並びに財務基盤の強化等を目的とした公募増資等により、合計1兆円以上の資金を調達しました。今後も必要に応じて適宜新規借入等の資金調達を行い、手元流動性の確保に努めてまいりますことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しています。
航空事業
ANAでは、国際線旅客・国内線旅客ともに、感染状況や各国の入国規制等を注視しつつ当面は運航便の抑制を継続しますが、需要回復局面においては機動的に運航便の再開を図り積極的に需要を取り込んでまいります。国際線貨物では、世界的な旅客便の運休・減便が続く中、経済の回復を背景とした貨物の好況による需給の逼迫は継続することが見込まれるため、前期に引き続き積極的な需要の取り込みを図ってまいります。
LCC(Peach)では、当面は需要減退に合わせた運航規模の調整を継続する一方で、国内線の新規路線開設や一部路線での増便を計画していることに加え、需要回復期においては積極的にネットワークの拡充を図ってまいります。
航空事業 機材計画
機材計画では、以下の機材導入および退役を予定していますが、設備投資計画の見直しに伴い、実施時期が変更になる可能性があります。
その他の事業
旅行事業については、4月から顧客データを活用したプラットフォーム事業を担うANA X株式会社に旅行事業が統合されたことから、新会社のもとデジタル領域での販売を強化するとともに、取り扱うホテルやレンタカー等の商品ラインナップの充実に努めてまいります。地域創生事業を担うANAあきんど株式会社は、当社グループの多様なアセットを活用して地域の課題解決に努めてまいります。
航空関連事業、商社事業においても、事態の収束後、適宜事業の回復と強化・拡大に向けた取り組みを実施してまいります。
新型コロナウイルス感染症の影響により、厳しい経営環境が続くと想定されますが、株主の皆様におかれましては、今後ともご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。