事業報告(2019年4月1日から2020年3月31日まで)
NTTグループの現況に関する事項
(注) 2020年1月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割を行っており、当該株式分割調整後の数値を記載しております。
事業報告の記載内容について
●本事業報告において、「NTTドコモ」は株式会社NTTドコモ、「NTT東日本」は東日本電信電話株式会社、「NTT西日本」は西日本電信電話株式会社、「NTTコミュニケーションズ」はエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社を示しています。
●当社の連結財務諸表は、2018年度より、従来の米国会計基準に替えて国際財務報告基準(以下「IFRS」)を適用しており、2017年度の数値もIFRSに組み替えて比較・分析を行っています。
●本事業報告に記載している金額については、国内会計基準に準拠するものは表示単位未満の端数を切り捨てて表示しており、IFRSに準拠するものは表示単位未満の端数を四捨五入して表示しています。
●文中において が付されている用語について、「用語解説」にて解説を掲載しています
●本事業報告に含まれる予想数値および将来の見通しに関する記述・言明は、現在当社の経営陣が入手している情報に基づいて行った判断・評価・事実認識・方針の策定などに基づいてなされもしくは算定されています。また、過去に確定し正確に認識された事実以外に、将来の予想およびその記述を行うために不可欠となる一定の前提(仮定)を用いてなされもしくは算定したものです。将来の予測および将来の見通しに関する記述・言明に本質的に内在する不確定性・不確実性および今後の事業運営や内外の経済、証券市場その他の状況変化などによる変動可能性に照らし、現実の業績の数値、結果、パフォーマンスおよび成果は、本事業報告に含まれる予想数値および将来の見通しに関する記述・言明と異なる可能性があります。
1.事業の経過およびその成果
(1)事業環境
当事業年度における情報通信市場では、引き続きクラウドサービスやIoT、ビッグデータ、AIなどの進展により、様々なデジタルサービスの利用が進むとともに、5Gサービスも開始されました。それらのサービスの利用を通じて蓄積されたデータを分析・活用(データマネジメント)することで、人々の生活における利便性向上や、ビジネスにおける新たなモデル創出や生産性向上など、より良い方向への変革を実現するデジタルトランスフォーメーションが世界的に進みつつあります。また、高度化・複雑化するサイバー攻撃に対する情報セキュリティ強化、災害対策への取り組み強化や、環境保護への貢献なども求められるようになっています。さらに、当事業年度末に新型コロナウイルス感染症の流行が世界的に拡大しており、在宅勤務や遠隔教育、遠隔医療などへの取り組みが求められています。
こうした様々な社会的課題を解決するうえで、情報通信の役割はますます重要になっています。
(2)事業の状況
このような事業環境のなか、NTTグループは中期経営戦略「Your Value Partner 2025」に基づき、「Your Value Partner」としてパートナーの皆さまとともに、社会的課題の解決をめざす取り組みを推進しました。
お客さまのデジタルトランスフォーメーションをサポート
B2B2Xモデルの推進による新たな価値創出の支援や、5Gサービスの実現・展開に向けた取り組み、パーソナル化推進によるライフスタイル変革の支援などを進めました。
- 2019年6月の国立大学法人北海道大学・岩見沢市とのスマートアグリシティの実現に向けた産官学連携協定締結に加え、2019年7月には、千葉市と未来のまちづくりに向けた包括連携協定を締結するとともに、2015年に札幌市と締結したさっぽろまちづくりパートナー協定をさっぽろ連携中枢都市圏12市町村に拡大するなど、地域経済圏のさらなる活性化をめざす取り組みを推進しました。
- トヨタ自動車株式会社と当社は、価値観を共有し、社会の発展をめざすコアなパートナーとして、住民のニーズに応じて進化し続けるスマートシティの実現をめざし、スマートシティビジネスの事業化が可能な長期的かつ継続的な協業関係を構築することを目的に、2020年3月に業務資本提携に合意しました。
- 2019年12月に、三菱商事株式会社とデジタルトランスフォーメーションによる産業バリューチェーンの変革と新たな価値創出を目的とした業務提携に合意するとともに、位置情報サービス分野でグローバルサービスプロバイダーである蘭HERE Technologiesへの共同出資を進めることに合意しました。また、米Microsoft Corporationとセキュアで信頼性の高いソリューションの提供を目的として、グローバル・デジタル・ファブリックの構築、企業向けデジタルソリューションの開発、次世代技術の共創を推進する複数年にわたる戦略的提携に合意しました。
-
パーソナル化の推進に向け、多様化するお客さまのライフスタイルに対応するため、2019年6月よりシンプルでおトクな新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」などの提供を開始し、契約数は1,494万契約となりました。
(注)契約数は「ギガホ」「ギガライト」「5Gギガホ」「5Gギガライト」「ケータイプラン」「キッズケータイプラン」「データプラス」「5Gデータプラス」の合計
- 2020年3月から5G商用サービスを開始しました。「5Gギガホ」「5Gギガライト」といった料金プランと、7機種の5G端末、ゲーム・音楽・スポーツジャンルでのサービス、産業の高度化やDX推進などに寄与するソリューションを提供します。5Gを通じて、新しい価値の創出や社会課題の解決に貢献し、お客さまの生活がより便利で、豊かなものになるよう取り組みを推進します。
自らのデジタルトランスフォーメーションを推進
グローバル事業の競争力強化に向けたOne NTTとしてのグローバルビジネス成長戦略や、国内事業のデジタルトランスフォーメーションなどを推進しました。
- 2019年7月にNTTブランドによるグローバル事業会社として、NTT Ltd.(本社:英ロンドン)が営業を開始しました。NTT Ltd. の各海外子会社のロゴをNTTのロゴへ変更するとともに、社名についても各エリアにおいてNTTを冠する社名への変更を順次実施しました。また、NTT Ltd. において、マネージドサービスなどの高付加価値サービスへのシフトをめざし、構造改革を推進しました。
- 2019年9月には、日本のIT企業として初めて、米MLB(Major League Baseball)とテクノロジーパートナーシップ契約を締結しました。MLBに加え、NTTが冠スポンサーである「インディカー・シリーズ」や、NTT Ltd. がオフィシャルテクノロジーパートナーとなっている「ツール・ド・フランス」など、世界的なスポーツイベントを通じて、NTTブランディングの強化を推進しています。
- 米ラスベガス市を皮切りに展開しているスマートシティ実現に向けた取り組みとして、マレーシアの現地のステークホルダと連携しマレーシア・サイバージャヤ地区におけるアジア初の実地検証を2020年2月より開始しました。本実地検証を通じて、NTTグループが米国で培ったスマートシティ分野における技術・ノウハウによるアジアでの社会課題解決の可能性を検証するとともに、持続可能なビジネスモデルの構築を推進しています。
- RPAの導入による業務効率化を推進し、2020年3月末時点でのNTTグループの業務プロセス活用数は、約2,100となりました。RPAの導入についてはグループ内に限らず、お客さまにも提案を進めており、2020年3月末時点で約5,000社のお客さまにご利用頂いています。また、さらなるグループ経営の高度化に向け、人事・財務・調達などの業務においてグループ統一ERPの導入を推進しました。
- 国内(NTTドコモ、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ)の故障受付に関する電話問い合わせについて、お客さまご自身で故障に係る自己診断ができるwebサイトへの誘導や、チャットボットの活用など、対応を原則自動化することにより業務効率化を推進しました。
MLB公式パートナーロゴ
「NTTインディカー・シリーズ」
「ツール・ド・フランス」
公式パートナーロゴ
人・技術・資産の活用
不動産利活用、エネルギー供給などの新事業創出、地域社会・経済の活性化に取り組みました。
- NTTグループの街づくり事業の中核を担うNTTアーバンソリューションズ株式会社が2019年7月に事業を開始しました。国内では福岡市や仙台市などにおける街づくり開発の取り組みを推進しました。
- スマートエネルギー事業の推進に向けてNTTアノードエナジー株式会社が2019年9月に事業を開始しました。小売電気事業を展開する株式会社エネットの子会社化などにより、発電・送配電/蓄電・小売/卸売の3つの領域で事業を展開し、エネルギー事業での競争力強化・収益拡大を推進します。
- 巧妙化・複雑化している特殊詐欺に対し、お客さまに安心して電話をご利用いただけるよう、NTTグループが有するサービス・技術などを活用し、2019年8月より、特殊詐欺解析AIを用いた実証実験を実施しました。この実証実験の結果を踏まえ、準備が整い次第、サービスなどを提供開始する予定です。
- 近年、災害エネルギーの増大により、大規模な災害影響が多発しております。通信設備やサービスへの影響の増大や復旧の長期化を踏まえ、設備の強靭化や復旧対応の迅速化を推進しています。
設備の強靭化に関する主な取り組み
- ・停電対策など、災害に対する備えを持たせた中ゾーン基地局の拡大
- ・EVを活用した基地局の停電対策
- ・NTTグループが保有する移動電源車(約400台)の一元管理、運用
- ・災害影響などを考慮したケーブルの地中化やワイヤレス固定電話などの検討
復旧対応の迅速化に関する主な取り組み
- ・AIを活用した被害想定による復旧体制(全国広域支援体制など)の事前立上げ
- ・当社OB社員の活用などを含めた、復旧体制の増強、人員確保
- ・公衆電話BOXへのWi-Fi・蓄電池設置や出張113の開設などを通じた、被災されたお客さま支援の強化
ESG経営の推進、株主還元の充実による企業価値の向上
持続的な企業価値の向上と、株主の皆さまへの利益還元を重要な経営課題の一つとして位置づけ、環境負荷の低減、多様な人材の活用、セキュリティの強化、株主還元の充実などに取り組みました。
- 環境負荷の低減への取り組みとして、事業のエネルギー効率を倍増させる「EP100」の目標に基づき、通信事業の電力効率の向上に取り組みました。また、電気自動車の使用や環境整備促進をめざす「EV100」に基づき、一般車両のEV化を推進しました。
- 多様な人材の活用として、2019年12月、障がい者の活躍推進に取り組む国際イニシアティブ「The Valuable 500」に加盟しました。また、障がい者活躍の取り組みとして、遠隔操作型分身ロボット「OriHime-D」を活用した障がい者による受付業務トライアルを実施しました。
- 持続的な企業価値向上に向けたESG領域におけるNTTグループの取り組みが高く評価され、世界の代表的なESG投資指標であるDow Jones Sustainability Indexの「World Index」に2年連続で選定されました。また、世界最大規模の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が日本企業へのESG投資にあたり採用している4つのESG指数すべてに選定されました(2020年3月末時点)。
- 株主還元については、配当および機動的な自己株式取得を実施しました。また、投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ることを目的として、2020年1月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割を実施しました。
- 当社株式の魅力を高め、中長期的に当社株を保有していただける株主の拡大を図ることを目的として、株主の皆さまへdポイントを進呈することとしました。
(3)基盤的研究開発などの状況
中期経営戦略「Your Value Partner 2025」に基づき、世界に変革をもたらす革新的な研究開発を推進しました。その具体例として、2019年5月に発表したIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想に向けてグローバルを含む要素技術開発や産業での活用事例の創出に取り組むだけでなく、多様な領域で新たな価値創造の源泉となるため、様々な分野の産業界の方々とともに、産業競争力の強化や社会的課題の解決をめざす取り組みを推進しました。
なお、IOWNは主に、光技術を適用する「オールフォトニクス・ネットワーク」、サイバー空間上でモノやヒト同士の高度かつリアルタイムなインタラクションを可能とする「デジタルツインコンピューティング」、それらを含む様々なICTリソースを効率的に配備する「コグニティブ・ファウンデーション」の3つで構成されます。
IOWN構想を支える研究開発
- コンピュータの中で情報を処理・演算する装置であるプロセッサ内部の信号伝送を光で行うことで、電気での処理に起因する消費電力と発熱増大の問題を解決し、超低消費電力・高性能な情報処理を実現する光電融合プロセッサの実現をめざし、ナノフォトニクス技術を用いた光トランジスタなど、超小型光電変換素子を実現しました。
- 現在の秒の基準である原子時計を超える精度を持つ光格子時計を複数つなぎ、時間の比較実験を行うために、国立大学法人東京大学との光周波数伝送実験をNTT東日本の光ファイバ網を使用し行いました。その結果、比較実験に必要な周波数精度を達成し、実験実施に向けて大きく前進しました。
- 国立大学法人京都大学と、テクノロジーの進化と人が調和する新たな世界観を構築するプロジェクトを発足しました。哲学を始めとする人文・社会科学の知を活用し、リアルとバーチャルが融合する世界での新たな世界観の構築をめざします。
研究開発のグローバル化
- 2020年1月、業界におけるリーダーシップおよびIOWNの軸となる技術分野で優れた専門性を有するNTT・米Intel Corporation・ソニー株式会社の3社でIOWN Global Forumを米国で設立しました。2020年3月からは広く会員募集を開始し、多くの国内外の企業がメンバーとして加入するとともに、オンライン会議を活用しながら、具体的な技術検討に着手しました。今後、様々なパートナーの皆さまとIOWN構想の早期実現をめざします。
- 基礎研究の強化を目的に、2019年7月、3つの研究所を擁するNTT Research, Inc. を米国シリコンバレーに開設しました。量子計算科学、医療・健康・ヘルスケア、基礎暗号・ブロックチェーンの各分野において、米国や欧州の大学・研究機関などと共同研究を開始しています。
B2B2Xモデル推進およびDXの推進に向けた研究開発
- 米MLB(Major League Baseball)のライブビューイングにおいて、従来4台のカメラで撮影していたワイド映像を1台で撮影可能とする視差なしワイドカメラを活用したUltra Reality Viewing技術を実現しました。視差をなくすことにより被写体の正確な形状での撮影などを可能にしました。
- PSTNマイグレーションに向け、従来の電話網として使用されているメタルケーブルを継続利用したまま、変換装置を経てNTT東日本・NTT西日本のIP網(NGN)へつなげつつ、他事業者とのIPでの接続や、中継/信号交換機のIP化を可能とする基盤的技術を実現しました。
- 国立大学法人北海道大学、岩見沢市と連携し、遠隔監視による無人状態での農機完全自動走行を実現するため、最適な測位・位置情報配信方式や、最適なネットワーク技術、IoT機器データの収集やAIによる分析について検証を開始しました。
その他最先端研究の推進
- 国立大学法人東京工業大学と、超高速に動作する全光スイッチを世界最小の消費エネルギーで実現しました。プラズモニクスと呼ばれるナノサイズの光導波路に光を閉じ込める技術と、優れた光特性を有するグラフェンを結合させることで、電気制御では到達不可能な超高速スイッチ動作を低消費エネルギーで実現することに成功しました。この技術を用いることで、将来の光情報処理集積回路における超高速制御への活用をめざします。
- シート状の炭素材料であるグラフェンを自発的に円筒状の三次元構造に変形させ、その内部で神経細胞を長期培養することで、マイクロ~ミリメートルスケールの微小な神経細胞ファイバを再構築する手法の開発に成功しました。これにより、幹細胞を用いた再生医療の基盤技術や、損傷した生体組織に埋め込むフレキシブル刺激電極の作製技術、薬剤スクリーニングのための生体組織作製技術など、新たなバイオデバイス応用に繋がると期待されます。
- JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と、地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現をめざした協定を締結しました。両者の技術融合による社会インフラ創出に向けて、宇宙光無線通信、次世代地球観測、低軌道衛星と地上局間通信などの分野で共同研究を実施します。
- 電波の届きにくい海中の通信エリア化に向け、海中の伝搬路変動を克服する超音波MIMO多重伝送技術により、現在より2桁高速な1Mbit/sの海中通信を実現しました。
以上の取り組みの結果、当事業年度のNTTグループの営業収益は11兆8,994億円(前年比0.2%増)となりました。また、営業費用は10兆3,373億円(前年比1.5%増)となりました。この結果、営業利益は1兆5,622億円(前年比7.8%減)、また、税引前当期利益は1兆5,701億円(前年比6.1%減)、当社に帰属する当期利益は8,553億円(前年比0.1%増)となりました。
セグメント別の状況
移動通信事業
概況
移動通信事業では、シンプルでおトクな新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」や「ドコモ光」の販売を推進したほか、5Gサービスの提供開始、スマートライフ領域における様々な事業者とのコラボレーション推進など、新たな付加価値の提供に取り組みました。
主な取り組み内容
- スマートフォン決済サービスの「d払い」や「dポイント」の取扱い店舗の拡大に努め、「dポイントクラブ」会員数は7,509万会員、「dポイントカード」登録数は4,326万件となりました。
- ドコモショップにおけるお客さまの待ち時間短縮のためにWeb・電話予約の導入や、予約の受付可能数の拡大に取り組みました。また、2019年12月より、ドコモショップ店頭で端末をご購入いただき、初期設定・データ移行を希望されるお客さまに対して無料で手続きをご案内するようにサポート内容を統一しました。
- 国内の医師の約9割を会員に持つ国内最大の医療IT企業であるエムスリー株式会社と資本・業務提携契約を締結し、企業の健康経営をサポートする株式会社emphealを設立しました。
- 5Gの技術や仕様に関する情報や、5Gの技術検証環境の無償提供などを通じて、パートナー企業と新たなソリューション協創の取り組みとして実施している「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」の参加パートナー数は、2020年3月末に3,400となりました。
(ご参考) 主なサービスの契約数
〇「携帯電話サービス」:8,033万契約(対前年:+187万契約)
〇「ドコモ光」:649万契約(対前年:+73万契約)
地域通信事業
概況
地域通信事業では、光アクセスサービスなどを様々な事業者に卸提供する「光コラボレーションモデル」や、地域社会・経済の活性化に向けたソリューションビジネスの強化を図りました。
主な取り組み内容
- IoT/AIを活用し、農業を起点とした街づくりを推進するため、NTTグループ初の農業×ICT専業会社である株式会社NTTアグリテクノロジーを設立しました。また、地域社会と経済活性への貢献などを推進するため、スカパーJSAT株式会社、株式会社タイトーとの共同出資により株式会社NTTe-Sportsを設立しました。
- NTT東日本・NTT西日本は、全国の多くの地方自治体などと連携し、ICTを活用した街づくりなどに向けた様々な取り組みを推進しました。NTT西日本においては、大学・地方自治体向けの共同利用型クラウドである「地域創生クラウド」サービスを京都エリアから順次提供開始しました。
- 地域の文化芸術資源の保存・伝承という社会的課題や、文化芸術を通じた地域の魅力発信・活性化といったお客さまの期待に対し、地域文化芸術に関するデジタルデータの集積や、先進技術を用いた発信により、地域の文化芸術伝承を通じた地方創生の取り組みを推進しました。また、取り組みのコンセプトを発信する場として、体験型美術展「Digital×北斎【序章】」を開催しました。
(ご参考) 主なサービスの契約数
〇「フレッツ光」:2,166万契約(対前年:+58万契約)
〇(再掲)「コラボ光」:1,389万契約(対前年:+120万契約)
(注) 「フレッツ光」は「光コラボレーションモデル」を活用してNTT東日本およびNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービスの契約数を含めて記載しております。
長距離・国際通信事業
概況
長距離・国際通信事業では、ネットワーク、セキュリティなどを組み合わせたICTソリューションの提供力を強化したほか、クラウドサービスやITアウトソーシングといった成長分野でのサービス提供力の強化を図りました。
主な取り組み内容
- 世界各地でのクラウドサービスやデータセンターの需要に対応するため、市場拡大の続く各国において、サービス提供体制の拡充を進めました。欧州ではオランダ アムステルダム 1 データセンター、ドイツ フランクフルト 4 データセンターの提供を開始し、アジアではインドネシア ジャカルタ 3 データセンターの建設に着手しました。
- SAPに特化した北米有数のマネージドサービス事業者Symmetry Holding Inc. の株式を取得しました。当該株式取得により、マネージドサービスの最大市場である北米において、オンプレミスからクラウドへのSAP移行・運用のケイパビリティを獲得し、SAPユーザーに対するハイブリッドクラウドソリューションの提供力を強化しました。
- 株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社みずほ銀行、みずほ情報総研株式会社と、音声認識処理技術、テキストマイニング、RPAを活用した市場商品の取引データ入力を自動化する業務効率化ツールである音声入力システムを共同開発し、みずほ銀行の市場バンキング業務において利用を開始しました。
データ通信事業
概況
データ通信事業では、グローバルでのデジタルトランスフォーメーションなどの加速や、ニーズの多様化・高度化に対応するため、グローバル市場でビジネス拡大を図るとともに、市場の変化に対応したデジタル化の提案、システムインテグレーションなどの多様なITサービスの拡大と安定的な提供に取り組みました。
主な取り組み内容
- 決済手段を指定したQRコードで認証入店することで、手に取った商品をレジでの支払い無しでそのまま持ち帰ることができる「Catch&Go」を提供開始しました。レジ無しデジタル店舗の実現により、消費者はレジでの支払いストレス軽減や、店内行動をもとにした優遇キャンペーンなど、便利でオトクな購買体験が得られます。一方、従業員や店舗経営者にとっては、レジ打ちが無くなることによる業務効率化やレジ待ち解消による購買機会の最大化、消費者の店内動線やアクションをデータで把握することによる拡販機会の獲得、店舗設計やマーケティングへの活用などが可能となります。
- 欧州・中南米を中心に30カ国以上でガス・電力事業を行うスペインのNaturgy Energy Group, SAより、デジタル変革プロジェクトの戦略パートナーに選定されました。今後、ガスの導管や電力の送配電に関するシステムの維持・運用、およびガス・電力の小売に係る各種業務を対象に、自社開発の先進的なプラットフォームなどを活用したBPO・ITOサービスを提供します。
- 北米での成長戦略のさらなる推進に向けて、アマゾン・ウェブ・サービス関連および米国連邦政府向けのヘルスケア分野のケイパビリティを強化するため、米Flux7 Labs Inc. および米NET ESOLUTIONS CORPORATIONの2社を子会社化しました。
その他の事業
概況
その他の事業では、主に不動産事業、金融事業、電力事業、システム開発事業に係るサービスを提供しました。
主な取り組み内容
- NTTグループの不動産事業を一元的に担うNTTアーバンソリューションズ株式会社を創設し、主力となるオフィス・商業事業や住宅事業、グローバル事業を推進しました。また、ホテル・リゾート事業として、京都エリアにおいて、歴史的建造物などを活用した複数のホテル開発にも取り組み、地域社会の街づくりに貢献しました。
- ICT機器の普及や、環境・教育・医療分野を中心とした社会的課題の解決に向け、リース・ファイナンスなどの金融サービスを展開しました。また、通信サービス料金などの請求・回収、クレジットカード決済サービスの提供を行いました。
- NTTグループにおけるスマートエネルギー事業を推進するNTTアノードエナジー株式会社を設立しました。ICT技術・直流給電技術を最大限に融合・活用し、保有する太陽光発電所からグリーン電力を提供するなど、自然エネルギーの活用や限りあるエネルギーを効率的にムダなく使う街づくり、自然災害などのリスクに強い安心・安全な街づくりに取り組みました。
- デジタルトランスフォーメーション推進に向けて、新規サービスのプラットフォームとなるITシステム群の開発・導入を開始しました。また都市の安全・地域の活性化など社会課題解決ソリューションの開発に取り組みました。
不動産事業
金融事業
電力事業
システム開発事業
2.対処すべき課題
(1)事業環境の見通し
地球規模の人口増加と都市化の進展がますます加速し、環境問題が深刻化していくとともに、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大も起こり、私たちの社会や経済に与える影響がますます不透明な状況になっています。一方、国際連合で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)のもと、持続可能な社会の実現に向けた動きも世界中で活発化しています。
このような社会情勢のもと、情報通信市場では、新たなプレイヤーを含めた熾烈な競争も進むなか、5G・仮想化・AIなどの最新技術を活用した新たなサービスが発展し、デジタルトランスフォーメーションを通じたスマートな社会が実現していくと見込まれます。その際、新たな価値創造や社会的課題の解決に向けて、従来の事業領域の垣根を越えた様々なプレイヤーとの協創・連携が進み、情報通信に求められる役割もますます拡大すると考えられます。
(2)新型コロナウイルス感染症の流行拡大への対応と今後の事業への影響
感染症の世界的な流行拡大への対応にあたり、お客さま、パートナーの皆さま、従業員を含む全ての関係者の健康と安全の確保に努めていきます。あわせて、人々の生活や企業の活動にとって重要な情報通信サービスの安定的な利用の確保に努めます。
流行拡大の長期化により、お客さまの事業活動が縮小し、システムインテグレーション受注や各種サービス販売が減少することや、計画していた工事等が遅延するなど、事業活動に大きな影響が生じる可能性があります。
感染症終息後の時代には、人々の生活や企業の活動のスタイルが劇的に変容する可能性があります。NTTグループは、こうした時代においてデジタル技術を活用した新しい社会システムの定着など、技術開発などによるイノベーションを通じて社会的課題解決をめざします。
新型コロナウイルス感染症に対するNTTグループの主な取り組み
指定公共機関として通信サービスの安定的な提供を確保
当社および通信事業を営む主要子会社は、指定公共機関としての責務の遂行および人命尊重の視点から感染防止に資することを目的とし、業務計画を定めています。
感染症の流行拡大に伴い、インターネットの利用やテレワークの需要などが高まっている中、主に固定通信において、特に平日昼間帯のデータトラフィック量(通信量)が大幅に増加しています。NTTグループ各社は、これまで夜間帯のピークトラフィックを踏まえたネットワーク設計をしており、現時点では昼間帯はネットワーク容量を確保できております。今後も、通信サービスの安定的な提供のため、状況に応じて設備を増強してまいります。
ネットワークの運用、監視、障害対応は通常通り、24時間365日継続します。また、回線等開通工事や故障修理については、お客さまのご要望に基づき、安全管理などに十分注意し業務を継続します。
お客さま対応については、店舗などにおける営業時間の短縮や受付業務の限定、コールセンターの体制縮小などを行う一方、ウェブでのお手続きの積極的なご利用をお願いするとともに、お客さまの通信確保や事業継続に必要となるサービス提供については、ICTツールを活用しリモートでのご相談を承るなど、引き続き通信サービスの安定的な提供に努めてまいります。
お客さまの支援施策
2020年3月、NTTグループ各社は、サービス料金などのお支払いを期限までに行うことが困難なお客さまからお申し出があった場合、お支払期限を延長させていただくことを発表しました。
また、NTTドコモは、外出自粛によりdポイントをご利用しにくい環境であったことを踏まえ、3月中などに失効したdポイントの再進呈を行い、有効期限を実質的に延長することとしました。
2020年4月には、NTTドコモやNTTコミュニケーションズは、学校で遠隔授業やオンライン学習を実施している状況を踏まえ、25歳以下のお客さまに対して、スマートフォンを用いたオンライン学習などの利用の支援として、データ通信の一部無償提供を行うことを発表しました。
さらに、テレワーク支援や教育支援、健康支援の一環として、NTTグループ各社は、相談窓口の開設やサービスの一部無償提供など、様々な施策を展開しております。あわせて、携帯端末のデータを用いて、新型コロナウイルス拡大に伴う政府などの対応でどのように人口が変化したかを分析し、政府、自治体、メディアなどへ提供しています。
感染症終息後に向けて
ソーシャルディスタンスの確保という観点から、在宅勤務や遠隔医療、遠隔教育などが急速に拡大しています。NTTグループは、リモート型社会の推進に向けたサービス提供を加速していくとともに、認証制御技術などの高度化を推進していきます。
また、経済のブロック化や産業の国内回帰への対応として、デジタルトランスフォーメーションの推進も積極的に支援します。農業、製造業、建設業といった人手が必要とされている仕事に、デジタル技術やAIを導入することで、スマートオペレーションを拡大し、人手不足といった社会課題解決に寄与することをめざします。さらに、流通など、様々な分野でコネクティッドバリューチェーンを構築し、産業の効率化を図ることで、人・モノの移動やエネルギー供給の最適化につなげていきます。
NTTグループは、感染症終息後に起こりうるデータ主導型社会に向け、技術開発などを通じたイノベーションをリードしていくことで、世界のパートナーとともに、スマートな社会の実現に貢献してまいります。
※「新型インフルエンザ等対策特別措置法」により、NTT、NTTドコモ、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズの5社が指定公共機関に指定されています。
※最新の情報については、当社ウェブサイト(https://www.ntt.co.jp/topics/important/covid19.html)をご覧ください。
(3)中期経営戦略に基づく事業展開
NTTグループは、中期経営戦略「Your Value Partner 2025」に基づき、パートナーの皆さまとともに、事業活動を通じた社会的課題の解決に取り組んでまいります。
これからも引き続き以下の取り組みの推進による企業価値の向上に努めてまいります。
お客さまのデジタルトランスフォーメーションをサポート
スマートな社会の実現に向け、デジタルサービスやデータマネジメントを活用したB2B2Xモデルを推進し、プロジェクト数を拡大させます。また、5Gサービスの展開については、幅広いパートナーとともに、5Gの特徴を活かした高臨場、インタラクティブ(双方向)なサービスによる新しい価値を創出します。さらに、NTTドコモの「ギガホ」「ギガライト」の提供による顧客基盤の強化や、dポイントクラブ会員向けのサービスによる収益機会の創出などを通じ、お客さま一人ひとりに合わせたきめ細やかなパーソナルソリューションを実現し、お客さまのライフスタイルの変革をサポートします。
自らのデジタルトランスフォーメーションを推進
お客さまのデジタル化を推進する統合ソリューションと、最先端技術を活用した革新的な取り組みを掛け合わせ相乗効果を高めるとともに、NTTグループのグローバル人材・ブランディングとあわせて、One NTTとしてグローバルビジネスの競争力強化と成長を加速させます。具体的には、NTT Ltd.を中心に、マネージドサービスなどの高付加価値サービスを中核とするビジネスへの転換や、NTTブランドのさらなるグローバル展開に向けた取り組みを推進します。
国内事業については、主要各社に設置しているCDOを中心に、デジタル化施策を推進します。自らの業務プロセスについて、AIやRPAなどを活用し、デジタル化することで効率化を図るとともに、社外の協力会社も含めた業務プロセスにおいて、人手を介さないスマートなオペレーションを実現します。また、グループ経営の高度化に向けて、統一ERPを導入し、共通的な業務を統合していきます。
人・技術・資産の活用
NTTグループが持つ不動産やICT・エネルギー・環境技術などを最大限活用し、NTTアーバンソリューションズ株式会社を中心に、従来の不動産開発にとどまらない新たな街づくり事業を推進します。また、新たなエネルギーソリューションを迅速に提供するため、NTTアノードエナジー株式会社は、サービス開発・提供・運用リソースの最適化などを進め、ICTを活用したスマートエネルギー事業を推進します。
さらに、地域密着の営業体制、最新技術、設備・拠点といった経営資源を活かし、自治体など様々なパートナーとのコラボレーションを通じて、行政・生活サービスの充実、地場産業の活性化を支援します。
また、災害対策においては設備の強靭化、復旧の迅速化などに取り組み、安心・安全なICT基盤の確保に引き続き注力します。
ESG経営の推進、株主還元の充実による企業価値の向上
ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を通じて社会的課題を解決し、持続的な企業価値の向上をめざします。ESG経営の観点で特に優先度の高いマテリアリティ(重要課題)として「環境負荷の低減」「セキュリティの強化」「多様な人材の活用」「災害対策の強化」「持続的成長に向けたガバナンス強化」を設定し、事業機会を拡大するとともに、事業リスクを最小化することに努めます。
環境については、研究開発による限界打破のイノベーションの創出、および事業における環境負荷低減への取り組みにより、お客さま・企業・社会の環境負荷低減に貢献することで、環境負荷ゼロをめざします。具体的には、宇宙環境エネルギー研究所を新設するとともに、圧倒的な低消費電力をめざしIOWNの研究開発を進めます。また、自らのグリーン電力化の推進として、再生可能エネルギーの活用を2030年度までに30%以上とする目標をめざすほか、TCFDへの賛同、グリーンボンドの発行など、環境エネルギーへの取り組みの充実を図ります。
ダイバーシティ&インクルージョンの推進については、2012年度時点の国内の女性管理者比率2.9%を、2020年度までに6%へ倍増させることに取り組んでいましたが、2019年度に1年前倒しで達成しました。今後は、新たな目標として2025年度までに女性管理者比率10%以上をめざします。引き続き、働きやすい環境を整備していくことでイノベーションを創出し、社会課題の解決に貢献していきます。
そのほか、ネットワークの高い安定性と信頼性の確保に向けて、日々のネットワーク運用のノウハウ蓄積などを通じて、一層の安心・安全なサービス提供に努めます。
持続的成長にむけたガバナンス強化の一環として、2020年3月に、執行役員制度を導入する方針を決定し、公表しました。取締役会が担う経営に関する決定・監督の機能と、執行役員が担う業務執行の機能を明確に分離する体制を整え、コーポレート・ガバナンスをより強化するとともに、経営の機動力の向上を図っていきます。
配当については継続的な増配の実施を基本的な考えとし、自己株式の取得についても機動的に実施することで、資本効率の向上を図ります。
(4)基盤的研究開発などの推進
ネットワーク基盤技術、新たなサービスやアプリケーションの基盤となる技術、先端および基礎的な技術の調和を図りながら、より付加価値の高い研究開発を推進するとともに、IOWN Global Forumをはじめとして国内外において、他研究機関・パートナー企業などと連携したイノベーションや技術交流、普及・標準化活動などに引き続き積極的に努めます。
コーポレート・ガバナンスに関する事項
1.基本方針
当社は、株主や投資家の皆さまをはじめ、お客さまやお取引先、従業員など様々なステークホルダー(利害関係者)の期待に応えつつ、企業価値の最大化を図るためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するよう東京証券取引所の定める「コーポレートガバナンス・コード」の各原則の趣旨を踏まえ、体制強化していくことが重要であると考えております。中期経営戦略「Your Value Partner 2025」に基づき、「Your Value Partner」としてパートナーの皆さまとともに社会的課題の解決をめざした活動を推進するために、経営の健全性の確保、適正な意思決定と事業遂行の実現、アカウンタビリティ(説明責任)の明確化、コンプライアンスの徹底を基本方針として取り組んでおります。
2.コーポレート・ガバナンス体制の概要
当社は、独立社外監査役を含めた監査役による監査体制が経営監視機能として有効であると判断し、監査役会設置会社形態を採用しております。
また、当社は、独立社外取締役を選任することにより、業務執行を適切に監督する機能を強化しております。
3.取締役会
当社は、2020年3月の取締役会において、企業価値向上に資するガバナンスの更なる強化に向け、取締役会の運営・規模・構成の見直し、および執行役員制度を導入する方針を決定し、公表いたしました。取締役会における戦略的議論の更なる活性化のため、取締役会の規模の適正化や意思決定事項の変更などを実施いたします。また、執行役員制度を導入し、経営に関する決定・監督の機能と業務執行の機能を明確に分離することで、コーポレート・ガバナンスをより強化するとともに、経営の機動力の向上を図ります。
取締役会の規模・構成の見直しについては、具体的には、2020年6月23日開催の株主総会において、全15名の取締役が改選期となるところ、取締役の員数の約半数となる取締役8名(うち独立社外取締役4名を含む)の選任をお諮りしております。本議案が承認されますと、取締役会の規模が縮小されるとともに、独立社外取締役比率は50%となります。
今後、取締役会は、原則として毎月1回、定例取締役会を開催するとともに、必要のある都度臨時取締役会を開催し、グループ経営戦略に関する議論に加え、法令で定められた事項、および会社経営・グループ経営に関する重要事項を決定するとともに、取締役および執行役員から定期的に職務執行状況の報告を受けることなどにより、各取締役および各執行役員の職務執行を監督してまいります。
独立社外取締役については、それぞれ豊富な経験を有し、人格、見識ともに優れていることから、業務執行の監督機能強化への貢献および幅広い経営的視点からの助言を期待するものです。
なお、当社は、取締役の人事・報酬の決定における客観性・透明性の向上を目的に、取締役会の事前審議機関として独立社外取締役2名を含む4名の取締役で構成される人事・報酬委員会を任意に設置し、ガバナンスの有効性を高めております。取締役会の運営・規模・構成の見直し後も、人事・報酬委員会を引き続き設置してガバナンスの有効性を維持してまいります。
取締役会の実効性評価
純粋持株会社である当社の取締役会は、グループ全体の中長期的な事業戦略に基づいたグループ各社の具体的な事業運営について、モニタリングする役割を担っています。
当社の取締役会は、社長・副社長・常勤取締役およびスタッフ組織の長で構成する「幹部会議」や、社長・副社長を委員長とし関係する取締役などが参加する各種の委員会の審議を経て、グループ経営に係る重要事項などを決定するとともに、各取締役の職務執行の状況をモニタリングしています。
取締役会においては、各取締役の所掌に基づき、現状のグループ経営などにおける課題とその解決に向けた取り組みが報告・審議されており、当事業年度は、中期経営戦略「Your Value Partner 2025」に基づき、B2B2Xモデルの推進に向けた提携などの会社経営・グループ経営に関する重要事項、ガバナンスの更なる強化に向けた方針の策定などを中心に、活発な議論がなされました。また、従来の取締役会付議案件の独立社外取締役への事前説明に加え、当事業年度は当面の課題や検討状況などについて代表取締役から取締役会後に説明し、執行の注力内容と取り組み趣旨の明確化に努めることで、取締役会の監督機能の強化を図りました。
さらには、独立社外取締役に当社の事業をより深く理解してもらえるように、主要な子会社の経営陣と各社の経営戦略について意見交換を実施するとともに、当社が力を入れている研究開発に関する展示会に参加いただき、最先端の研究成果などについて説明しました。他にも、独立社外取締役と監査役、独立社外取締役と代表取締役、独立社外取締役と国内外の主要グループ会社経営陣、および当社と主要なグループ会社の独立社外取締役などとの間で、NTTグループの経営課題について適宜意見交換を行いました。
これらの意見交換会において、独立社外取締役および監査役から、当社の取締役会などに関し、十分な情報提供と活発な議論が行われており、実効性が確保できているとの意見をいただいているところです。
また、当事業年度は取締役会の継続的な実効性向上を通じて経営ガバナンスを強化する目的で、全取締役・監査役を対象に取締役会に関するアンケート調査を行い、取締役会としての実効性評価を実施しました。取締役会の役割と責務、構成、運営、満足度といった観点での質問を行い、第三者機関を通じて取りまとめた結果、すべての設問において肯定的意見が多数を占めており、取締役会に期待される重要な役割・責務が十分に果たされていることを確認しました。
なお、当事業年度は、取締役会の戦略的な議論の活性化のため、取締役会の規模を適正化したいと考えており、本株主総会にお諮りしている第2号議案の取締役の選任が承認されますと、独立社外取締役比率は50%となります。加えて、経営に関する決定、監督機能と業務執行の分離を明確に図るうえで、執行役員制度を導入することとしています。
こうした取り組みを踏まえ、当社としては、取締役会の実効性は確保されていると評価しております。
4.監査役会
監査役会は、社内監査役2名と独立社外監査役3名(各1名ずつ女性2名を含む)の合計5名で構成されております。当事業年度は監査計画に基づき、グローバル事業再編や事業領域の拡大など、経営が大きく変化するなか、法令に基づく監査に加え、中期経営戦略の進捗状況やコーポレート・ガバナンスの維持・向上に向けた取り組み状況などについて、内部統制室・会計監査人・グループ会社監査役などとの連携による効率的・効果的な監査に努めました。また、代表取締役との意見交換会や各取締役、グループ会社の代表取締役などとテーマに応じた議論を実施することで、取締役の職務の執行状況の実情を把握するとともに必要に応じて提言を行っております。当事業年度は、代表取締役との意見交換を10回、各取締役・グループ会社の代表取締役との議論を42回実施しました。
独立社外監査役を含む当社の監査役は、取締役会など重要な会議に出席するほか、取締役の職務の執行状況に関し、適宜監査を行っております。また、会計監査人と定期的に監査計画、監査結果の情報を交換するなど連携を密にし、監査体制の強化に努めております。さらに、内部統制室と監査計画の情報を交換するとともに、内部監査結果について聴取するなど連携を図っております。なお、当社の監査役会は、グループ会社の監査役と連携した監査を行っております。
当事業年度は、監査活動を振り返り、次年度の監査計画への反映、および監査品質の向上などを目的に監査役会の実効性を評価しました。各監査役によるアンケートの結果を基に、全監査役で議論・検証した結果、監査役会の実効性は確保されていると評価しました。なお、代表取締役との意見交換の機会を増やしたことにより、経営課題の共有やリスク認識の確認、監査役からの提言などがより活発に行えるようになったこと、会計監査人とのコミュニケーションの充実により、会計監査のプロセスの適正性確保に資することができたことなどが評価された一方、グローバル事業再編や事業領域の拡大などを踏まえ、内部統制室およびグループ会社監査役などとの連携強化が必要と認識されました。今後も監査役会の実効性の一層の向上に努めてまいります。
5.人事・報酬委員会
取締役の人事・報酬の決定における客観性・透明性の向上を目的に、取締役会の事前審議機関として独立社外取締役2名を含む4名の取締役で構成される人事・報酬委員会を任意に設置し、ガバナンスの有効性を高めております。当事業年度は人事・報酬委員会を5回開催し、ガバナンスの更なる強化に向けた取締役会のあり方や執行役員制度の導入、役員報酬制度の見直しなどについて活発な議論を実施しております。
6.役員の選任
当社の取締役会の構成は、「NTTグループ人事方針」における経営陣の選任の方針に基づき、NTTグループの課題解決に資するスキルを有する人材をグループ内外から幅広く選任していきます。なお、社外役員については、幅広い経営視点・専門家としての意見を期待するとともに、社内外の取締役については、ダイバーシティの推進も踏まえて選任することとしております。なお、今回の取締役会の体制見直しに伴う取締役選任議案が承認されますと、女性1名を含め、社外取締役比率は50%となります。
NTTグループ人事方針
【基本的な考え方】
NTTグループは、信頼され選ばれ続ける「Your Value Partner」として、お客さまに対してワールドワイドに新たな価値を創造することを通じて、社会的課題の解決と安心・安全で豊かな社会の実現に寄与していきます。その価値観を共有できる人材をNTTグループ全体のトップマネジメント層にグループ内外から幅広く選任していくこととします。
【取締役候補の選任】
取締役候補は、NTTグループ全体の企業価値の向上のために、グループトータルの発展に寄与する幅広い視野と経験を有し、マネジメント能力とリーダーシップに優れ、経営センスと意欲のある人材を選任します。取締役会は、事業内容に応じた規模とし、専門分野などのバランスおよび多様性を考慮した構成とします。
なお、業務執行の監督機能を強化する観点から、一般株主と利益相反を生じるおそれのない人材を独立社外取締役とし、原則、複数名選任します。
【監査役候補の選任】
監査役候補は、専門的な経験、見識などからの視点に基づく監査が期待できる人材を選任することとします。
なお、取締役の業務執行を公正に監査する観点から、一般株主と利益相反を生じるおそれのない人材を社外監査役とし、会社法に則り監査役の半数以上を選任します。
なお、取締役候補の選任にあたっては、独立社外取締役2名を含む4名の取締役で構成される人事・報酬委員会の審議を経て取締役会で決議し、株主総会に付議することとしています。また、監査役候補の選任にあたっては、監査役候補の選任方針に基づき取締役が提案する監査役候補について、社外監査役が半数以上を占める監査役会における審議・同意を経て取締役会で決議し、株主総会に付議することとしています。
後継者計画
最高経営責任者の後継者候補については、技術革新、市場動向、経営環境の変化のスピードに対応できる後継者候補の確保が重要と捉え、幅広い職務経験、重要ポストへの配置などを通じ、候補者の多様性を担保し、人格、見識ともに優れ時世に合った人材を登用していけるよう育成を行っております。なお、選任にあたっては、取締役会の事前審議機関として独立社外取締役2名を含む4名の取締役で構成される人事・報酬委員会の審議を経て、取締役会で決定しております。
社外役員の独立性
当社は、職務執行の監督機能を強化する観点、あるいは取締役の職務執行を適切に監査する観点から、一般株主と利益相反を生じるおそれのない人材を、社外取締役ないし社外監査役とする方針としております。さらに、東京証券取引所の定める独立性基準に加え、以下の要件を満たす社外取締役ないし社外監査役を、独立役員に指定しております。
独立性判断基準
直近の3事業年度において以下に該当する者ではないこと。
- (1)当社の基準を超える取引先※1の業務執行者
- (2)当社の基準を超える借入先※2の業務執行者
- (3)当社および主要子会社※3から、直近の3事業年度のいずれかの事業年度において、役員報酬以外に年間1,000万円以上の金銭その他の財産上の利益を直接得ているコンサルタント、会計専門家、法律専門家などの専門的サービスを提供する個人
-
(4)当社の基準を超える寄付を受けた団体※4の業務執行者
なお、以上の(1)から(4)のいずれかに該当する場合であっても、当該人物が実質的に独立性を有すると判断した場合には、独立役員の指定時にその理由を説明、開示します。
- ※1 当社の基準を超える取引先とは、直近の3事業年度のいずれかの事業年度における当社および主要子会社※3の取引合計額が、当該事業年度における当社および主要子会社の年間営業収益合計額の2%以上の取引先をいう。
- ※2 当社の基準を超える借入先とは、直近の3事業年度のいずれかの事業年度における連結ベースでの借入額が、当該事業年度における当社の連結総資産の2%以上の借入先とする。
- ※3 主要子会社とは、株式会社NTTドコモ、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・データをいう。
- ※4 当社の基準を超える寄付を受けた団体とは、直近の3事業年度のいずれかの事業年度における当社および主要子会社※3からの寄付の合計額が、年間1,000万円又は当該事業年度における当該組織の年間総収入の2%のいずれか大きい額を超える団体をいう
7.取締役・監査役に対する研修
NTTグループ会社役員に対しては、グローバルにわたる経済・社会問題、コンプライアンス、リスクマネジメントなど様々な研修の機会を設けるとともに、新たな職務経験などを積ませることで、激変する経営環境に対応できるトップマネジメントに相応しい候補者の育成に努めています。また、独立社外役員に対しては、グループ会社の事業動向や当社研究所などにおける最新の研究開発成果への理解を深める機会を設けるなど、NTTグループ事業への理解をさらに深める取り組みも行っています。
8.政策保有株式
当社は、安定株主の形成を目的とした株式の保有をしておらず、また、今後も保有いたしません。
一方で、当社は、中長期的な企業価値の向上に資するため、様々な業界のパートナーとコラボレーションやオープンイノベーションの推進を事業の方針としております。こうした方針を踏まえ、当社は、中長期的な企業価値の向上に資するか検証し、株式の保有・売却を行うこととしています。
政策保有株式に関する議決権行使については、投資先企業の持続的な成長と、当社および投資先企業の企業価値向上の観点から、中長期的な企業価値向上に向けた取り組み内容を検証のうえ、株主として適切に議決権を行使します。
9.資本政策
配当については継続的な増配の実施を基本的な考えとし、自己株式の取得についても機動的に実施することで、資本効率の向上を図ります。
会社役員に関する事項
1.取締役および監査役の状況
2.取締役および監査役の報酬等に関する方針ならびにその総額
当社の取締役の報酬方針および報酬の構成・水準については、客観性・透明性の向上を目的に、独立社外取締役2名を含む4名の取締役で構成される人事・報酬委員会を設置し、同委員会の審議を経て取締役会にて決定しております。当事業年度は人事・報酬委員会を5回開催したほか、委員会メンバーによる意見交換会を複数回開催しました。
取締役(社外取締役を除く)の報酬については、月額報酬と賞与から構成しております。月額報酬は、役位ごとの役割の大きさや責任範囲に基づき、支給することとしております。賞与は、当事業年度のEPSなどを業績指標とし、その達成度合いなどを勘案して支給することとしております。なお、業績指標については、中期経営戦略で掲げた財務目標などを指標に設定しており、具体的にはEPS・営業利益・ROIC・Capex to Sales・海外売上高・海外営業利益率・B2B2Xプロジェクト数で評価することとしております。
また、中長期の業績を反映させる観点から、月額報酬並びに賞与の一定額以上を拠出し役員持株会を通じて自社株式を購入することとし、購入した株式は在任期間中、そのすべてを保有することとしております。なお、報酬構成割合は、標準的な業績の場合、おおよそ「固定報酬:業績連動報酬=70%:30%」となります。
さらに、中期経営戦略の達成と持続的成長、および中長期的な企業価値向上をより強く意識することを目的に、2021年度以降、総報酬に占める業績連動報酬割合を拡大する方向で検討をしております。
社外取締役の報酬については、高い独立性の確保の観点から、業績との連動は行わず、月額報酬のみを支給することとしております。
監査役の報酬については、監査役の協議にて決定しており、社外取締役と同様の観点から、月額報酬のみを支給することとしております。