事業報告(2018年4月1日から2019年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

 2018年度のわが国経済は,個人消費の持ち直し,設備投資・生産の増加,雇用・所得環境の改善を背景に,緩やかな回復基調が続きました。中部地域においても概ね同様の傾向にありました。
 エネルギー事業を取り巻く環境は,電力・ガスの小売全面自由化に続き,2020年の送配電事業の法的分離など急激に変化しつつあります。
 このような事業環境の変化に迅速かつ柔軟に対応するため,当社は,より強靭な企業グループへの成長とエネルギー分野における収益拡大を目指し,本年4月に既存火力発電事業をJERAに統合いたしました。現在,送配電事業の法的分離に加え,「発販分離型の事業モデル」に向け販売事業の分社化の準備を進めております。
 また,再生可能エネルギーの導入拡大を図りつつ,必要な予備力・調整力を確保し,中部エリアの電力の安定供給に努めてまいりました。

 2018年度の当社の販売電力量は,中部エリア外での販売拡大はありましたが,競争の進展による他事業者への切り替えの影響などから,前年度に比べ2.6%減少し1,183億kWhとなりました。
 なお,中部電力グループ全体の販売電力量は,1.4%減少し1,236億kWhとなりました。

   

 供給面では,浜岡原子力発電所全号機が運転を停止しておりましたが,他の発電設備の定期点検時期の変更・工程短縮などの対策を行うことにより,安定的な電力の供給に努めました。

 2018年9月に上陸した台風21号,24号では,強風による飛来物や倒木の影響により設備被害が広範囲にわたり発生しました。停電の解消までに時間を要することとなり,お客さまには大変なご迷惑をお掛けしました。
 当社は,本災害における課題や改善点を検討し,今後の災害対策に活かすため,社内に非常災害対応検証委員会を設置し,設備復旧体制を強化するなどの取り組みをアクションプランとして取りまとめました。今後,同プランを確実に実施してまいります。

 東京電力との燃料・火力発電分野における包括的アライアンスにつきましては,JERAにおけるスケールメリットを活かした事業展開により,着実に統合効果が生まれております。
 なお,本年4月に既存火力発電事業をJERAに統合し,燃料上流・調達から発電,電力・ガスの卸販売にいたる一連のバリューチェーンを確立いたしました。今後,この最適運用を図るとともに,一層の統合効果を発揮してまいります。

 浜岡原子力発電所につきましては,従前より自主的に地震・津波対策や重大事故対策に取り組んでまいりましたが,原子力規制委員会が策定した新規制基準を踏まえて,さらなる安全性向上対策を進めるとともに,3・4号機について同委員会による適合性確認審査を受けております。4号機の設備対策の主な工事については概ね完了しておりますが,今後も,審査対応などにより必要となった追加の設備対策については,可能な限り早期に実施してまいります。
 また,防災体制の整備や教育・訓練の充実を図るとともに,住民避難を含む緊急時対応の実効性向上に向けて,国・自治体との連携を一層強化しております。
 さらに,東京電力および北陸電力との間で締結している協定にもとづき,原子力安全向上に係る相互技術協力や事故収束活動支援の実効性を向上させる取り組みなどを進めております。
 加えて,原子力安全向上会議や社外の有識者によるアドバイザリーボードを通じたガバナンスの強化を図るとともに,原子力に携わった専門家による浜岡原子力安全アドバイザリーボードを通じた現場における技術力向上やリスクマネジメントの強化を図るなど,原子力の安全性をより一層高める取り組みを継続的に進めております。

 このような中,収支の状況につきましては,収益面では,販売電力量の減少はありましたが,燃料費調整額の増加などから,連結売上高(営業収益)は,前年度と比べ6.4%増加し3兆350億円,連結経常収益は,6.1%増加し3兆573億円となりました。一方,費用面では,グループを挙げた経営効率化に努めてまいりましたが,燃料価格の上昇に伴う燃料費の増加などから,連結経常費用は,7.0%増加し2兆9,444億円となりました。
 これにより,連結経常利益は,12.1%減少し1,129億円,親会社株主に帰属する当期純利益は,6.8%増加し794億円となりました。
 この結果,燃料費調整制度による期ずれ影響を除いた連結経常利益は,1,630億円程度となり,中期目標(連結経常利益1,500億円以上)を達成しました。

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カンパニー別の業績

 カンパニー別の業績(内部取引消去前)につきましては,次のとおりであります。

① 発電

〔事業の内容〕
火力および再生可能エネルギーによる電力の供給

〔業績〕
 売上高につきましては,燃料価格の上昇に伴う収入単価の上昇などから,前年度と比べ5.0%増加の1兆1,529億円となりました。
 一方,営業費用は,燃料価格の上昇に伴う燃料費の増加などから,8.1%増加の1兆1,454億円となりました。
 この結果,営業利益は80.5%減少の74億円となりました。

〔当年度の取り組み〕
<火力発電所の高効率化および環境への配慮>
 火力発電については,2018年4月に安価で安定的なベースロード電源となる高効率石炭火力発電設備の武豊火力発電所5号機の建設工事に着手しました。同号機は環境にも配慮した木質バイオマス燃料の混焼を計画しております。
 なお,既存火力発電事業は本年4月からJERAに統合しております。

<再生可能エネルギーの推進>
 再生可能エネルギーについては,CO2排出量の削減に向けて,2018年5月に清内路水力発電所および当社初の木質バイオマス燃料専焼発電設備となる四日市火力発電所バイオマス発電設備の建設工事に着手するなど,コストダウンに努めながら開発を進めております。
 また,既存水力発電所については,メンテナンス費用を削減しつつ,設備の改修や運用改善などによる電力量増加にも取り組んでおります。

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② 電力ネットワーク

〔事業の内容〕
電力ネットワークサービスの提供

〔業績〕
 2018年度の中部エリアの需要電力量は,半導体の生産増や夏季の気温が前年に比べ高めに推移したことによる冷房設備の稼動増はありましたが,冬季の気温が前年に比べ高めに推移したことによる暖房設備の稼動減などから,前年度に比べ0.1%減少し1,295億kWhとなりました。
 売上高につきましては,需要電力量の減少はありましたが,再生可能エネルギー特別措置法にもとづく交付金の増加などから,前年度と比べ0.2%増加の7,464億円となりました。
 一方,営業費用は,ベースコストの効率化に努めてまいりましたが,再生可能エネルギー特別措置法にもとづく買取費用の増加や台風21号,24号による設備被害の復旧費用を要したことなどから,0.6%増加の6,933億円となりました。
 この結果,営業利益は4.0%減少の530億円となりました。

〔当年度の取り組み〕
<安定供給に向けた取り組み>
 再生可能エネルギーの導入拡大に対応するため,接続可能量の増大に向けて電力系統の柔軟な設備形成・運用に取り組むとともに,中部エリアの安定供給に必要な予備力を確保しつつ火力・揚水発電などの調整力を活用することで需給安定に努めております。
 また,設備の保守・点検に万全を期しながら,今後増加する高経年設備の改修や他社との電力融通の拡大に向けた設備増強を着実に進めるなど,送配電網の安定化を図ることにより,安定供給に努めております。さらに,当年度の台風による広範囲の停電を踏まえ,設備復旧体制の強化,ホームページやアプリケーションなどを活用したお客さまへの情報発信の強化,自治体などとの連携強化に取り組んでおります。

<低廉な託送料金の実現>
 需給構造の変化に応じた変圧器や送電線などの設備の適正化や,劣化状況に応じた改修時期の見極めなど,低廉な託送料金の実現に向けた取り組みを進めております。

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③ 販売

〔事業の内容〕
ガス&パワーを中心とした総合エネルギーサービスの展開

〔業績〕
 売上高につきましては,販売電力量の減少はありましたが,燃料費調整額の増加などから,前年度と比べ4.4%増加の2兆7,495億円となりました。
 一方,営業費用は,燃料価格の上昇に伴う購入電力料の増加などから,3.4%増加の2兆6,845億円となりました。
 この結果,営業利益は70.5%増加の650億円となりました。

〔当年度の取り組み〕
<ガス&パワーの展開とサービスの拡大>
 電力販売では,引き続き当社をお選びいただくため,新料金メニューをPRするとともに,お子さまの見守りサービスである「どこニャンGPS BoT」や手軽にエアコン等の家電を遠隔操作できる「ここリモ」など,暮らしを便利で快適にするサービスを開始しました。中部エリアにおいては,新料金メニューに本年3月末時点で約164万件の申込みをいただいております。
 ガス販売では,競争力のある料金メニューをご用意するとともに,万全の保安体制を構築して,積極的な事業展開をしております。2018年度の目標に掲げた20万件の申込みは2018年12月に達成し,本年3月末時点で約23万件の申込みをいただいております。
 また,ご家庭や中小規模のビジネスのお客さまとの接点を増やすため,電力・ガス等の販売代理業務を行う中電エナジーサービスを本年2月に設立しました。

<首都圏を中心とした事業の拡大>
 首都圏においては,電力・ガス等の販売を加速させるため,大阪ガスと2018年4月に設立したCDエナジーダイレクトをはじめとするさまざまな販売ルートの活用により,電力販売では本年3月末時点で約24万件の申込みをいただいております。また,2018年4月より関西エリアで電力販売を開始するなど,他エリアにおいても,販売活動を展開しております。

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対処すべき課題

 エネルギー事業を取り巻く環境は,電力・ガスの小売全面自由化に続き,2020年の送配電事業の法的分離など急激に変化しつつあります。一方,原子力発電については,他の電力会社において,新規制基準への適合性確認審査を経て再稼働した発電所もあるものの,依然としてわが国の原子力発電所の多くは運転停止が継続しております。
 しかし,いかなる事業環境においても,「地球環境に配慮した,良質なエネルギーを安全・安価で安定的にお届けする」というエネルギー事業者としての使命は,これまでと変わるものではありません。
 中部電力グループは,この変わらぬ使命の完遂に努めると同時に,新しい成長分野の事業化を加速し,時代の変化を見据えた新たな価値の創出に挑戦し続けることで,期待を超えるサービスを先駆けてお客さまへお届けするリーディングカンパニーとして,「一歩先を行く総合エネルギー企業グループ」を目指してまいります。

 具体的には,次の4つの重点的な取り組みをグループ一丸となって実施してまいります。

①浜岡原子力発電所における安全性のさらなる向上

②新たな時代の安定供給

③成長に向けた事業基盤の強化と持続的な成長の実現

④新しい成長分野の事業化加速

①浜岡原子力発電所における安全性のさらなる向上

 浜岡原子力発電所3・4号機については,新規制基準を踏まえた安全性向上対策を着実に進めるとともに,同基準への適合性を早期に確認いただけるよう,社内体制を強化し確実な審査対応に努めてまいります。5号機については,海水流入事象に対する具体的な復旧方法の検討と並行して,適合性確認審査の申請に向けた準備を進めてまいります。
 また,防災体制の整備や教育・訓練の充実を図るとともに,住民避難を含む緊急時対応の実効性向上に向けて,国・自治体との連携を一層強化してまいります。
 今後も新規制基準への対応にとどまることなく,浜岡原子力発電所の安全性をより一層高める取り組みを継続的に行い,浜岡原子力発電所を重要な電源として引き続き活用するための準備を進めてまいります。
 当社は,これらの取り組みについて,地域をはじめ社会のみなさまに丁寧にご説明するとともに,不安や疑問にしっかりと向き合うことで,一人でも多くの方にご理解をいただけるよう努めてまいります。

②新たな時代の安定供給

 電気事業法で定められている2020年の送配電事業の法的分離にあたっては,発電と送配電が分社化することによって安定供給が損なわれることのないよう,発電側と送配電側が協調するルールが必要です。
 当社では,本年4月の既存火力発電事業のJERAへの統合により,発電と送配電が既に分社化しており,両者が協調するルールを策定し運用を始めております。今後の送配電事業の法的分離に際しても,引き続き安定供給を果たすことができるよう万全を期してまいります。

 電力ネットワークカンパニーにおいては,中部エリアの安定供給に必要な予備力・調整力を確保するとともに,中立性・公平性を確保しつつ,高い電力品質と低廉な託送料金が両立できるよう努めてまいります。また,再生可能エネルギーの接続可能量の増大に努めるとともに,天候等による発電出力の変動に適切に対応してまいります。
 販売カンパニーにおいては,供給力を安定的に確保し,お客さまに良質なエネルギーサービスを確実にお届けしてまいります。
 さらに,当社は,供給に関するレジリエンス(強靭性,回復力)を高める取り組みを着実に実施し,自然災害への備えを引き続き強化してまいります。

③成長に向けた事業基盤の強化と持続的な成長の実現

 本年4月の既存火力発電事業のJERAへの統合に続き,2020年の送配電事業の法的分離,販売事業の分社化により「発販分離型の事業モデル」へ移行し,各事業会社が,それぞれの市場と向き合い自律的な取り組みを進めることで,より強靭な企業グループへの成長とエネルギー分野における収益拡大を目指してまいります。

 販売カンパニーにおいては,競争力ある料金メニューや新たなサービスの創出,電力・ガスをワンストップでお届けするガス&パワーを積極的に展開してまいります。また,これまで築き上げてきたサービスや技術を根幹としつつ,さまざまなパートナーとの連携を通じ,そのノウハウや顧客基盤も活かしながら多様化するお客さまのニーズに応えてまいります。
 再生可能エネルギーカンパニーにおいては,新たな目標として掲げた「2030年頃までに200万kW以上の新規開発」の達成に向けて開発を加速してまいります。
 なお,JERAにおいては,国際エネルギー市場で競合他社と互角に戦うことができるグローバルなエネルギー企業体として,国際競争力のある電力・ガス等のエネルギー供給を安定的に行うとともに,中部電力グループの企業価値向上に貢献してまいります。

④新しい成長分野の事業化加速

 当社は,さまざまなデータを活用し,個人の生活の質の向上を図るサービスや,複数の社会インフラをつなぎ進化させることによる地域へのサービスなど,先端技術を活用した「コミュニティサポートインフラ」の提供を新たな成長分野として確立し,お客さまにお届けできる「新たな価値の創出」に取り組んでまいります。
 なお,本年4月には,事業創造本部を設置し,新たなビジネスモデルの実践を通じて事業化を加速してまいります。

 当社は,お客さまや社会からの信頼が事業運営の基盤であることを肝に銘じ,コンプライアンス経営を徹底するとともに,良き企業市民としての社会的責任(CSR)を完遂してまいります。
 また,中長期的な企業価値向上に向け,再生可能エネルギーの拡大等による低炭素社会の実現や,「新しいコミュニティの形」の提供による社会課題の解決,大規模災害時における事業継続など,ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を踏まえた事業経営を深化させてまいります。
 今後とも,お客さまや株主・投資家のみなさまに信頼,選択されるよう努め,地域社会の発展にも貢献してまいる所存です。

ご参考 当社グループのESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組みについて

本事業報告で記載している当社グループのESGに関する取り組みにつきましては,
「アニュアルレポート(Integrated Report)」にて開示しておりますので,ぜひご覧ください。
なお,本年8月上旬頃に情報を更新する予定でございます。

当社ホームページ
「アニュアルレポート(Integrated Report)」
https://www.chuden.co.jp/corporate/csr/csr_report/index.html

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