事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)

企業集団の現況

事業の経過及び成果

当社グループは、「世界の才能と、感動をつなぐ、クリエイティブプラットフォーマーへ」をコーポレートミッションとして掲げ、中長期的な成長及び企業価値の向上を図るべく、出版・IP創出、アニメ・実写映像、ゲーム、Webサービス、教育・EdTech事業等において、多彩なポートフォリオから成るIP(Intellectual Property)を安定的に創出し、事業間連携によりIPのLTV(Life Time Value)の最大化を図り、さらに最新のテクノロジーを常に取り入れることで、IPを世界に広く展開する「グローバル・メディアミックス with Technology」を推進することを基本戦略としております。

当連結会計年度における業績は、売上高2,581億9百万円(前年同期比1.0%増)、営業利益184億54百万円(前年同期比28.8%減)、経常利益202億36百万円(前年同期比24.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益113億84百万円(前年同期比10.2%減)となりました。

当連結会計年度における各セグメントの業績は、以下のとおりです。なお、当連結会計年度より、従来「出版事業」としていた報告セグメントの名称を「出版・IP創出事業」に、「映像事業」としていた報告セグメントの名称を「アニメ・実写映像事業」に、「教育事業」としていた報告セグメントの名称を「教育・EdTech事業」に変更しております。この報告セグメントの名称変更がセグメント情報に与える影響はありません。

当期の連結業績

各セグメントの業績

当連結会計年度における各セグメントの業績は、以下のとおりです。

売上高
前期比 %増
営業利益 10,360
前期比 21.3 %減
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売上高

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営業利益

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出版・IP創出事業では、書籍・雑誌の出版・販売、電子書籍・電子雑誌の出版・販売、Web広告の販売、権利許諾等を行っております。当事業においては、メディアミックス展開の重要な源泉として年間5,500タイトル以上の新作を継続的に創出しております。それにより蓄積されたタイトルは130,000以上にのぼり、この豊富な作品アーカイブが当社グループ成長の原動力となっております。

電子書籍・電子雑誌では、メディアミックス作品を中心として国内自社ストア・他社ストア向け販売ともに好調に推移しております。

書籍・雑誌は、アジアでは堅調に成長しましたが、米国では過去数年間の急激な需要増の反動による書店の発注抑制・返品増が継続したこと等により、海外事業全体で減収となりました。国内では、新規IP数が増加したものの、市場全体の縮小影響が大きかったこと等により減収となりました。新刊では、『パンどろぼうとほっかほっカー』、『メメンとモリ』(児童書)、『山田くんとLv999の恋をする(7)』、『光が死んだ夏(3)』(コミック)等の販売が売上高に貢献しました。また、当社の出版IPの使用を他社に許諾することで得られるライセンス収入は堅調に伸長しました。

当事業の中長期的な成長を見据えた人員増強、デジタル製造工場・新物流設備への投資等を積極的に実施したことで、費用は増加しました。

この結果、当事業の売上高は1,419億67百万円(前年同期比1.4%増)、セグメント利益(営業利益)は103億60百万円(前年同期比21.3%減)となりました。

売上高
前期比 %増
営業利益 4,574
前期比 110.9 %増
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売上高

(単位:

営業利益

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アニメ・実写映像事業では、アニメ及び実写映像の企画・製作・配給、映像配信権等の権利許諾、パッケージソフトの販売等を行っております。

アニメでは、『ダンジョン飯』や『【推しの子】』、『異修羅』等の人気タイトルの国内・海外配信向けやゲーム・グッズ向けライセンス収入が好調に推移し、力強く成長しました。実写映像では、『わたしの幸せな結婚』や『首』、『マッチング』等の自社原作の実写映像化が貢献し増収となりました。

利益面では、上記増収影響等により、セグメント全体で増益となりました。

この結果、当事業の売上高は460億60百万円(前年同期比6.4%増)、セグメント利益(営業利益)は45億74百万円(前年同期比110.9%増)となりました。

売上高
前期比 %減
営業利益 7,950
前期比 44.1 %減
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売上高

(単位:

営業利益

(単位:

ゲーム事業では、ゲームソフトウエア及びネットワークゲームの企画・開発・販売、権利許諾等を行っております。

㈱フロム・ソフトウェアの新作『ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF RUBICON』の国内外の販売や過去作品のリピート販売が好調に推移したことに加え、㈱スパイク・チュンソフトの新作『超探偵事件簿 レインコード』や『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』が売上高に貢献しました。一方で、前期の『ELDEN RING』の業績貢献が大きかった影響により、当事業の売上高は253億51百万円(前年同期比16.5%減)、セグメント利益(営業利益)は79億50百万円(前年同期比44.1%減)となりました。

売上高
前期比 %減
営業利益 362
前期比 77.9 %減
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売上高

(単位:

営業利益

(単位:

Webサービス事業では、動画コミュニティサービスの運営、各種イベントの企画・運営、モバイルコンテンツの配信等を行っております。

動画コミュニティサービスでは、動画配信サービス「ニコニコ」の月額有料会員(プレミアム会員)が3月末には117万人となり、前年3月末から減少となったことに加え、投資効果に鑑み一部広告関連サービスを縮小させたことにより減収となりました。各種イベントの企画・運営では、8月開催の『Animelo Summer Live』等の貢献により増収となりました。

利益面では、動画コミュニティサービスの減収影響に加え、将来の開発スピードアップやコスト効率性向上のためにITインフラ投資を増加させたこと等により、減益となりました。

この結果、当事業の売上高は213億99百万円(前年同期比3.0%減)、セグメント利益(営業利益)は3億62百万円(前年同期比77.9%減)となりました。

売上高
前期比 %増
営業利益 1,727
前期比 2.4 %減
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売上高

(単位:

営業利益

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教育・EdTech事業では、専門校運営及びインターネットによる通信制高校であるN高等学校・S高等学校等向けの教育コンテンツ・システム提供等を行っております。

クリエイティブ分野の人材育成スクールを運営する㈱バンタンでは、展開地域拡大の貢献に加え、強化を進めている社会人コースを中心とした生徒数増加により、増収となりました。また、㈱ドワンゴによるN高等学校・S高等学校向け事業では、同校の通学コース向け新キャンパス開設等により生徒数が引き続き増加し、堅調に推移しています。

利益面では、㈱バンタンにて2024年4月に開校する新スクール「KADOKAWAアニメ・声優アカデミー」等での生徒獲得のために積極的に広告宣伝費を投下したこと等により、セグメント全体で減益となりました。

この結果、当事業の売上高は133億90百万円(前年同期比7.3%増)、セグメント利益(営業利益)は17億27百万円(前年同期比2.4%減)となりました。

売上高
前期比 %増
営業利益 -4,399
前期比 135 百万円 増
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売上高

(単位:

営業利益

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その他事業では、ところざわサクラタウン等の施設運営及びキャラクターグッズ等の企画・販売を行うMD事業等を行っております。

施設運営事業では増収となりました。MD事業でも、フィギュアの売上高が順調に拡大し増収となったことに加え、一部新規サービスの拡大もセグメント全体の増収に貢献しています。

利益面では、施設運営事業における一部事業撤退やコスト適正化の効果を中心に、セグメント全体として増益となりました。

この結果、当事業の売上高は202億98百万円(前年同期比18.0%増)、セグメント損失(営業損失)は43億99百万円(前年同期 営業損失45億35百万円)となりました。

対処すべき課題

当社グループを取り巻く事業環境は、国内出版市場においては電子出版が継続的に成長する中、紙出版は減少傾向が継続しています。海外での日本発コミック市場は、コロナ禍での特需は沈静化したものの、長期的な日本コンテンツの需要は拡大基調にあります。

映画館やイベントについては、国内興行収入は上昇基調でコロナ禍前2019年の85%まで戻しており、リアルイベント市場はコロナ禍前を凌ぐ水準となっています。

また、映像配信、オンラインゲーム及びオンラインライブの一層の普及により、デジタルのコンテンツ需要が世界的に高まるとともにコンテンツを中心に他者とつながる楽しみ方も広がっております。

こうした事業環境を捉え、当社は「グローバル・メディアミックス with Technology」を中期経営計画の基本方針とし、IP創出やメディアミックス及び海外展開、ライセンス展開の強化を通じて「IPのLTV(Life Time Value)最大化」を達成するとともに、教育・EdTech事業の拡大やファンコミュニティ運営の強化により、継続的な業績拡大に努めてまいります。

加えて、「世界の才能と、感動をつなぐ、クリエイティブプラットフォーマーへ」のコーポレートミッションの下、クリエイティビティ、モチベーション、テクノロジーをキーワードに従業員一人ひとりが創造性を最大限発揮できる社内基盤整備を継続し、イノベーション創出に挑戦してまいります。

事業別の状況及び課題は以下のとおりです。

[出版・IP創出事業]

引き続き強力なIPの創出に努め、グローバルな作品流通を増やすとともに、国内では製造・物流の改革による返品率の更なる改善や編集DXによる生産性の改善を進めてまいります。

IP創出においては、国内での小説投稿サイト「カクヨム」や台湾の「KadoKado」等を通じたネット投稿作品の開発を継続強化するとともに、新たにグループ入りするタイの出版社や新規進出となるインドネシア、フランス、韓国の各合弁会社を加えた海外子会社と一体となってグローバルに作品を開発してまいります。

また、スマートフォン読者層を拡大するため、縦スクロール漫画についても専用レーベル「タテスクコミック」を中心に配信本数を拡大してまいります。

グローバルな作品流通においては、多言語化の制作投資を行い、電子書籍でのサイマル流通や紙書籍での流通を拡大してまいります。

メディアでは、Web媒体を中心にデジタルシフトをさらに進めながら、IP創出と認知向上の機能を強化することで収益性の向上に取り組んでまいります。

電子書籍では、電子書籍配信プラットフォーム「BOOK☆WALKER」において英語・繁体字・タイ語といった多言語展開を拡大してまいります。IP創出においても、コミックWebプロモーションメディアの「Comic Walker」を「カドコミ」にリニューアルし、全コミック編集部が参加し新規コミックの連載を始めております。今春にアプリ版も投入し、当社のIP創出媒体として読者に支持される連載媒体に育ててまいります。グローバルに才能を集める「TATESC COMICS Global Awards」においては、多数の言語から応募があり、受賞者の連載と育成が決定しております。今後も継続的に開催するとともに、縦スクロール漫画、コミック、及びライトノベル等のグローバル市場の開拓に引き続き注力してまいります。

また、動画コンテンツによる新たな体験価値の創出、児童書等の商品化の拡大、dマガジン等の他プラットフォームとの連携、及び電子書籍のサブスクリプションサービスを推進し、多様な楽しみ方を世界中の読者に提案してまいります。

[アニメ・実写映像事業]

アニメ・実写映像事業では、制作能力の強化や新しい映像表現と効率的な制作工程の実現のため、アニメ制作スタジオやバーチャルプロダクションへの投資を行い、グローバルな映像配信に対応した企画制作一気通貫のIP創出体制の確立を目指してまいります。

アニメでは引き続き自社制作力を強化し良質な作品をラインナップしながら制作規模を拡大してまいります。また、北米を中心とするマーケティングを強化し作品認知度を上げ、国内及び海外市場における権利販売や映像配信事業に注力してまいります。

実写映像の製作・配給においては、作品の大型化とグローバルな映像配信に向けた作品開発の強化を行ってまいります。また、角川大映スタジオで開始したバーチャルプロダクション事業では、歴史ある美術製作力と最先端のテクノロジーとの融合により、新しい映像表現と環境負荷が低くローコストな制作工程を同時に実現してまいります。

[ゲーム事業]

ゲーム事業では、世界市場が長期的に拡大する中で、当社原作のスマートフォンゲームの開発ラインを拡大し、メディアミックスによる更なる収益力の向上を図ってまいります。

PCや据置機のゲームにおいては、『ELDEN RING』の大型ダウンロードコンテンツが2024年6月に発売予定ですが、これまでのヒット作品によって培われたブランド力や開発力の高さを活用しながら、2023年12月にグループ入りした㈱アクワイアも加えて制作パイプラインを拡大し、当社グループのシリーズタイトルの開発や他社からの受託開発を引き続き行ってまいります。

[Webサービス事業]

Webサービス事業では、ニコニコのプレミアム会員数を増加に転じさせるための継続的な取組みとニコニコチャンネルにおけるファンコミュニティの強化を行ってまいります。また、サービスの向上と開発効率の向上及び長期的な費用低減を行うため、クラウドサーバを活用したデジタルインフラへの投資を継続的に行ってまいります。

各種イベントの企画・運営では、2024年4月22日~4月28日の7日間にわたり日本最大級のユーザー参加型イベント「ニコニコ超会議」を開催いたしました。ネットとリアルのハイブリッドで開催し、4月27日~28日の幕張メッセでのリアル開催には昨年比6%増の12万5,362人にご来場いただきました。こうした大型イベントでユーザーの一体感と満足度を高めるとともに、ネットでの投稿や視聴を促進しユーザーの参加機会を拡大いたします。同時にイベントの選択と集中を高め収益の改善を図ってまいります。

[教育・EdTech事業]

教育・EdTech事業では、インターネットによる通信制高校であるN高等学校及びS高等学校の継続的な生徒数増加に伴い、両校等への教育コンテンツ提供事業が成長しているとともに、VR学習教材を提供することで教育コンテンツの高度化も進めております。また、2025年4月開学を目指すオンライン大学「ZEN大学(仮称・設置認可申請中)」に向けた教育システムやコンテンツの準備を進めております。今後もより付加価値の高いコンテンツを提供することで収益拡大を目指してまいります。

㈱バンタンにおいては、マンガやアニメ等グループシナジーを活用した分野の新コースを中心に生徒数が拡大しております。今後も展開地域を拡大し継続的な成長を図ってまいります。

[その他事業]

その他事業では、角川武蔵野ミュージアム、イベント、飲食等の商業施設を展開するところざわサクラタウンをはじめとする施設運営事業に関し、一部事業の撤退やコスト適正化を進め、持続可能な事業への再編成を進めております。

今後の更なる来場者増に向けて、IPファンのみならず地域の住民の皆様やインバウンド需要にも応える多様な企画を展開し、引き続き収益力を高めてまいります。

連結計算書類