事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

企業グループの現況

当事業年度の事業の状況

事業の経過および成果

当期のわが国経済は、個人消費や設備投資が緩やかに持ち直している一方、輸出入が弱含んでいる等、景気は一部に弱さがみられるものの緩やかに回復しています。
航空業界を取り巻く環境は、国内線では行動制限が緩和され、国際線においても各国の入国制限緩和が進んだことにより、急速に改善しています。
このような経済情勢のもと、売上高は前期から増加し1兆7,074億円(前期比67.3%増)となりました。営業利益は1,200億円(前期 営業損失1,731億円)、経常利益は1,118億円(前期 経常損失1,849億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は894億円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失1,436億円)となりました。
なお、当社は世界の代表的な社会的責任投資の指標である「Dow Jones Sustainability World Index」の構成銘柄に6年連続で選定された他、国際的な環境評価を手掛ける非営利団体であるCDPより、最高評価の「Aリスト企業」に選定されました。今後も事業を通じて環境問題等の社会課題解決に取り組み、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。
以下の頁で、当期におけるセグメント別の概況をお知らせいたします。

連結業績

セグメント別業績

(注)売上高にはセグメント間の取引を含みます。また、セグメント利益は、連結損益計算書の営業損益と調整を行っております。

セグメント別の概況

航空事業

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旅客・貨物等の航空運送を担うグループの中核事業です。安全運航を基盤に、ANA・Peach両ブランドの最適なポートフォリオを追求することで持続的な成長を目指してまいります。

日本国内の移動自粛等の行動制限緩和や各国の入国に関する規制緩和を受けて、回復する旅客需要の取り込みに努めた他、貨物については需要が弱含む中でも高水準の単価を維持した結果、売上高は前期を大幅に上回りました。費用面では、事業規模拡大に伴う運航関連費用が増加したものの、コストマネジメント等を通じた費用抑制に努めたことで、通期で黒字に転換しました。

国際線旅客

国際線旅客では、各国の入国制限が順次緩和され、先行して回復した北米=アジア間の接続需要を積極的に取り込みました。9月以降は日本においても入国制限が緩和され、回復傾向を辿った日本発ビジネス需要および訪日需要の取り込みに努めた結果、旅客数・収入ともに前期を大幅に上回り、旅客数はコロナ前の4割の水準まで回復しました。

路線ネットワークでは、上期に北米=アジア間の接続需要を取り込むため、成田空港発着の北米、アジア路線を増便した他、回復する日本発の需要や訪日需要に対応し、本年1月から羽田=デリー線、羽田=シドニー線を増便する等、羽田空港発着路線を中心に運航規模を拡大しました。

営業・サービス面では、ANA創立70周年記念として本年3月に「ANAで思いっきりん 海外に行こうセール」を実施し、アジア・欧米行きの特別運賃を販売し、レジャー需要の喚起や創出を図りました。

国内線旅客

国内線旅客では、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた動きが進み、下期から全国旅行支援の後押し等でレジャー需要が大きく回復しました。感染拡大第8波の影響を受けつつも、ANA創立70周年記念企画「国内線どこでも片道7,000円」セールを実施し、新規顧客の取り込みや需要喚起に努めた結果、旅客数・収入ともに前期を上回り、旅客数はコロナ前の7割の水準まで回復しました。

路線ネットワークでは、エンジン改修を終えたボーイング777型機を第3四半期以降、全面的に活用し、週末・年末年始・春休みを中心に機材の大型化および臨時便の設定を積極的に行い、回復する需要の取り込みに努めました。

営業・サービス面では、本年1月ご予約分より特定区間の乗り継ぎ運賃である「ANA VALUE TRANSIT」をリニューアルし、乗り継ぎ便の選択肢を最大3便まで拡充することでお客様の利便性向上を図りました。また12月より、国内線プレミアムクラスの機内食の新たなコンセプト「The Premium Kitchen」をスタートさせ、メニュー構成をお客様のご要望に基づいてリニューアルすると同時に、機内食で使用している使い捨てプラスチック容器を紙製の容器等に変更し、更なるESGの取り組みを推進しました。

貨物

国際線貨物は、自動車関連部品の需要が減退した影響等に加え、旅客需要の取り込みを強化するために、旅客機による貨物専用便の運航を減少させた結果、輸送重量は前期を下回りましたが、大型特殊商材等の高単価貨物を積極的に取り込み、高い単価水準の維持に努めました。
また、貨物事業の拡大を見据えて、本年3月に日本郵船㈱との間で日本貨物航空㈱の株式取得に向けた基本合意書を締結しました。

LCC・その他

LCC(Peach)では、国内の行動制限や各国の水際対策が緩和されたことを受けて、国内線の運航規模を拡大し、また国際線についてはこれまで休止していた運航便を再開させ、レジャーや訪日需要の取り込みに努めました。その結果、旅客数・収入ともに前期を上回りました。

路線ネットワークでは、国内線については増加する需要に対応し、成田=新千歳線、成田=福岡線で増便を実施する等、運航規模を拡大しました。国際線については、8月からの関西=ソウル線を皮切りに、関西=台北線、関西=香港線等を再開した他、本年3月に中部=台北線の新規開設を行う等、ネットワークを拡充し、需要の取り込みを図りました。

営業・サービス面では、前期に販売開始した行き先を選べない旅を提案する「旅くじ」に続き、本年2月からパッケージ商品として「宿付き旅くじ」を新たに販売しました。本取り組みにより、目的地を運に任せる旅の体験を提供し、需要の創出に取り組みました。
また、LCC以外の航空事業におけるその他の収入は1,447億円(前期比6.9%増)となりました。なお、航空事業におけるその他には、マイレージ附帯収入、機内販売収入、整備受託収入等が含まれています。

航空関連事業

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主に航空事業をサポートするため、空港地上支援、航空機整備、車両整備、貨物・物流、ケータリング(機内食)、コンタクトセンター等の事業をグループ各社が展開しています。

日本の水際対策緩和や旅客需要の回復に伴い、搭乗受付や手荷物搭載等の空港地上支援業務の受託や機内食関連業務が増加したこと等により、売上高は前期を上回りました。

旅行事業

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「ANAトラベラーズ」をブランド名称として、国内・海外における幅広い旅行ビジネスを展開している他、ANA PocketやANAでんき等、「マイルで生活できる世界」を目指した取り組みを行っています。

国内旅行については、旅客需要が着実に回復し、下期から開始された全国旅行支援の影響を受けて、ダイナミックパッケージ商品の取扱いが増加しました。また、海外旅行については4月にハワイ方面のツアー催行を約2年ぶりに再開し、順次方面を拡大したこと等により、売上高は前期を上回り、損益は改善しましたが、営業損失となりました。
10月に「ANAマイレージクラブアプリ」を日常生活における当社グループの各種サービスへの入り口となるゲートアプリへリニューアルした他、本年1月にはマイルが貯まる・使える新たなECモールとして「ANA Mall」を開店しました。

商社事業

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航空機の輸出入、リース・売却や航空機部品の調達、機内サービス・販売用品の企画調達、空港売店の運営をはじめ、食品や半導体に至るまで多様なビジネスを展開しています。

航空需要の回復に伴い、空港物販店「ANA FESTA」や免税店「ANA DUTY FREE SHOP」等で増収となった他、半導体市場の好調な需要を受けて、電子事業の取扱高が増加したこと等により、売上高は前期を上回りました。

その他事業

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不動産の資産管理や建物・施設の総合保守管理事業、研修事業等を行っています。また、アバター技術の開発により、新たな移動スタイルを創造してまいります。

ラウンジ業務や検疫関連審査業務等の受託が増加した一方で、前期に大型物件の売却があった反動により不動産関連事業の取扱高が減少したこと等から、売上高は前期を下回りました。

設備投資の状況

イ. 当期において実施した設備投資の総額は116,892百万円であり、当期に完成した主要な設備は次のとおりであります。

ロ. 当期における主要な設備の除売却等は次のとおりであります。

ハ. 当期継続中の主要な設備の拡充は次のとおりであります。

資金調達の状況

イ. 当社は、2022年6月30日に設備資金手当てのため民間金融機関の協調融資により920億円の短期借入を実施しました。

ロ. 当社は、国内主要金融機関と総額1,000億円の長期コミットメントライン契約を締結しております。

直前3事業年度の財産および損益の状況

(注)

  • △は損失を表しております。
  • 1株当たり当期純利益は、期中平均発行済株式総数(自己株式数を控除後の株式数)に基づき算出しております。1株当たり純資産は、期末発行済株式総数(自己株式数を控除後の株式数)に基づき算出しております。また、自己株式(普通株式)については、取締役への株式交付信託が所有する株式数を加算しております。
  • 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を2021年度の期首から適用しており、2021年度以降に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。

対処すべき課題

2023~2025年度ANAグループ中期経営戦略
~コロナ禍からの復元を果たし、成長軌道へ~

ポストコロナの成長回帰を目指していくために、5年ぶりに中長期を見据えた経営戦略を策定しました。
当社グループにおける価値の源泉は、創業の精神に支えられた「ANA's Way」を実践する人の力と、組織を越えて連携し協力する「グループ総合力」です。
本戦略では、人と組織の力を最大化することで、持続的な価値創出に向けて足元を固めていく方針です。戦略の実現のため、ESG経営の中核となる重要課題として、新たに「人財」を追加するとともに、2030年にありたい姿として、10年ぶりに新たな経営ビジョンを策定しました。経営ビジョンを実現することで、社会的価値と経済的価値を同時に創出することを目指します。

① 価値創造プロセス

② 戦略の全体像

「2023~2025年度ANAグループ中期経営戦略」の期間を、「2030年に目指す姿の実現に向けた変革」を進める3年間と位置づけており、コロナ禍からの回復を果たし、持続的な企業価値向上に向けたビジネスモデルの変革を加速して成長軌道への転換を図ります。
本戦略では、安全の堅持を大前提に、3つの事業戦略の柱を掲げています。航空事業を中心に収益を拡大しつつ非航空事業を強化し、航空事業と非航空事業間におけるお客様の回遊を促進することで、コロナ前を上回る利益の創出と強靭な財務基盤の構築を目指します。

■ 3つの戦略の柱

■ 価値創造目標

③ 事業戦略
航空事業の利益最大化

ANA、Peach、AirJapanの3つのブランドで最適なポートフォリオを追求し、航空事業の利益を最大化します。運賃や品揃え、運航距離等の違いに応じて役割を分担するとともに、マーケティング・販売の連携によって、ブランド間の回遊性を向上させる他、協業・機能集約を進めることで、市場シェアと収益の拡大を目指します。
貨物事業については、首都圏ハブを基盤に、貨物便と旅客便を合わせ持つコンビネーションキャリアとして、ネットワークを最適化するとともに、営業力の強化とオペレーションの効率化を推進することで、貨物事業の拡大を目指します。

航空非連動の収益ドメインの拡大

さらなる安定経営に繋げるため、航空事業以外の収益源について、事業分類に応じた適切な経営資源配分や、事業拡大に向けた枠組みを整備します。

ANA経済圏の拡大

「マイルで生活できる世界」を実現し、「ANA経済圏」の早期拡大を目指します。ANAマイレージクラブアプリを中核に置き、ANA MallやANA Pay等のコンテンツ・決済手段を拡充させるとともに、データ活用を進め、ANAマイレージクラブ会員のANA経済圏利用を促進します。

ANAグループのサステナビリティ

● 取り組むべき社会課題

当社グループは、社会的価値と経済的価値の同時創造による持続的な企業価値向上を目指すうえで、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)は「環境」「人(人財・DEI*・人権)」「地域創生」であると考えています。グループ全体の持続的な企業価値の向上において、「⼈財」は価値創造の源泉であることから、本年より重要課題としての「人権・DEI*」に加え「人財」を追加しました。

* Diversity Equity Inclusion:多様性、公正性、受容・共生

ESGにかかわる外部評価

ANAグループのESG経営の推進状況について、以下の4つのESGに関する外部評価を活用し、客観的かつ多面的に把握しています。また、これら4評価機関の評価を役員報酬にも反映させています。

※ ANAホールディングス株式会社のMSCI指数への組入れ、およびMSCIロゴ、商標、サービスマークまたは指数名称の使用は、MSCIまたはその関連会社によるANAホールディングス株式会社へのスポンサーシップ、支持、宣伝を表すものではありません。
MSCI指数はMSCIの独占的財産です。MSCI、MSCI指数の名称およびロゴはMSCIまたはその関係会社の商標またはサービスマークです。

E:環境

ANAグループは2050年度までのカーボンニュートラルを宣言しています。国際民間航空機関(ICAO)
総会での国際航空のCO2削減に関する目標の見直しを受け、2030年度には国際線・国内線合わせた実質CO2排出量を2019年度比で10%以上削減する計画です。
CO2排出量の削減に向けた戦略の中核となるのはSAF※1です。2030年度には消費燃料の10%以上をSAFへ置き換え、2050年度には消費燃料のほぼ全量を低炭素化していきます。

※1 Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料。通常のジェット燃料と比較して約80%のCO2削減効果がある。

<2050年カーボンニュートラルへ向けたトランジション・シナリオ>

S:社会

<人(人財・DEI・人権)>

人財を磨く
人財はグループの最大の「資産」です。従業員一人一人が心身ともに健康であり続け、それぞれの強みや才能を最大限発揮できる環境を整えていきます。

毎年、社員満足度と企業価値の向上を目的としてANA’s Way Survey(ANAグループ社員意識調査)を実施しています。2022年度はコロナ禍にもかかわらず、前年に引き続き高い水準のスコアを維持しました。人財への投資を強化し、さらなるエンゲージメントの向上を図りながら、全員活躍による企業価値向上を目指します。

多様性、公正性、受容・共生(DEI)
従業員個々の考え方や能力、そして強みを尊重することで、グループ全体の価値向上を図っていきます。それは、お客様の価値観の多様化に応えることにもなると考えています。

女性活躍推進に向けた取組み

多様な性(LGBTQ+)の尊重に関する基本方針の策定

ユニバーサルなサービスの推進

人権尊重
空港ハンドリングにかかわる協力会社では、多数の外国人が就労しています。これらの外国人労働者の雇用環境を正確に把握するため、定期的に状況調査や労働者への直接のインタビュー等を実施しています。
また、航空機を利用した人身取引の防止を徹底するため、全客室乗務員に対し人身取引防止にかかわる教育を行っています。

<地域創生>

航空事業や旅行事業で築いた全国の地域との信頼関係をもとに、各地域の発展のため、グループの持つ強みやアセットを活用して課題解決を図っていきます。

G:ガバナンス

「グループ経営理念」に基づき、当社グループを取り巻くすべてのステークホルダーの価値創造に資する経営を行うことにより、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現させてまいります。
これを確実に進めていくために、経営の迅速性、効率性が確保できる意思決定・業務執行体制と、経営の健全性、透明性が維持できる監督・監査体制を構築しております。

① 取締役・取締役会
  • ・グループ全体の経営方針や中長期的な目標の設定、課題認識について議論するとともに、当社グループの経営および業務執行を監督、モニタリング。
  • ・11名のメンバーの構成は経験、知見、専門性等において多様性をもつ男性10名、女性1名となっており、うち4名は社外取締役(当該4名は東京証券取引所に対し独立役員として届出)。
  • ・当社グループの業務について社外取締役の理解をより深めていただくため、グループ現業部門視察や現業部門とのダイレクトトーク、監査法人との意見交換会を実施。
  • ・取締役会には監査役全員が参加する他、必要に応じて執行役員、グループ企業代表取締役による報告事項の説明等を実施。
  • ・年度ごとに取締役会の実効性についての分析、評価を実施し、より実効性の高い取締役会を運営。
  • ・取締役会の諮問機関として社外役員が過半数を占める人事諮問委員会ならびに報酬諮問委員会を設置し、コーポレート・ガバナンスの透明性・公正性の向上を企図。
② 人事諮問委員会
  • ・取締役候補者の選任、取締役の解任について審議し、取締役会に答申。
  • ・候補者の選任プロセスの公正性、透明性を確保するため委員長は社外取締役が務め、社外取締役4名を含む5名で構成。
③ 報酬諮問委員会
  • ・外部専門機関に調査依頼した他社水準等を考慮しつつ取締役の報酬等について審議し、取締役会に答申。
  • ・委員長は社外取締役が務め、社外取締役4名、社外監査役1名および識者1名を含む7名で構成。
④ グループ経営戦略会議
  • ・経営課題をより迅速かつ詳細に審議し、取締役会の補完的な役割を担う。
  • ・代表取締役社長が議長を務め、常勤取締役と常勤監査役で構成。
⑤ グループESG経営推進会議
  • ・環境、社会、リスクマネジメント、コンプライアンス等、グループ全体のESGに関わる基本方針や重要事項を審議・立案・推進。
  • ・代表取締役社長が総括し、常勤取締役と常勤監査役で構成。
⑥ 監査役・監査役会
  • ・監査に求められる豊富な経験と高度の専門性を有する5名(うち3名は社外監査役)で構成。常勤監査役は社外監査役1名を含む3名。
  • ・会計監査人、内部監査部門との連携を強化する一方、社外取締役との意見交換も定期的に実施。
  • ・3名の社外監査役については東京証券取引所に対し独立役員として届出。
⑦ グループ監査部
  • ・社長直属の組織として、年度計画に基づく定例監査(主に業務監査・会計監査)と、経営層の意向等に基づく非定例監査を実施。
  • ・「財務報告に関わる内部統制報告制度」に対応した評価業務を独立・客観的立場で実施。
  • ・定例監査は当社各部署およびグループ会社に対するリスク分析に基づき、公正・客観的な立場から実施。
  • ・監査結果は毎月社長に報告。

詳細につきましては、当社ホームページに掲載しております、「コーポレート・ガバナンス基本方針」ならびに「コーポレート・ガバナンス」に関する報告書をご参照ください。
(URL:https://www.ana.co.jp/group/about-us/governance/

次期の見通し

今後の経済見通しにつきましては、行動制限緩和と社会経済活動の正常化を背景に、日本経済は緩やかに持ち直していくことが期待されています。一方、世界的なエネルギー価格の高騰や欧米各国の金融引き締め等、不安定な国際情勢による経済への影響が想定されます。
航空業界を取り巻く環境は、国内線ではレジャーを中心に需要が回復し、国際線では訪日需要やビジネス需要の回復傾向が続くと見込まれますが、ウクライナ情勢等の地政学リスクの動向に注視が必要です。
このような状況下で当社グループは、本年2月15日に公表した「2023-2025年度 ANAグループ中期経営戦略」を確実に遂行し、新しい経営ビジョンである「ワクワクで満たされる世界を」の実現を目指します。航空事業を中核事業として、新しい地域間の多様な繋がりを創出し、社員のウェルビーイングを大切にするとともに、お客様や社会に寄り添いながら新たな価値を提供してまいります。

航空事業

航空事業においては、安心・安全を基盤とし、需要回復に合わせて運航規模を拡大し、ANA、Peach、AirJapanの3ブランドの展開により、世界の需要を幅広く取り込んでいきます。なお、AirJapanについては2024年2月に東南アジアへの就航を予定しています。

国際線旅客(ANAブランド)では、各国の入国制限の緩和に伴い、急速に回復する訪日需要や堅調な日本発ビジネス需要において回復基調が継続し、2024年3月末までにコロナ前の7~8割程度の水準まで回復すると見込んでいます。渡航需要の高まりを取り込むため、羽田=ミュンヘン線、羽田=上海(浦東・虹橋)等の運航便を再開したことに加え、羽田=ニューヨーク線、成田=ホノルル線を増便する等、積極的な路線展開を図ってまいります。

国内線旅客(ANAブランド)では、前期より需要回復が進み、2024年3月末までにコロナ前の9割程度の水準に達すると見込んでいます。ANAとPeachの連携を前提に、路線ネットワークにおける役割分担を進め、最適な運航スケジュールを策定し、需給適合を図ってまいります。また、当社グループは「ANA Smart Travel」を推進し、旅の計画から到着後までのシーンで、お客様のスマートフォン等のモバイルデバイスを活用してお客様をサポートします。非接触による衛生面や紙資源削減による環境面への配慮を行い、お客様ご自身で対応できる範囲の拡大やパーソナライズされた体験を提供いたします。

国際線貨物(ANAブランド)では旅客需要の回復に伴う旅客便の増加や海上輸送の混雑緩和等の影響により、当面は需給緩和が見込まれますが、自動車関連部品をはじめとする貨物需要は回復傾向を辿ると想定しています。当社グループは、貨物便と旅客便を合わせ持つコンビネーションキャリアとして、需要に応じた航空ネットワークを確保することに加え、マーケティングを強化することで安定した長期・特定顧客の取り込みを行い、収益の最大化に繋げていきます。

LCC(Peach)では、国内線においては、関西空港、成田空港を中心に国内レジャーや新規需要を開拓し、収益力の強化を図ります。国際線においては、新規路線開設や増便等の運航規模拡大策を順次進めていき、訪日外国人を中心とした需要の取り込みを積極的に行っていきます。

航空事業 機材計画

機材計画では、以下の機材導入および退役を予定していますが、設備投資計画の見直しに伴い、実施時期が変更になる可能性があります。

その他の事業

航空関連事業では、旅客需要の回復に合わせて運航規模の拡大が見込まれること等から、空港における旅客、貨物の空港地上支援業務等の受託拡大を通じて、グループ収益への貢献を目指してまいります。
旅行事業では、国内旅行は「ANAトラベラーズ」のダイナミックパッケージ商品の企画、販売を一層強化することに加え、宿泊施設やレンタカー等の商材の販売を拡大してまいります。海外旅行はハワイをはじめ、各方面のマーケティングを強化し、収益の最大化に繋げていきます。また航空、旅行といった「非日常」に加え、「日常」でもマイルの貯まる・使える世界を実現するため、今後「ANAマイレージクラブアプリ」の強化や「ANA Pay」のリニューアルを実施し、日常の様々なシーンでマイルをご利用いただけるようにしてまいります。
商社事業では、航空需要に連動し、空港物販店「ANA FESTA」等のリテール事業における増収に加え、半導体・電子部品に関連したサービス提供等においても、収益の拡大を図ってまいります。

当社グループは、本中期経営戦略のもと、ビジネスチャンスを確実に捉え、各事業において価値創造を実現し、安定的経営基盤の構築に取り組んでまいります。

連結計算書類