事業報告(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過および成果

当期における当社グループの属する情報サービス産業は、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」といいます)拡大の影響により、引き続き厳しい状況が続いているものの、本格的なDX(デジタル・トランスフォーメーション)時代の到来を迎え、グループ経営下での新たな事業ポートフォリオへの転換、企業経営のデジタル化を加速させる動きやニューノーマル時代を見据えた投資が行われてきました。

このような状況下、当社グループは、安全・安心な社会の創生をコンセプトとする「2023中期経営計画」の初年度となる当期は、その土台構築と位置付けて、2021年4月より新たにDX事業を強力に推進するための専任組織を新設し、既存事業部門の人員の大幅シフトを実施、マーケティング活動、研究開発、人材育成に積極的に取り組みました。さらに、業務資本提携先である株式会社三菱総合研究所グループ他、お客様のDXニーズに資するソリューションを有する企業との協業を推進いたしました。

当社の主要事業である自治体ビジネス分野におきまして、総務省策定の「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」に基づき、2025年度予定の自治体業務システムの標準化仕様が昨年8月に明らかになりました。これら自治体システムの標準化は、当社基幹商品の「WebRings」の開発、販売戦略の大幅な見直しを強いられましたが、既存の行政手続き・行政事務、さらには周辺業務のデジタル化に向けた大きなDXビジネスチャンスと捉え、自治体のDX化を支援する有力なソリューションとして、自治体との各種実証実験や、先進的な技術を要する機能の開発、複数企業とのアライアンスを通じたソリューションの組込み等、新たな施策を推進しました。

また、ニューノーマル時代を見据えた取り組みとしては、新型コロナの拡大防止に努めつつ、社員の積極的なテレワークや時差出勤の推進、会議のオンライン化、サテライトオフィスの整備などを進め、全社ベースでの生産性向上を図るとともに、中長期的に持続可能な経営の実現に向けた「働き方改革」を継続しました。

当期の売上高は400億33百万円と、主に金融分野やグループ会社での減収を主因として前期比3.7%減となりました。

業種別には、公共分野につきましては、新型コロナワクチン接種、各種福祉関連給付金に関わる制度・施策案件などがあり、166億68百万円(前期比2.5%減)と、前期並みの水準の売上高を計上しました。

金融分野につきましては、新型コロナの影響を最も受けた前々期以降、金融機関を中心にデジタル化に向けたシステム投資が回復基調にありますが、当期は前期比、減収の114億19百万円(同4.8%減)となりました。

産業分野につきましては、小売業などのIT投資需要の回復に伴い、69億42百万円(同2.5%増)と増収となりました。

その他グループ会社において前期に売上増加に寄与したBPO入札案件が、当期には案件規模が縮小したことにより50億3百万円(同12.3%減)と減収となりました。

商品・サービス別では、公共分野における新型コロナ対策案件等の拡大により運用が増加しました。

損益面においては、国による自治体システム標準化の動きに備えたソフトウェア投資戦略の大幅な見直し、ニューノーマル対応のための各種インフラ整備などの一過性のコスト増、自治体DXに対応するための研究開発費増、グループ会社等の減収影響などがあり、営業利益は19億63百万円(前期比29.5%減)、経常利益は20億60百万円(同29.6%減)と大幅な減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益では、13億円(同9.2%減)となりました。

なお、当社は、当期の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下、「新基準」といいます)等を適用しております。前期以前につきましては、新基準等適用前の数値を使用しております。

資本政策においては、「2023中期経営計画」におけるROE7%の達成と株主還元強化を目的に2021年8月から2022年3月までに総額46億円の自己株式取得を実施しました。また、株式会社東京証券取引所の市場区分再編に伴い、当社は2022年4月をもって新市場区分である「プライム市場」に移行しました。

【業種別連結売上高】

対処すべき課題

① 当社グループの経営環境について

2021年度の日本経済は、新型コロナの新規感染者数の増減による緊急事態宣言等の発出と解除に伴い、経済活動の制限と緩和が繰り返されてきました。そのような状況の中、景気は緩やかに持ち直してきており、2022年3月内閣府発表の2次速報値では、2021年の実質GDP成長率は前年比+1.6%と予測されています。

しかしながら、新規感染者数の今後の動向や、ウクライナ情勢を受けた世界的な政治的・経済的不安による個人消費・企業業績への影響など、先行き不透明感は依然として根強く、今後、成長が失速するリスクが懸念されています。

一方で、行政や民間におけるデジタル化に向けた動きは堅調に推移しています。2021年9月には、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDXを大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを掲げたデジタル庁が発足しました。行政や民間におけるデジタル化の動きは、サービスモデルやビジネスモデルの変革による中長期的な企業価値の向上や競争力の強化に向けて、活発化しています。

② 当社の経営戦略について

当社は、経営理念ならびに「2023中期経営計画」のグランドコンセプトとして「安全・安心な社会の創生」を掲げており、政府の「目指すべきデジタル社会のビジョン」で示された社会と同じ未来を目指しています。総務省は、この社会の実現のためには、住民に身近である自治体、とりわけ市区町村の役割が極めて重要であると示しており、これまで多くの自治体にITサービスを提供してきた当社のノウハウや強みを最大限に生かせるデジタル社会の実現は、当社の責務であるとともに、大きなビジネスチャンスであると捉えています。

2023年3月期は、「2023中期経営計画」の2年目にあたるところ、中期経営計画実現に向けた取り組みとして、以下の4つを推進します。

【自治体DXから地域・民間DXへ】

自治体DXを通じて地方自治体と連携し、地域の民間企業、住民、地域金融機関が抱えている様々な課題を解決し、地域・民間DXを推進します。

DXを推進するコーディネーターとして、戦略ロードマップの策定やテクノロジーの選定、データサイエンスによる分析等、さまざまな支援を推進していくために、2022年4月にDX事業を推進する組織体制をさらに強化し、提案力・技術力の向上、アライアンス戦略の推進によるサービス展開の拡充に取り組んでまいります。

【行政システム(WebRings)標準化対応】

今年度より開始するWebRings提供自治体のシステム標準化導入支援を着実に実施するとともに、当社の強みを活かしたDXの支援に取り組みます。

自治体分野における当社の豊富なサービスメニューや顧客基盤と、株式会社三菱総合研究所の社会課題解決への知見・ノウハウを組み合わせ、手続きのワンストップ、ノンストップを実現し、自治体の行政手続のオンライン化(住民接点の総合デジタル化、住民の利便性向上)、バックオフィスのデジタル化(業務改革、データ活用による住民サービス向上)等によるDXを推進してまいります。

【グループ会社戦略の推進】

グループ経営のシナジー効果を追求するため、BPO業務と運用業務の当社グループ内での移管、集約を2023年4月に実施します。当社グループ内で業務を集約することで、業務の自動化・効率化を実現し、人的リソースの専門性・機動性を高め、収益性の向上を図ります。また、当社グループの事業再編により、DXグループ企業として当社グループの企業価値の向上を図るとともに、リスク管理の徹底によるガバナンス強化を通じて経営基盤を強化します。中期経営計画の達成、ひいては安全・安心な社会の実現に向けて、当社グループ一体となって取り組んでまいります。

【サスティナブル経営の推進】

2020年10月から導入した、社員が自律的に働く時間や場所を選択できる「新しい働き方」を推進していきます。多様な社員が働くことのできるインフラを整備し、生産性の向上とワークライフバランスを実現します。また、Gold(シングルスター)に認定された「iCD(iコンピテンシ ディクショナリ)」などのIT人材育成指標を活用し、人材育成・タレントマネジメントを推進します。

社員一人ひとりが輝き、持続的に成長し、活躍することのできる環境・風土の醸成を継続して推進し、「アイネスウェルビーイング」を実現することにより、サスティナブル経営を推進してまいります。

連結計算書類