事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過及びその成果
当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立に向けた政府の各種政策などにより、企業収益の改善や個人消費に持ち直しの動きがみられるなど、景気は緩やかな回復基調にありました。一方で、足元では、世界的な金融引締めに伴う影響や、物価上昇などによる海外景気の下振れリスクが懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況のなかで推移いたしました。
このような状況において、当社グループは、2022年4月よりスタートした新たな中期経営計画「Next2024」のもと、エネルギーとくらしの総合サービス企業グループとして、中核であるガスエネルギー事業の競争力強化を図るとともに、電力・その他エネルギー事業や不動産事業等、引き続き事業構造の変革に取り組んでおります。
また、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、カーボンニュートラル都市ガスの供給開始や、各自治体と脱炭素に関わる連携協定を締結する等、今後もお客さま及び地域社会の持続的発展に貢献してまいります。
当期の連結売上高は、ガス事業において原料費調整によるガス料金単価の上方調整の影響等により、前期に比べ510億4千6百万円増の2,663億1千9百万円となりました。
費用面につきましては、主にガス事業において売上原価が増加いたしました。
この結果、営業利益は前期に比べ103億6千万円増の108億1千1百万円、経常利益は前期に比べ111億8千8百万円増の117億5千9百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増加に加え、ハウステンボス株式会社の株式売却益を特別利益に計上したこと等により、前期に比べ127億2千万円増の132億1千5百万円となりました。




セグメント別の状況
事業別の業績は、以下のとおりであります。


当連結会計年度末の都市ガス事業におけるお客さま戸数は113万3千戸であり、都市ガス販売量は前期に比べ1.3%減の8億9,225万2千㎥となりました。このうち業務用ガス販売量につきましては、主に商業用や工業用分野において新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により2.1%増の5億6,467万8千㎥となりました。一方、家庭用ガス販売量は、巣ごもり需要の縮小や節約意識の高まり等により使用量が減少したことから7.7%減の2億1,342万1千㎥となりました。また、他の事業者への卸供給ガス販売量につきましては、卸供給先の需要減等によって4.8%減の1億1,415万3千㎥となりました。
以上のような都市ガス販売量の結果と原料費調整によるガス料金単価の上方調整の影響等により、売上高は前期に比べ37.8%増の1,659億7千5百万円となりました。




LPG販売単価が上昇したこと等により、売上高は前期に比べ10.4%増の267億1千8百万円となりました。



電力小売事業において販売単価の上昇及び販売量の増加等により、売上高は前期に比べ1.5%増の213億3千4百万円となりました。



分譲マンションの販売戸数が減少した一方、宅地販売や海外での戸建て販売が増加したこと等により、売上高は前期に比べ7.6%増の417億7千7百万円となりました。



その他の事業には、食関連事業(食品販売事業、飲食店事業)、情報処理事業等が含まれておりますが、食関連事業において新型コロナウイルス感染症の影響からの一部回復等により、売上高は前期に比べ3.1%増の277億4千8百万円となりました。

対処すべき課題
当社グループを取り巻く環境は近年急速に変化しており、当社グループの将来に大きく影響を及ぼすものとしてその対応が急務となっております。
当社グループは、創業100周年の2030年における「ありたい姿」を描いた長期ビジョン「西部ガスグループビジョン2030※」を策定し、その実現に向けた中期経営計画「Next2024※」のもと各施策に鋭意取り組んでおります。2年目となる2023年度は、このような環境変化に的確かつ柔軟に対応しながら、中核であるガスエネルギー事業、電力その他エネルギー事業、不動産事業など、各取り組みをさらに加速させ、確実に成果を出せるよう進めてまいります。
また、あわせて多方面から脱炭素化に向けた取り組みを進め、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みをより具体的に※進めてまいります。
このような取り組みを通じ、当社グループの持続的な成長を図るとともに、地域社会への貢献を通じて、お客さまに選ばれ続ける企業グループを目指してまいります。
※「西部ガスグループビジョン2030」(2021年11月公表)、「Next2024」(2022年3月公表)及び「カーボンニュートラルアクションプラン」(2022年12月公表)は、以下の当社ウェブサイトよりご参照ください。
https://hd.saibugas.co.jp/ir/strategy/
■中期経営計画「Next2024」の目標とするグループ事業構成(売上高)
「Next2024」の取り組みを着実に進めることなどにより、ガスエネルギー事業とそれ以外の事業構成比(売上高)を2030年度において同程度とすることを目指してまいります。また、このために必要な経営資源をグループとして最適に配分し、利益の最大化を図ってまいります。

■中期経営計画「Next2024」主な取り組み
天然ガスシフトの推進
カーボンニュートラルの実現に向けて、徹底した天然ガスシフトを進めてまいります。
エネルギーの低炭素化と最適利用
- 石油・石炭を熱源とするお客さまに対して、低炭素化に貢献する天然ガスやLPガスへの燃料転換を推進
- エネルギーサービスの充実を図り、お客さまに最適なエネルギーをワンストップで提供

新たな取り組みへのチャレンジ
- お客さまの低炭素化に貢献するため、カーボンニュートラルLNGなどの環境に優しいエネルギーの提供
- 船舶向けLNG燃料供給など、天然ガスの新たな用途への活用

ひびきLNG基地の戦略的活用
ひびきLNG基地を最大限活用し、天然ガス取扱量の拡大を図ることで、ガスエネルギー事業と電力小売事業の競争力を強化してまいります。
国際エネルギー事業の強化
- これまで進めてきたひびきLNG基地を活用した連携ビジネスを加速し、アジア向けのLNG取扱量を増大

天然ガス発電所の建設
- 九州電力株式会社と共同でのひびき発電所の事業化
- 同発電所の稼働を見据えた電力小売事業の強化

お客さまの安全・安心と安定供給体制の強化
エネルギー事業者として最大の責務であるお客さまの安全・安心を確保するため、引き続き安定供給体制と災害時の対応力の強化に取り組んでまいります。
レジリエンスの強化
- 迅速かつ的確な緊急保安対応による安全・安心の提供
- 実践的な防災訓練やグループ会社間の連携強化による災害対応力の強化

保安の高度化の推進
- 技術・技能の確実な継承及び保安人財の早期育成
- デジタル技術の積極的な導入やデジタル人財の活用などによるスマート保安の推進

再生可能エネルギー事業の強化
エネルギー源の多様化や電源の低炭素化に向け、再生可能エネルギー事業の強化に取り組んでまいります。
発電容量の拡大
- 太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの電源開発を進め、発電容量を拡大

再エネを活用した新たなサービスの提供
- PPA※やVPP※などの新たなサービスの創出やビジネスモデルの構築
- 自治体や地元企業と連携しながら地域のエネルギー課題を解決

※PPAはPower Purchase Agreement(電力販売契約)の略
※VPPはVirtual Power Plant(仮想発電所)の略
不動産事業の拡大
暮らしの重要な基盤となる不動産事業の拡大に取り組んでまいります。引き続き住宅分譲事業を推進するとともに、賃貸住宅やオフィス・商業施設の開発など賃貸事業を強化してまいります。
住宅分譲(マンション・戸建)
北部九州、山口を中心にお客さまのニーズに沿った住まいの提案

賃貸住宅
福岡都市圏を中心に、街並みと調和した都市型賃貸住宅の開発

オフィス・商業施設など開発
オフィス、倉庫、商業施設などを企画・開発し地域の発展に貢献

リフォーム・リノベーション
時代やライフスタイルに合わせ「快適」で「安心」なリフォーム・リノベーションの提供

不動産サービス
土地及び建物の売買、仲介、マンション管理など、不動産に関する総合的なサービスの提供

海外不動産
タイ、フィリピンにおいて分譲事業などを展開

地域社会を支える価値の共創
エネルギーとくらしの総合サービス企業グループとして、社会や暮らしの多様なニーズに寄り添ったサービスの拡充、創出に向けて、既存事業の進化やスタートアップなどとの共創に取り組んでまいります。
エネルギーと暮らしのサービスの提供
- 環境にやさしいエネルギーを中心に、食・レジャー・介護など、お客さまの日々の生活やビジネスを支える多様なサービスの提供
- コーポレートベンチャーキャピタルの出資先との連携などを通じ、新たなサービスの共創

地域活性化への貢献
- コミュニティの活性化など、地域が抱える課題解決に向けた取り組みの推進
- 行政、地元企業などとの連携を通じた地域独自の事業やサービスの共創

カーボンニュートラルの実現に向けた挑戦
天然ガスシフトの取り組みに加え、様々なステークホルダーと連携しながら未来を見据えた技術開発に取り組むなど、グループ大でカーボンニュートラルの実現に向けて挑戦してまいります。
エネルギー分野での取り組み
- メタネーション技術の開発に向けて、行政や業界団体などとの連携の強化
- 学術機関などと連携し、CO2回収技術などに関する技術の導入の検討

エネルギー分野以外での取り組み
- 環境性能が高い住宅やオフィスなどの提供
- フードロス削減に寄与するサービスの提供など、循環型社会に向けた取り組みの推進
