事業報告(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過および成果

当期におきましては、受注・売上高の増加のための積極的な営業活動を展開すると共に、自治体向けの中核商品であるWebRingsの次世代版開発に注力いたしました。

また、2018年5月に業務資本提携契約を締結した株式会社三菱総合研究所(以下、「MRI社」といいます)グループとは、公共・金融・産業の各分野において、新たなソリューションの共同開発や、共同での受注活動を展開するなど、提携の成果を上げております。そして2019年10月には、MRI社により当社株式の追加取得がなされ、提携関係はより一層強化されております。

また、かねてより経営課題の1つとして取り組んで参りました、財務体質の改善を図るべく、旧本社(千代田区三番町)からの移転に続き、所有不動産の中でも簿価が最大であった横浜事業所の売却、他の首都圏の所有物件の減損処理(当社ウェブサイト(https://www.ines.co.jp/)に掲載の2020年5月8日付プレスリリースにて公表済み)などを行い、所有不動産の処分を進めました。

当期の売上高につきましては、下記【業種別連結売上高】に記載のとおりであります。金融分野において前年度の機器販売の反動減があったものの、公共分野において各種の法改正に伴うシステム改修需要や新規自治体・新規業務の受注が拡大したこと、産業分野においても小売業向け売上増が寄与したこと、グループ会社における公的機関向けのBPO(Business Process Outsourcing)業務が拡大したことなどから売上高は過去最高であった2007年3月期に次ぐ422億78百万円と、前期比10.8%の増収となりました。

損益面では、これらの増収効果に加え、前年度の不採算プロジェクトの影響が解消したことなどにより営業利益は29億3百万円(前期比33.8%増)、経常利益は29億57百万円(同32.4%増)となりました。また当期においては、オフィス移転のための臨時的コストを営業費用に計上しておりますが、当該コスト影響を除いたコア営業利益ベースでは、35億円(売上高コア営業利益率8.3%)と過去最高益を更新しました。

特別損益につきましては、第3四半期までに、主に横浜事業所の減損損失など特別損失26億4百万円を計上する一方、主に旧本社の売却に伴う固定資産売却益など特別利益43億56百万円を計上いたしました。また、第4四半期にはさらなる資産効率改善を進めるべく、首都圏の所有物件の減損処理などを進め、特別損失16億75百万円を計上しました。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、20億63百万円(同38.3%増)と過去最高益となりました。

また、収益性や資本効率を表す指標であるROE(自己資本当期純利益率)は、5.5%(前年比プラス1.5ポイント)となりました。

なお、当期におきましては、各段階での利益の増益達成、なかでも親会社株主に帰属する当期純利益が過去最高となったことから、当社ウェブサイト(https://www.ines.co.jp/)に掲載の2020年5月8日付プレスリリースにて公表済みのとおり、当期の期末配当予想15円/株に今回特別配当として10円/株を加え、25円/株に修正させていただきました。これにより、年間配当予想は30円/株から40円/株(前期比15円の増配)となります。

【業種別連結売上高】

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対処すべき課題

① 当社グループの経営環境について

日本経済は米中経済の減速により半導体製造装置等の輸出が減少するなかで、2019年度の消費税増税後の国内経済も精彩を欠いており、内需が停滞気味となりました。それらに追い打ちをかけるように、2020年初頭からの新型コロナウイルスの世界的な感染拡大(パンデミック)が国内外の経済および事業活動に甚大な損失を与えつつあります。

当面、新型コロナウイルスの感染拡大が当社グループを取り巻く経営環境を左右する最大の要因となりますが、現時点では先行き不透明感な状況なため、現時点ではこの影響を除いた当社グループの顧客業種分野別の経営環境は以下の通りであります。

自治体分野では人口縮減時代に即した施策の必要性のため、行政システムの「標準化された共通基盤」を用いた効率的なサービス提供により自治体ごとの情報システムへの重複投資を止める枠組みへの移行が主な課題となっています。一方で、AIやロボティクスによる自動処理(RPA)を導入して従来の半分の職員でも自治体が本来担うべき機能を発揮できる仕組みも必要とされています。前者は当社事業にとってはマイナス要因となりますが、後者の新技術導入による新たなニーズの高まりも期待されているため、市場全体としては横ばい状態に留まる見通しです。

金融分野では、「働き方改革」に対する課題がクローズアップされており、業務効率化や生産性向上施策に積極的に取り組んでいる状況です。その観点からシステム化へのニーズが見受けられ、具体的には営業店のデジタル化・モダナイゼーション案件や生保のテレマティクスサービス等への取り組みが本格化しています。また、保険業界での健康増進型保険や少額短期保険等の品揃えが増えつつあり、それに伴うシステム化ニーズも立ち上がっています。

製造業や小売業などその他の分野(産業分野)では、2019年度中頃までは輸出が好調な組立製造業を中心に設備投資が拡大してきました。また、卸・小売でも消費税増税対応によるシステム更改、インバウンド増加に伴う人手不足感によるシステム導入、Windows OSのサポート切れに伴うPC更新需要もありました。今後ともデジタルトランスフォーメーション(DX)の名のもと、レガシーシステムの刷新、クラウド環境への移行など、中長期的に最新のIT技術の実用化を進める企業が今後さらに増えることや、人手不足に伴う業務効率化へのシステム更新ニーズは継続していくものと思われます。

② 当社の経営戦略について

当社は「創造と和と挑戦をもって、お客さまからの信頼をもとに未来をひらき、世界中のお客さまと感動と喜びを分かち合い、豊かで安全・安心な社会の創生に貢献してゆきます」を企業理念としています。この理念の下、2019年度よりスタートした「2021中期経営計画」では「変革、そして成長へ」をビジョンとし、次の経営方針を定めております。

a.顧客基盤事業のビジネスモデル刷新

b.新規成長事業の創生・拡大

当社は、上記経営方針を踏まえ2020年度以降は、特にAI、IoT、RPAなど、ITを活用した先端テクノロジー分野へ対応する商材・技術・基盤を結集し、お客様が抱える経営課題をこれらのITソリューションで解決することをミッションとして事業を推進してまいります。

a.「顧客基盤事業のビジネスモデル刷新」のためには、既存のお客様へのシステム開発や人員派遣等のいわゆる「人月型ビジネス」から、主力製品やサービスのソリューション販売、パッケージのクラウド提供、コンサルティングサービスなど、高付加価値な「サービス提供型ビジネス」に向けた事業構造の改革に取り組みます。

具体的には、推進体制を強化しDSSシフトを軸に推進します。

・【D】DXシフト:下流・SI中心のポジションから成⾧領域/DXを強化

・【S】サービスシフト:役務型事業中心からリカーリング/サブスク型事業を強化

・【S】ソリューションシフト:引き合い対応・単発商売からソリューション型事業を強化

b.「新規成長事業の創生・拡大」のためには、業務提携先である株式会社三菱総合研究所(MRI)のコンサルティング機能やMRIグループ各社との業務提携をさらに推進し、新規ビジネスの共同開発や主力パッケージの品揃え拡充などによる受注・売上の拡大も目指します。

具体的には、重点施策としてソリューション整備と共同展開、事業開発強化を行います。

・ハイブリッド営業:上流コンサルとソリューション実装を一体にした共同提案型の営業

・戦略ソリューション:経営課題対応の各社商材の統合、ソリューションの共同開発

・他に「アカウント戦略」、「新規事業発掘」、「事業化プロセス」等での共同推進

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連結計算書類